PSW研究室

専門職大学院の教員をしてる精神保健福祉士のブログ

いよいよ国家試験

2010年01月28日 17時00分09秒 | PSWのお仕事

いよいよ、試験の季節、真っ盛りです。
僕は入試管理委員長を仰せつかっているので、やたら仕事が回ってきます。
正月明けから、ずっと土日の休みが無く、働きずくめです。
寝不足もあり、さすがに少々、疲れが溜まってきています。

でも、受験生の皆さんは、そんなこと言ってられませんよね。

先々週は、大学入試センター試験がありました。
先週は、僕の勤める専門職大学院の入試でした。
今週は、学部生たち、ようやく試験期間が終わりました。
来週は、学部の入試があります。
そして、何よりも今週末、いよいよ社会福祉士と精神保健福祉士の国家試験があります。

資格取得を目指す学生や院生の皆さんは、不安を抱えながら、最後の追い込みですね。
ここまで来ると、あとは短期記銘力の勝負ですね。
これまでにやった過去問題集やワークブックの反復学習が、効果的ではないでしょうか?

めざすは、粗点で6割ライン。
もちろん、1科目でも0点があるとアウトですが。
得意科目で少しでも点を稼いで、全体の得点を上げないとね。
合否ライン上の1点の差は、とにかく大きいですから。

○社会福祉士は、150点満点ですから、90点目標。
(一部科目免除者は、74点満点ですから、45点目標)
実際には、昨年は85点(免除者46点)が合格ライン、合格率29.1%。

○精神保健福祉士は、156点満点ですから、94点目標。
(一部科目免除者は、80点満点ですから、48点目標)
実際には、昨年は80点(免除者42点)が合格ライン、合格率61.7%。

あくまでも合格の基本は、全ての科目で得点があり、総得点の60%程度とされています。
でも、去年も、不適切問題だったと後から判断されて、全員に加点された問題がありました。
複数の選択肢を正答として認めて、該当者に加点された問題もありました。
また、その年の問題の難易度によって、補正して合格ラインを決めますから、随分変わってくるんですね。

当日、試験会場を出ると、協会や資格学校の解答速報が配布されています。
ただ、これも微妙に回答が異なっていたり、あとで修正版が配られたりするんですよね。
退出可能時間になってから持ち出された試験問題を、誰かがわ~っと短時間で回答する訳です。
ミスや勘違い、不適切問題への無理な回答も、どうしても生じます。
目安にはなるのでしょうが、あまり一喜一憂しない方が良いのですけど…。

ともあれ、30日(土)~31日(日)、福祉士国家試験です。
受験生の皆さんが、笑顔で発表日を迎えられるよう、祈ります。
どうか、これまでの努力が実りますように…。
(^_^)v


※画像は、ご存じ興福寺の阿修羅像。
 ふと、試練に立ち向かう、受験生の表情のような気がしてきました。

寺谷隆子さんの受賞を祝う会

2010年01月26日 15時51分30秒 | PSWのお仕事

あわただしい毎日が続いています。
でも、忙しい中、とても楽しい時間を過ごさせて頂きました。
1月23日(土)の「寺谷隆子さんの『糸賀一雄記念賞』受賞を祝う会」です。
大学での入試説明会を終えて、夕方、会場に駆けつけました。

糸賀一雄記念賞については、今さら宜しいですよね?
糸賀一雄さんは、戦後の混乱期に知的障害児施設「近江学園」を創設し、『福祉の思想』等を著しています。
「この子らを世の光に」という言葉が有名ですね。
記念賞の日本人受賞者は、寺谷さんで13人目になります。

寺谷さんのプロフィールについても、今さら良いですよね?
詳しくは、寺谷さんの博士論文をもとにした著書をご覧下さい。
(寺谷隆子『精神障害者の相互支援システムの展開』中央法規、2008年)
精神病院のPSWとして出発し、その後JHC板橋を立ち上げ、実践を展開してこられました。
僕にとっては、PSW1年生の頃から薫陶を得た、今も身近な大先輩であります。



寺谷さんのお人柄と交友範囲の広さ、ネットワークを反映して、会場はびっしりの人、人、人。
あとで主催者側の人に尋ねたら、240人の参加者だったとか。
全国からお祝いに駆けつけた、この業界のお歴々たちや、地元の関係者やユーザー、教え子たち。
多士済々のPSWらが顔を揃えた、なかなか滅多にない同窓会のような機会でもありました。
開会の言葉から、発起人挨拶、祝辞5人、乾杯までで、実に56分…。
(^_^;)

20年ぶり?にお会いした早田さんは、相変わらずお綺麗でした。
昔、独身時代によく一緒に飲んでいた旦那さんの近況も聞けました。
(*^_^*)

柿原さんらにお会いしたのも、かれこれ20年ぶりでしょうか。
僕にとっては、昔の方が板橋区と色々とご縁があったのかも…。
(^o^)

窪田さんに最後にお会いしたのも、もうかれこれ20年前かも。
僕が27年前、最初にPSW協会の研修合宿に参加した時の、スーパーバイザーでした。
(^_^)

遠藤さんや田村さん、関原さんや宗像さん、高橋さん、納冨さん、上野さん、阿比留さん…。
ほとんど、昔の東京PSW研究会の頃のお顔が一堂に会しているような感じで…。
(^-^)

はたまた、柏木さんや谷中さん、大野さんや門屋さん、松永さん、竹中さん、木太さん、大塚さん…。
なんか、日本PSW協会の全国大会の懇親会に出席しているような錯覚すら…。
(^_^;)

(この記事を読んでる皆さんは、上のお名前の方々、ぴんっ!と来ますかね?)

着物姿の寺谷さんは、まるで披露宴のように、皆さんと順番にカメラに収まっていました。
出口でようやく、寺谷さんと一緒に写真を撮りました。
ガヤガヤとした人混みの中、お土産の袋を受け取らないで会場を出てしまったのが、ちと心残り…。
(>_<)



柏木さん、吉田さん、栄さんと4人で京風居酒屋に行き、二次会。
そのあと更に、コーヒー飲みに駅前のガストで、三次会。
…結局、終電車で帰りました。
翌日は、朝早くから入試だというのに…。
(*_*)

ちなみに、グラスを手に徘徊しながら、デジカメを撮りまくっている僕を見て、澤さん曰く。
「それ、ブログに載せるんですか~?」
う…、鋭い、読まれている…。
(^_^;)

でも、他人様の写真を了解も得ず、やたらネットにアップするのもね…。
ちょうど100枚も撮った画像を、どうするか…。
ピカサで、個々の方に配信しますかね?

改革推進会議の論点

2010年01月17日 12時43分18秒 | 精神保健福祉情報
いよいよ、障がい者制度改革推進会議が、動き始めましたね。

第1回障がい者制度改革推進会議が2010年1月12日、開かれました。
挨拶に立った、福島みずほ内閣府特命担当大臣や山井和則厚生労働省政務官は、
「歴史的な一歩を踏み出すことになる」ということを強調しています。

今後、5年間の改革期間で、3年を目処に改革を進めていく方針です。
改革の骨格を、急ピッチで夏頃までにまとめると。
月2回、1回4時間の会議を積み重ねていくそうです。

その会議の論点が示されました。
「制度改革推進会議の進め方(大枠の議論のための論点表)たたき台」です。
東俊裕内閣府参与が、取り上げるべきテーマをまとめたものだそうです。
これをもとに、今後議論が展開されていくことになります。

自立支援法や、差別禁止法、虐待防止法といった法律の制定や見直しに関する分野。
教育、雇用、交通と情報アクセス、精神医療、所得保障、福祉経済予算、障害の表記といったテーマが並んでいます。

これまで、誰もが必要性を感じながら、一向に進む気配のなかった事柄ばかりです。
今度こそ、大きく動き始める…という期待感が膨らみます。

「歴史的な一歩を踏み出すことになる」のかどうか…。
この推進会議での、議論の行方によるところが、もちろん大きいのでしょうけど…。
それ以前に、今「政治と金」で揺れる新政権が、保つのかどうかが分かれ道のような気がします…。


参考までに、最初に掲げられている「障害者基本法」の項目を、以下に引用しておきます。
性格・定義・人権・基本的施策・モニタリングといった項目が並びます。
その項目ごとに、論点等が示されています。
内閣府のホームページ(障害者施策)等で、配布資料は公開されています。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇  

障害者基本法

1.基本的性格
基本法の性格をどう考えるか
「施策の客体」から「権利の主体」への転換という観点から、その性格をどう位置づ けるのか。
従来の福祉関連施策一般に関する福祉立法という位置づけから、より積極的に、人権の実効的保障とそのために必要なより広い分野における諸施策を包括する権利法といったものに転換する必要があるのではないか

2.障害の定義
①条約における障害の概念をどう反映させるのか
 (障害が態度及び環境の障壁との相互作用から生じるという観点)
②基本法の基本的性格との関連性についてどう考えるか
③個別立法との関係(手帳制度)についてどう考えるか

3.差別の定義
①差別の定義を規定するか
②規定する場合の差別の類型(3類型)についてどう考えるか
③積極的差別是正措置への言及についてどう考えるか

4.基本的人権の確認
①現行規定の他に明文で置くべき総則的人権規定はあるか
②自己決定の権利と差違や多様性の尊重についてはどうか
③地域社会で生活を営む権利についてはどうか
④手話言語及びコミュニケーションに関する権利についてはどうか

5.障害者に関する基本的施策
①現行規定と改革17項目との関係についてどう考えるか
②現行規定を権利の確認という観点から見直しする必要性の有無
③政治参加の施策を加えるべきかどうか
④司法参加の施策を加えるべきかどうか
⑤差別禁止の法制度の確立と施策を加えるべきかどうか
⑥虐待防止の法制度の確立と施策を加えるべきかどうか
⑦障害児の施策を加えるべきかどうか
⑧難病についての施策を加えるべきかどうか

6.モニタリング
①条約第33条「促進(実施)」と「保護(救済)」と「監視」の3機関の棲み分けに ついてどう考えるか
②スクラップ・アンド・ビルドの観点から現中障協を見直し、「促進(実施)」および 「監視」機関に抜本改正するのか。それとも、「促進(実施)」のための機関に留め、 「監視」機関は別個にすべきか
③「監視」機関に抜本改正するとした場合の権限についてどう考えるか
④独立性をどう担保するか

7.その他

福祉系大学の受験生

2010年01月12日 13時06分23秒 | 大学という場所

まもなく、大学入試センター試験が始まります。
すでに昨年中に、推薦やAO入試等で合格の決まっている人もいますが、
いよいよ大学受験シーズン本番です。

今や、高卒の大学進学率は5割を超えました。
東京での進学率は65%に達しています。
一方で少子化により、受験生の激減は目を見張るばかりです。
今や選り好みしなければ、どんな学業成績でも、誰でも大学に入れます。

今年の新成人数は、過去最低を記録しました。
減少の一途を辿っていた国内の18歳人口は、2008年度を境に留まりました。
少子化傾向は一段落したと言われています。

私立の大学は、どこもあの手この手で、受験生の確保に躍起になっています。
定員割れを起こしている私立4年制大学は、570校中265校46.5%に達しています。
(2009年度入試における日本私立学校振興・共済事業団の調査)
約5割の私立大学が定員を満たせず、経営が苦しくなっています。

一方で、定員充足率は全国平均では106.5%に達しています。
大都市圏の大規模総合大学に、人気が一極集中しています。
全国の私立大学の8.5%に過ぎない49大学で、一般入試全志願者の70%を占めています。
誰もが名前を知っている「有名ブランド校」による、寡占化が進んでいます。

今年は更に、併願を避けて、地方出身者の地元校志向が強まっているようです。
学費を出す親の側が、不況による所得の落ち込みで、仕送りが難しくなっているためでしょう。
当然、学費の安い国公立大学に、昨年より人気が集まっています。

一方で、小規模な私立大学では、志願者数の激減が進行しています。
志願者数が減ると、偏差値も下がり、更にその大学の人気が下がるという悪循環に陥ります。
経営難に陥り、教職員の給料遅配が生じているところもあります。
募集停止、廃校、吸収合併等による、大学再編が既に始まりつつあります。

これまで、福祉系大学は、不況にこそ強いと言われてきました。
実際に、長引く不況の中で、受験生の学部志望動向は大きく変化しています。
昨年度と比較しても、手に職をつけることや資格を得る実学志向の学生が増えています。
社会福祉系・看護系を志望する受験生が増加している、というのが受験産業界の分析です。

現実には、福祉関係の求人も、前年同月比で20~30%減少しています。
それでも、不況にあえぐ一般企業よりは、はるかに高い水準の求人を維持しています。
一方、福祉を目指す求職者も30~50%の増となっています。
(東京都福祉人材センターの2009年度の求人・求職動向)
3Kと称された介護現場のイメージによる、学生の福祉離れが、ここ数年顕著でしたが、
不況の中で、安定した職場として福祉を選択する傾向が、強まっているようです。

たしかに、2008年9月のリーマンショック以降、志願者数が増えている学校もあります。
福祉系全体としては、志願者減少は底を打ち、かすかな復調傾向にあるのかも知れません。
けれども、やはり大規模な有名ブランド校志向による寡占化は、福祉系でもあります。
福祉系の大学は小規模なところが多いですから、志願者減少には未だに歯止めがかかっていません。

でも、福祉を本当に目指すなら、本当に学びたいなら、福祉系大学が良いです。
教員が揃っていると言うことだけではなくて、
共通の目標を持つ学生たちが創る、4年間の学びの環境というのは何物にも代え難い。
僕自身が今、小さな福祉系単科大学で仕事をしていて、そう強く思います。

人の人生にかかわり、人の人生に学ぶ。
綺麗事じゃない、リアルに生きる人間の幸福追求を支える。
そんな福祉の現場、ソーシャルワーカーの仕事を、
生きる道を探す若い人たちに、ぜひ志して欲しいです。


退院・地域移行支援の現在

2010年01月08日 09時35分24秒 | イベント告知


今、全国各地で、長期在院精神障害者の退院支援が取り組まれています。
この国の精神医療の、長年にわたる負の遺産を、解消していく作業です。
このミッションのために創設された国家資格が、精神保健福祉士です。

日本PSW協会なども調査や研修を行い、積極的に取り組んでいます。
それらの成果は、いくつかの冊子にまとめられ、構成員(会員)らに既に配布されています。
(『精神障害者退院促進支援事業の手引き』2007年、
 『精神障害者の地域移行支援』2008年、
 『精神障害者地域移行支援特別対策事業』2009年、等)

でも、まだまだ各地の取り組みや、ノウハウを共有するようなメディアは少ないのが実情です。
商業ベースで出されているのは、昨年刊行された『精神科臨床サービス』ぐらいでしょうか?
(第9巻3号「特集:地域で元気に生活できるための退院支援」、星和書店、2009年)

今回、ようやく僕の関与している雑誌でも、特集を組むことができました。
色々な地域の、様々な職種の方々に執筆をお願いし、皆さん快くお引き受け頂きました。
それぞれの現場(病院・地域)での、自らの実践を通して、このテーマを真摯に論じてくれています。

マイナーな雑誌なので、よほど大きな書店でないと直接手にとって見ることはできないと思います。
ご面倒でも、取り寄せて、目を通して頂ければ幸いです。
ちなみに、目次は以下の通りです。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

■退院・地域移行支援の現在

『精神医療』第4次57号

編集:『精神医療』編集委員会
責任編集:古屋龍太・佐原美智子

●特集:退院・地域移行支援の現在

○巻頭言:退院・地域移行支援の現在~特集にあたり
 古屋龍太(日本社会事業大学/国立精神・神経センター)
○総論:退院・地域移行支援の現在・過去・未来~長期入院患者の地域移行は、いかにして可能か
 古屋龍太(日本社会事業大学/国立精神・神経センター)
○地域移行支援は地域の課題~精神障害者地域移行支援特別対策事業を通して
 岩上洋一(埼玉・地域生活支援センターふれんだむ)
○ピアサポータ-の活動を中心に始めた退院促進支援事業~東京・練馬の地域生活支援センターの取り組み
 河島京美(東京・練馬区社会福祉協議会石神井障害者地域生活支援センターういんぐ)
○病院から地域へ~私たちに今、みえてきたこと
 越智浩二・宮脇真理子・安里順子(京都・ねこのて訪問看護ステーション)
○地域移行支援事業の意義と課題~京都の精神障害者退院支援事業から
 波床将材(京都・京都市こころの健康増進センター)
○地域への再定住のために~共感からはじまるピア・ガイド・ヘルパーの活動
 三橋良子(神奈川・百合ヶ丘地域生活支援センターゆりあす)
○退院・地域移行~巣立ち会からの発信
 田尾有樹子(東京・巣立ち会)
○精神科病院と地域生活支援
 西澤美津子(長野・愛生会松岡病院)
○精神障害者の地域移行のためのプログラム開発および地域支援体制構築に向けた研究報告
 香山明美(宮城・宮城県立精神医療センター)
○やおき福祉会における「精神障害者地域移行支援事業」の取り組み
 柳瀬敏夫(和歌山・やおき福祉会紀南障害者地域生活支援センター)
○国立精神・神経センター病院社会復帰病棟での長期入院者への退院支援の実践
 伊藤明美(東京・国立精神・神経センター病院)

●コラム
○「精神医療」は「精神障害者福祉」を位置づけることができるのか~問われているのはパラダイムの転換である
 物江克男(京都・宇治おうばく病院けあほうむぴあ)
○外来診察室とペア家庭訪問
 丹羽國子(愛知・まちの縁側クニハウス&まちの学び舎ハルハウス)

●連載
○雲に梯(1):フラーはいやです
 久場政博(秋田・加藤病院)
○暴力のリスク・マネージメント(6):現代の精神医療における暴力を考える
 煤賀隆宏(北海道・札幌医科大学付属病院)
○引き抜きにくい釘(25):アイヅチのジェネシス
 塚本千秋(岡山県精神科医療センター)
○老いのたわごと(44):日本社会精神医学外史(その6)~戦争のことー立津政順、戦争中の松沢病院入院患者死亡率(昭和32年12月、精神神経誌)を中心に
 浜田晋(東京・はまだクリニック)

●書評
○『手記から学ぶ統合失調症~精神医学の原点に還る』(八木剛平著、金原出版刊)
 向谷地生良(北海道・北海道医療大学看護福祉学部)
○『自殺予防学』(河西千秋著、新潮社刊)
 浅野弘毅(宮城・東北福祉大学せんだんホスピタル)

○編集後記
 佐原美智子

(2010年1月10日 批評社発行、本体定価1700円)

見える/見えないバリア

2010年01月07日 10時53分41秒 | 日々の雑記
(昨日書ききれなかった、前回の記事からのつづきです)


でも、自分が歩行・移動等が困難になって、よくわかったことがあります。
今回のツアーでは、階段の昇降が困難な義母が同行していたので、なおさらでした。

駅や街中では、いつもエレベーターやエスカレーターのある場所を、目で探していました。
どこに行っても、上下の移動は階段が当たり前の手段になっています。
でも、平面の移動は比較的容易にできても、都市の縦の移動は、自力で難しい場合は機械に頼らざるを得ません。

逆向きのエスカレーターや階段の前で、何回立ち往生したことか…。
エレベーターのあるホームやビルの端まで、どれだけ遠回りして歩かねばならなかったことか…。

それらの移動手段や、スロープが設置されている場所の、ハード面の問題。
ほんの小さな段差や、歩道の傾きによる、バリアの大きさ。
駅員や店員に尋ねた時、対応の仕方に垣間見える「面倒くさい」表情。

できて当たり前の環境の中で、「できない」側の不全感や焦燥感、苛立ちや哀しみ。
頭ではわかっているつもりでしたが、ユーザーの立場になると、やはり違った角度で見えてきます。

バリアフリー法が施行されて、駅や公共の場所でのエレベーター設置は、飛躍的に進みました。
でも設置はされていても、本当にそれらを必要とする側の、利便性を考えた場所や仕組みになっているでしょうか。
都市ではエレベーターがなければ、あらゆる交通・情報へのアクセスが、不可能になります。
移動ができないと、様々な社会生活体験の機会が奪われてしまいます。

バリアの除去は、障害のある側が、頭を下げてお願いしなければならないのでしょうか。
バリアフリー化にしても、まだ行政や企業は「作ってあげた」という慈恵的福祉感覚になっているのではないでしょうか。
合理的な配慮がなされないことが、本人の社会参加の機会を奪っていると、どれだけの市民が思っているでしょうか。
何もしない不作為が、それだけで権利を侵害しているのだ、という感覚には程遠いように思います。

我が国の障害者基本法と、海の向こう側のADAとの距離。
何が障害者差別に当たるのか、法律に規定することは、やはりとても大事なことです。
バリアフリー法はひとつの風穴を開けたと評価できますが、やはりとても遅れています。
ソーシャルインクルージョンという言葉が、虚しく思われてきてしまいます。
障害者権利条約の批准に向けて、この国も大きく一歩、踏み出して欲しいと思います。

見えるバリア。
見えないバリア。
見えているのはほんの一部。
見えていないことがたくさんある…。

今更ながらに、そんなことを思い知らされた、僕の年末年始でした。


年末年始の苦痛

2010年01月06日 17時16分51秒 | 日々の雑記


あけましておめでとうございます。


2010年年頭にあたり、訪問の皆様にご挨拶申し上げます。
こんな気まぐれブログにお付き合いいただき、日頃のご愛顧に感謝いたします。
今後も、無理なく継続することを第一に、綴っていきたいと思いますので、よろしくお願いします。
もう、既に大学の授業は5日から再開しており、なんか気の抜けた挨拶になってしまいましたが…。


実は、昨年末の28日に、病院で職場の大掃除をしていて、腰を痛めてしまいました。
重い冊子の束を、順番に10束運んでいて、ある瞬間に「グキッ」と背中に来て…。
「まずい…やっちゃった…」と思いましたが、自分では如何ともしがたく…。
ただし、すぐに歩けない訳ではなかったので、腰椎ではなく筋断裂だと思うのですが。

御用納めの夜、残業を終えて家路に着く頃には、痛みはどんどん激しくなり…。
駅で階段を上がるのもつらく、「うぐっ…」とうめきながら、足を運んでいました。
家にあった冷湿布をしましたが、立ち上がりや歩き始めに、激痛が背中を走り…。
横になっても腰に鈍痛あり、寝返り打つたびに激痛が走り、結局たいして眠れず…。


仕事が休みに入り、出勤しなくて良かったのが、不幸中の幸いですが。
残念ながら、翌朝から関西に泊まりがけで行くことになっており…。
仕事ではないのですが、参加者8人の親族ツアーのコンダクターが僕で…。
市販の経皮鎮痛消炎湿布薬を、背中と腰回りにべたべた貼って、朝から新幹線で西へ…。

上本町のシェラトンをベースキャンプに、奈良へ行き、興福寺・東大寺を歩き…。
近鉄花園ラグビー場に行き、鶴橋のコリアンタウンを歩き、道頓堀界隈を歩き…。
地下鉄に乗り、私鉄に乗り、地下街を歩き、電車を乗り換え、駅を出て、街を歩き…。
やはり…、てきめんに…、来ました…、腰に…。


新幹線で帰京した翌日は、もう大晦日でしたが、身動きできず、家から出られず…。
世間は休みだというのに、自宅のパソコンには仕事のメールがひっきりなしに…。
家の大掃除もできず、座ってパソコンに向かうこともままならず…。
「うっ…」「ぐっ…」とうめきながら、そろそろと家の中を徘徊するのみ…。

息子からは「要介護状態だね」と言われ、一気に歳をとった感じです…。
自分が担当の共同研究の宿題は、大幅に作業の進行が遅れてしまい、皆さんに迷惑をかけてしまいました。
一昨年末のノロウィルスに続き、今回は、腰痛に苦しめられた年末年始でした。
自分は若いから大丈夫と思っている皆さん、…どうぞご自愛ください。


※画像は、携帯で撮った興福寺の五重塔です。