【人生をひらく東洋思想からの伝言】
第93回
「往く者は追わず、来たる者は拒まず」(孟子)
通常は、「去る者は追わず、来るもは拒まず」という表現でよく使われている言葉である。
「去っていく者は特別後を追わない、来るものはどんな相手でも拒まずに受け入れていく」
という人間関係における言葉で、馴染みがある言葉でもあります。
孟子がある国を訪れた際に、その迎賓館で宿泊し、
館の役人がつくりかけのわらじを窓際においていたところ、
何者かに盗まれてしまった。役人が孟子に向って、
「あなたのお伴もやりますな」
と皮肉を言ったところ、孟子がこう答えたという。
「連中がわらじを盗むために、わたしについてきたとでも言うのですか。
あるいは、そうかもしれません。私は弟子を取る時に、
『往く者は追わず、来たる者は拒まず』で
学ぶ意志さえあれば誰でも弟子にしているものですから。」
もちろん、弟子がそのようなことをするわけはなく、
孟子の懐の深さを端的に表現したものであるが、
このような在り方を目指したいものである。
参考文献
『中国古典一日一言』守屋洋著 PHP研究所