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西加奈子 『きりこについて』
角川書店 2009年 1365円
角川文庫 2011年 540円
きりこはぶすな女の子。人の言葉がわかる、とても賢い黒猫をひろった。
美しいってどういうこと?
生きるってつらいこと?
きりこがみつけた世の中でいちばん大切なこと。書き下ろし長編小説。
<角川書店>
=例会レポート=
花粉症患者多数の3月の読書会。
出席は女性22人、男性6人に、見学の方3人でした。
皆さんの感想をすごくざっくりまとめると
「ダメなところはあるけれど、いいところもあった」。
全体の構成、最後のまとめ方などには厳しい評価もありましたが、
細かいディテール、エピソードには懐かしかったり、
あるあると同感できるものがあって楽しめたという感じです。
ところが~!
「人に読ませるレベルに達していない。失敗作というレベルですらない。
出版社の常識を疑う作品」と斬って捨てた菊池講師!
あ~れ~、この展開は似ています。
少しちやほやされて、「いけてるかも」と思っていたら
冷静で公平な世間の目には「ぜんぜんダメ」と映ることを知ってが~んとなる構図。
そうです! これは「きりこについて」のストーリーそのものではないですか。
小説では、混乱しひきこもりになったきりこが
自分の場所をみつけ、やがて
「きりこのすべてがきりこだ」という境地に達していきます。
さて、読書会の方はどう落とし前をつけましょう?
今回、この本を推薦した動機の一つに、
少し前の見学者の方の
「皆さんは本と戦っていらっしゃる!」という発言がありました。
私、いつのまにか「ひねくれた読者」になっている?
人と違うことを言いたいというすけべ心を持って本読んでる?
と、その指摘を聞いてから考えていました。
西さんの小説を読んだとき、素直な作者という印象を持ちました。
幼稚で手あかのついた結論、世界観にもなっていない世界観かもしれないけれど、
それを恥ずかしげもなくストレートに書いてしまう人だと。
そのまっすぐさをすてきだと思ったので、課題本に推薦しました。
私は素人の読者です。
だから読書会では「自分の感想」を語りたいと思っています。
皆さんの、「その人にとってその本はどうだったか」という話を
聞くのを楽しみに参加しています。
でも講師はプロです。
好きや嫌いで語ることは許されない。
客観性を持ち込むことが仕事です。
ということで、前述の発言だったと受け止めました。
で、推薦人の結論は
きりこみたいな、リボン女の友人知人の話、
自分が「ぶす」と言われて傷ついた話、
土曜日にジャンプを売っているおっさんを知っている話など
この本に触発されて思い出した「皆さん」の話を聞けて楽しかった!
だから「たとえだめだめな内容でも、本になって良かったじゃん」です。
そして「読書会にはこういう回があってもいいね」です。
西さんは出来不出来の振れ幅が大きい作家なのかもしれません。
きりこははずれだったとしても、当たるときもあります!
これで見捨てないでいただけるとうれしいな、と推薦人は思っています。
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