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エイモス・チュツオーラ『やし酒飲み』
岩波文庫 2012年
※他にも『アフリカの日々/やし酒飲み』
(池澤夏樹=個人編集 世界文学全集1-8、
河出書房新社)などがあります。
「わたしは、十になった子供の頃から、やし酒飲みだった」――。やし酒を飲むことしか能のない男が、死んだ自分専属のやし酒造りの名人を呼び戻すため「死者の町」へと旅に出る。その途上で出会う、頭ガイ骨だけの紳士、指から生まれた赤ん坊、不帰(かえらじ)の天の町……。神話的想像力が豊かに息づく、アフリカ文学の最高峰。1952年刊。
=例会レポ=
参加:20人
このところ毎回、例会レポがあまりに力作なので、小間使い兼会長であるわたくしに、課題本を推薦したくてもレポートのことを考えると挙げられない、との声が聞こえてきた。
だから、今回、ゆるいレポートでもOKよ、という先例を作ることに。
皆さんの貴重なご意見をきちんと吸い上げなくてごめんね、と先に謝ってしまいます。
さて、1950年にナイジェリア人の著者によって、母語ではない英語で書かれたこの作品、イギリスの出版社の目にとまり、イギリスで出版されると大評判に。日本では1970年に初めて紹介されたがが、それ以来、ずっと土屋哲さんの訳で読まれてきた。ナイジェリア国内ではあまり評価されなかったということは例会でも話題になった。
課題本に決まったときの不安は、読んでみて「おもしろいじゃん。こきおろされても私が守ってあげよう」に変わった。チュツオーラの「おもしろいでしょ?」という「えっへん」な気持ちが素直に伝わってきて、小説は「おもしろい」ことだけで価値があるよね、と思えたのだ。
ところが、自由奔放さ、説明のないいきなりの展開、荒唐無稽と金額などの現実的感覚が併存するおかしさなどが評価され、例会での評判は上々。さすが、おもしろ本棚!多彩な楽しみ方を知っている心の広い人の集まりである。
菊池講師も「他人と比較しない独自性、制約にとらわれない凄さが感じられ、読めてよかった」とコメントした。
直接ナイジェリア人体験を持つ二人の会員の話も聞けた。
実は私も、スペイン語クラスの同級生にナイジェリア人男子がいた。彼はスペイン人と遜色ないスペイン語を話して、議論で負かしちゃったりするくせに、筆記試験ではダメダメな成績で落第してしまった。試験の成績だけがよくて話すのは下手な私に、「勉強教えてよ」と言ってきたものの、お互いに「なんでこれできないの?」と驚き合う不思議な関係であった。
「やし酒飲み」のおかげでナイジェリア人気質にちょっとは理解が深まった気もする。
皆さんにとっても楽しい読書になったとしたら、課題本に推薦した甲斐があったというものだ。
2月に行った課題本「やし酒飲み」の読書会の顛末はだいたい以上のようなものでした。
そして、結論はもちろん「やし酒飲んでみてぇ」なのでした。
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