ORGANIC STONE

私達は地球を構成する生命を持った石に過ぎないのですから。

青の予知能力:ユートピア(2003)

2007-04-05 14:34:05 | 映画:SF&ファンタジー
Utopia(2003)

サスペンスなのかそれともSFなのか?はたまた欧州アート系?これほどジャンル別けが難しい映画も久しぶり。クロスジャンルのこの映画は、スペイン・フランス共同2003年の秀作。奇妙でそれでいてスピード感のあるストーリーに、モノクロとカラーの美しい映像を組み合わせたファンタジー&SFの要素をもつサスペンス。

マドリッド郊外の田園都市アランフェスにすむ物静かな青年アドリアン(Leonardo Sbaraglia)。彼には予知能力があり、その才能を世の中のために使うことを教えてくれたのは秘密結社UTOPIAのメンバーでした。このUTOPIAは世界を良い方向に変えていきたいと願う特殊な能力を持つ人々の集まりでしたが、今ではメンバーはほとんど残っていませんでした。夢で、ある女性が殺されるところを頻繁に見るようになったアドリアン。彼はその女性アンヘラ(Najwa Nimri)を助けようと決心します。彼女は南米で教師をしていましたが、現地の武装グループに誘拐され、そこから救い出してくれた過激派自然保護クループに加わっていました。しかし自分たちの理想のためなら殺人もいとわないそのグループの彼女に近づくことは、アドリアン自身も危険にさらされるということ。
そこにアンヘラを探しだそうとする、盲目の行方不明者捜索人エルベ(Tchéky Karyo)が登場します。彼の妻が死んだのはアドリアンの予知のせいだと信じる彼は、この事件にアドリアンが関わっていることを知ると、復讐を誓うのでした・・・アドリアン危うし!

欧州系映画に良くある余分な枝葉も無く、畳み掛けるようなストーリー進行とアクション。緊張感は最後のクライマックスまで続きます。かといって主人公がかっこよくてアクションを見せるわけでは無い。それどころかこの青年、いたって温厚でおとなしく、内気な性格。それに対してアンヘラは自ら戦う勇敢で強い女性です。殴り合いも彼女担当なんですわ・・・最後のアクションは意外にあっさり。ハリウッド的ガンバトルや肉弾戦アクションが無い変わりに、ストーリーで驚かせてくれるかと言うとそうでもないし。途中には派手な場面もありますけどね。また、CGを利用した特殊効果や3D映像がとても綺麗です。アメリカ映画と違う、独特のヨーロッパらしい美意識を感じさせてくれます。特に最後の壁一面の写真が立ち上がる、美しい青のシーン。映画館で見たらすごいだろうなぁああ!って本気で感激しましたよ。(3D好きなんで)

この映画の中で過激派自然保護クループが活動資金としてスペインに持ち込み、また戦いの前に飲むのがアヤワスカ。アマゾンの民が宗教的儀式のためにビジョン・バインと呼ばれる樹液から作る、LSDの10~100倍の幻覚作用をもつ一種の麻薬で非常に貴重なもの。これを飲むと、死を恐れなくなると言われています。映画の中ではこの液体についてほとんど説明はありません。

あなたがヨーロッパ映画好きでも、サスペンス好きでも、SF好きでも、意外に気に入ってもらえそうな作品かな、と思います。風変わりでプリミティヴなアートの遺伝子をもつスペインの血と、「クリムゾン・リヴァー」的センスのいいアクションと美しい映像のフランスの血。両方が上手く合わさった新鮮な作品。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 考察:音楽は人を救えるか | トップ | 天才と変態は紙一重:パヒュ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

映画:SF&ファンタジー」カテゴリの最新記事