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北村薫『飲めば都』
新潮文庫 2013年
人生の大切なことは、本とお酒に教わった――日々読み、日々飲み、本創りのために、好奇心を力に突き進む女性文芸編集者・小酒井都。新入社員時代の仕事の失敗、先輩編集者たちとの微妙なおつきあい、小説と作家への深い愛情……。本を創って酒を飲む、タガを外して人と会う、そんな都の恋の行く先は? 本好き、酒好き女子必読、酔っぱらい体験もリアルな、ワーキングガール小説。
=例会レポ=
2回読んで意気揚々と例会に臨んだ推薦者であった。しかし、出席者の感想が始まったら、「あれ、あれあれ、・・・」発言数が増えるにつれ、あの2文字が大きくなりだした。そして、ひとまわりしてみれば、ゴシック・ボールド・120ポイントの大きさで、
「不評」が現れた。
(諸先輩には、読み始めからお分かりのことだったのだろうが・・・)
その理由は、平坦、現実味なし、期待はずれといったところで、具体的には:
• 短期間で版画を15枚、デザインがことなるものを刷るのは不可能。
• 都内に一人暮らしでワーゲンを維持できるのか?
• 男言葉を使って仕事をする女性はいない
• 勝ち組小説なのか、インテリぶり、生活の豊かさが鼻につく
• オヤジ(年齢ではなく精神が)的センスが合い入れない
• 女の気持ちがわかっていない
• うんちくをかたりたいだけか
• 「王妃の首飾り」での下着ネタであれだけひっぱられるとげんなり
• 題名にしては、お酒の種類にひねりがない
さらに物語に褒めるところがなかったのか、構成についてのご意見:
• 主人公と視点の距離がいったりきたりして、視点が動くのが楽しい。
登場人物が“深く”なくてバイキングのような展開である
• 他人の感情はわからない物だという意味で、いきなりの感情の表出が
リアルである。
やっと、肯定的なご意見が:
• 独身時代の都のエピソードは面白かったが、
恋愛がはじまってからはつまらなくなった。
• 男臭いものばかりを読む中では新鮮だった。(どちらかというと否定的?)
で、やっと、やっと、光をみるようなご意見登場:
• OL生活で体験したことが共感できる。
• 章ごとのおち・しかけがおもしろい。「指輪物語」のエピソードは、
おっ!と思ったほどおもしろい。
• 酔う勇気がわいてくる。おも本の飲み会みたい。
• ハッピーエンドが男性作家だからよしとする。
その余韻に浸ることもできずに、講師からの最後だめのダメだし。
物語を評価するに値しない駄作ということなのか、内容の解説もなく、創作の裏話だけ。
この作品は、女性編集者にインタビューをして作られている。そのスタートから間違っているのだ。
北村薫といえば、褒めるだけの書評しかない中で、北上次郎氏が『本の雑誌』上で大御所のミステリー作品を酷評した際に早稲田大学のミステリー研究会(?)名で賛同の手紙をもらったことがある。それが、彼だと思う。自分の立ち位置を守っているはずの作家の作品にしては、これは駄作。出版社へのサービスだけの作品とのこと。
それぞれの感想を書き出して思ったことは、「ん?」何かひっかかるなぁと思いながらも、気にせず読み進めてしまったと反省しました。多分、呑む場面に視点を置きすぎてしまい、その他の場面設定に気が回っていなかったのだと思います。そのような読み方しかできなかったことに気付かせて頂きありがたいと思いました。
また、フィクションへのリアリティをどれだけ望むのかということを考えました。共感するところがあれば、面白い作品となりえますが、違和感しかなかったら、つまらない作品となる。その境目は、どれだけの人生経験を重ねてきたかによるのではないでしょうか。同じ作品を読んで感想をシェアする楽しさを改めて実感しました。
都ちゃんの行動は、多かれ少なかれ、誰もが経験しているのではないか、お酒で失敗してもよいのだと思った次第であります!
(開催日:2014.10.30 参加者20名(F13名、M7名(見学者2名(F)を含む)
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