【人生をひらく東洋思想からの伝言】
第26回
「夢が 現か、 現 が夢か」(荘子)
(うつつ)(うつつ)
東洋思想の根底にかなり深い影響を与えるものに、老荘思想があります。
老子(ろうし)と荘子(そうじ)を合わせたものです。
『老子』は、上下巻、八十一章、約五千四百字からなる書物。
上巻「道経」下巻「徳経」をとって『道徳経』『老子道徳経』とも呼ばれています。
一方、老子の学統を受け継ぎ発展させた『荘子』は、内編七篇、外編十五篇、雑篇十一篇、
全六万五千字余りの大作で、寓話を多く用いているのが特徴的です。
今回のお話は『荘子』からの引用になります。
『荘子』には、ところどころに夢の話が出てきます。
なかでも有名な、「胡蝶(こちょう)の夢」という話をご紹介していきます。
昔、荘周(そうしゅう=荘子)は夢の中で、ひらひら舞う胡蝶になりました。
とても楽しく、自分が荘周であることなど 忘れてしまいました。
パッと目が覚めると、何と自分は胡蝶から荘周になっているではありませんか。
荘周が夢のなかで胡蝶になったのか、胡蝶が夢の中で荘周になったのか・・・・。
この話は何を伝えようとしているのでしょうか?
あの豊臣秀吉も、亡くなる前にこんな言葉を残しています。
「露(つゆ)と落ち、露と消えにし 我が身かな 浪速のことは 夢のまた夢」
大阪城で過ごした日々は、夢の中で、夢をみているようだった ということです。
最近の若い世代の方々は、オリンピックでも のびのびと楽しくやっている姿を見ると、
夢のような感覚で、楽しんでやっているようにも見えます。
このような感覚を、少しでも生活の中で意識していきたいと思います。
参考文献 『老子の無言』より(田口佳史著・光文社)