PSW研究室

専門職大学院の教員をしてる精神保健福祉士のブログ

最終講義のご案内

2023年02月23日 07時00分48秒 | イベント告知

日本社会事業大学の古屋です。

間もなく65歳を迎えることとなり、今年度末で定年退職となります。

この機会に、専門職大学院古屋ゼミの皆さんのご協力を得て、最終講義を行わせていただきます。

 

タイトルは悩みましたが「PSWとして、ひととして」としました。

サブタイトルとして「精神医療史に自身を重ねて」と加えました。

40年あまり「PSW」を名乗ってきた者として、自分なりに日本の精神医療史を小括できればと思います。

 

関係各位には既に周知済みではありますが、休眠中のブログ「PSW研究室」でもご案内することとしました。

専門職大学院生や学内関係者をはじめ、これまで所縁のあった多くの方々にご参加いただけるようです。

お時間が折り合うようでしたら、ご参加頂ければと思います。

 

最終講義は、対面参集とZoomを使ったオンライン同時配信のハイブリッド型で行います。

この間、多くの方から「オンデマンド配信はないのか?」とのお問い合わせをいただきました。

この度、実行委員会の皆さんのご協力により、後日限定配信も行うことが決まりましたのでお知らせします。

 

当日の視聴は無理でも「オンライン参加」にご登録いただければ、オンデマンドで後日視聴可能です。

1500円の有料にはなりますが、登録してくださった方々には後日「資料集」も郵送させていただきます。

「講義資料」とともに「小文集」「業績一覧」などを収載していますので、合わせてご笑覧ください。

 

なお、申し訳ないですが当日のサンシャインでの「会場参加」については、もう「満員御礼」状態のようです。

コロナ蔓延の中で本当にできるのか心許なかった「懇親会」もなんとか開催できそうで、ありがたいことです。

早くに申し込んでいただいた皆さまに、こころから感謝申し上げます。

 

詳しくはゼミ生が作成してくれたチラシをご覧ください。

参加申込みは、PeatixのQRコードから簡単にアクセスできます。

3月4日(土)締切となりますので、よろしくお願いいたします。

 

古屋龍太 拝

 

 


医療保護入院の廃止に向けた議論

2022年03月20日 08時01分59秒 | 精神保健福祉情報

精神医療国家賠償請求訴訟研究会事務局長の古屋龍太です。

諸々の仕事に追われ、5か月間もブログ記事更新がストップしていました。

今回、精神医療政策をめぐって、霞が関の動きが加速していますので、コメントしておきます。

 

ご存じの方が多いと思いますが、厚生労働省では昨年10月より、以下の検討会が開かれています。

(以下をクリックすると、厚労省のホームページに飛びます)

検討会⇒地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

 

去る3月16日(水)には、第7回会合が開かれました。

精神科入院時の身体拘束やアドボケイト(意思決定支援)、退院後支援とともに、「医療保護入院の廃止・縮小」が議論されました。

約4時間にわたって、各関係団体を代表する構成員による熱い議論が交わされました。

以下で、その録画内容が限定公開されていますので、誰でも視聴することが可能です。

【第7回 地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会】

ユーチューブ⇒https://youtu.be/-HOlBQJTDQc

 

資料1で、検討会の今後の日程が示されいます。

かなり結論を急いで、急ピッチで検討会が進むことが示されています。

資料1⇒Microsoft PowerPoint - (資料1)本検討会の今後のスケジュールについて (mhlw.go.jp)

 

 結論が急がれる背景には、障害者権利条約に係る国連の対日審査が6月22日に迫っていることがあります。

日本政府の報告書では、「基本的な人権は憲法の下で保障されている」と述べていましたが。

障害者権利条約に係るDPI日本会議等のパラレルレポートは、国連に日本の精神障害者の置かれた状況を伝え、相当に説得力がありました。

国連からすれば、世界に例のない「精神科病院大国」である日本政府の政策には、懐疑的・批判的にならざるを得なかったのでしょう。

今回の審査で、国連からは「医療保護入院の廃止・縮小に向けた具体策とスケジュールの提示」が求められています。

 

ご存じのように、医療保護入院者は、日本の精神科入院患者の半数を占めています。

しかし、精神保健指定医1名の診察と「家族等」の同意だけで、患者を強制入院できる制度は、日本にしかありません。

医療保護入院の廃止・縮小に向けた論点整理の資料は、以下の資料2をご覧ください。

(お忙しい方は、この資料の10~16ページだけでも、ご覧ください)

資料2⇒000913259.pdf (mhlw.go.jp)

なお、全国「精神病」者集団の桐原尚之さんからも、今回の会議に合わせて「医療保護入院の論点整理」と題する資料が提出されています。

参考資料1⇒000913260.pdf (mhlw.go.jp)

 

上の資料2の12ページ「基本的考え方」で出てくる文言が、先日の精神国賠裁判(第6回口頭弁論)で被告国側が出した反論書とダブり、個人的には可笑しくなりました。

厚労省は「基本的には将来的な廃止も視野に」と記していますが、国連の対日審査では「撤廃」を前提とした実効的な方策が求められています。

そのための方策の方向性で掲げられている内容(12ページの視点①②③)は、目的と方法にギャップがあり、論点がズレている感じがします。

 視点①:入院医療を必要最小限にするための予防的取組の充実

 視点②:医療保護入院から任意入院への移行、退院促進に向けた制度・支援の充実

 視点③:より一層の権利擁護策の充実

この視点では、医療保護入院の「縮小」は図られても「撤廃」には至りません。

厚労省が、背水の陣で落としどころを探った、苦肉の策なのでしょう。

担当官僚の皆さんのご苦労がうかがわれ、気の毒にすら思われます。

 

しかし、厚労省の方々には「この方策で、国連の対日審査に堪え得る回答となっていますか?」と尋ねたいところです。

厚労省はこれまで「大人の事情」により、常に業界団体の日本精神科病院協会に忖度しながら政策を進めてきました。

その結果、日本は世界の精神病床の18%のシェアを占める(WHOのレポート)世界一の「精神科病院大国」になりました。

そして、何十万人という長期社会的入院患者と死亡転帰患者を生み、「収容所列島」として人権後進国ニッポンの象徴となってきました。

その厚労省も、国際的に拘束力のある「条約」には抗しきれないようで、対日審査に堪え得る準備を迫られているのでしょう。

国内の当事者の発言には耳を傾けないのに、外圧には相変わらず弱いんだなと思います。

世界の常識に沿って、日本の「非常識」を変える好機ともなる、この検討会の指し示す方針は、とても重要なものになります。

 

個人的には、医療保護入院を廃止するためにも、ベッドがある限りは患者も減らないと考えています。

この機会に、実効性のある病床削減戦略をセットする必要があると考えています。

日精協は認めないでしょうし、厚労省もそこには手を突っ込みたくないのが本音でしょう。

しかし、きっと精神医療ユーザーである当事者たちは大いに支持してくれるはずです。

そして、ようやく「脱施設化」に取り組み始める日本国を、国連も評価してくれるはずです。

この障害者権利条約の対日審査をめぐる動向が、精神医療国賠の裁判にも、追い風となることを祈っているところです。

 

参考

・障害者権利条約に係るパラレルレポートに関する記事は、ネット検索をすると結構ヒットします。

  ⇒日弁連・DPI日本会議・日本障害フォーラム・全国精神病者集団等

・パラレルレポートについての、分かりやすい解説は以下の文献をご覧ください。

  ⇒佐藤久夫(2020)障害者権利条約パラレルレポート.精神医療(第4次)第99号;99-106

・医療保護入院の問題点等については、以下の書籍が結構まとまっていると自負しています。

  ⇒古屋龍太・太田順一郎編(2020)特集:医療保護入院―制度の廃止に向けて.精神医療(第4次)第97号;3-93

・アドボケイトについては、以下の書籍が分かりやすくまとまっています。

  ⇒太田順一郎・大塚淳子編(2021)特集:精神科医療における権利擁護(アドボケイト).精神医療(第5次)第2号;3-74

 

※今回の記事は、精神国賠研究会会員メーリングリストに3月19日に配信した内容と、一部重複することをお断りします。

 


「精神医療」誌で精神国賠の特集号

2021年10月31日 08時38分45秒 | 出版案内

第5次「精神医療」編集委員の古屋です。

編集責任を担った第3号が刊行されました。

「特集:精神医療国家賠償請求訴訟―その背景と現段階」です。

精神国賠をめぐって、初めての本が出来上がりました。

 

本来は、10月20日発刊予定だったのですが。

諸々の事情により、少し刊行が遅れてしまい、大変お待たせしました。

精神国賠の提訴に至る経過、法理論構成、課題が、この1冊で分かります。

精神国賠をどのように考えるか、多様な立場の方々に執筆していただきました。

 

まず、冒頭の座談会では、精神国賠原告の伊藤さん、家族の野村さん、

ジャーナリストの織田さん、精神国賠研代表の東谷さん。

弁護士では、精神国賠の原告弁護団の長谷川敬介さん。

同じく弁護士で、ハンセン病国賠訴訟弁護団の八尋光秀さん。

ジャーナリストで、神奈川精神医療人権センターの佐藤光展さん。

精神保健福祉士としては、北海道十勝の門屋充郎さん。

当事者では、東京で「精神障害当事者会ポルケ」を主宰の山田悠平さん。

精神科医としては、責任編集を一緒に担当した多摩あおば病院の中島直さん。

精神科看護では、今は訪問看護に取り組む有我譲慶さん。

 

とても贅沢な顔ぶれで、それぞれの切り口に唸らされます。

その他の特集以外の記事や連載も、例によって盛り沢山です。

お忙しい中、執筆にご協力いただいた皆さま、ありがとうございました。

願わくば、多くの方に手に取り目を通していただきたい1冊です。

(自身の巻頭言は、ちょっと力が入り過ぎかもと反省していますが)

 

精神医療(第5次)第3号

「特集:精神医療国家賠償請求訴訟―その背景と現段階」

責任編集:古屋龍太・中島直

 

【 巻頭言 】

○精神医療国家賠償請求訴訟が問う国家の不作為

-問われる精神医療政策の歴史、この国のかたちと私たち-

古屋龍太

【 特集 】精神医療国家賠償請求訴訟-その背景と現段階-

○座談会:精神医療国家賠償請求訴訟の位置と意義-ここまでとこれから-

伊藤時男・織田淳太郎・野村忠良・東谷幸政・古屋龍太

○精神国賠原告弁護団の立場から

長谷川敬祐

○ハンセン病国賠訴訟の場合

八尋光秀

○患者たちはもう黙っていない!!

精神医療ユーザーが創る精神医療の未来

佐藤光展

○国賠 そこまでいかなければならなかった日本の精神医療

~きわめて私的な体験をもとに精神保健福祉士として考える~

門屋充郎

○問われるべき人権と精神医療

~個人の内面化と社会の規範化を見据えて~

山田悠平

○精神医療国家賠償請求-意義、臨床との関連、疑念-

中島 直

○尊厳なき精神医療政策が生む人生被害

有我譲慶

 

【 視点63 】

○精神医療に期待されるヤングケアラーへの対応

森田久美子

【 視点 】精神現象論の展開〈14〉

○私たちは〈時代の子〉(3)

森山公夫

【 連載エッセイ 】バンダのバリエーション〈3〉

○やや節操をかいたバンダ(その 3)

塚本千秋

【 連載 】リエゾン精神看護事例検討会〈3〉

○コロナ禍におけるコンサルテーション

-covid19クラスターを体験して-

山崎陽子・中安隆志

【 リレー連載 】精神医療人権センターから〈3〉

○大阪精神医療人権センターから

藤原理枝

【 書評 】

○岡村正幸編著(ミネルヴァ書房)

『精神保健福祉システムの再構築 非拘束社会の地平』

國重智宏

【 紹介 】

○古屋龍太・大島巌編著(ミネルヴァ書房)

『精神科病院と地域支援者をつなぐ みんなの退院促進プログラム

~実践マニュアル&戦略ガイドライン』

添田雅宏

【 投稿 】

○三枚橋病院私史

~歴史と向かい合い、検証し、語り継ぐために~(前編)

中田 駿

 

○編集後記

中島 直

 

編集:第 5 次『精神医療』編集委員会

https://www.facebook.com/seishiniryou05/

発行:M.C.MUSE Inc.

https://www.mcmuse.co.jp/psychiatric/

価格:1,870円(税抜価格1,700円)

ISBN:978-4-904110-26-3

 

※全国の書店、Amazonや楽天等のネットから注文できます。

※定期購読(1年単位)ご希望の方は、下記事務局にご連絡ください。

 第5次『精神医療』編集委員会事務局 Mail:tachikawa-ss@nifty.com


奈良での精神国賠学習会を限定配信

2021年10月19日 15時30分56秒 | イベント告知

日々慌ただしく仕事に追われ、1ヶ月半もブログの更新ができていませんでした。

この間のトピックスを、一つ記すとすると、奈良にお邪魔して学習会がありました。

「精神医療国家賠償請求訴訟を応援する奈良県民の会」の主催です。

奈良県は、全国に先駆けて、精神国賠の横断的組織を立ち上げてくれました。

 

当日は、会場に20名、Zoomで50名の方が参加してくれました。

質疑応答を含めて、みっちり3時間、精神国賠をめぐって話ができました。

当事者・家族の方々から、多くの質問や意見をいただくことができました。

いただいたご意見は、今後の精神国賠の運動に、ぜひ活かしていきたいと思います。

 

若い精神保健福祉士の方が、多数参加してくださったことも印象的でした。

「知ることから始めよう」というキャッチーなコピーゆえかも知れませんが。

各現場でもやもやとした葛藤を抱えながら、日々の仕事をしているためでしょうか。

「知る」ことから、「おかしい」ことを言葉にしていく第一歩になればと願います。

 

当日のZoom録画を、限定公開でYouTube配信していただけるそうです。

ちょっと長丁場ですが、興味関心のある方は、下記にお問い合わせください。

当日使用の報告資料は、身近な方との勉強会等での使用は差し支えありません。

ただ、裁判に関わる資料も含まれますので、ネット等での拡散はご遠慮ください。

 

事務局の刀根さんはじめ、関係者の皆さま、本当にありがとうございました。

裁判は今年始まったばかりで、結構長い道のりになるかと思います。

各地で、奈良県と同様の取組みが行われれば、大きな動きになります。

関係者の意識が変わるムーブメントづくりを、ご一緒に追求しましょう。

 

※画像は、平城宮跡地に復元された朱雀門

精神医療国家賠償請求訴訟を応援する奈良県民の会 学習会

長期入院を問う!

精神医療国家賠償請求訴訟とは何か?

~知ることから始めよう~

★☆YouTube 限定配信します☆★

2021 年 10 月3日、精神医療国家賠償請求訴訟研究会事務局長の古屋龍太氏を話題提供者に招いて長期入院の問題、精神医療の歴史について学習会を開催しました。

大好評だったため限定配信します。

日頃インターネットをされていれば、簡単に視聴できますので、是非お申し込みください。

 

主催:精神医療国家賠償請求訴訟を応援する奈良県民の会

お問い合わせ先:刀根治久 seisinkokubaiouennaranokai@yahoo.co.jp

日時:令和 3 年 11 月1日(月)~ 11 月 15 日(月)まで

申込締め切り:10 月 29 日(金)

話題提供者 古屋龍太氏 (日本社会事業大学 教授)

場所:YouTube

申し込みいただいた方に配信の数日前に URL をお伝えします。

参加費:無料

お申込みは seisinkokubaiouennaranokai@yahoo.co.jp に①所属、②氏名、③メール

アドレスをお送りください。

お申込みいただいた方には配信数日前に事務局より返信させていただきますのでご確認ください。


CALL4の公共訴訟ポスター

2021年09月05日 20時08分37秒 | イベント告知

精神医療国家賠償請求訴訟研究会、事務局長の古屋です。

皆さんは、公共訴訟の「CALL4(コール・フォー)」をご存じでしょうか?

公共訴訟は、この国で起きている「おかしいこと」をなくすための裁判です。

CALL4は、公共訴訟を支援するクラウドファンディングサイトです。

 

CALL4は現在、精神国賠訴訟の1,000万円募金に協力してくれています。

他に、入管死亡事件訴訟、同性婚訴訟、コロナ特措法違憲訴訟等に取り組んでいます。

原告は一人でも、この国の「おかしいこと」を正すため、静かに戦っています。

原告を孤立させず、個人の問題ではなく、この国で暮らす者の問題として考える。

社会を変えるために声をあげるプラットフォームを、CALL4は準備してくれました。

 

そのCALL4からの呼びかけを、この「PSW研究室」でも拡散させていただきます。

公共訴訟の裁判期日を伝えるポスターが、駅の広告板に掲載を拒否されました。

精神国賠の「39年間、精神病院に閉じ込められた。」のポスターもお蔵入りです。

霞ヶ関駅の掲示板の空白部に、インパクトのあるポスターが貼られる予定だったのに。

9月27日(月)16時~東京地裁での第4回期日の周知もできず、大変残念です。

 

CALL4としては、駅へのポスター掲出はできなくても、ネットで広く伝えたいそうです。

ホームページに掲載の各種ポスター画像は、SNS等で拡散して構わないそうです。

以下、記事を貼り付けておきますが、詳しくはCALL4のサイトでご覧になってください。

⇒ 「司法をひらく」ポスターは幻か|公共訴訟のCALL4(コールフォー)

 

「司法をひらく」ポスターは幻か―日本初の駅貼り裁判告知をやろうとしたけれど

たぶん日本初、公共訴訟の期日告知ポスター

選挙があります、投票しましょう、というポスターが選挙になるとあちこちに貼られます。

しかし、本来選挙と同じくらい重要な、制度を作ったり変えたりするための公共訴訟については、いつどこで行われているかほとんど知られていません。

公共訴訟の情報ももっと広く知られるべきだ、と考え、訴訟期日を知らせる告知ポスターを作って、駅に貼ることを計画しました。

まずは東京地方裁判所・高等裁判所がある東京メトロ霞ヶ関駅をこんな風に訴訟告知ポスターでジャックして、これを直接見た人、それがSNS等を経由して伝わった人に、こうした公共訴訟の存在を知ってもらい、期日に足を運んでもらおうと考えました。

幻のポスターに

しかし、残念ながら、これは実現できませんでした。

入稿したのですが、東京メトロから、これは意見広告であり、また係争中の案件に該当するために、掲載はNGと言われてしまい、色々試行錯誤したのですが、結果掲載できませんでした。

「#私たちは声をあげる」のCALL4についてのポスターだけが許可され、貼られています。

<実際の霞ヶ関駅構内のポスターの様子>

確かに、どのようなメッセージは掲載して、どのようなメッセージは掲載しないのか、その判断基準は簡単ではないかもしれません。

しかし、例えば国民的に大きな議論となるオリンピックを推進し協賛するメッセージは掲載されるのに、今回のようなメッセージは掲載されないというのは公平な基準かという疑問もあります。

結果的に多数意見を形成していないと、マスに届く場でメッセージを告知することも制限される、ということになるのではなかろうかといったことも考えます。

もしかしたら、これも、この社会で「声をあげる」ことの難しさを象徴する出来事なのかもしれません。

仕組みの問題、経済的・労力的負担、同調圧力、あるいは手段へのアクセス。

声をあげる、ことには幾多もの困難が伴います。

だからこそ、私たちは、声をあげた人たちを、これからも応援していきたいと思います。

やっぱり幻にしないために

たぶん日本初、公共訴訟の期日告知ポスターを東京メトロの霞ヶ関駅に貼り出すという計画は幻となってしまいました。

悔しいなぁ、数日そう思っていましたが、ポスター自体を幻にしなくてもいいじゃないかと思いました。

そう、幻のポスター、駅には貼れませんでしたが、皆さんのSNSには貼れます。

皆さんがシェアしてくれたら、霞ヶ関駅に掲示した時より、もっと多くの人に届かせることができるかもしれません。

皆さん、是非シェア・リツイートにご協力をお願いします!

一枚一枚のポスターはこのページの一番下部から画像保存できます。

良識の範囲でご自由に活用ください。


日本精神保健福祉士協会全国大会で「社会的入院を考える」

2021年08月15日 11時38分23秒 | イベント告知

日本精神保健福祉士協会相談役の古屋です。

昨年延期になった「第56回全国大会・第20回学術集会」が開催されます。

但し、厳しいコロナの蔓延状況もあり、やむなく全面オンライン大会となりました。

 

直接、札幌に行けないのは残念ですが、全国から気軽に参加が可能となりました。

対面参集では、同一時間帯に一つの企画・分科会にしか参加できませんが。

オンライン大会では、選択したプログラムのリアルタイム配信だけでなく、

すべてのプレ企画・分科会の視聴が、後日オンデマンドで可能になりました。

ここまで準備してくださっている、北海道の皆さんのご努力に感謝いたします。

 

今回、大会前日(9月9日)の「プレ企画」で、シンポジウムを開催します。

「当事者の声から社会的入院を考える」ために、精神国賠原告の伊藤さんが登場です。

サブタイトルは「いま精神保健福祉士にできること」としました。

専門職を名乗る精神保健福祉士に問われていることに、焦点を当てたいと思います。

社会的入院を、患者・弁護士・ソーシャルワーカーの立場から、皆で考えます。

多くの精神保健福祉士の方に参集いただき、一緒に考えてほしいと願っています。

 

シンポジスト・司会・開催趣旨、事前参加方法等の概要は、下記をご覧ください。

当日、パソコンもしくはスマホの画面上でお目にかかりましょう。

炎暑酷暑とコロナの爆発的な蔓延が続きますが、くれぐれもご自愛ください。

イベントの告知がてら、残暑のお見舞いとさせていただきます。

 

日本精神保健福祉士協会第56回全国大会・第20回学術集会(北海道大会)

■プレ企画8

当事者の声から社会的入院を考える~いま精神保健福祉士ができること

2021年9月9日(木)15:00~17:00(120分)ライブ配信

その後オンデマンド配信 10月11日まで

 

【シンポジスト】

古屋 龍太(東京・日本社会事業大学)

伊藤 時男(群馬・当事者)

東谷 幸政(長野・精神医療人権センター)

長谷川敬祐(東京・弁護士)

門屋 充郎(北海道・十勝障がい者支援センター)

【司会】

松本真由美(北海道・日本医療大学)

 

【趣旨】

私たち精神保健福祉士は、「社会的入院の解消」を使命として国家資格化されました。以来四半世紀が経ちますが、未だに精神科病院には多くの長期社会的入院者が存在し、高齢化した死亡退院者が増えています。世界でも特異な日本の状態を、どのように考えれば良いのでしょうか。

今回のプレ企画でお話しいただく当事者は、伊藤時男さん(70歳)です。入院期間は累計45年に及び、東日本大震災による福島第一原発事故を契機に、避難先の病院から退院したサバイバーです。これまでにドキュメンタリー番組等でも、長期社会的入院の経験者として取り上げられています(伊藤さんの細かな入退院経過については、『精神保健福祉』通巻125号92~94頁の報告をご覧下さい)。

伊藤さんは「これ以上自分のような人が生み出されてはいけない」「長期入院してる人たちが退院できるようになって欲しい」という思いで、精神医療国家賠償請求訴訟の原告に立つことを決意しました。退院を許されないまま無念を抱えて自死していった仲間たちの存在が、今も伊藤さんの背中を押しています。

今回の裁判は、長期社会的入院者を容易に生む構造を長年にわたって放置し、実効ある政策転換・法改正・予算措置を取らなかった国の不作為責任を問うものです。2021年3月から始まった裁判で、被告国は原告側の訴える内容について、「不知」もしくは「否認」を表明し、請求棄却を求めて全面的に争う姿勢を示しました。

しかし、今回の裁判で問われているのは国だけではありません。全国組織として「精神障害者の社会的復権」を掲げてきた精神保健福祉士自身も問われています。精神保健福祉士はそれぞれの現場で試行錯誤しながら、退院促進・地域移行支援に取り組んできました。一方で、諸外国にはない日本の現行の法制度を追認し、その担い手として「仕方がない」と諦めてしまってはいないでしょうか。日本の精神医療を本気で変えようと裁判に立った当事者たちに、精神保健福祉士はどのように応えていけるのでしょうか。

退院・地域移行支援を主要な業務として担ってきた精神保健福祉士の存在意義が、いま問われています。「不知」もしくは「否認」で済ますことはできません。

長期社会的入院を経験した伊藤さんの訴えをもとに、長年にわたる国策上の不作為責任を問う裁判の争点を踏まえて、私たち精神保健福祉士が果たすべき責任と使命を、参加者とともに考え共有できればと願っています。

 

■事前登録・参加申込が必要(当日参加は不可)

早割締切:2021年08月22日(日)まで

通常締切:2021年09月05日(日)まで

WEBの申込フォームから送信もしくはFAX申込書を東武トップツアーズ札幌支店へ送信

 

■参加費

○プレ企画のみ参加の場合:

構成員・非構成員ともに2,000円(学生は1,000円)

○プレ企画+全国大会参加の場合:

構成員は早割で8,000円、通常で10,000円

非構成員は早割で11,000円、通常で13,000円

 

■詳しいプログラム・申し込み方法等は、ホームページをご覧ください。

⇒ 第56回公益社団法人日本精神保健福祉士協会全国大会・第20回日本精神保健福祉士学会学術集会WEBサイト (jamhsw.or.jp)


第4次『精神医療』のバックナンバー

2021年08月07日 17時34分23秒 | 出版案内

精神医療編集委員の古屋です。

この場で、第4次『精神医療』最終号と第5次『精神医療』創刊号のご紹介をしましたが。

合わせて、第4次『精神医療』のバックナンバーの紹介もさせていただきます。

 

なお第4次『精神医療』については、もちろん今もネットを介して購入できますが。

ネット販売は運営会社の取り分が大きく、出版社の収益を圧迫しています。

(今は、アマゾンも日本にちゃんと税金を払うようになりましたけど)

発行元の批評社のホームページを見ると、過去の内容や在庫状況もわかります。

⇒ 批評社 : [雑誌]精神医療 (hihyosya.co.jp)

 

また、編集委員会の事務局に、直接注文・直接配送も可能です。

各号ともだいたい在庫は揃っていますので、以下の連絡先にご一報ください。

代金は、到着後に郵便振替用紙での後払いになります。

〒190-0022東京都立川市錦町3-1-33 

にしの木クリニック内「精神医療」編集委員会

メール:tachikawa-ss@nifty.com

 

※画像は第95号(特集:PSWの〈終焉〉)の表紙。

 いろいろ物議を醸したこの号は、雑誌としては異例の増刷となりました。

第4次『精神医療』第90号~99号総目次

各号定価1,870円(本体価格1,700円+税)

 

■第90号(2018年4月)

特集◉少年法改悪に反対する

木村一優+高岡 健[責任編集]

[巻頭言]少年は守られなければならない(木村一優)

[鼎談]少年法適用年齢引下げをめぐって (川村百合+芹沢俊介+[司会]高岡健)

成年年齢引き下げと少年司法(岩本朗)

児童精神医学の観点から「18歳問題」を考える(富田拓)

少年刑法犯の動向と少年法の改正論議――少年法の改正はいま必要なのか ?(土井隆義)

少年法適用年齢引き下げに関する一考察(山田麻紗子)

少年法適用年齢について考える――精神鑑定の経験から(木村一優)

少年法適用年齢をめぐる法的・刑事政策的問題 (武内謙治)

[コラム+連載+書評]

[視点―51]障害者の権利に関する条約の今(関口明彦)

[連載 異域の花咲くほとりに 6]妄想について(2)(菊池孝)

[連載 神経症への一視角 3]神経症から不安障害へ――神経症の軽症うつ病への取り込み(1)(上野豪志)

[連載 2]精神現象論の展開(2)(森山公夫)

[コラム]「教える」ことのためらい(近田真美子)

[紹介]『ハイパーアクティブ:ADHD の歴史はどう動いたか』マシュー・スミス著、石坂好樹・花島綾子・村上晶郎訳[星和書店刊](高岡健)

[投稿] 発達障害における「グレーゾーン問題」に関する私見(石井卓)

[編集後記](高岡健)

 

■第91号(2018年7月)

特集◉働くことの意義と支援を問う

大塚淳子+古屋龍太[責任編集]

[巻頭言]真に多様な働き方が実現できる社会づくりに向けて(大塚淳子)

[座談会]働くことの意義と支援を問う――就労支援の商業化の中で(藤井克徳+平野方紹+大塚淳子+[司会]古屋龍太)

障害者就労支援制度における A 型事業の課題と可能性を考える(久保寺一男)

大量解雇問題から今、思うこと(多田伸志+武内陽子)

基本的人権と労働の権利の意義を問う(中村敏彦)

障害福祉サービスの就労支援と就労の意義(森克彦)

私たちは「誰のために」「何のための」支援をするのか(山本美紀子)

精神障害者の就労支援と精神医療の相互支援について――実際にどのような連携が可能か(西尾雅明)

[コラム+連載+書評]

[視点 52]生活保護引下げからこの国の姿を見る(永瀬恵美子)

[連載 異域の花咲くほとりに 7]人格障害について(菊池孝)

[連載 神経症への一視角 4]神経症から不安障害へ――神経症の軽症うつ病への取り込み(2)(上野豪志)

[連載 3]精神現象論の展開(3)(森山公夫)

[コラム]今、高等学校で求められる支援(富島喜揮)

[書評]『社会的入院から地域へ――精神障害のある人々のピアサポート活動』加藤真規子著[現代書館刊](砂道大介+桑野祐次)

[紹介]『私たちの津久井やまゆり園事件――障害者とともに〈共生社会〉の明日へ』堀利和編著[社会評論社刊](高岡健)

[編集後記](古屋龍太)

 

■第92号(2018年10月)

特集◉拘束

阿保順子+中島 直[責任編集]

[巻頭言]拘束と医療(阿保順子)

[座談会]精神科病院における拘束(長谷川利夫、岡崎伸郎、阿保順子、[司会]中島直)

患者中心の精神医療をめざして(加藤真規子)

隔離・拘束を最小化するための 4つの視点(竹端寛)

拘束と実践(中島直)

高度急性期医療の場での抑制しない看護へのチャレンジ(小藤幹恵)

身体拘束を限りなくゼロに近づけるために――介護・福祉の視点から(石川秀也)

拘束――迷う判断と目標のあり方(有本慶子)

[コラム+連載+書評]

[視点 53]入院患者の権利を守るために、本当に必要なこと――日精協「アドボケーターガイドライン」のまやかしを越えて(原昌平)

[連載 異域の花咲くほとりに 8]精神療法と精神分析について(菊池孝)

[連載 神経症への一視角 5]神経症から不安障害へ――当事者の視点から疾患概念を再考する(上野豪志)

[連載]精神現象論の展開 4(森山公夫)

[コラム]クライエントの希望に沿った支援を継続するために(知名純子)

[書評]『あたらしい狂気の歴史――精神病理の哲学』小泉義之著[青土社刊](浅野弘毅)

[紹介]『保安処分構想と医療観察法体制――日本精神保健福祉士協会の関わりをめぐっ

て』桶澤吉彦著[生活書院刊](高木俊介)

[編集後記](中島直)

 

■第93号(2019年1月)

特集◉拘束旧優性保護法と現代

高岡 健+犬飼直子+岡崎伸郎[責任編集]

[巻頭言]優生思想のゆくえ(高岡健)

旧優生保護法─―被害者が声を上げることが社会を変える力(新里宏二)

障害を持つ女性の立場から(安積遊歩)

優生保護法被害の謝罪と賠償、そして検証と再発防止について(桐原尚之)

優生思想と日本の精神医療(高岡健)

優生保護法から母体保護法への改正の経緯――法改正に至る背景と経過、そして今後の課題(朝日俊弘)

[インタビュー①]旧優生保護法と精神医療(岡田靖雄+[聞き手]太田順一郎)

[インタビュー②]旧優生保護法と社会(市野川容孝+[聞き手]犬飼直子)

[コラム+連載+書評]

[視点 54]国連恣意的拘禁作業部会への個人通報について(山本眞理)

[コラム]入院の痛みと日常的管理処遇(篠原由利子)

[連載 異域の花咲くほとりに 9]倫理について(菊池孝)

[連載 神経症への一視角 6]神経症から不安障害へ――当事者の視点から疾患概念を再考する(上野豪志)

[連載]精神現象論の展開 5(森山公夫)

[書評]『永遠の道は曲りくねる』宮内勝典著[河出書房新社刊](阿保順子)

[特別集中連載 1]袴田巌さんの主治医になって(中島直)

[編集後記](岡崎伸郎)

 

■第94号(2019年4月)

特集◉措置入院

太田順一郎+中島 直+岡崎伸郎[責任編集]

[巻頭言]措置入院(太田順一郎)

[座談会]措置入院(平田豊明、中島直、大塚淳子、太田順一郎)

精神保健福祉法の医療基本法(仮称)への統合的解消と治療同意の意味(池原毅和)

措置入院者の退院後支援――医療機関の精神保健福祉士の立場で(澤野文彦)

新たな保安処分推進派イデオローグの誕生を論評する(富田三樹生)

措置入院制度の現状について(瀬戸秀文)

精神障害者の退院後支援について(田所淳子)

[コラム+連載+書評]

[視点 55]この国から看護が消滅してしまう――「特定行為に係る看護師の研修制度」がもたらすもの(東修)

[連載 異域の花咲くほとりに 10]インフォームド ・ コンセントについて(菊池孝)

[連載 神経症への一視角 7]神経症から不安障害へ――当事者の視点から対処行動を自己治療として見直す(上野豪志)

[連載 6]精神現象論の展開 6(森山公夫)

[コラム]精神障害者の死に場所をめぐり思うこと(木村亜希子)

[紹介]『「当たり前」をひっくり返す―バザーリア・ニイリエ・フレイルが奏でた「革命」』竹端寛著[現代書館刊](大塚淳子)

[特別集中連載 2]袴田巌さんの主治医になって(中島直)

編集後記(中島直)

 

■第95号(2019,7)

特集◉ PSW の終焉─精神保健福祉士の現在

古屋龍太+西澤利明+大塚淳子[責任編集]

[巻頭言]PSW の〈終焉〉――精神保健福祉士はMHSW として未来を拓く ?(古屋龍太)

[座談会]精神保健福祉士の現在――ソーシャルワークの危機(大野和男+藤井達也+西澤利朗+相川章子+[司会]古屋龍太)

PSW の終焉と MHSW の到来――未完の社会的復権と、“social” の岐路(吉池毅志)

業務ではなく、ソーシャルワーク実践を!――業務指針への批判(井上牧子)

PSW が PSW でなくなる時(富島喜揮)

2017年改正法案に対する日本精神保健福祉士協会の関与の所為とその妥当性について(樋澤吉彦)

PSW の拠るべき価値を振り返る――見過ごされてきた社会のありようを問い続ける専門職として(鶴田啓洋)

PSW の新たなステージを前に(鈴木詩子)

PSW の価値――職業倫理とは何だったのか(桐原尚之)

精神保健福祉士は変革者になれるか(原昌平)

精神保健福祉士に期待する、社会正義を貫くソーシャルワーク専門職へ(小川忍)

[コラム+連載+書評]

[視点 56] 障害者雇用水増し問題を考える――その背景と今後の課題(増田一世)

[連載 異域の花咲くほとりに 11]家族について(菊池孝)

[連載 神経症への一視角 8]神経症から不安障害へ――統合失調症に対する隔離・拘禁の反照としての不安障害のスティグマ(上野豪志)

[連載 7]精神現象論の展開(7)(森山公夫)

[コラム]8年が経過した被災地で思うこと――普通に生活(作業)をすることが元気

につながる(香山明美)

[紹介]『急性期病院で実現した身体抑制のない看護―金沢大学附属病院で続く挑戦』小藤幹恵編[日本看護協会出版会刊](東修)

[特別集中連載 3]袴田巌さんの主治医になって[第 3回](中島直)

[編集後記](大塚淳子)

 

■第96号(2019年10月)

特集◉医療観察法~改めて中身を問う

中島 直+岡崎伸郎[責任編集]

[巻頭言] やはり、医療観察法は廃止するしかない(中島直)

[座談会] 医療観察法~改めて中身を問う(池原毅和 + 稲村義輝 + 中島直 +[司会]太田順一郎)

医療観察法と精神保健福祉法の根本問題 刑事手続と治療提供を再考する(吉岡隆一)

医療観察法再考――刑務所敷地内「指定入院医療機関」設置計画に寄せて(伊藤哲寛)

医療観察法をめぐる裁判所の判断(池田直樹)

医療観察法における「社会復帰」の意味について――『本法における医療』継続の担保措置としての『本法における医療』」の継続的提供状態としての「社会復帰」(樋澤吉彦)

協力医活動から見た医療観察制度の問題(大久保圭策)

医療観察法と人権をめぐる現場から(有我譲慶)

[コラム+連載+書評]

[視点 57] 再び個別精神科病院の情報公開を !――630調査変更後の状況(木村朋子)

[連載 異域の花咲くほとりに 12] 積み残した問題、姉歯先生の思い出そして異域の花(菊池孝)

[連載 8] 精神現象論の展開(8)(森山公夫)

[コラム]入院依頼を通じて感じる地域支援の質(新井山克徳)

[書評]『なぜ、日本の精神医療は暴走するのか』佐藤光展著[講談社刊](氏家靖浩)

[紹介]『急性期治療を再考する』統合失調症のひろば編集部編[日本評論社刊](高木俊介)

[特別集中連載 4] 袴田巌さんの主治医になって 最終回(中島直)

[編集後記](岡崎伸郎)

 

■第97号(2020年1月)

特集◉医療保護入院――制度の廃止に向けて

古屋龍太+太田順一郎[責任編集]

[巻頭言]医療保護入院の廃止に向けて――日本特有の強制入院制度を「やむを得ない」で終わらせないために(古屋龍太)

[座談会]医療保護入院をめぐって――矛盾の巣窟の強制入院制度(八尋光秀 + 竹端寛 + 太田順一郎 +[司会]古屋龍太)

医療保護入院問題の原点に立ち帰ること(岡崎伸郎)

医療保護入院制度廃止に向けた国連人権メカニズムを活用した当事者団体の取り組みについて(山田悠平)

医療保護入院制度を廃止しなければならない理由(姜文江)

医療保護入院制度を家族の立場から考える(岡田久実子)

権利擁護の視点から医療保護入院を再考する(西川健一)

諸外国における強制入院制度とわが国の医療保護入院――イギリス、韓国、台湾との比較を中心に(塩満卓)

精神衛生法下の同意入院と現行医療保護入院――ケア義務からの「解放」という論点(後藤基行)

[コラム+連載+書評]

[視点 58]精神病院は変わったのか――630調査から見える現代精神医療の構造的問題(生島直人 + 栗田篤志)

[コラム]支援者の名前――2020年代の現場に向けて(福冨律)

[連載 9]精神現象論の展開 9(森山公夫)

[短期集中連載 1]私たちは何をしてきたのか――イタリア精神病院廃絶運動と我が国の精神病院改革運動(富田三樹生)

[書評]『いかにして抹殺の〈思想〉は引き寄せられたか――相模原殺傷事件と戦争・優生思想・精神医学』高岡健著[ヘウレーカ刊](早苗麻子)

[投稿]ヘタレ医者 人生の後半戦で頑張る(星野征光)

[編集後記](太田順一郎)

 

■第98号(2020年4月)

特集◉漂流する精神看護――専門職としての精神看護師の存在理由

阿保順子+佐原美智子+近田真美子[責任編集]

[巻頭言]漂流する精神看護――専門職としての精神看護師の存在理由(阿保順子)

[座談会]精神看護の現場とはどこか、現場で看護師は必要か(永井優子+小林將元+大迫晋[司会]=近田真美子+佐原美智子+阿保順子)

精神科の専門性こそが問われている(稲村茂)

看護師の主体性と精神看護師のアイデンティティ――援助関係と感情活用(宮本眞巳)

精神科訪問看護に必要な看護の要素と看護師の存在意義(山本智之)

専門分化されてゆく看護――精神看護の専門性を考える(東修)

精神看護はどこへ向かうべきか、戻るべきか(那須典政)

[インタビュー]言いたい放題:精神看護者はどんな形で存在していくのか(柴田恭亮 +[聞き手]阿保順子+佐原美智子)

[コラム+連載+書評]

[視点 59]日精協が提案する「精神科医療安全士」や CVPPP は、精神科臨床における暴力の未然防止に効果は期待できない(岡田実)

[連載 9]精神現象論の展開 10(森山公夫)

[短期集中連載 2]私たちは何をしてきたのか――イタリア精神病院廃絶運動と我が国の精神病院改革運動(富田三樹生)

[コラム]その道を全うするために(池田朋広)

[書評]『精神障害のある人の就労定着支援――当事者の希望からうまれた技法』天野聖子著・多摩棕櫚亭協会編著 [中央法規](添田雅宏)

[投稿]旧優生保護法でのハンセン病への優生手術に関する岡田靖雄氏の言及に対する違和感(松浦武夫)

[編集後記](近田真美子)

 

■第99号(2020年7月)

特集◉精神医療改革運動・精神障害者当事者運動のバトンをつなぐ

高木俊介+古屋龍太[責任編集]

[巻頭言]バトンをつなぐために(高木俊介)

[座談会]精神医療改革運動・精神障害者当事者運動のバトンをつなぐ(尾上浩二+小田原孝+山本深雪+渡邊乾+竹端寛+古屋龍太+[司会]高木俊介)

当事者研究をあるべき場所に(熊谷晋一郎)

運動のバトンの細分化とその行方――後期近代、解放、不安 、ショッピングモールなどの観点から(渡邉琢)

変革と継承――精神障害者の当事者運動から見出せる活路(桐原尚之)

精神医療改革運動とバトンと精神科病院(中島直)

特別支援学校における性教育の今日的課題――知的障害児・者の性に着目して(門下祐子)

ソーシャルワーク復興への光芒を探る――「ソーシャルワーカー」のソーシャルワーカーとしての解放を目指して…(中島康晴)

[コラム+連載+書評]

[視点 60]障害者権利条約パラレルレポート(佐藤久夫)

[連載 11]精神現象論の展開 11(森山公夫)

[短期集中連載 3]私たちは何をしてきたのか――イタリア精神病院廃絶運動と我が国の精神病院改革運動(富田三樹生)

[コラム]左中間にて(熊谷彰人)

[書評]『精神医療のゆらぎとひらめき』横田泉著[日本評論社刊](駒田健一)

[紹介]『まずはケアの話から始めよう』山崎勢津子著[ゆみる出版刊](中越章乃)

[投稿]遺言能力の精神鑑定について(西山詮 + 窪田彰 + 一瀬邦弘)

[編集後記](古屋龍太)

 


TALK BACK:私たちはもう黙っていない

2021年07月29日 16時01分36秒 | イベント告知

コロナ危機下で、東京オリンピックが開催されて、良かったことが一つあります。

この国では、本当に「人権」という意識は希薄なんだなと、はっきり実感できたこと。

カネ、カネ、カネが、すべての価値判断の基準なんだなと、思い知らされたことです。

 

1964年の東京オリンピックは、この国の経済復興と先進国入りの象徴となりました。

2021年の東京オリンピックは、この国の生活破綻と没落の始まりの象徴になります。

良くも悪しくも、歴史的な場面に今も立ち会っているのだなと思います。

 

1964年は、オリンピックを控えた東京で、ライシャワー事件が起きました。

マスコミも「精神病者野放し」を喧伝し、精神衛生法が緊急改正されました。

精神病院はさらに増え続け、町から精神障害者は急激に姿を消していきました。

 

2021年は、オリンピック開催のさなか、コロナ感染症が爆発的に蔓延しています。

精神科病棟の出入り口は閉鎖され、あちこちで院内クラスターが発生しています。

感染率・死亡率ともに市中の4倍の閉鎖環境の中で、命の選別が始まっています。

 

2011年に、精神科病棟内死亡転機患者は、推計で年間2万人を超えました。

その後も増え続けましたが、2017年以降の数値は、なぜか公表されていません。

この国のコロナで、精神科病棟内死亡患者は、どれだけの数に達するのでしょう。

 

この国でさえなければ、その多くは、当たり前に地域で暮らせる人たちでした。

この国の、現在の法律でなければ、もっと自由に生きることができる人たちでした。

この国だから、精神科病棟で人生の大半を過ごさねばならなかった人たちです。

 

これまで黙って耐え忍んできた、精神障害の当事者たちが、横浜で声を上げます。

対面参集の一大イベントですが、一部はオンライン配信も可能だそうです。

多くの方にご参加いただき、共に「声をあげること」の勇気を得られればと思います。

 

神奈川精神医療人権センター(KP)設立1周年記念イベント

「TALK BACK 私たちはもう黙っていない」

2021年8月7日(土)11:00~16:30

横浜市健康福祉総合センターホール

(横浜市中区桜木町1-1

/市営地下鉄ブルーライン 桜木町駅南1A出口から徒歩0分

/JR京浜東北線・根岸線 桜木町駅出口から徒歩2分)

 

精神医療に関わる多くの人たち(特に当事者)は、偏見、差別、権力、抑圧などによって、「黙らされる」ことを多々経験してきています。

そんな「黙らされる」ことに対して、「もう黙っていない」「声をあげる」という意志を表明するようなイベントになればと思っています。

 

  • 第1部:精神医療国賠訴訟シンポジウム 11:00~12:30

精神病院で何十年も虐げられた患者たちが今、声を上げる。

今年3月から始まった精神医療国賠訴訟。

その原告となった伊藤時男さんや支援者をお招きして、不当な長期入院のこと、「声を上げる」ことを決意した経緯、今現在の思いなどを語っていただきます。

シンポジスト:伊藤時男さん(精神医療国家賠償請求訴訟原告)

       東谷幸政さん(精神医療国家賠償請求訴訟研究会代表)

       古屋龍太さん(精神医療国家賠償請求訴訟研究会事務局長)

 

  • 第2部:演劇公演「精神病院つばき荘」 13:00~15:00

2018年初演で好評を博し、2020年全国各地での上演を予定していた演劇公演「精神病院つばき荘」。

コロナ禍で公演中止を余儀なくされましたが、1年10か月ぶりに上演します。

第1部のシンポジストである伊藤時男さんが38年入院させられていた福島の双葉病院が、この劇のモチーフの一部となっています。

第1部を経てこの劇を鑑賞した際に、改めて見えてくるもの、感じられるものがあるはずです。

作:くるみざわしん 演出:トレンブルシアター

出演:川口龍、土屋良太、近藤結宥花

なお、「精神病院つばき荘」については、佐藤光展さんの解説記事をご参照ください。

⇒ 精神科の闇を描く演劇『精神病院つばき荘』がロングランを続ける理由(佐藤 光展) | 現代ビジネス | 講談社(1/4) (ismedia.jp)

 

  • 第3部:Mad Pride Yokohama 15:15~16:30

MADで何が悪い!パフォーミングアーツが変える未来。

カナダのトロントで始まった「MAD PRIDE」。

 精神疾患当事者が思い思いの格好で街中をパレードするこのイベントは、欧米を中心に盛んになっています。

今回は、KP関連事業「OUTBACKアクターズスクール」のメンバーを中心に、日本版Mad Prideのデモンストレーションを行います。

第2部の出演者も交えながら「表現すること、声をあげること」について語ります。

 

※入場料(第1部~第3部)は3,000円です。

申し込み方法:お名前・連絡先を明記の上、メール(event.kp.kanagawa@gmail.com)で申し込んでください。

詳細は下記のホームページをご覧ください。

⇒ 8月7日開催「TALK BACK 私たちはもう黙っていない」/演劇ありシンポあり肉態表現ありのKP設立1周年記念イベント/横浜・桜木町で午前11時から | 神奈川精神医療人権センター (kp-jinken.org)

※オンライン配信チケットをご用意いたしました。

都合により、第2部演劇公演「精神病院つばき荘」のオンライン配信はいたしません。第1部シンポジウム、第3部MadPrideYokohamaのみの配信となります。ご了承ください。

オンライン配信チケットは、事前購入制となっています。

Peatixというサービスを通じて購入いただけます。

詳しくは、TALK BACKオンライン配信ホームページで確認してください。

⇒ TALK BACK オンライン配信 | Peatix

 

主催:KP神奈川精神医療人権センター

〒235-0023 横浜市磯子区森3-14-3

メール mail@kp-jinken.org

ホームページ https://kp-jinken.org

 

 


『みんなの退院促進プログラム』(ミネルヴァ書房)

2021年07月25日 20時12分30秒 | 出版案内

本を1冊、紹介させてください。

緊急事態宣言のさなか、2021年1月にミネルヴァ書房から刊行していただきました。

『精神科病院と地域支援者をつなぐ みんなの退院促進プログラム―実施マニュアルと戦略ガイドライン』という本です。

(ちょっと、タイトル、長いですけど)

 

僕と大島巌さんの編著という形になっていますが、執筆者総数は、実に23名。

2007年以来継続してきた、日本社会事業大学の「タイソク研究会」の成果物です。

プログラム評価を使って、退院促進・地域移行支援の方法をまとめたものです。

13年間かかって、やっと一般書店に並ぶ書籍の形にまとまりました。

 

内容は、下記の目次をご覧いただければ、少し伝わるかと思います。

実際の支援の経験知から明らかになった「効果的支援要素」を柱に据えています。

科研費を得て、研究班メンバーと各地の実践者の長年の取組を、可視化したものです。

各現場からの「コラム」が、各実践者の熱いメッセージを伝えてくれます。

 

編者としての思いは、下記の「はじめに」に記した通りです。

ミクロな個別支援と、病院・地域を変えていくメゾレベルの実践、精神医療政策を問うマクロなソーシャルアクションとしての精神国賠は、僕の中では一つのものです。

この国で、精神科病院からの脱施設化を図る方策を、自分なりに追求してきました。

今も各地で格闘しながら、地域移行に取組む方々に、読んでいただければ幸いです。

 

はじめに

日本は、世界一精神科病床の多い、精神科病院大国です。長年にわたる国の入院医療中心の隔離収容政策によって、多数の長期入院患者が生み出されました。本来であれば、短期の入院治療で済んだかもしれない方々が、精神科病院の中で歳を重ねてきています。大切な人生の時間の大半を、閉鎖的な精神科病棟の中で過ごすことになった方々は、もっと早くから地域で当たりまえに普通に暮らすことができたはずです。

もちろん、多くの地域や病院で、これまでも長期入院者の退院に向けた取り組みが、地道に行われてきました。国も21世紀に入ってからは「入院医療中心から地域生活中心へ」と政策のかじを切り、地域移行・地域定着の支援体制を作ってきました。それでも、具体的な支援を進めるための手順は示されず、各地の実践者は、一人ひとりの支援を通して、手探りで方法を模索するしかありませんでした。いつの間にかさらに10年、20年と時を経て、入院患者はさらに高齢化し、今や年間2万2千人を超える方々が精神科病棟の中で亡くなる事態に至っています。この悲しい現実を、私たちは理不尽に思い、なんとか変えたいと考えてきました。

本書は、長期にわたり精神科病院に入院している人々が、退院して地域で生活できるようにするためには何が必要かを、プログラム理論の観点からまとめたものです。ご本人が早期に退院して、地域で安定したより良い生活を実現するためには、支援者がどのような取り組みをすればよいのかを、「実施マニュアル」化しました。また、病院や地域と行政が、支援ネットワークを形成し連携・協働していくために、圏域によって異なるステージごとの特性にそった組織づくりと活動の指針となる、「戦略ガイドライン」を示しています。

ここに記されているのは、退院促進・地域移行に携わる各地の実践者の知恵を集積した、「効果的な退院促進・地域移行・地域定着支援のプログラム」(効果的モデル)の提案です。障害者総合支援法を中心とした既存の「制度モデル」を超えて、「みんなの退院促進」を実践していく足がかりになればと願っています。そして、現在、国がめざしている「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築」を具体化し、地域共生社会を現実のものとする各地のプラン作成のヒントにもなれば幸いです。

2020年11月1日

                     執筆者を代表して 古屋龍太

目次

 

□はじめに

□本書のめざすもの

 

■第I部:長期入院患者の退院促進とは?

□第1章 背景を知る―精神科病院から退院できない!

1 退院促進と地域移行

2 日本特有の歴史的背景

3 なぜ退院ができないのでしょう?

コラム1 「継続は力なり」~秘めた想いを実現するために~

コラム2 病院管理者の立場から見た退院支援

 

□第2章 支援の現状―退院促進から地域移行・地域定着支援へ

1 退院促進支援事業の開始

2 地域移行支援特別対策事業の展開

3 個別給付化の影響―─訪問調査を踏まえて

4 地域移行支援・地域定着支援の現状と課題

5 「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」の展開

コラム3 退院促進~地域移行・支援に関わって―和歌山県紀南地域の場合

コラム4 居住サポート事業と連動した地域移行支援―広島県三原市の場合

 

□第3章 効果的な支援のために―支援のモデルとそれを支える理論の話

1 効果的モデルとプログラムとは?──制度モデルとのちがい

2 統合型プログラムとは?──病院と地域と行政

3 プログラムのゴールとは?──支援の基本理念

4 プログラム理論の詳細

5 効果的支援要素とは?──支援の道しるべ

コラム5 病棟での取り組み、看護師への退院支援意欲の喚起

コラム6 病院PSWの皆さんへ―今病院でできること

 

□第4章 段階ごとに考えよう―地域移行のステージ

1 各期のねらいと達成定義

2 開拓期(0期)

3 萌芽期(1期)

4 形成期(2期)

5 発展期(3期)

コラム7 退院後の恢復への地平―「地域共生社会づくり」から切り拓く

コラム8 ピアから求める地域移行・定着支援―「きた風と太陽」のようであってほしい

 

■第II部:実施マニュアル

□第5章 効果的支援要素とプログラムの進め方―マニュアルとワークシートの使い方

A領域 協働支援チームの形成

B領域 病院内広報とモチベーションサポート

C領域 関係づくりとケースマネジメント

D領域 具体的な退院準備

E領域 退院後の継続的支援

F領域 退院促進の目標設定

コラム9 病院と地域機関が一体化して退院支援をしていくために

コラム10 行政・地域・病院がチームとなっておこなう退院支援

 

■第III部:戦略ガイドライン

□第6章 地域の実情に応じた取り組み

1 開拓期(0期)―個別支援から「支援の核」形成を目指す

2 萌芽期(1期)―「支援の核」の実践が組織内に波及することを目指す

3 形成期(2期)―多機関が組織として協働する事例を目指す

4 発展期(3期)―行政の積極的な参画で効果的実践を目指す

コラム11 開拓期の苦悩、課題、展望

コラム12 地域移行をすすめることは、地域の課題

 

□第7章 現場で効果的実践を実現するためのツール

1 全体構想シート

2 基本計画シート

3 期ごとのシート活用例

コラム13 生活支援って何だろう?

コラム14 「私が人生の主役」になるために―支援者ができること

 

■第Ⅳ部:資料編

1.戦略シート

 ①全体構想シート

 ②基本計画シート

2.地域移行支援情報シート

3.病棟における退院支援計画・経過一覧表

4.用語解説

 

おわりに

引用・参考文献

索引

執筆者一覧

 

出版社 ‏ : ‎ ミネルヴァ書房

発売日 ‏ : ‎ 2021/1/19

単行本 ‏ : ‎ 176ページ(ソフトカバー)

ISBN-10 ‏ : ‎ 4623089541

ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4623089543

税込価格 : 2,640円


第5次『精神医療』新創刊

2021年07月21日 05時41分11秒 | 出版案内

前々回の記事で『精神医療改革事典』について、ご紹介しました。

第4次「精神医療」誌の第100号として、総特集したものです。

この号をもって、50年間発行されてきた「精神医療」誌はいったん「休刊」となりました。

 

「精神医療」誌は、1970年に東大精神科医師連合の機関誌として、出発しました。

書店やネットでも買えますが、出版社が編集発行する、一般の商業誌とは異なります。

また、学会や協会等の組織が発行母体の、機関誌とも異なります。

適切な表現かわかりませんが、いわば、精神医療業界の「同人誌」にあたります。

同人誌が、半世紀にもわたって刊行され続ける例は、かなり珍しいことです。

精神医療改革を志す、多種多様な人びとによって、編集発行されてきました。

 

医療関係誌には珍しく、製薬会社の広告は一切掲載しない方針を堅持しています。

基本的に、依頼した書き手も座談会出席者も、原稿料の支払いはありません。

そうやって、ギリギリの経営状態のまま刊行を続け、今日に至っています。

発行部数も年々減少し、利潤も得られないため、出版元も変遷してきています。

 

既に、初期の編集委員の多くは鬼籍に入り、顔ぶれは新陳代謝して来ています。

当初は精神科医がほとんどでしたが、その後コメディカル職種が増えて来ています。

これまでずっと、精神医療改革運動を象徴するメディアとして、特異な位置を占めてきました。

そして、経た昨年2020年、第4次「精神医療」は100号で休刊となりました。

第1次創刊号から、ちょうど50年、一つの時代の〈終焉〉を象徴する出来事といえるでしょう。

 

第1次(1970年~1971年:通巻1~6号)発行:精神医療編集委員会

第2次(1971年~1978年:通巻7~29号)刊行:岩崎学術出版

第3次(1979年~1991年:通巻30~76号)刊行:悠久書房

第4次(1992年~2020年:1号~100号:通巻77号~175号)刊行:批評社

第5次(2021年~:1号~/通巻176号)刊行:M.C.MUSE

※通巻ナンバーと号数が合いませんが、ダブルカウントされているものや、カウントされていない臨時増刊特集号も結構あります。

 

でも、あくまでも今回も「休刊」であって「終巻」ではありません。

対面参集しての会議もできない中で、新しい発行元を探しての継続を模索してきました。

第4次最終号の「精神医療改革事典」と並行して、第5次創刊の準備を重ねてきました。

第5次創刊号の詳しい目次内容は、以下をご覧ください。

 

コロナ特集の創刊号ですが、精神医療国家賠償請求訴訟についても、書かせていただきました。

精神国賠研の成り立ちから、原告の紹介、第1次提訴の訴状の内容、精神医療政策の歴史への問いなど。

現在、出版物として公刊されている報告としては、一番詳しく精神国賠を解説しています。

ぜひ、お手にとってご一読いただければ幸いです。

なお、第3号:精神国賠特集企画についても、現在進行中です(10月20日刊行予定)。

 

第5次『精神医療』創刊号

責任編集:岡崎伸郎・近田真美子

特集「コロナという名の試練―精神保健医療福祉はどう挑むか」

 

【創刊の辞】

第5次『精神医療』創刊の辞

/岡崎伸郎(本誌編集委員長)

【巻頭言】

コロナという名の試練―精神保健医療福祉はどう挑むか―

/近田真美子(本誌編集委員)

【座談会】

コロナという名の試練―精神保健医療福祉はどう挑むか

齋藤正彦(東京都立松沢病院院長)

増田一世(やどかりの里理事長)

立岩真也(立命館大学教授)

近田真美子(司会/本誌編集委員)

【特集】コロナという名の試練―精神保健医療福祉はどう挑むか―

精神科病院はコロナ禍から何を学べるか?

/田口寿子(神奈川県立精神医療センター)

コロナという名の試練-精神保健医療福祉はどう挑むか-介護・福祉の現場から

/山崎英樹(いずみの杜診療所)

コロナ禍の精神看護学実習

/近田真美子(福井医療大学・本誌編集委員)

コロナ禍における「不登校」「ひきこもり」から見えてくる社会の構造的問題

/西村秀明(前・宇部フロンティア大学)

精神医療改革運動からテレストリアルのケアをめぐる〈政治〉へ―イタリアでバザーリアとコロナが教えてくれたこと

/松嶋健(広島大学)

資料: 精神科病院における新型コロナ感染の状況(2021年2月16日時点)報道・病院報等より把握できたもの

/有我譲慶

【視点61】

日本初の精神医療国家賠償請求訴訟の行方―第1次提訴に至る経過と訴えの概要―

/古屋龍太(日本社会事業大学・精神医療国家賠償請求訴訟研究会事務局長)

【連載】

精神現象論の展開<12> 私たちは<時代の子>

森山公夫(陽和病院)

【連載】

リエゾン精神看護事例検討会<1> 救急搬送された自殺未遂患者への継続介入

/武田美恵子(精神看護専門看護師)・村本好孝(株式会社ここから代表取締役)

【連載エッセイ】

バンダのバリエーション<1> やや節操をかいたバンダ(その1)

/塚本千秋(岡山大学)

【リレー連載】:精神医療人権センターから<1>

神奈川精神医療人権センター(KP)とは

/藤井哲也(KP 会長)・佐藤光展(KP Web 編集長)・中村マミコ(KP 事務局長・芸術文化担当)・堀合悠一郎(KP 調査・研究担当)・ピンクわかめちゃん(KP Web 制作・調査担当)・堀合研二郎(KP 広報担当)

【コラム】

温故知新 小林信子さんのいた時代~国際人権へ

/木村朋子(にしの木クリニック)

【書評】

『精神保健医療のゆくえ―制度とその周辺―』岡崎伸郎著

/熊倉陽介(東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野)

【紹介】

杉林稔著『精神科臨床の自由 -記述・暦・病跡学』精神科医、尊いものを仰ぐ

/塩飽耕規

【次号予告】

第2号特集:精神科医療における権利擁護(アドボケイト)

【バックナンバー案内】

第4次「精神医療」第85号~第99号(批評社刊)特集と目次

【編集後記】

近田真美子

 

出版社 ‏ : ‎ M.C.MUSE Inc.(有)エム・シー・ミューズ

発売日 ‏ : ‎ 2021/4/20

単行本 ‏ : ‎ 128ページ

ISBN-10 ‏ : ‎ 4904110242

ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4904110249

定価 ‏ : ‎ 1870円(税抜価格1700円)