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絵じゃないかおじさんぐるーぷ
竹の子の季節には、外れているので安心なのだが、
他人様の私有地に黙って入り、竹を切るには相当な勇気がいる。
けれど、夜もかなりの時間に、
「お宅の竹の根元が光っている。
あの中には、かぐや姫が居るに違いないから、
すぐ一緒に行って切ってみましょう」などと、言ってもごらん。
{こいつ、ええ年して何を血迷っているのか}と、
一笑に付されるのが落ちだ。
場合によっては、拳骨の一発も見舞われるか、警官を呼ばれるか、
そんな所に落ち着くだろう。
ああ、夢もロマンもない奴ばかりだ!
とは言うものの、この私自身が、他人にそんなことを言われると、
頭から信じたりはしないのだから、お相子なのだろう。
サヤカを脇道に隠しライトを消して、周りに注意を払いながら、
竹林の中に踏み込んでゆく。
地上に落ちている笹の葉が、
{わっ、盗人(ぬすっと)!}と叫んでいるようだ。
小さいとき、スイカを失敬したような心境が蘇ってくる。
光る竹への期待と、
泥棒をしているような後めたさが、微妙にブレンドしている。
近づいてよく見ると、下から3段目の節から光が出ていた。
上下の節は、ぼやっーとした明るさだ。
その節の中では窒素が8割近く酸素が2割足らず、
残りを主に二酸化炭素が占めていて、仲良く住み分けしているようだ。
普通の空気より酸素が少なく、二酸化炭素が多いようである。(注1)
元来、不器用な私は、そこで考えた。
目的の節を直接切って、
中に居るはずのかぐや姫を、傷つけてはならない。
つづく