めざめていても夢はみる

ぼくはいつまでもさまよいつづける、
夜が明けても醒めない夢のなかを…

恐怖!ちくわぶ男

2016-02-24 22:03:35 | ちょっとしたおはなし
飲み屋ばかりが並ぶ路地裏に少年(8歳)がひとり。



彼はようやく〔ちくわぶ男〕が住んでいると思われるアパートを突き止めた。
この路地の突き当たり……そこにそのアパートがある。
彼は緊張する。身体中が震えている。
2年にも及ぶ地道な調査がいま、身をむすぼうとしている!

ちくわぶ男……
学校帰りの少年少女を誘い、たらふくちくわぶを食べさせる変質者……
無傷で帰ることはできたけれど満腹になってしまった子どもたちは、晩ご飯を食べることができず、親に怒られてしまう。お菓子を食べすぎたんだろう、と。
知らないおじさんにちくわぶをいっぱい食べさせられた、子どもたちは説明するが、そんなこと信じる親はいない。
子どもたちはちくわぶ男が帰り際にくれたステッカーを見せる。ちくわぶ男自らがデザインした手製のステッカーだ。
それでも、親は、どこかで買ったのだろうとけんもほろろ。

そんな話を何人かから聞いたある少年が立ちあがる。
〔ちくわぶ男〕を捕まえる!と。

そして、
いま、
やっと、
その少年は、ちくわぶ男のアパートへ。
一歩一歩、感慨をこめて踏みしめる。


少年をスーツ姿の男たちがとりかこむ。
ちくわぶ男の手先か?
いや……そうではないらしい。
男たちの向こうから、中年の男が現れる。市議会議員、地元の有力者……少年のクラスメイトの父親。
彼は分厚い札束を、少年の足許にぽんと放ると、云った。
「うちの息子と仲直りしてくれ」


そのころ、ちくわぶ男の姿は東京駅にあった。
彼は路線図を見あげつつ、心の内に湧くある期待と希望に、思わず笑みをこぼしてしまう。
「さて、今度はどの町の子どものお腹をちくわぶでいっぱいにしてやろうかな……」








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