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ジョナサン・スウィフト『ガリバー旅行記』
新潮文庫 1951年 / 岩波文庫 1980年
角川文庫 2011年 など
小人たちの国、巨人たちの国、空飛ぶ島の国、馬たちの国…イギリスに妻子を残し、懲りずに旅を続けたガリバー。彼が出会ったおとぎの国々を、誰もが一度は夢見たことがあるだろう。子供の心と想像力で、スウィフトが描いたこの奇想天外、ユーモアあふれる冒険譚は、けれどとびきり鋭く辛辣に、人間と現実社会をみつめている。読むたび発見を新たにする、冒険旅行小説の歴史的名著。(Amazon 角川文庫版 内容紹介より)
=例会レポ=
あの釘付けにされた小人国のガリバー。確かにガリバーは子供たちの人気者でした。ところが、何とガリバーは日本も訪れていたとか。
改めてガリバーのワンダーランドの真実に迫ろうと推薦しました。そして、ユーモアを交えながら語る、ダイナミックで壮大な世界に感銘を受けました。
以下、皆さんの感想を紹介します。
18世紀初めの作品とは思えない。古びない。
観察眼に畏敬の念を感じる。
現代に通じる諷刺。
服装のことから政治まで見識が幅広い。
設定が面白く、ストーリーが分りやすいので子供のときひきつけられた。
排泄に対するこだわりは苦手。
今さらどうも入り込めなかった。
日本について踏み絵が出てきたのに驚いた。豊かな発想が見受けられる。
ボスの絵画、ビアスの『悪魔の辞典』を思い出した。
アトウッド『侍女の物語』と並ぶディストピア小説。
人間を捕えているからこそ物語としての面白さがある。お風呂はどうしたのかなどと想像力を掻き立てさせる。
最後の一行が落ちた。
追注が痛烈。
馬は大好きな動物だが、馬が人間より優れているように書かれているのに笑ってしまった。
講師からのコメント。
この作品はアイルランドの立場を反映している。現実の政治に対する不満を小説にするときどのように構成するか。物語として百年戦争を諷刺し、大航海時代を背景として世界を新たに創作したところがうまい。心情が内にこもって蓄積していく。そして吐き出した。
風俗は変わっていくが物語世界の本質は古びない。
諷刺文学が日本でも育って欲しい。しかも戯作魂が欲しい。司馬遼太郎は初期に伝奇物を書き、後の作品の布石となっている。物語がもつ力に注目し伝奇的なものも取り上げて、作家には半径3メートルから世界を広げて欲しい。
推薦者余談。
朝日新聞夕刊で短期連載「昭一とひさしをたどって」がありました。昭一は俳優の小沢昭一、ひさしは作家の井上ひさしです。2人は『人々を押しつぶす戦争や権力に、笑いを手放さず向き合った」盟友でした。連載の初回(8月3日付)によると、2人の本格的な出会いは1969年4月~11月のNHKラジオ「ガリバー旅行記」だったそうです。なんと「『小人国』、『巨人国』、『飛ぶ島』、『フウイヌム(馬)の国』を旅した小沢ガリバーが講演し、それを井上が速記したという趣向」だったようです。2人は意気投合し、井上ひさしは小沢昭一に6本も芝居を書きました。しかも2人にとってガリバーはその後も気になる存在だったようです。うーんこんなところにもスウィフトおじさんの系譜があろうとは。スウィフト恐るべしですね。
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