前々回の記事で『精神医療改革事典』について、ご紹介しました。
第4次「精神医療」誌の第100号として、総特集したものです。
この号をもって、50年間発行されてきた「精神医療」誌はいったん「休刊」となりました。
「精神医療」誌は、1970年に東大精神科医師連合の機関誌として、出発しました。
書店やネットでも買えますが、出版社が編集発行する、一般の商業誌とは異なります。
また、学会や協会等の組織が発行母体の、機関誌とも異なります。
適切な表現かわかりませんが、いわば、精神医療業界の「同人誌」にあたります。
同人誌が、半世紀にもわたって刊行され続ける例は、かなり珍しいことです。
精神医療改革を志す、多種多様な人びとによって、編集発行されてきました。
医療関係誌には珍しく、製薬会社の広告は一切掲載しない方針を堅持しています。
基本的に、依頼した書き手も座談会出席者も、原稿料の支払いはありません。
そうやって、ギリギリの経営状態のまま刊行を続け、今日に至っています。
発行部数も年々減少し、利潤も得られないため、出版元も変遷してきています。
既に、初期の編集委員の多くは鬼籍に入り、顔ぶれは新陳代謝して来ています。
当初は精神科医がほとんどでしたが、その後コメディカル職種が増えて来ています。
これまでずっと、精神医療改革運動を象徴するメディアとして、特異な位置を占めてきました。
そして、経た昨年2020年、第4次「精神医療」は100号で休刊となりました。
第1次創刊号から、ちょうど50年、一つの時代の〈終焉〉を象徴する出来事といえるでしょう。
第1次(1970年~1971年:通巻1~6号)発行:精神医療編集委員会
第2次(1971年~1978年:通巻7~29号)刊行:岩崎学術出版
第3次(1979年~1991年:通巻30~76号)刊行:悠久書房
第4次(1992年~2020年:1号~100号:通巻77号~175号)刊行:批評社
第5次(2021年~:1号~/通巻176号)刊行:M.C.MUSE
※通巻ナンバーと号数が合いませんが、ダブルカウントされているものや、カウントされていない臨時増刊特集号も結構あります。
でも、あくまでも今回も「休刊」であって「終巻」ではありません。
対面参集しての会議もできない中で、新しい発行元を探しての継続を模索してきました。
第4次最終号の「精神医療改革事典」と並行して、第5次創刊の準備を重ねてきました。
第5次創刊号の詳しい目次内容は、以下をご覧ください。
コロナ特集の創刊号ですが、精神医療国家賠償請求訴訟についても、書かせていただきました。
精神国賠研の成り立ちから、原告の紹介、第1次提訴の訴状の内容、精神医療政策の歴史への問いなど。
現在、出版物として公刊されている報告としては、一番詳しく精神国賠を解説しています。
ぜひ、お手にとってご一読いただければ幸いです。
なお、第3号:精神国賠特集企画についても、現在進行中です(10月20日刊行予定)。
第5次『精神医療』創刊号
責任編集:岡崎伸郎・近田真美子
特集「コロナという名の試練―精神保健医療福祉はどう挑むか」
【創刊の辞】
第5次『精神医療』創刊の辞
/岡崎伸郎(本誌編集委員長)
【巻頭言】
コロナという名の試練―精神保健医療福祉はどう挑むか―
/近田真美子(本誌編集委員)
【座談会】
コロナという名の試練―精神保健医療福祉はどう挑むか
齋藤正彦(東京都立松沢病院院長)
増田一世(やどかりの里理事長)
立岩真也(立命館大学教授)
近田真美子(司会/本誌編集委員)
【特集】コロナという名の試練―精神保健医療福祉はどう挑むか―
精神科病院はコロナ禍から何を学べるか?
/田口寿子(神奈川県立精神医療センター)
コロナという名の試練-精神保健医療福祉はどう挑むか-介護・福祉の現場から
/山崎英樹(いずみの杜診療所)
コロナ禍の精神看護学実習
/近田真美子(福井医療大学・本誌編集委員)
コロナ禍における「不登校」「ひきこもり」から見えてくる社会の構造的問題
/西村秀明(前・宇部フロンティア大学)
精神医療改革運動からテレストリアルのケアをめぐる〈政治〉へ―イタリアでバザーリアとコロナが教えてくれたこと
/松嶋健(広島大学)
資料: 精神科病院における新型コロナ感染の状況(2021年2月16日時点)報道・病院報等より把握できたもの
/有我譲慶
【視点61】
日本初の精神医療国家賠償請求訴訟の行方―第1次提訴に至る経過と訴えの概要―
/古屋龍太(日本社会事業大学・精神医療国家賠償請求訴訟研究会事務局長)
【連載】
精神現象論の展開<12> 私たちは<時代の子>
森山公夫(陽和病院)
【連載】
リエゾン精神看護事例検討会<1> 救急搬送された自殺未遂患者への継続介入
/武田美恵子(精神看護専門看護師)・村本好孝(株式会社ここから代表取締役)
【連載エッセイ】
バンダのバリエーション<1> やや節操をかいたバンダ(その1)
/塚本千秋(岡山大学)
【リレー連載】:精神医療人権センターから<1>
神奈川精神医療人権センター(KP)とは
/藤井哲也(KP 会長)・佐藤光展(KP Web 編集長)・中村マミコ(KP 事務局長・芸術文化担当)・堀合悠一郎(KP 調査・研究担当)・ピンクわかめちゃん(KP Web 制作・調査担当)・堀合研二郎(KP 広報担当)
【コラム】
温故知新 小林信子さんのいた時代~国際人権へ
/木村朋子(にしの木クリニック)
【書評】
『精神保健医療のゆくえ―制度とその周辺―』岡崎伸郎著
/熊倉陽介(東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野)
【紹介】
杉林稔著『精神科臨床の自由 -記述・暦・病跡学』精神科医、尊いものを仰ぐ
/塩飽耕規
【次号予告】
第2号特集:精神科医療における権利擁護(アドボケイト)
【バックナンバー案内】
第4次「精神医療」第85号~第99号(批評社刊)特集と目次
【編集後記】
近田真美子
出版社 : M.C.MUSE Inc.(有)エム・シー・ミューズ
発売日 : 2021/4/20
単行本 : 128ページ
ISBN-10 : 4904110242
ISBN-13 : 978-4904110249
定価 : 1870円(税抜価格1700円)
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