いやなことを忘れたくて、酒を呑む。呑みつづける。
身体はふらふら力は抜けて、気持ちは悪く吐き気さえもよおして……なのに、頭はますます冴えてゆく。
外に出てみると、風もなく、あたりは静まり返り、ぼくの心ばかりうるさくざわめく。
すれ違う人、その眼、どこか光のあるその眼……可哀想にと云いつつ、ぼくを嘲り笑っている。そしてぼくを、ぼくの暗い眼をうとんじている。
ぼくはビルとビルの間に逃げ込んで、さらにどんどん酒を呑む。
まったく酔いはしないとわかっているのに……
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