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2月の課題本 梶よう子『いろあわせ 摺師安次郎人情暦』

2018-02-04 22:16:14 | ・例会レポ

梶よう子『いろあわせ 摺師安次郎人情暦』
ハルキ文庫:時代小説文庫

神田明神下に住む通いの摺師・安次郎。寡黙ながら実直で練達な職人の彼に、おまんまの喰いっぱぐれの心配がないと、ついた二つ名は「おまんまの安」。そんな中、安次郎を兄と慕う兄弟弟子の直助が、様々な問題を持ち込んでくる。複雑に絡み合い薄れてしまった親子の絆、思い違いから確執を生んでしまった兄弟など…安次郎は否応なしに関わっていくことに―。五つの摺りの技法を軸に、人々が抱え込む淀んだ心の闇を、澄み切った色へと染めていく。連作短篇時代小説、待望の文庫化。(Amazon内容紹介より)

=例会レポ=
<出席者>
男性4人、女性7人 計11人

・面白い。摺師という埋もれがちな職業を取り上げたのは目の付け所がいい。新作が楽しみ。
・全体的に感動を強要されているような印象。
・作品というよりマーケティングされた「商品」という感じ。スーパーのお惣菜を食べたような。
・梶よう子は初めて。摺師の名前が実際に世に出てくるのは明治期からだが、その前の時代に着眼しているのが面白い。章ごとに摺師の専門用語をモチーフにした説教が出てくるなどテーマや構成も良い。登場人物が「いかにも」といったふうで、話は予定調和だが、安心して読める人情物のお手本という感じ。子どもをきっかけにした次の展開に読者を引っ張っていく。
・初めての作家だがさらっと読めた。神田明神下は職場に近いので親近感もあり。ただあまり好きな人物はなく、ちょっと物足りないかな。
・良かった。話しに捻りがある。彫師の話はあっても摺師は聞かない。末端の職人の仕事を取り上げた作者の力量を感じる。
・面白かった。カッコつけることなく描けている。時代小説は、おもしろ本棚で30年ほど前に読んだのが最初で、藤沢周平は見事と思う。
・時代小説は自分からは読まないが、古い女性像ではなくそこそこの自主性があり、テレビドラマのようではあるが楽しく読めた。摺師は面白い。小学校の図工で使うばれんのイメージを重ね合わせた。
・梶よう子は初めて。摺師という職業は初めてだが、業界用語などを使ってくふうがみられる。が、全体的には薄味。
・面白かった。時代小説の短編はどれも同じに見える。単行本の表紙になっているぼかし絵が良い。
・よくある時代物という感じ。途中から安次郎が村上弘明のイメージになった。いつ者パターンだが、読後感は良かった。

<講師評>
時代小説の役割にはビジネスマンの経営読本のようなものがある一方で、60歳以上をボリュームゾーンとする、佐伯泰英のように安心して読めるものが欲しいというニーズがある。これはその欲求に応える位置づけの本である。父子家庭を取り上げているのも大きな特徴で、物語を貫く精神の連続性を表す。この後のシリーズで安次郎が我が子を引き取り、育てていくのも読みどころ。

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