PSW研究室

専門職大学院の教員をしてる精神保健福祉士のブログ

第5次『精神医療』新創刊

2021年07月21日 05時41分11秒 | 出版案内

前々回の記事で『精神医療改革事典』について、ご紹介しました。

第4次「精神医療」誌の第100号として、総特集したものです。

この号をもって、50年間発行されてきた「精神医療」誌はいったん「休刊」となりました。

 

「精神医療」誌は、1970年に東大精神科医師連合の機関誌として、出発しました。

書店やネットでも買えますが、出版社が編集発行する、一般の商業誌とは異なります。

また、学会や協会等の組織が発行母体の、機関誌とも異なります。

適切な表現かわかりませんが、いわば、精神医療業界の「同人誌」にあたります。

同人誌が、半世紀にもわたって刊行され続ける例は、かなり珍しいことです。

精神医療改革を志す、多種多様な人びとによって、編集発行されてきました。

 

医療関係誌には珍しく、製薬会社の広告は一切掲載しない方針を堅持しています。

基本的に、依頼した書き手も座談会出席者も、原稿料の支払いはありません。

そうやって、ギリギリの経営状態のまま刊行を続け、今日に至っています。

発行部数も年々減少し、利潤も得られないため、出版元も変遷してきています。

 

既に、初期の編集委員の多くは鬼籍に入り、顔ぶれは新陳代謝して来ています。

当初は精神科医がほとんどでしたが、その後コメディカル職種が増えて来ています。

これまでずっと、精神医療改革運動を象徴するメディアとして、特異な位置を占めてきました。

そして、経た昨年2020年、第4次「精神医療」は100号で休刊となりました。

第1次創刊号から、ちょうど50年、一つの時代の〈終焉〉を象徴する出来事といえるでしょう。

 

第1次(1970年~1971年:通巻1~6号)発行:精神医療編集委員会

第2次(1971年~1978年:通巻7~29号)刊行:岩崎学術出版

第3次(1979年~1991年:通巻30~76号)刊行:悠久書房

第4次(1992年~2020年:1号~100号:通巻77号~175号)刊行:批評社

第5次(2021年~:1号~/通巻176号)刊行:M.C.MUSE

※通巻ナンバーと号数が合いませんが、ダブルカウントされているものや、カウントされていない臨時増刊特集号も結構あります。

 

でも、あくまでも今回も「休刊」であって「終巻」ではありません。

対面参集しての会議もできない中で、新しい発行元を探しての継続を模索してきました。

第4次最終号の「精神医療改革事典」と並行して、第5次創刊の準備を重ねてきました。

第5次創刊号の詳しい目次内容は、以下をご覧ください。

 

コロナ特集の創刊号ですが、精神医療国家賠償請求訴訟についても、書かせていただきました。

精神国賠研の成り立ちから、原告の紹介、第1次提訴の訴状の内容、精神医療政策の歴史への問いなど。

現在、出版物として公刊されている報告としては、一番詳しく精神国賠を解説しています。

ぜひ、お手にとってご一読いただければ幸いです。

なお、第3号:精神国賠特集企画についても、現在進行中です(10月20日刊行予定)。

 

第5次『精神医療』創刊号

責任編集:岡崎伸郎・近田真美子

特集「コロナという名の試練―精神保健医療福祉はどう挑むか」

 

【創刊の辞】

第5次『精神医療』創刊の辞

/岡崎伸郎(本誌編集委員長)

【巻頭言】

コロナという名の試練―精神保健医療福祉はどう挑むか―

/近田真美子(本誌編集委員)

【座談会】

コロナという名の試練―精神保健医療福祉はどう挑むか

齋藤正彦(東京都立松沢病院院長)

増田一世(やどかりの里理事長)

立岩真也(立命館大学教授)

近田真美子(司会/本誌編集委員)

【特集】コロナという名の試練―精神保健医療福祉はどう挑むか―

精神科病院はコロナ禍から何を学べるか?

/田口寿子(神奈川県立精神医療センター)

コロナという名の試練-精神保健医療福祉はどう挑むか-介護・福祉の現場から

/山崎英樹(いずみの杜診療所)

コロナ禍の精神看護学実習

/近田真美子(福井医療大学・本誌編集委員)

コロナ禍における「不登校」「ひきこもり」から見えてくる社会の構造的問題

/西村秀明(前・宇部フロンティア大学)

精神医療改革運動からテレストリアルのケアをめぐる〈政治〉へ―イタリアでバザーリアとコロナが教えてくれたこと

/松嶋健(広島大学)

資料: 精神科病院における新型コロナ感染の状況(2021年2月16日時点)報道・病院報等より把握できたもの

/有我譲慶

【視点61】

日本初の精神医療国家賠償請求訴訟の行方―第1次提訴に至る経過と訴えの概要―

/古屋龍太(日本社会事業大学・精神医療国家賠償請求訴訟研究会事務局長)

【連載】

精神現象論の展開<12> 私たちは<時代の子>

森山公夫(陽和病院)

【連載】

リエゾン精神看護事例検討会<1> 救急搬送された自殺未遂患者への継続介入

/武田美恵子(精神看護専門看護師)・村本好孝(株式会社ここから代表取締役)

【連載エッセイ】

バンダのバリエーション<1> やや節操をかいたバンダ(その1)

/塚本千秋(岡山大学)

【リレー連載】:精神医療人権センターから<1>

神奈川精神医療人権センター(KP)とは

/藤井哲也(KP 会長)・佐藤光展(KP Web 編集長)・中村マミコ(KP 事務局長・芸術文化担当)・堀合悠一郎(KP 調査・研究担当)・ピンクわかめちゃん(KP Web 制作・調査担当)・堀合研二郎(KP 広報担当)

【コラム】

温故知新 小林信子さんのいた時代~国際人権へ

/木村朋子(にしの木クリニック)

【書評】

『精神保健医療のゆくえ―制度とその周辺―』岡崎伸郎著

/熊倉陽介(東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野)

【紹介】

杉林稔著『精神科臨床の自由 -記述・暦・病跡学』精神科医、尊いものを仰ぐ

/塩飽耕規

【次号予告】

第2号特集:精神科医療における権利擁護(アドボケイト)

【バックナンバー案内】

第4次「精神医療」第85号~第99号(批評社刊)特集と目次

【編集後記】

近田真美子

 

出版社 ‏ : ‎ M.C.MUSE Inc.(有)エム・シー・ミューズ

発売日 ‏ : ‎ 2021/4/20

単行本 ‏ : ‎ 128ページ

ISBN-10 ‏ : ‎ 4904110242

ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4904110249

定価 ‏ : ‎ 1870円(税抜価格1700円)


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