おや！まぁ～

おや！まぁ～

病院で診察が終わり、待合室に出て立っていると、向こうのほうで待合席の座席に座った方が片手を上げてヒラヒラさせて誰かに合図をされている方が見えた。

我輩に循環器科での患者の知り合いは居ない。

従って我輩ではないとソッポを向いたら、その方が立ち上がった。

よく見ると手話の会での同年輩の女性会員の方だった。

両手を広げて「久し振り」と言う手話の表現をされていた。

思わず我輩も同じ仕草で応じた。

「きょうはなにで？」

「循環器の診察で来ました」

「何時にきたの？」

「１1時よ！もう二時間以上も待っているの」

「それは大変！」

「今　そちらに行きます」

「別の座席に行きましょう」

これらの会話は全て手話である。

我輩もこのくらいの会話は出来るようになったし、手話では少々距離が離れていても手が見えれば会話は成り立つ。

我輩と彼女とは約１０ｍ以上は離れていたが手話では簡単に話せる。

彼女の側に行き共に少し離れた空いた席に並んで座る。

「私　近頃　身体の調子が悪く会（手話）は休んでいるの」

「会に出るより身体のほうが大事だよ」

「先月の文化祭にはちょっと顔をだしたのよ」

「会場に来られたのですか？」

「ええ　行きましたが直ぐに帰りました」

「どうして？」

「もう会（手話の会）の出番が終わっていたの・・・」

「じゃ～来られた時間が少し遅かったのだ？」

「あれ以来　会には欠席しているの？」

「最近は出席者がすくなくて先週も１２人だったよ」

「身体の調子がよくなったらまた来てよ」

「そうするわ」

「もう診察は済んだの？」

「ええ　今　終わったところです」

「きょうは予約時間ピッタリだったよ」

「えッ　予約時間　丁度？」

「ええ　１３時半が予約時間でした」彼女は腕の時計をみて

「１３時４５分ですよ、ホント！そのようなこともあるのね～」

「私も長いこと此処に通っていますが始めての経験です」

「診察の結果はどうだったの？」

「幸いに検査の結果では異常はみられなく、なんだか、“迷走神経反射”の所為で精神的不安になり脈が乱れてテノヒラや足の裏に汗を掻くような症状がでたらしい？」

「あまりコンをつめたことはやらないで下さい。そして適当な運動をするようにお医者さんから言われました」

「△△さんは？」

「私も脈が乱れていてね、時々苦しいの・・・最近は水泳も止めているの」

「それは・それは気を付けて下さいね。ところで貴方の予約時間は何時ですか？」

「私の予約時間は１１時半なの・・・」

「もう二時間経っているね」

「ポツ・ポツではないのですか？」そのような話に夢中になっているときに・・。

「あら！○○さん窓口であなたの名前を呼んでいるよ」

「そう　助かった。有難う　私は耳が聞こえないので助かったよ」

「では、またね・・・」

彼女にお礼を言って席を立ち受け付けに行った。

これらの会話は全て手話である。

我輩が難聴で、しかも、このような大勢の人がいて時々マイクの声がガナリ立てられる場所では全く側（ソバ）で話をしても分からないのだ。

然し、側（ソバ）では手話と顔の表情がはっきりと分かり、また、この方は既にベテランで我輩が初心者であることを、ご存知であるので手話はユックリとされたので大体理解できた。

とんだところで手話の実習ができた。

いつもなら待たされるのにイラ・イラするところだったがきょうはなんと時間の経つのが早いことだろう？

待つのも誰かと話をしていると時間が経つのを忘れる。

帰りの車の運転も気持ちのいいものだった。

お天気もいいし、外気温は１４度もある。

長いこと外の病院の駐車場で置いてき放りにした車の中は暑苦しいくらいだ。

車の窓を開けて室内を冷やすように暫く走った。

そとの風が気持ちよく(^^ゞに当たった。

心配していたステントには異常がみられなく、担当医の先生からも少し運動を進められた。

これでもう少し膝がよくなれば文句はないのだが・・・・。