松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆域外住民政策

2020-04-12 | 域外住民への関与
 今ひとつ、名前がこなれていないが、域外住民政策を構想している。

 地方自治体も国と同様に、住民(人的要素)、領域(空間的要素)、支配権(地方統治権またはそれを担う地方政府)の3要素から構成される。

 したがって、自治体の政策は、対象は、域内の住民であるし、自治体の区域内のことを対象とする。基本はその通りであるが、これは産業構造が、一次産業が主たる時代の仕組みで、つまり、人の移動がほとんどない時代を前提に出来上がっている仕組みといえる。

 しかし、交通手段が発達し、市域をまたがって行動することが普通になった。戸田市などは、典型的であるが、蕨駅から、蕨市役所経由、イトーヨーカドーで、市役所に行ったこともある。蕨と戸田の境は、明確でない。イトーヨーカドーは、蕨と戸田にまたがっている。戸田市民の4割は、東京に通勤している。

 さらには、最近のインターネットの普及は、隣り町や電車でいけるという範囲をこえて、そのまちに直接の影響を与える(ネットによるヘイト)。これらは、これまでの地方自治の考え方に変容を迫るものである。

 私の問題意識は、こうした区域を越えた人の活動についても、自治体政策の対象としていく必要があるというものである。

 市外住民政策は、2つの面から考えていけるだろう。
(1)住民が市外に出かけて行くケースで、この市外において、自分のまちのために活動する政策である。つまり、体は、市外にあるが、心は市内にあるというものである。

・これは住民概念の要素に、愛着や共感や誇りを取り入れるものである。逆に言うと、これまで客観的であった「住民」に、こうした主観的な思いをもってもらうという政策になる。

・シビックプライド政策がこれに当たるだろう。国民国家のような政策が出てくる。フランス革命以降できた国民国家は、国民に言語の統一、優れた歴史、国のために奮闘した人を紹介するといった、一体感、自分たちは優れている教育をするが、これを地域でやっていくのがポイントだろう。

・もちろん、この国民国家の行き過ぎが、戦争につながるので、シビックプライド政策も注意しなければいけないが、自分たちもまちに誇りを持つ程度ならば、プラスに機能していると言えよう。

・具体的には、他の町に行って、「私の町はこんなにいいですよ」とPRする、よそに行く市民は、まちのPRマン。あるいは、他の町で仕入れた情報をまちに持ってくる情報収集員等の制度化か、政策の一例になるだろう。

(2)市外の住民が、私たちのまちのために知恵やお金を出す政策である。その住民は、他の町に住んでいるけれども、自分が好きなまちのために寄付をし、情報を提供し、PRする等が期待することである。これは体は市外、思いは市内である。

・交流人口、関係人口政策が、これに当たるだろう。地方創生では、一向に増えない人口政策は、一応、置いといて、こちらにかじを切ったのではないか。焼津の自治基本条例などには、焼津ファンのような感じで規定されている。

・ふるさと納税が代表的なものである。もともとは、第二のふるさと的な意味で、個人住民税を二分するという発想から始まった。税は、地域社会の会費と言われるが、地域社会のメンバーでないものが、納税するのはおかしいということになって、今の寄付制度になった。実態は、商品競争みたいになって、「体は市外、思いは市内」の考え方とは、似ても似つかないものになった。これによって、一度下駄をはかせた地域経済は、下駄をとったら、ひっくり返ることになるだろう。商品目当てを思いにするために、それぞれの自治体では工夫をしているが、多くのふるさと納税者にとっては、どこ吹く風だと思う。
 
・在学、在勤の市民の考え方も、(2)のひとつだろう。地方自治の現場では、在学、在勤者は、これはすでに事実上、自治体のメンバーとして、活躍してもらっている。これは自治基本条例などで、政策化されている。参加権(参政権ではない)も認められている。論点は、参加の実質化の施策だろう。

・二地域居住も(2)の一種である。これは他の町から時々来てもらって、居住するというものであるから、関係人口よりも地域との関連が濃厚である。ちなみに、濃厚というと、濃厚接触を思い出す(閑話休題)。この分野は、結構、奥が深そうである。実際、住んでいるのだから、負担原則から言っても、税金が取れてもいいように思う。税金の住所地原則の例外の可能性である。大きな論点であるが、税金問題は苦手なので、二の足を踏みそうである。

・実際、大阪国際大学にいたときは、週の前半は京都・宇治にいて、週の後半は三浦半島である。京都では、ごみを出したが、その費用は払っていない。その他、京都から、気がつかないが、たくさんのサービス(消防など)を受けていたが、税金は払っていない。こうした単身赴任者が多い自治体は、何らかの税を確保する仕組みが欲しいと思うのではないか。

 域外住民政策は、もう少し考えていけば、広がりと奥深さがあるだろう。もう少し、考えていこう。
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