『天地明察』
冲方 丁(うぶかた・とう) 著、角川書店 2009年
天命こそ、最高の勝負。
江戸、四代将軍家綱の御代。ある「プロジェクト」が立ちあがった。即ち、日本独自の太陰暦を作り上げること--日本文化を変えた大いなる計画を、個の成長物語としてみずみずしくも重厚に描く傑作時代小説!!
第31回 吉川英治文学新人賞、 2010年 本屋大賞 第一位
<例会レポート>
時折、隣りの部屋から聞こえる、カラオケ・演歌をものともせず、27名の高い出席率。
2010年本屋大賞受賞の話題作品。
碁打ちにして和算術を学んだ渋川春海。
生涯を賭けて「日本独自の暦」を作った男の物語。
●面白かったー。
・入会して、今日でちょうど一年になる。今までで、一番よかった一冊。
・すごく面白かった。純粋に知的好奇心を煽る、大きな業績を成し遂げたのは素晴らしい。
一問解いた、やったー!
・和算、碁を知る楽しみもあり、ぐいぐい読めた。説明が地の文に混じり込んで書かれてるのがよい。
人の書き分けができている。
・子供の頃、カルタに関孝和の名があった。知ってるので嬉しかった。新鮮な江戸を感じられた。
・とても面白かった。和算問題をやってみた。この時代に知的な人がいたのはすごい。読んでよかった。
印象に残る本。
・面白く読んだ。群馬出身なので、関孝和が出てきて嬉しかった。和算の世界を教えてもらえてよかった。
・20年かけて成し遂げたということにワクワクした。
・暦という物の重要さ。天と地を結ぶ道なのですね。
●本屋大賞って・・・。
・本屋大賞をバカにしたが、よくぞこのテーマをみつけたと感心した。
「・・・こうは、ならなかった。」という引っ張りがしつこくて気になった。
・本屋大賞になったら、なんだか・・・。自分がみつけたのが、面白くて話題になると嬉しい。
・読もうと思っていた。本屋大賞になったとたん、図書館でリクエストが増えたので買った。
後味のよい小説だった。
・話題になっていたが、天文学、全然知らず。算術はつまらなかった。
ぼんやりした春海が、歳を取ってきてあざとくなっていく、変わっていくのは面白かった。
●歴史小説としては・・・。
・読み始めは期待があった。NHKでも和算を取り上げていてブームなのか?
時代小説的じゃない言葉が多過ぎる。時代ものを読み慣れない人には受けるだろう。
・時代小説はあまり読まないが、エンターテイメントっぽくて面白く読めた。
・読みやすかったが、物足りなさを感じた。小説としての価値観でなく、アニメ、ドラマ用では?
・あまり面白くなかった。何を為し得た人なのか、いまひとつ分からなかった。
周りの人物は旨く書けている。
・あらら、算数は弱い。主人公のストイックさに好感がもてた。
・「必至」は碁ではなく、将棋の言葉ではないか。算術問題も間違ってるのではないか?
・素直でいい人ばかり、ダークサイドなしは物足りない。同じ日に死ぬのは、ガッカリだ。
・歴史ものはあまり読まないが、史実を思い出しながら読んだ。最後、二人で一緒に死んだというところで、 「小さな恋のメロディ」のワンシーンを思い出した。
●他の作品も読んだ・・・。
・マルドゥック・スクランブルを読んだ。ライトノベル風のキャラクターを持ち込んでいる。予想よりはよかった。 えんはツンデレ、渋川はオタク。カスタマレビューで、緯度と経度を取り違えてないか等、いくつかの疑問 が出ていた。
・この作家は、SFで知っていた。マルドゥック・スクランブルを読んだ。面白かったが、前半、青春もの篇で いいのだが、後半の膨らませが足りなかったのではなかろうか。
●推薦者:講師評
皆さんの感想、指摘は、さすがです。
時代小説が、なぜ面白いかというと、知らない事が書かれている、知る事ができる、その楽しさが分かると面白くなるのです。本書は、江戸時代に生きた人々の濃縮された人間ドラマになっている。
暦というものの重要さ。暦を冠位でもあり、天皇家の専権事項であった。武士には渡せない。その鬩ぎあいが書かれている。
中国では、「朝貢(ちょうこう)」という専権があり、貢物を渡すとその返礼に暦を分け与える。農耕の地に住む者には、農作物が豊作になるよう日をみて収穫するのである。
文体がおかしいとの指摘があったが、媒体との問題で編集者がチェックして、すべてオーライになっているであろう。読みやすい言葉が、新しい読者層の開拓になっていく。
小説の完成度としては、きれいごとになっているかもしれないが、作者は、いい人だけに取り囲まれて書きたかったという作者の選択であることを、「波」の中で言っている。
お配りした「時代小説を楽しむための旧暦入門」、「日本の暦法」を参考にして下さい。
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