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7月の課題本 パトリック・デウィット『シスターズ・ブラザーズ』

2014-06-12 00:49:20 | ・例会レポ

パトリック・デウィット『シスターズ・ブラザーズ』
東京創元社 2013年

粗野で狡賢い、冷血漢の兄・チャーリー。ふだんは心優しいけれど、切れると大変なことになる弟・イーライ。悪名轟く凄腕の殺し屋シスターズ兄弟は、雇い主の“提督”に命じられ、ある山師を消しにサンフランシスコへと旅立つ―理由はよくわからぬまま。兄弟は何に出遭い、何を得て、そして何か失うのか?ゴールドラッシュに沸くアメリカ西海岸、名高き殺し屋シスターズ兄弟の、目も当てられないダメな旅路。総督文学賞など4冠制覇、ブッカー賞最終候補作。

=例会レポ=
(語り口・描写)
━「とてもほのぼのとは言えない。人殺しや、馬の手術など、かなり残虐なシーンが多く好きになれなかった」という意見もありましたが、多くの方は、残虐なシーンも不思議と気にならなかったようです。

*人殺し、残虐なシーンの抑揚のない、平板は語り口(描き方)が良かった。章の終わりの教訓も嫌味を感じなかった。
*弟の人物描写が良かった。
*語り口のうまさで読ませる。この作品以外に書けるのだろうか?

(時代背景・西部劇・アメリカ版の時代小説)
*初めは読みにくかったが、アメリカの時代小説だと思ったら、読めるようになった。
*OK牧場、拳銃無宿、アメリカのコンビ小説。
*ゴールド・ラッシュ(江戸時代の末期、ジョン万次郎や黒船来航の少し前)、西部開拓、牛、物資の移動(カーボーイ→鉄道→工業化→南北戦争)
*泥のコーヒー、歯磨き粉。

(ストーリー)
━面白かったと言う人と、面白くなかったという人に意見が別れました。面白かった人は時代背景(ゴールド・ラッシュ、西部劇)や当時の状況が想像できて面白かったようです。一方つまらなかった方は、ストーリーが平板で起伏もミステリー要素もなかったことが不満だったようです。平板なストーリーや語りがこの本の良さ、不思議な魅力を醸し出していると言う意見もありました。
*半分くらいから面白くなった。
*ストーリーが平板、もっと起伏がほしかった。殺し屋に凄味が無い。
*オリジナリティがない。
*このミス4位だったので、期待したが、ミステリーではない。平板、全体もやもや、消化不良。
*カナダ人の著者のせいか、一歩引いてみている。クールな感じで熱くない。
*ロード・ムービー小説として面白く読めた。本の表紙が良かった。弟は頭が悪いという設定なのに、よく見ている。翻訳が非常に(読ませる)良かった。
*ロード・ムービー、ゴースト・バスターズ。社会一般の規範と主人公(犯罪者)の規範の違いが面白かった。
*面白かった。なぜか品がある。60年代の西部劇(TV、映画)を思いだした。
*物語が淡々としている。ファンタジー、エンタメ、絵本のようで、無駄ばかり(それが良さ)。面白いが人には勧めない。

(ラスト・シーン)
━ほとんどの方、特に女性はラストで母親のもとに帰るというハッピーエンドがいただけないと言う意見のようでした。
*人を殺して、母のもとに帰ってくる。腹が立った。
*母のもとに帰る、古典的結末。
*面白く読めたが、ハッピーエンドにちょっとがっかり。
*兄弟が次第に、女性にも、馬にも、家族にも優しくなって行くのが良い。故郷、母のもとに帰るラストも良かった。ほろっと来た。

(講師より)
この本は、語り口のうまさで引っ張って行く。弟の語りに読者がハマって行く。
西部劇の変遷と代表作品の解説がありました。シャイアン(主人公がシャイアン族と白人のハーフ、それまでのインディアンが悪者という定型から踏み出した)、ララミー牧場、駅馬車、OK牧場、大いなる西部など。
従来の西部劇では賞金稼ぎが出てくるが、課題本は殺し屋という違い(新味)がある。
ラストに関しては、男性と女性では、受け止め方が異なってくる。男性は母の子宮の中でしか守られない。母のもとに帰る(子宮に戻る)と言う願望がある。

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