めざめていても夢はみる

ぼくはいつまでもさまよいつづける、
夜が明けても醒めない夢のなかを…

市役所めぐり

2023-05-20 20:34:00 | ペン


元日。
初日の出をボウリング場の非常階段から見てから、ぼくは県内すべての市役所めぐりに出かける。
ところでぼくは、最前から何者かに尾行されていることに気づいている。


縁もゆかりもない新興住宅団地の見知らぬ家の縁側に、ぼくは座っている。
見知らぬ家の縁側に座っているというのに、ぼくは不思議と落ち着いている。
家の主人らしき男が云う。
「そろそろ帰ってもらえないか?」
どうやらぼくは邪魔らしい、出て行こうと立ち上がると、奥さんらしい女性が云う。
「うちの旦那は市役所が好きで、今日も朝から午前中いっぱい、県内全部の市役所めぐりに付き合わされまして、ほんと、困ったもんです」
主人らしき男は笑って、
「市役所を見ながら食う天ぷらうどん、これがまた格別に美味くってね」
ぼくは、頭のなかで天ぷらうどんの調理過程を一からイメージしはじめる。


新興住宅団地の真ん中にある、つぶれた商店の店先にあるベンチに座っている。
目の前の道を路線バスが通り過ぎる。
車内に数人の乗客の姿が見え、その全員が中学時代、卓球部員だったことを、ぼくは知っている。
と、ポケットのなかで携帯電話が鳴り、見ると着信ではなく、アラームだった。
どうやら、昨日のぼくはこの時間に起床するつもりだったらしい。


終わり






最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (kinntilyann)
2023-05-20 23:04:45
そうして時間と時間は交錯しては離れていく。
目覚めるたびにぼくはぼくでありぼくではない…
返信する
Unknown (painfulnight)
2023-05-20 23:56:16
@kinntilyann うさぎさん、いつもコメントありがとうございます!

いつものように思いつきをひねりまくって書いてみたら、
なんか登場人物である“ぼく”の存在自体が揺さぶられるようなお話になりました
…なんて言うと、いかにも高尚なテーマがあるふうになっちゃいますね^^;
うさぎさんのコメントが、浅い内容に深みを与えてくださいました!
返信する
Unknown (tsukihimesakura)
2023-05-21 09:56:08
おはようございます。

つぎはぎの古いトタン感でてますね✨
ぼくの時間経過感覚が不思議な現実なようで
異空間を彷徨ってる様で面白いです。
返信する
Unknown (painfulnight)
2023-05-21 10:30:42
@tsukihimesakura いつもコメントありがとうございます!

おはようございます!
無性にトタンを描きたくなってしまったのです。
本当は画面全体波型トタンにしようと思ったのですが、木の部分やブロックの部分もつくってみました。
サビはいつもの悪い癖でやり過ぎました^^;
汚くなってしまいましたね。

文は相変わらずで。
ちょっとまとまり過ぎてしまった感じもありますが…もうちょっとムチャクチャにしたいんですけどね。
ちょっとテーマがある感じになってしまいました^^;
返信する

コメントを投稿