今回はあえて他競技とフィギュアを対比して語っていきます。
その前に、大変興味深い記事をWFSから翻訳して紹介して下さっているブロガー様をご紹介いたしましょう。
プンタアレーナスでエンパナーダ様
「テニスとスケートの違いは…World Figure Skating翻訳」
http://ameblo.jp/puntaarenasdeempanada/entry-11358241298.html
リンクご許可ありがとうございます。多岐にわたる記事は一読と言わず日参の価値ありですので、是非ともお勧めします。
(ご存じの方も多いかと思われますが)
さて、まず対比して語る前に前提として、異なった性質の競技であるということを確認の上、何を基調として語っていきたいのかを
明確にしておきたいと思います。
それは「競技団体が行うルール改定のサイクルと、その目的設定を(どこ)誰においているのか」ということです。
まず、テニスについて語る前に基本的な知識として「テニスプレイヤーを掌握する団体は複数ある」ということを補足しておきたいと思います。
主に話題に上がるのはプロツアーの方ですので、そうなりますと男子は「ATP」女子は「WTA」という団体が選手を掌握しています。
一方、アマチュア選手やオリンピックについての権限を持っているのが「ITF」 国際テニス連盟です。
ややこしい話になりますが、今年終わったばかりのオリンピックについて選手の出場に関して差配を取るのはこちらの方です。
ATPやWTAの方でもツアー扱いになりポイントは付きますが、大きな大会の割にはいわゆる四大大会(グランドスラム)より少ないポイントです。
まずは組織についてまとめたところで、テニスではルール改定はどうなっているのか。それは冒頭でご紹介した
プンタアレーナスでエンパナーダ様の翻訳記事の中にあるように、10年から数十年のスパンが空き、かつ本格導入までには
経過措置があったものと記憶しています(なにぶんずいぶん前なので詳細な記憶ではないですが)
また、改定にあたってはいかなる目的をもってなされる改定かということも同時に説明が明確にあります。例示するとすれば「タイブレーク」です。
(注:ゲームカウント6-6になった段階で、選手のダレを防ぎ時間短縮をはかり緊張感をもってセットポイントを決めるシステム。7ポイント先取で
セットポイントになるが、2ポイント以上の差がない時は2ポイント差になるまで続行する。ここでのセットゲームカウントは7-6となる)
選手の集中力や体力を徒に消費せず、また観客が疲れ切ってしまわないような配慮がなされています。
他には「チャレンジシステム」(注:1セットあたり3回まで、審判の判定に疑問を抱いた場合リプレイを要求できる。成功したら数は減らず失敗したら
(審判の判定通りだったら)残数は減っていく)は誤審の疑いに関して選手が確認を請求でき、選手や観客がきっちりと再確認できるシステムです。
ただしこのシステムは、何処の大会のどのコートでも保障されているものではないことも申し添えておきます。
いずれにしてもテニスにおけるルール改定は頻繁ではなく、かつ目的が明確になっていることがご理解いただけるかと思います。
翻って、フィギュアスケートにおいてはどうでしょうか?
昔はともかく、少なくともこの数年もの間、ルール改定がなされなかった年はなかったと言っていいでしょう。
また、そのタイミングは非常に切迫していて(5月末から6月)、既に振付を終えた選手が改定発表後に振付の見直し(もしくはやり直し)を
余儀なくされることも少なくありません。
そしてルール改定の目的や何をフューチャーしたいのかも推測の域を出ないことがほとんどです。
フィギュアスケートの採点の不明確さは、この頻繁かつ煩雑なルール改定と決して無縁ではないでしょう。
他国のスケート連盟は知りませんが、日本スケート連盟においてはISUが発表するコミュニケーションを翻訳して公式サイトにて
閲覧しているようになっていますが、競技者ではないことを差し引いても分かりにくい記述です。
その上チャンピオンシップ大会出場基準まで、今季は大幅に改定されました。この基準もかなり厳しい設定値です。
また、明文化されておりませんが、同様に今季からコーラーによるエッジジャンプのリプレイも厳格に行っているようです
その裏付けとして、先月から始まっているジュニアグランプリシリーズでのプロトコルにその痕跡が如実に見受けられます。
厳しくしようという意図は痛いほど伝わってきますが、それはいったい何のためでしょうか? そしてそれは誰しも納得しうるものでしょうか?
更にいうならば、これほど頻繁に(ほぼ毎年)いじらなければならないというルールは果たして公平で正しいものなのでしょうか?
テニスにおいても、フィギュアスケートにおいても人間が人間をジャッジするのですから100%の正確さはありえません。
それを踏まえたうえで、ルールを改定するならば選手や観客が納得しうる根拠を明示し、かつやたらと頻繁に改定を重ねないことが
競技の健全化・ひいては選手の進歩を促し観客離れを防止することに寄与することにつながると私は考えます。
頻繁なルール改定は選手や関係者を混乱させ、また改定ばかりで情報において行かれた観客はますます競技に背を向けるでしょう。
フィギュアスケートはもはや、その発祥時のように一部の貴族たちのものではないのです。
選手が主役であり、その目撃者・証人として観客は存在します。ISUと委員たちには競技を愛するすべての人々のために
善良な裏方としてルールの番人としてその職務を全うして頂きたいと切に願います。