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10月の課題本 又吉直樹 『第2図書係補佐』

2012-10-26 01:34:12 | ・例会レポ

又吉直樹 『第2図書係補佐』
幻冬舎よしもと文庫 2011年

お笑い界きっての本読み、ピース又吉が尾崎放哉、太宰治、江戸川乱歩などの作品紹介を通して自身を綴る、胸を揺さぶられるパーソナル・エッセイ集。
芥川賞作家・中村文則氏との対談も収載。

幻冬舎よしもと文庫

ここんとこ骨太な作品が続く中で、ちょっと楽に読める本をと
選んでみましたが、そのせいか「○カ月ぶり」に出席した会員も多い中、
逆にお休みも多くて、ちょっと寂しかった推薦者でございます。

おも本会員におけるピース・又吉さんの認知度はイマイチで、
しかし売れっ子だけあって、あちこちの番組でチラ見したところ、
テレビで見る芸はやはりイマイチ、との声もあったのですが、
相方のマダムキラー綾部のテンパリを抑止でき、突き抜けた才がある、
単に「好きなタイプ(*^^*)」など、高評価も見受けられました。

さて、よしもとのフリーペーパーに掲載されたもの+書きおろし数篇の、
ブックガイドというよりもエッセイ色濃い本作、いつもと違う感触に
皆さまの反応はどうだったかというと、

全般的には概ね好評、又吉さんの人柄への好感度は高かったようでした。
子ども時代から青春期、現在にいたるまでの時間の中で
筆者は自身に巣食うコンプレックス、恥、妄想を、丁寧な文体で
余すところなく書き綴ってゆく。

そのことに誠実さ、人としての優しさをみた、あるいは共感を得た
という意見も多々あり、たとえば
「自分もランドセルを忘れて学校に行ったことがある」
「クラスの可愛い女子が英語をたどたどしく読むのが、
ことさら可愛いので、自分もたどたどしさを真似ていた」
「スカートを履かずにコートを着て学校に行ったことがある」
など、それはそれは恥ずかしい自らの過去や黒歴史を
惜しげもなく披露してくださる会員も何人もいらしたのでした。

また、もともと本に絡めたスタイルのエッセイやブックガイドが好き、という
さすがおも本会員ならではの感想も多く、新たな本の出会いの場として
この書を読まれた方も多いように思います。
その昔、渋谷陽一氏がやってた『ロッキング・オン』の、
エッセイから音楽紹介に落とし込むスタイルを彷彿させたという会員も。

が、そもそも、よしもと芸人を見に来る若者向けに書かれたものが、
どれほど「本を読みたい」欲求を読者に与えるかは、人それぞれで、
本そのものには触れてないから、読みたいと思えるものはないという人、
コラムとしての完成度、ブックリストとしての面白みは他書に劣るという人もいる。
その一方で、本を読み始めた後輩にこれを紹介したところ、周囲に広まって、
それぞれ読みたい本を持ち寄って読書会を開くことになったという例もありました。

ちなみに47の紹介作品の中から、今回「読みたい」票が入ったものを以下に羅列すると
『杳子』『山月記』『夫婦善哉』『世界音痴』『香水』
『四十日と四十夜のメルヘン』『何もかも憂鬱な夜に』などなど。

しかしエッセイとしての完成度については、寺田寅彦、内田百間らの
数々の名著と比較して、バッサリと講師に切られまくりの本書でございました。
選書のセンスはあるが、子供時代の話は書きやすく、先に自身の話がありきで
本は後付けなので両者がスムーズに結びつかない、編集側の意図を感じる、等々。
ただし「コンプレックス」「恥」「妄想」の、作家に必要な諸条件は揃っており、
小説の方が向いているのでは、との由。

で、推薦人のワタクシは、ちょっとぷっつん、ときたので
センエツながら思うことを猛然と述べさせていただきました。

これは、やはり「芸人」又吉さんの作品であり、いわゆる
著名なエッセイの類と同列に並べるものではないと思うのですが、
思春期の頃から膨大な読書量とその記録量で、「太宰」に共鳴しつつ
感性を育ててきた筆者は、やはり彼なりの選択眼による
「ブックリスト」が先にありき、で、それをよしもと芸人として「ボケ」て、
若いファンに挑みながら良書を薦めているのではないかと。
今の時代、今の人に向けて、これはアリではないかと。

なんであれ、この本をきっかけに、新たな本に出会うことが
できたなら、それはそれで儲けものとワタクシは思います。

でことで、かなり逸脱しましたが、次回の課題本は、ここで紹介された中から
織田作之助『夫婦善哉』に決定ですよ♪ 

(文責:ままりん)

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