新しい詩④たまきはる 2019-04-19 23:20:18 | 短歌 たまきはる たまきはる命は悲し…… かくはまた老いおとろへし命さへ いたみなやめる日の空に 柘榴の花は咲き出でぬ なにごとの合図のこゑか 世はおしなべてみどり濃き昼のしじまに 日よりもあかし その花あかし いざさらばわれもうたわな えしやよし耳貸す人はあらずとも 吾胸底のふる歌を われもうたわな
俵万智の高校教師時代の歌 2019-04-19 23:02:54 | 短歌 歌人俵万智は、短い間だが、県立橋本高校で教鞭をとった。科目は国語。その頃の名歌5首。……青春という字を書いて横線の多いことのみなぜか気になるシャンプーの香りをほのぼのとたてながら微分積分子らは解きおりこの子らを身ごもりし日の母のことふと思う試験監督しつつ親は子を育ててきたと言うけれど勝手に赤い畑のトマト出席簿紺のにブレザ空に投げ週末はかわいい女になろう
名歌鑑賞28 ~俵万智~短歌ブームの火付け役 2019-04-19 18:19:24 | 短歌 俵万智。昭和37年大阪生まれ。「心の花」所属。佐々木幸綱に師事。歌集「サラダ記念日」「チョコレート革命」「プーさんの花」など多数。早稲田大学出身、元神奈川県立橋本高校で国語教師に。のち、沖縄、九州地方に住む。シングルマザー。「サラダ記念日」は、200万部売れ、短歌ブームの火付け役となった。………「寒いね」と話しかければ「寒いね」と答えるひとのいるあたたかさ恋人や伴侶、そして家族というものの本質を、見事に言い当てている。傍らにいて、ただ相槌を打ってくれる存在。そんな存在があるだけで、自分の生がほのぼのと温かく感じられる。……思い出の一つのようでそのままにしておく麦わら帽子のへこみ「また電話しろよ」「待ってろ」いつもいつも命令形で愛を言う君
名歌鑑賞28~前田夕暮~金の油を身にあびて 2019-04-19 17:18:00 | 短歌 前田夕暮。 明治16年神奈川県生まれ。尾上柴舟に師事。 「白日社」設立。 「詩歌」創刊。 歌集「収穫」「生くる日に」など。 昭和26年没。 ……… 木に花咲き君わが妻とならむ日の四月なかなか遠くもあるかな 結婚の「日を」待ち望む青年の気持ちが詠われている。 明治という時代のせいもあるだろうか。 咲き満ちる「花」たちに祝福される その「日」に対する詠いぶりの素直さが良く出ている。 …… ひまわりは金の油を身にあびてゆらりと高し日のちひささよ
名歌鑑賞27~斉藤茂吉の代表作~ 2019-04-19 17:06:28 | 短歌 日本のおとななら、斉藤茂吉を知らない人はないだろう。 念のため、略歴を書いておく。 明治15年山形県生まれ。 伊藤左千夫の門下生となり、「アララギ」に歌を発表。 歌集「赤光」など。 ……… ゆふされば大根の葉にふる時雨いたく寂しく降りにけるかも のど赤きつばくらめふたつ梁にゐてたらちねの母は死にたもうなり あかあかと一本の道とほりたりたまきはるわが命なりけり
新しい詩③~池あり墓地あり~ 2019-04-19 08:27:59 | 詩 池あり 墓地あり 鶯なく 貧しく土はかわき 丘赤く 火は高し かくさくらの花の散る日にも 情感すでに枯れ 獣もののさまようごとく わが影はみすぼらしく風にふかれ 空想の帆かげ遠く沈みゆくを遂はんとす あてどなき小径のはて かくあてどなもくわれの超えてゆく ものみな傾きし風景は 今春の昼餉どき しんかんとして海のこゑはるかに 藪かげに藪椿おつ ああわがかかる日の焦点はかなしくゆがみたるに 池あり 墓地あり 鶯なく