PSW研究室

専門職大学院の教員をしてる精神保健福祉士のブログ

医療保護入院の廃止に向けた議論

2022年03月20日 08時01分59秒 | 精神保健福祉情報

精神医療国家賠償請求訴訟研究会事務局長の古屋龍太です。

諸々の仕事に追われ、5か月間もブログ記事更新がストップしていました。

今回、精神医療政策をめぐって、霞が関の動きが加速していますので、コメントしておきます。

 

ご存じの方が多いと思いますが、厚生労働省では昨年10月より、以下の検討会が開かれています。

(以下をクリックすると、厚労省のホームページに飛びます)

検討会⇒地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

 

去る3月16日(水)には、第7回会合が開かれました。

精神科入院時の身体拘束やアドボケイト(意思決定支援)、退院後支援とともに、「医療保護入院の廃止・縮小」が議論されました。

約4時間にわたって、各関係団体を代表する構成員による熱い議論が交わされました。

以下で、その録画内容が限定公開されていますので、誰でも視聴することが可能です。

【第7回 地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会】

ユーチューブ⇒https://youtu.be/-HOlBQJTDQc

 

資料1で、検討会の今後の日程が示されいます。

かなり結論を急いで、急ピッチで検討会が進むことが示されています。

資料1⇒Microsoft PowerPoint - (資料1)本検討会の今後のスケジュールについて (mhlw.go.jp)

 

 結論が急がれる背景には、障害者権利条約に係る国連の対日審査が6月22日に迫っていることがあります。

日本政府の報告書では、「基本的な人権は憲法の下で保障されている」と述べていましたが。

障害者権利条約に係るDPI日本会議等のパラレルレポートは、国連に日本の精神障害者の置かれた状況を伝え、相当に説得力がありました。

国連からすれば、世界に例のない「精神科病院大国」である日本政府の政策には、懐疑的・批判的にならざるを得なかったのでしょう。

今回の審査で、国連からは「医療保護入院の廃止・縮小に向けた具体策とスケジュールの提示」が求められています。

 

ご存じのように、医療保護入院者は、日本の精神科入院患者の半数を占めています。

しかし、精神保健指定医1名の診察と「家族等」の同意だけで、患者を強制入院できる制度は、日本にしかありません。

医療保護入院の廃止・縮小に向けた論点整理の資料は、以下の資料2をご覧ください。

(お忙しい方は、この資料の10~16ページだけでも、ご覧ください)

資料2⇒000913259.pdf (mhlw.go.jp)

なお、全国「精神病」者集団の桐原尚之さんからも、今回の会議に合わせて「医療保護入院の論点整理」と題する資料が提出されています。

参考資料1⇒000913260.pdf (mhlw.go.jp)

 

上の資料2の12ページ「基本的考え方」で出てくる文言が、先日の精神国賠裁判(第6回口頭弁論)で被告国側が出した反論書とダブり、個人的には可笑しくなりました。

厚労省は「基本的には将来的な廃止も視野に」と記していますが、国連の対日審査では「撤廃」を前提とした実効的な方策が求められています。

そのための方策の方向性で掲げられている内容(12ページの視点①②③)は、目的と方法にギャップがあり、論点がズレている感じがします。

 視点①:入院医療を必要最小限にするための予防的取組の充実

 視点②:医療保護入院から任意入院への移行、退院促進に向けた制度・支援の充実

 視点③:より一層の権利擁護策の充実

この視点では、医療保護入院の「縮小」は図られても「撤廃」には至りません。

厚労省が、背水の陣で落としどころを探った、苦肉の策なのでしょう。

担当官僚の皆さんのご苦労がうかがわれ、気の毒にすら思われます。

 

しかし、厚労省の方々には「この方策で、国連の対日審査に堪え得る回答となっていますか?」と尋ねたいところです。

厚労省はこれまで「大人の事情」により、常に業界団体の日本精神科病院協会に忖度しながら政策を進めてきました。

その結果、日本は世界の精神病床の18%のシェアを占める(WHOのレポート)世界一の「精神科病院大国」になりました。

そして、何十万人という長期社会的入院患者と死亡転帰患者を生み、「収容所列島」として人権後進国ニッポンの象徴となってきました。

その厚労省も、国際的に拘束力のある「条約」には抗しきれないようで、対日審査に堪え得る準備を迫られているのでしょう。

国内の当事者の発言には耳を傾けないのに、外圧には相変わらず弱いんだなと思います。

世界の常識に沿って、日本の「非常識」を変える好機ともなる、この検討会の指し示す方針は、とても重要なものになります。

 

個人的には、医療保護入院を廃止するためにも、ベッドがある限りは患者も減らないと考えています。

この機会に、実効性のある病床削減戦略をセットする必要があると考えています。

日精協は認めないでしょうし、厚労省もそこには手を突っ込みたくないのが本音でしょう。

しかし、きっと精神医療ユーザーである当事者たちは大いに支持してくれるはずです。

そして、ようやく「脱施設化」に取り組み始める日本国を、国連も評価してくれるはずです。

この障害者権利条約の対日審査をめぐる動向が、精神医療国賠の裁判にも、追い風となることを祈っているところです。

 

参考

・障害者権利条約に係るパラレルレポートに関する記事は、ネット検索をすると結構ヒットします。

  ⇒日弁連・DPI日本会議・日本障害フォーラム・全国精神病者集団等

・パラレルレポートについての、分かりやすい解説は以下の文献をご覧ください。

  ⇒佐藤久夫(2020)障害者権利条約パラレルレポート.精神医療(第4次)第99号;99-106

・医療保護入院の問題点等については、以下の書籍が結構まとまっていると自負しています。

  ⇒古屋龍太・太田順一郎編(2020)特集:医療保護入院―制度の廃止に向けて.精神医療(第4次)第97号;3-93

・アドボケイトについては、以下の書籍が分かりやすくまとまっています。

  ⇒太田順一郎・大塚淳子編(2021)特集:精神科医療における権利擁護(アドボケイト).精神医療(第5次)第2号;3-74

 

※今回の記事は、精神国賠研究会会員メーリングリストに3月19日に配信した内容と、一部重複することをお断りします。

 


精神保健福祉法の改正とPSWの魂

2013年06月21日 22時19分24秒 | 精神保健福祉情報

今日は日中、清瀬であれこれやって済ませて、
夕方から、四谷の日本社会福祉士会に行って、
会議を二つ済ませて、22時前に帰ってきました。

それでも、23時過ぎの帰宅が常態化していたので、今日は早い方です。
その時間からの夕飯は、本当は良くないのはわかっているんですけど。
なかなか、そんな生活スタイルが改まりません。

明日、明後日は、いよいよ学内学会。
丸二日間、フル稼働になります。
どうか、参加者がたくさん来てくれますように♪

僕たちが日々慌ただしく過ごす間にも、政治は動いています。
今回の国会は、福祉やソーシャルワーカーにかかわる法律が目白押しでした。
それにしては、目立ったアクションもないままだったのが、気になりますが。

今日は、そんな中から精神保健福祉法改正の概要をピックアップ。
もう改正内容は、既にネットで十分周知されていると思いますし、
1250人集まった、先週の日本精神保健福祉士協会全国大会でも報告されましたが。

今後の精神保健医療福祉を占う、大事な法改正ですので。
やはり、ここで、きちんと取り上げておきたいと思います。
穴ぼこだらけの眉をひそめる困った改正法でも、その影響はやはり甚大です。

今回の法改正は、精神障害者の地域生活への移行を促進することを目標に掲げていますが、
その内容としては、精神障害者の医療に関する指針(大臣告示)を策定し、
保護者制度を廃止し、医療保護入院における入院手続等の見直し等を行う、
といった、抜本改革には程遠い、いささか淋しいものでした。

医療保護入院は一切いじらないまま、保護者制度だけを廃止する…。
非自発的入院の同意を家族の責に帰すという、昔ながらの性格は何も変わっていません。
「なぜ精神保健福祉士が、家族に代わって担わないのか?」というご意見を頂きましたが、
「Y問題」同様の事案が起きることは明白で、当事者の権利擁護にはならないでしょう。

改正法の他の条文にも、精神保健福祉士がやたらと登場してきます。
国会の論戦でも、精神保健福祉士がやたらと語られています。
閉塞的な事態を打開するPSWへの期待の大きさが、表れているのでしょう。
パターナリズムではない価値を掲げるPSWが、ようやく認められてきたのでしょう。

ただ、そうした期待の大きさにPSWが充分に応えられているかというと、やや疑問です。
経営者や管理者と、十分に渡り合える「戦うPSW」がどれだけいるか?
他職種や他機関など、異なる文化・価値を持つ者と、どれだけ対等に協働できているか?
そして、何より当事者・利用者の主体性を尊重し、その利益をどれだけ追求できているか?

さまざまな場面で、精神保健福祉士が取り上げられる度に、思います。
先週、金沢であった全国大会のテーマは「PSWの魂の再生」でした。
新しい法律、新しい制度、新しい時代の中で、「戦うPSWの魂」とは何であったか、
多くの仲間たちと考え続けていきたいと思います。

 

★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆

「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律」概要

(1)精神障害者の医療の提供を確保するための指針の策定
厚生労働大臣が、精神障害者の医療の提供を確保するための指針を定めることとする。

(2)保護者制度の廃止
主に家族がなる保護者には、精神障害者に治療を受けさせる義務等が課されているが、家族の高齢化等に伴い、
負担が大きくなっている等の理由から、保護者に関する規定を削除する。

(3)医療保護入院の見直し
1)医療保護入院における保護者の同意要件を外し、家族等のうちのいずれかの者の同意を要件とする。
  *「家族等」とは、配偶者、親権者、扶養義務者、後見人又は保佐人をさす。
    該当者がいない場合等は、市町村長が同意の判断を行う。
2)精神科病院の管理者に、以下を義務付ける。
  ・医療保護入院者の退院後の生活環境に関する相談及び指導を行う者(精神保健福祉士等)の設置
  ・地域援助事業者(入院者本人や家族からの相談に応じ必要な情報提供等を行う相談支援事業者等)との連携
  ・退院促進のための体制整備

(4)精神医療審査会に関する見直し
1)精神医療審査会の委員として、「精神障害者の保健又は福祉に関し学識経験を有する者」を規定する。
2)精神医療審査会に対し、退院等の請求をできる者として、入院者本人とともに、家族等を規定する。

2.施行期日
平成26年4月1日(ただし、1.(4) ①については平成28年4月1日)

3.検討規定
政府は、施行後3年を目途として、施行の状況並びに精神保健及び精神障害者の福祉を取り巻く環境の変化を勘案し、医療保護入院における移送及び入院の手続の在り方、医療保護入院者の退院を促進するための措置の在り方、入院中の処遇、退院等に関する精神障害者の意思決定及び意思の表明の支援の在り方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずる。

精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律案に対する付帯決議
                                                                               
平成25年5月30日
参議院厚生労働委員会

 政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。

一、精神障害のある人の保健・医療・福祉施策は、他の者との平等を基礎とする障害者の権利に関する条約の理念に基づき、これを具現化する方向で高ぜられること。

二、精神科医療機関の施設基準や、精神病床における人員配置基準等については、精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針の内容を踏まえ、一般医療との整合性を図り、精神障害者が適切な医療を受けられるよう、各規定の見直しを検討すること。

三、精神障害者の意思決定への支援を強化する観点からも、自発的・非自発的入院を問わず、精神保健福祉士等専門的な多職種連携による支援を推進する施策を講ずること。また、非自発的入院者の意思決定及び意思表明については、代弁を含む実効性のある支援の在り方について早急に検討を行うこと。

四、非自発的入院の減少を図るため、「家族等いずれかの同意」要件を含め、国及び地方自治体の責任、精神保健指定医の判断等、幅広い観点から、速やかに検討を加えること。

五、精神疾患の患者の権利擁護を図る観点から、精神医療審査会の機能強化の在り方を検討し、必要な措置を講じること。

六、非自発的入院の特性に鑑み、経済面も含め、家族等の負担が過大にならぬよう検討すること。

七、医療保護入院等の患者の退院後における地域生活への移行を促進するため、相談対応や必要な情報の提供、アウトリーチ支援など、その受け皿や体制整備の充実を図ること。

右決議する。

精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

平成25 年6 月12 日
衆議院厚生労働委員会

政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。

一 精神障害のある人の保健・医療・福祉施策は、他の者との平等を基礎とする障害者の権利に関する条約の理念に基づき、これを具現化する方向で講ぜられること。

二 精神科医療機関の施設基準や、精神病床における人員配置基準等については、精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針の内容を踏まえ、一般医療との整合性を図り、精神障害者が適切な医療を受けられるよう、各規定の見直しを検討すること。なお、指針の策定に当たっては、患者、家族等の意見を反映すること。

三 「家族等いずれかの同意」による医療保護入院については、親権を行う者、成年後見人の権利が侵害されることのないよう、同意を得る優先順位等をガイドラインに明示し、厳正な運用を促すこと。

四 精神障害者の意思決定への支援を強化する観点からも、自発的・非自発的入院を問わず、精神保健福祉士等専門的な多職種連携による支援を推進する施策を講ずること。また、代弁者制度の導入など実効性のある支援策について早急に検討を行い、精神障害者の権利擁護の推進を図ること。

五 非自発的入院の減少を図るため、「家族等いずれかの同意」要件も含め、国及び地方自治体の責任、精神保健指定医の判断等、幅広い観点から、速やかに検討を加えること。

六 精神疾患の患者の権利擁護を図る観点から、精神医療審査会の専門性及び独立性を高めることや精神医療審査会の決定に不服のある患者からの再度の請求への対応など機能強化及び体制の整備の在り方を検討し、必要な措置を講ずること。

七 非自発的入院の特性に鑑み、経済面も含め、家族等の負担が過大にならぬよう検討すること。

八 精神科病院の管理者に対し、医療保護入院について、可能な限り、患者の人権に十分配慮した入院、入院後の治療行為の患者本人への説明に加えて、速やかな退院の促進に努めることを指導徹底するとともに、医療保護入院等の患者の退院後における地域生活への移行を促進するため、相談対応や必要な情報の提供、アウトリーチ支援など、その受け皿や体制整備の充実を図ること。

九 認知症の人については、あくまでも住み慣れた地域で暮らし続けることを基本に置き、
精神科病院への「社会的入院」の解消を目指すとともに、地域の支援・介護体制の強化に
取り組むため、「認知症施策推進5か年計画(オレンジプラン)」の推進など医療福祉全
般にわたる総合的な対策を講ずること。

十 認知症の人の本人意思を尊重する観点から、成年後見制度の改善・普及のほか、本人の意思や希望をできる限り早期に確認し、それを尊重したケアの提供を確保する取組を進めること。

右決議する。

 

※画像は、エクセル東急金沢に掲げられた「PSW石川大会」の看板。


ソーシャルワーカーは生活扶助費削減に反対する

2013年02月21日 19時53分51秒 | 精神保健福祉情報

こんばんは、龍龍です。
すっかりブログの更新が間遠になってしまっています。
先月は、とうとう1回しか記事をアップできませんでした。
自転車操業というか、綱渡りのような日々を過ごしています。

この間に、学部生達の授業終了やらPSWの国家試験もありました。
研究班のワークショップやら、研究成果報告会もありました。
国際アンチスティグマ会議もありましたし、いろいろな研修会やら勉強会もありました。
専門職大学院では、卒業のかかった実践・学修報告会がまさに進行中です。
いろいろ書き綴りたい事柄がたくさんあるのですが、今は時間がありません。

全然更新してないブログを訪問して下さっている皆さん、ありがとうございます。
求人情報を寄せて頂きながら、記事でアップすることができないで、すみません。
大学院の授業も間もなく終わりますので、少しずつ発信に取り組みたいと思います。

個人的な事柄だけでなく、この間で精神保健福祉の周辺も動きが急になっています。
今国会上程が予定されている精神保健福祉法の改正も、いよいよ最終局面です。
ソーシャルワークの国際定義のその後も、報告しておかねばならないのですが。
今回は取り急ぎ、生活保護の動向について触れておきます。

PSW協会が10月に出した「生活保護基準切り下げ反対」声明は、前に記事にしました。
今回、PSW協会を含む社専協(社会福祉専門職協議会)が意見をとりまとめました。
本日付で、マスコミ各社にプレスリリースしています。
今後、社専協4団体が共同歩調で、政府・国会への働きかけを展開していく予定です。

デフレの中で国民所得が落ち込む中、生活保護に対する国民感情が悪化しています。
「不正受給」がマスコミで喧伝され、生活保護バッシングが政治を動かしています。
しかし、その多くはイメージで語られており、厳密なデータに基づいていません。
イメージで国民感情の不公平感を扇り、貧困の問題がすり替えられてしまっています。
社会福祉の担い手であるソーシャルワーカーとしては、看過できない事態です。

以下に、その声明を貼り付けておきます。
各団体のウェブサイトも示しておきます。
各地域・各現場での周知をお願いできれば幸いです。


★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★

「ソーシャルワーカーは生活扶助費の削減に反対します」

本年1月 29日、政府は生活保護における生活扶助費の削減を盛り込んだ 2013年度予算案を閣議決定し、間もなく国会における予算審議が予定されています。
私たちソーシャルワーカーは、社会福祉分野において、子ども、障がい者、患者、高齢者などが抱える多岐にわたる生活課題の解決に向けた支援を行う専門職として、社会保障制度の根幹をなす生活保護制度の堅持を求めるとともに、生活扶助費の削減には断固反対します。

最低生活基準については、厚生労働省に置かれた社会保障審議会最低生活基準部会において、一般低所得世帯の消費実態と均衡が図られているか検証を行い、本年 1月 18日に報告書をまとめました。
同部会は、検証結果に関する留意事項として、「今後、政府部内において具体的な基準の見直しを検討する際には、今回の検証結果を考慮しつつも、同時に検証方法について一定の限界があることに留意」するとともに、「生活扶助基準検証の際参照されてきた一般低所得世帯の消費実態については、第1・十分位*の所得分布における動向に留意しつつ、なお今後の検証が必要である」ことを指摘して、生活扶助基準の見直しには慎重に配慮すべきと言及しています。

閣議決定した生活扶助費の削減は、2008年と 2011年における生活扶助に相当する消費品目の消費者物価指数の比較によるデフレ調整分4.78%を根拠の一つとしています。
しかしながら、この消費品目には生活保護受給者では元来支出割合が少ない教養娯楽費(マ
イナス7.3%)などが含まれています。
最低生活費の主要消費品目である食料費はマイナス0.5%、光熱・水道費はマイナス1.2%(2012年との比較においてはプラス2.8%)であることから、削減の明確な根拠はないと言えます。

昨年来の一連の生活保護バッシングは、生活保護受給者の尊厳を深く傷つけることとなりましたが、生活扶助費の削減はそのことに追い打ちをかけることとなります。
また、来年度から予定されている消費税率の引き上げは、社会保障の財源確保を理由としておきながら、保護受給者の消費可能額をさらに減らすこととなり、深刻な矛盾を生み出すこととなります。

問題の所在は、国が定めた最低生活基準以下の生活を強いられている国民が多く存在していることであり、健康で文化的な最低限度の生活を営む国民の権利が保障されていないことを強く訴えます。

2013年2月15日

社団法人日本精神保健福祉士協会
 会長 柏木一惠
公益社団法人日本医療社会福祉協会
 会長 佐原まち子
特定非営利活動法人日本ソーシャルワーカー協会
 会長 岡本民夫
社団法人日本社会福祉士会
 会長 山村 睦

※「第1・十分位」
全世帯を所得階級別に 10等分したうち一番低い層の世帯。
生活保護基準以下の世帯が多く含まれる。

<ウェブサイト>
社団法人日本精神保健福祉士協会:http://www.japsw.or.jp/
公益社団法人日本医療社会福祉協会:http://www.jaswhs.or.jp/
特定非営利活動法人日本ソーシャルワーカー協会:http://www.jasw.jp/
社団法人日本社会福祉士会:http://www.jacsw.or.jp/

 

※画像は、雪景色の東京・四谷駅周辺。1月14日の大雪で、移動も大変でした。

 

 


たかが一票、されど一票。

2012年12月16日 08時15分49秒 | 精神保健福祉情報

おはようございます。
日曜日だというのに、夜明け前から活動を開始している龍龍です。

今日は衆議院選挙の日ですね。
東京は、都知事選も重なっています。
もう、午前7時から、投票が始まっています。
僕もこのあと、仕事に出る前に、近くの小学校に行ってきます。

それにしても、今回の選挙…。
ミニ政党乱立で、何がなんだかわからないですね。
キャスティングボートを握る「第三極」は、本当に誕生するのでしょうか?
僕は学生時代「第三極」を提唱して、第一極、第二極の人たちに随分睨まれました(笑)。

何も期待できなくて、投票になんて行く気になれない人が、多いんでしょうけど。
無投票棄権は、最大多数政党に白紙委任するってことになりますしね。
無効票投票は、結局は多数政党を利することになり、自己満足以下にしかならないし。
けっして幻想を追い求めることなく、保険も設定せず、選択するしかないんでしょうね。

それにしても、何を争点にして選んで良いのかわからない場合。
どうしても、イメージが優先されるのは、仕方ないんでしょうけど。
自分(たち)の立場・視座・価値による選択基準を立てるしかないですね。

ここでは、ソーシャルワーカーの立場から、選択のための情報を掲載しておきます。
福祉分野・障害者領域から発せられた、政党に対する公開質問状です。
今さら掲載しても遅いのでしょうけど、今から投票に行く人には参考になるかも?

ひとつは、日本精神保健福祉士協会をはじめとした、介護・福祉系団体の質問状。
以下の11団体が連名で尋ね、各政党が回答を寄せています。

社団法人日本社会福祉士会
社団法人日本社会福祉士養成校協会
社団法人日本介護福祉士会
社団法人日本介護福祉士養成施設協会
社団法人日本精神保健福祉士協会
一般社団法人日本精神保健福祉士養成校協会
公益社団法人日本医療社会福祉協会
特定非営利活動法人日本ソーシャルワーカー協会
社団法人日本社会福祉教育学校連盟
日本介護福祉学会
日本地域福祉学会

もう一つは、障害当事者団体を中心とした「日本障害者協議会(JD)」の質問状。
日本精神保健福祉士協会をはじめとした専門職団体も含め61団体が、加盟しています。
国際障害者年を契機として発足した、横断的な組織ですね。
今後の障害者施策を問う、大事な質問に、各政党が回答しています。

それぞれ各項目をざっと見ても、政党によりかなりニュアンスは異なります。
各政党とも「いいこと」を書いてますが、その価値基準はだいぶ違いますね。
触れてないこと、書かれていないことの、行間を読むことが重要と言えるかも?

各政党とも「生活保護」についての姿勢を示しており、大きな論点になります。
一方、公約では「障害者施策」については、ほとんど触れられていません。
これに対して、日本精神保健福祉士協会は「協会見解」を出しています。

いずれもネット上で既に発信されていることではありますが、
以下にアクセス情報を貼り付けておきます、まだ見てない方はご覧ください。
できれば、投票に行く前に!(笑)


■福祉・介護関係11団体による国政政党への公開質問に対する回答
http://www.jascsw.jp/koukaishitsumon/kaito.html

■日本障害者協議会(JD)による国政政党への公開質問に対する回答
http://www.jdnet.gr.jp/report/12_11/121130.html

 

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■社会保障政策に係る各政党の政権公約に関する見解

2012年12月10日
社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木 一惠
 
現在、衆議院総選挙に向けて各政党から政権公約が公表されている。
本協会は、精神保健福祉の専門職団体の立場から、この間の生活保護をはじめとする社会保障制度を巡る政策動向に注目し見解を公表し、要望を行ってきた。

社会保障政策に係る政権公約に着目すると、いくつかの政党において本協会としては看過できない事項が含まれているため、本協会としての見解をここに表明する。

 1.社会保障制度における「自助」「自立」を第一とする考え方について

社会保障制度は、日本国憲法が掲げる基本的人権を具体的に保障するための制度であり、国家の責任、すなわち「公助」として等しく国民に提供されなければならない。
たとえば、社会保障・財政に関して「『自助』、『自立』を第一に、『共助』、『公助』を組み合わせ、受益と負担の均衡がとれた持続可能な社会保障制度を目指す」として自助や自立を優先する公約は、社会保障の圧倒的な後退を意味するものであり、障害者や生活困窮者など社会的弱者の排除にもつながる問題である。
社会保障制度は、憲法に規定された生存権保障における国家責任を果たすべく、『公助』を第一に考えるべきである。

 2.生活保護制度の見直しに係る考え方について

多くの政党では、生活保護制度の見直しを掲げているが、特に生活保護の給付水準引き下げや、給付の有期制導入の検討を掲げることは、最低限度の生活保障よりも財政目的の引き締め政策であると考えられる。
本協会は、保護基準の引き下げが、国民の生活水準の低下を招くことにほかならないという危機意識を有しており、むしろ、最低生活基準以下の生活を余儀なくされている人びとに対する社会保障制度のありようを、生活保護制度の課題として見直すことが必要であると考える。
また、ケースワーカーの民間委託や成功報酬制の導入検討は、国民の健康で文化的な最低限度の生活を保障する国の責任の放棄ともいえ、現在も指摘されている漏給の存在に対する認識不足のまま、生活保護の保護抑制政策を推進する姿勢には反対である。

 3.障害者政策に係る公約について

前回の衆議院総選挙の際には障害者政策が争点の一つとされていたが、今回の各政党の政権公約では、具体的な政策を掲げている政党が少ない。
少なくとも、障害者権利条約の批准の条件の一つと考えられる「障害を理由とする差別の禁止に関する法律」の制定を掲げるよう要望するとともに、未だに社会的入院を余儀なくされている精神障害者への地域移行支援の推進及び地域生活支援体制構築のための、具体的な障害者施策の検討を強く求めたい。

以上

 

※画像は、茗荷谷で食べた「バクダン丼」。

  多数政党入り乱れての今回の選挙とは、関係ありません。


生活保護基準引き下げへの反対声明

2012年11月01日 20時37分58秒 | 精神保健福祉情報


7月4日に「生活保護『不正受給疑惑』問題への見解」という記事をアップしましたが、
生活保護へのバッシングは、「基準引き下げ」という具体的な形で現れてきています。

一芸人のプライベートなことから発した、生活保護への締め付けは、
国会議員や厚労大臣らの発言を追い風に、最悪のシナリオで展開してきています。

9月28日の社会保障審議会「生活困窮者の生活支援の在り方に関する特別部会」では、
「『生活支援戦略』に関する主な論点(案)」が厚労省側から示されました。

その後半「生活保護制度の見直しに関する論点」では露骨な給付抑制策が示され、
生活保護の適用の厳格化、不正受給対策強化の方針が示されています。

稼働能力ありと考えられる者の審査厳格化、勤労控除見直し、調査・指導権限の強化、
扶養義務の強化、生活全般の家計管理、医療扶助適正化、等々の文言が並んでいます。



日弁連や生活保護問題対策全国会議が、既に反対声明を公表していますが、
昨日、日本精神保健福祉士協会も理事会の議決を経て「断固反対」を表明しました。

協会の構成員の方には、まもなく郵便で声明文書が届けられるはずです。
協会のホームページにもアップされ、関係団体・報道各社にも送られています。

一時期のマスコミ報道が、世論を煽ってこの問題を大きくしたのは確かですが、
むしろ厚労省と財務省を中心とした、既定のシナリオがあったと考えていいでしょう。

消費増税論議以前から、社会保障費の財源問題は今に始まったことではないですし、
生活保護の「適正化」は、「不公平」に敏感な国民世論を操作しやすいテーマです。

「不正受給」の存在と発覚は、税金を納めるネガティブな国民感情を強く刺激します。
「生活支援戦略」は即座に、性悪説にもとづく管理強化、受給抑制に至ります。



今、多くのPSWたちが、福祉事務所の申請相談窓口に非常勤配置されてきています。
生活困窮を訴える目の前の人と、受給抑制を図る役所の間で板挟みに合っています。

最後のセーフティーネットのゲートキーパーである現業員(ケースワーカー)の皆さん。
PSWは、当事者に真摯に向き合う皆さんの、現場での静かな闘いを応援しています。


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生活保護基準の引き下げに断固反対する
―国民の健康で文化的な最低限度の生活保障の堅持を!―

2012年10月31日
社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木 一惠

本協会は、社会福祉学に学問的基盤を置く専門職団体として、生存権保障の根幹を揺るがすような生活保護基準の引き下げに断固反対の立場をとるものである。

2012年9月20日の日本弁護士連合会会長による反対声明の主旨(生活保護基準が国民の生存権保障に与える影響の大きさへの認識、当事者の声をも聴取し純学術的観点からの慎重な検討の必要性への認識、漏給層が大量に存在する現状の認識)に賛同したうえで、精神障害者の社会的復権・権利擁護と精神保健福祉の向上のための活動を行う専門職団体の立場から、生活保護基準の引下げに反対する理由を以下に述べる。

1.生活保護と精神障害者支援の関連から

我が国の精神障害者は、国策としての隔離収容主義の弊害である差別と偏見を受け続けた長い歴史を有し、今なお社会的入院の状態に置かれている人々も少なくない。
また、長く医療の対象であって福祉の対象とされてこなかった歴史的背景もあり、他障害に比べて雇用の保障も立ち遅れている。
年金や医療などの社会保険や福祉サービスも十分とはいえない状況下で、精神障害者の生活支援施策として、生活保護が唯一の社会保障制度となることも稀ではない。

よって我々は、この基準の引き下げが、最後のセーフティネットから漏れる精神障害者を増やすことに直結するという危惧を抱かざるを得ない。
その見直しには、「財政目的の削減ありき」ではない検討や、生存権保障の理念に則った現状の認識に基づく慎重な検討を求める。

2.精神科医療の利用者への支援の観点から

地域生活を送る精神障害者には、精神科医療の活用により病状の緩和軽減を保つことで生活の安定を図っている人が少なくない。
こうした人々にとって、継続的に外来やデイケアに通院通所すること、訪問看護等のアウトリーチ支援を受けることは、常に経済的負担を伴うものである。
保護基準が引き下げられることにより、生活保護を受給することができず、しかも経済困窮のために切り詰めた生活を余儀なくされ、医療の利用を控え諦める人が増すことも想定される。

また、失業率と並行するといわれる自殺の問題に関しては、年間約3万人の自殺者が存在する状況が継続し、2010年の統計ではその原因・動機が特定できる者において、経済・生活問題は31.6%、精神的な健康問題は42.6%にも上る(警察庁調べ)。
保護基準の引き下げによって生活困窮者を増やし、適切な精神科医療の利用を阻むことは、我が国が直面する自殺予防の問題をより深刻化させる危険性が高い。

このように、生活保護基準の引き下げは、利用者の精神的健康の保持増進を脅かす問題であり、我々は日常的にその受診受療を支援する立場から大きな危機感を抱くものである。
保護基準引き下げによって、医療が受けられなくなる人が出ないよう生存権保障の理念に立ち返った慎重な見直しを求めたい。

3.精神障害者の退院促進の観点から

厚生労働省が精神科病院に長期在院している退院可能な患者の地域移行支援に着手して既に10年が経過した。
しかし、長期入院者が退院に至る過程においては多様な支援策を必要とし、順調に退院促進が実現しているとは言い難い現状もある。

一方、これらの退院可能な患者の約2割が生活保護受給者であり、その人々に対する退院促進の取り組みは生活保護制度下でも推進されている。
退院促進にはいくつかの方策が講じられているとはいえ、今後、生活保護基準の引き下げにより、この支援を活用する機会を逸する人が増すとすれば、退院促進という国の方向性に逆行するともいえる。
このような事態は避けなければならないことから、保護基準の見直しにあたっては、派生する弊害までを見据えた慎重な検討を求めたい。

4.最後のセーフティネットの堅持を求める立場から

生活保護受給者の中には、その必要がありながら未だ精神科治療や保健福祉サービスの利用に至らず、他の社会資源とのつながりを持たない人々が存在する。
生活保護ケースワーカーは最後のセーフティネットとして、これらの人々を医療・福祉の各関係機関につなぐ地道な働きをしているが、保護基準の引き下げに伴って生活保護ケースワーカーの援助さえ受けられなくなる未治療・未受診者が増すことも予測される。
これは、換言すれば生存権保障のための援助の手が届かない人々を増やすことであり、国民の生命と生活を脅かす事態といえる。

本協会は、特に精神障害者への支援を生業とする専門職団体として、厚生労働大臣に対してもこのような危機感を共有したうえでの基準見直しを行うよう要望し、現段階における生活保護基準の引き下げには断固反対する。

なお、我々は、精神保健福祉領域におけるソーシャルワーカーとして、生活保護ケースワーカーとも連携協働しつつ、精神障害を持ちながら生活する人々の自己実現に向けた支援(広義の自立助長)を日々実践しており、引き続き生活保護の動向も見据えつつ各現場にあって誠実に職務遂行することを併せて表明する。

以上


公益社団法人日本精神保健福祉士協会ホームページhttp://www.japsw.or.jp/ugoki/yobo/2012.html#10


※画像は辺野古の海辺に咲く花。


保護者制度廃止とPSW

2012年10月31日 20時34分21秒 | 精神保健福祉情報

今月10月、一度も記事更新ができないまま31日の末日を迎えてしまいました。
会議と、授業と、宿題に追われて、相変わらずの自転車操業の日々です。

先週末10月27日~28日は、日本精神保健福祉士協会の会議に出ていました。
臨時理事会と、都道府県支部長会議と、公益社団法人移行の臨時総会、三連ちゃん。

理事会の議論は多岐にわたり、一件の記事ではとても収まりませんが、一つだけ。
「新たな入院制度に関する本協会の見解」を決めたので、以下に貼り付けておきます。

ようやく、精神保健福祉法の保護者制度が廃止になることが確定しました。
来年の通常国会(1~6月)に精神保健福祉法改正案が上程される見通しです。

精神病者監護法(1900年)以来、日本でご家族に過重な負担を強いてきた保護者制度。
数多の問題が指摘されながら、実に1世紀以上にわたり放置され来た制度が変わります。

同時に、同意入院~医療保護入院の非自発的入院制度が大きく変わることになります。
「新たな入院制度」がどのような形で示されるのか、注視していく必要があります。

保護者制度を廃止した後に、保護者の役割を精神保健福祉士に求める声もありました。
病院ないし地域のPSWが、入院の要否にかかわる判断をし意見を述べるというものです。

しかし、今回の協会見解表明で、PSWはこれを明確に拒否しました。
かつて「Y問題」を経験してきた専門職能団体としては、当然の選択と言えるでしょう。

早期の見解表明を優先した以下の見解は、内容的に荒削りなことは否めません。
それでも、今後の精神医療法制の組み立てには、大事な骨格を示していると思います。

法改正の案文そのものは、厚生労働省で今後さらに検討されていくのでしょうが。
どのような具体的な法制度の青写真が描けるのか、議論は重ねていく必要があります。


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新たな入院制度に関する本協会の見解

2012年10月29日
社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木 一惠

障害者権利条約の批准に向けて国内法が整備される中で、障がい者制度改革推進会議での議論も踏まえ、厚労省内に設置された検討会では精神保健福祉法の改正による保護者制度の廃止と、その際の強制入院のあり様について基本的な考え方が示された。
これは、精神病者監護法施行以来110年にわたる日本の精神保健福祉体制の大きな転換と言われている。
これに関しては社会防衛を優先し、隔離収容施策を民間に依存しながら貫いてきた国策への反省の上に立つものと受け止め、真に精神障害者の社会的復権を成し遂げるという活動方針を掲げている本協会も肯定的に評価したい。

今後も法改正に向けて詳細の検討が継続されることから、ここで本協会としての見解を改めて掲げておきたい。
見解の中では、現状に照らして実現可能な制度設計を提案するのではなく、精神保健福祉士として「あるべき方向性」を示す提言も含まれている。
これについては今後その実現に向けて我々精神保健福祉士が何をなすべきか具体的な提案が必要となってくるだろう。
構成員各位には各々の現場で協議を展開し、積極的なご意見をお寄せいただきたい。

1.保護者制度の廃止について

保護者制度は精神病者監護法の流れを汲み、家族(三親等以内の親族)に、患者の意思に反する「監禁と保護」の責任の一端を負わせる一方、患者の治療や社会復帰への協力を含む権利擁護機能も持たせようとしたものであり、長年月に渡り家族に矛盾した役割を課していた点は早急に改められるべきである。

○本制度の廃止には全面的に賛同する。

○保護者に代わる同意者の機能を精神保健福祉士は担ってはならない。

2.医療保護に変わる新たな「非自発的入院」形態の創設について

本協会が掲げる精神障害者の自己決定の原則に照らせば、本人の同意なく患者を強制入院させる仕組みについては反対の立場であることは言うまでもない。
しかし厳密な精神医学的診断の結果、入院という形態でなければ治療困難で、患者本人の同意がどうしても得られない病状にある場合には、非自発的入院以外の選択肢がないであろうことは十分に想定される。
そこで、本人の同意なく患者を強制入院させる新たな仕組みを創設する場合には、障害者権利条約、国際人権B規約、精神疾患を有する者の保護及びメンタルヘルスの改善のための諸原則を遵守し、患者の権利擁護を第一義とする仕組みを整備しなければならない。
なお非自発的入院には、社会状況や生活環境の不備を理由とする保護的な要素は含まないことを前提とする。
「医療と保護」における保護の拡大解釈が社会的入院を助長してきたことを忘れてはならない。
保護は医療ではなく福祉その他の手立てによってまかなわれるべきである。

○非自発的入院を必要とする者は、「保護」ではなく強制的にでも医療提供が必要と医学的に診断される者に限定することを求める。

○精神保健福祉士は、非自発的入院の医学的診断場面の要否判断には加わらないことを確認する。

○強制入院の判断には複数の医師による診察を求めるものとし、その要否を診断する指定医に対しては研修制度の強化を求める。

○入院の是非については行政もしくは司法による審査機能を強化する仕組みを求める。

3.新たな仕組みでの強制入院患者の権利擁護について

閉鎖的な環境に強制的に入院させられた患者に対する医療機関による不当入院等の権利侵害を防ぐため、特に入院決定及び入院継続に際しては権利擁護の観点からの新たな仕組みが導入される必要があると考える。

<医療機関の責任・義務>
○非自発的入院の決定と同時に、退院支援・生活支援の観点からその医療機関の精神保健福祉士が必ず関与するシステムとすること

○出来うる限り早期の退院を目指し、最善の治療努力をすること

○当事者を含む第三者委員を構成員に含む院内権利擁護委員会設置を義務化すること

<精神医療審査会の機能強化による監視体制の厳格化>
○入院から短期間の内に審査会を開催し、入院の是非を判断する。3ヵ月以上の入院の長期化に対しては報告書の提出や必要に応じて意見聴取などを義務付けること

○医療機関において退院請求・処遇改善請求システムが正常に機能しているかどうかを評価すること

○審査会の構成メンバーに精神保健福祉士を必置とすること

<代弁者制度の創設>
○新たな強制入院の決定と同時に、患者の権利擁護の担い手の一部として院外から患者が指定する代弁者を選定する仕組みの創設を求める。

○患者の判断能力等により代弁者の選定が困難な場合を想定し、当該患者が不利益を受けないよう代弁者制度と同等の権利擁護制度の仕組みを合わせて創設することを求める。

なお、ここに記した精神保健福祉士は、所定の研修を修了した者であることを要件とする必要があると考える。

以上

地域移行・地域定着支援事業の存続要望

2012年08月22日 18時58分08秒 | 精神保健福祉情報

長期在院精神科患者の地域移行・地域定着支援は、この4月から個別給付化されました。
その単価設定等については、以前このブログでも紹介させて頂きました。

4月以降、どうなったかというと、危惧されていたことが明らかになってきています。
個別給付化ではカバーできない事柄について、ハッキリ支障が生じていると言えます。

個別給付の前提は、利用者の「退院したい」という意思に基づく契約です。
「退院したい」と誰もが言える環境なら良いのですが、現実には難しいのが実情です。

長期在院されてきた方の多くは、退院に大きな不安を抱えてらっしゃいます。
10年、20年、30年と入院していれば、外の世界に戻ることは浦島太郎の心境でしょう。

患者さんご本人が「退院したい」という一言を口にするには、大きな勇気がいります。
本人が「退院したくない」と言うんだから仕方ない、というのが病院職員の言い分でした。

退院支援の第一歩は、ご本人が「退院したい」と思って頂けるかが大きな鍵になります。
各事業所は、そのために精神科病院に通い、多くの患者さんとかかわりを持ってきました。

しかし、その第一歩を踏み出すためのかかわりが、個別給付では報酬の対象になりません。
入院患者さんに熱心にかかわればかかわるほど、事業所の持ち出しになってしまいます。

しかも、多くの精神科病院は街中にはなく、都市の周辺部にあります。
遠隔地に出かけての支援は、多くの時間と労力を要し、ボランティアには限界があります。

また、個別給付化により、地域移行支援は国や自治体が取り組む事業ではなくなりました。
個別の一事業所の一業務に過ぎなくなり、収支を合わせるのが難しくなりました。

退院をこころよく思わない精神科病院からすれば、協力する義務は何も無いわけですから。
これまでの事業協力体制ができている一部の病院だけが、対象ということになって来ます。

従来は、事業所による直接的な支援と別に、広域コーディネーターも配置されていました。
病院とコンタクトをとるそのコーディネーターも、事業仕分けの対象となりました。

長期在院患者の地域移行に熱心に取り組んで来た各事業所は、苦境に立たされています。
退院できる人はたくさんいるはずなのに、やればやるほど赤字になりかねません。

そんな事業所の背景や想いもあってでしょうか?
今度のリカバリーフォーラムでも、地域移行の分科会は一番の事前申込数になっています。

既に会場キャパいっぱいの150名の事前登録があり、とてもありがたく感謝しています。
ただ、150名でどのようにグループワークを行うのか、主催者としては頭の痛いところです。

そんな状況の中、日本精神保健福祉士協会は、ひとつの要望書を国に提出しました。
地域移行・地域定着支援事業の継続を求めるもので、8月17日厚労省に手渡されました。

地域体制整備コーディネーターを改めて存続させ、地域移行支援の仕組みを作ること。
指定一般相談支援事業所が活動しやすいように、病院と地域を結ぶシステムを作ること。

地域体制整備コーディネーターの位置づけや働きも、自治体により様々です。
コーディネーターを配置しただけでは、大きく事態が好転しないのも事実でしょう。

しかし、地域移行支援活動の失速は、精神科病院で亡くなる方を増やすだけです。
今や65歳以上の高齢者が入院患者の半数を占める精神科病院は、待ったなしの状況です。

本来入院している必要のない患者さんに、地域に出て自由に生活をしてもらうこと。
そのために必要な支援とは何か、個別給付化の中でどのような取り組みが必要なのか。

リカバリーフォーラムの中で、ピアサポーターの方々と真剣に考えたいと思います。
参加される皆さまには、積極的かつ具体的な問題提起を、ぜひお願い致します。


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◆日本精神保健福祉士協会の「地域移行・地域定着支援事業継続に関する要望書」◆


表題 精神障害者地域移行・地域定着支援事業の継続に係る要望等について(お願い)
日付 2012年8月17日
発翰番号 JAPSW発第12-146号
発信者 社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木 一惠
提出先 厚生労働省 社会・援護局 障害保健福祉部長 岡田 太造 様

時下、ますますご清祥のこととお慶び申しあげます。
平素より、わが国の精神保健医療福祉に関する諸制度施策の発展充実にご尽力をいただいておりますことに敬意を表します。
また、本協会事業に格別のご理解、ご協力を賜り、深く感謝申しあげます。

さて、貴省におかれましては、「精神保健福祉施策の改革ビジョン」で掲げた「入院医療中心から地域生活中心へ」の理念に基づき、2006年度より精神障害者退院促進支援事業を実施してこられました。
今年度には地域移行・地域定着支援が相談支援事業の一類型である地域相談支援として個別給付化されましたが、地域相談支援を補完する形で補助事業である精神障害者地域移行・地域定着支援事業(以下「本事業」という。)は継続されております。

これまでの本事業の取り組みにより、地域の資源や支援体制が徐々に整備され、精神科医療機関のみで社会的入院に至っている長期在院者の退院支援を行うことの限界を超え、自立支援協議会等を活用して地域全体で地域移行支援への取り組みがようやく推進され始めてきたところです。

個別給付化された地域移行・地域定着支援の本格的な推進には、制度移行に関する十分な周知と支援実施体制が求められるところ、本格的な取り組みを前に、本事業が2012年6月14日の貴省における行政事業レビューの対象となり、「抜本的改善が必要」とされました。
このため、地域移行・地域定着支援に携わる多くの関係者は、本事業の行方について大変な困惑と危惧を抱いております。

つきましては、下記の通り、要望と意見を申しあげますので、ご高配のほどお願い申しあげます。




【要 望】
補助事業である「精神障害者地域移行・地域定着支援事業」を継続してください。

地域相談支援が十分に機能するために、以下の3点の体制が整う必要があります。
 1)すべての入院患者に地域相談支援の情報が確実に届けられること。
 2)病院に地域の支援者が定期的に入ること。
 3)市町村や指定一般相談支援事業者が病院と連携して、精神障害者への地域移行支援を行えるようになること。
このため時限的措置として、都道府県や政令指定都市が本事業(地域体制整備コーディネーターを配置し、自立支援協議会における地域移行支援・定着支援に関する部会等を設置し、ピアサポーターの活用を推進すること)を継続する必要があります。

【理 由】
1.すべての入院患者が、希望すれば地域相談支援を利用する権利があることを、精神科病院と入院患者に周知するために、その役割を担う地域体制整備コーディネーターが必要です。

○精神障害者の地域移行支援・定着支援が促進されるためには、入院中の精神障害者が自分の望む暮らし方について相談できる一般相談支援や計画相談支援を活用し、サービス利用計画のもと、地域相談支援を利用できる必要があります。
そのためには、相談支援に関する制度や利用の仕組みに関する情報が、すべての入院患者に届けられる必要がありますが、現状ではその仕組みと実施責任の所在が明確ではありません。


2.地域移行支援・定着支援を促進するためには、地域内のあらゆる機関や制度間の物的・人的連携および調整が欠かせず、その役割を担う者として地域体制整備コーディネーターが必要です。

○わが国において社会的入院が長く解決せずに現状に至っている歴史から、医療機関内の取り組みだけでは困難かつ限界や制約を抱えることは明らかです。
地域の側から、街の暮らしや支援に関する情報を入院患者はじめ医療機関従事者に届け、患者の退院及び地域生活への意欲を喚起することや、交流や体験の機会を提供していくことが必要です。
現状を乗り越えるためには、地域内の総合的な支援環境整備が喫緊の課題ですが、各種制度や機関が縦割りであることの現状と弊害等に対しては、地域移行推進員など個別支援の人員配置のみでは解決に至りません。

○貴部精神・障害保健課調べ2010年度実績によれば、地域体制整備コーディネーターの活動内容において、連携や調整は、精神科病院・関連施設との間で21%、地域生活野関連機関間で15%、行政機関との間で15%とあり、全活動の52%が連携や調整に充てられています。

○一方、行政事業レビューでは、地域体制整備コーディネーター配置と退院者数との相関関係から事業効果が不明確とのことでした。
しかし、地域体制整備コーディネーターの役割は、病院への働きかけ、市町村への支援、事業所への支援、圏域をまたがるケースへの調整、ピアサポート活動の推進、圏域課題の解決への助言や人材育成に関する研修企画等となっております。
ついては、働きかけ対象の取り組み姿勢や意識、仕組みなどの変化、取り組み活動実態などを指標とした効果測定をすべきです。
退院者数を中心に検証することは妥当性に疑問があります。
量的効果以上に、当面は、活動内容の質的効果の蓄積の推移を見守り、当該効果の生じている地域事例等を普及する期間や方法を持つべきと考えます。
未だ、全国的に事業普及がなされていない現状の分析と、検証の適切な方法や期間の設定がむしろ必要です。


3.どの地域においても質の高い地域相談支援のサービスが受けられるようになるまで、国の責任に基づき都道府県等が配置する地域体制整備コーディネーターによる指定一般相談支援事業所への助言指導が不可欠です。

○医療機関の自助努力によっても退院に至らない実態には、様々な困難な要因が存在します。
一方、指定一般相談支援事業所の量的質的整備は不足しているのが現状です。
入院患者の意欲喚起をはじめ、円滑な地域相談支援が医療機関と諸機関の連携のもとで実施されるためには、当面、地域体制整備コーディネーターの助言が必要です。
貴部精神・障害保健課調べ2010年度実績によれば、地域移行推進への助言指導が24%、研修・シンポジウムなどの企画調整等、人材育成や普及啓発活動が30%強となっています。


4.立ち遅れた精神障害者支援施策の充実強化の観点から、精神障害者地域移行・地域定着支援事業は、廃止や縮小の方向での見直しではなく、むしろ拡充すべきものです。

○本年6月に障害者総合支援法案を審議した衆・参両議院厚生労働委員会において、「精神障害者の地域生活を支えるため、住まいの場の整備、医療、福祉を包括したサービスの在り方、精神障害者やその家族が行う相談の在り方等の支援施策について、早急に検討を行うこと」との付帯決議が採択されました。
さらに、成立した障害者総合支援法の附則第3条には、検討規定として「全ての国民が障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向けて、障害者等の支援に係る施策を段階的に講ずるため、この法律の施行後三年を目途として、第一条の規定の改正後の障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律第一条の二に規定する基本理念を勘案し、(中略)精神障害者および高齢の障害者に対する支援の在り方等について検討を加え、その結果に基づいて所用の措置を講ずるものとする。」とされました。
つまり、精神障害者に対する支援は未だ不十分極まりない状況にあります。


【意 見】
各都道府県・政令指定都市において、精神保健医療福祉施策を推進していくための、施策横断的な官民協働チームを設置し機能させることが必要と考えます。

【理 由】
立ち遅れた精神障害者の地域生活支援の推進を図るためには、住宅・医療・介護・福祉・雇用・教育など、精神障害者が利用する多領域の支援に関する法制度諸施策間の連携調整、整備拡充が不可欠です。
ニーズ把握と具体的な支援策を、障害福祉計画、医療計画、介護保険事業計画、生活保護制度施策などと連動し総合的に反映整備する必要があります。
しかし、多くの都道府県において、縦割り制度、縦割りの所管の弊害から、精神障害者の地域生活支援は断片的に行われており、支援体制や財政面において効率的ではなく、必ずしも地域生活支援の力を育む結果に結びつかない現状は深刻な課題です。
都道府県自立支援協議会に地域移行に関する部会を設置することはもちろん、さらには、その地域移行部会で検討された課題が、各種計画策定に反映できるような仕組みが早急に必要です。
すでに、各都道府県には、障害者基本法に基づく「地方障害者施策推進協議会」と精神保健福祉法に基づき条例にて置くことができる「地方精神保健福祉審議会」があります。
このような既存の仕組みを有効に活用することと合わせ、サービスを利用する当事者および支援提供者が現場で把握するリアルなニーズを材料に議論検討できる作業チームを設け、審議体との位置付けを縦横に整理し組み立て有機的に機能させることが求められます。
個別の制度や施策を民間機関や事業者等に任せるだけでは、精神保健医療福祉施策の立ち遅れを打破し総合的な推進を図ることは厳しいと考えます。



※画像は、和歌山県での「地域移行・地域定着支援セミナー」の時のもの。
 2012年3月17日、和歌山県立情報交流センター・ビッグU(田辺市)にて。

ケアマネジャーの国家資格化?

2012年07月10日 22時40分19秒 | 精神保健福祉情報

「ケアマネジャー」は、日本では「介護支援専門員」の呼び名として定着しています。
介護保険制度の中で、高齢者への様々な支援メニューを進捗管理する人をさします。

ケアマネ資格保有者は、現在54万6千に達しています。
(実際に現場に従事しているのは、14~15万人と言われています)

毎年10月に試験は実施され、第1回は合格率50%弱でした。
(僕は、1997年に、石原慎太郎都知事名の登録証明書を受け取りました)

2007年度からは、5年毎に所定の研修を受けての登録更新制度が導入されました。
(僕は、この受講ができなかったので、2009年に失効しています)

ケアマネの供給過剰もあり年々減り、直近では15%まで合格率は低下しています。
(今だったら、受かりませんかね?)

その「ケアマネさん」をめぐって、今、物議を醸す動きが出てきています。

ことの発端は、3月28日から始まった「介護支援専門員(ケアマネジャー)の資質向上と今後のあり方に関する検討会」での発言です。
5月31日、日本介護支援専門員協会の木村隆次会長が、大きな花火をぶち上げました。
「ケアマネ資格を国家資格化するべき」との提起です。

詳しくは、ネット上のニュースで検索かけると出てくると思いますが。
木村さんの主張(協会の主張?)を要約すると、こんな感じでしょうか?

介護保険制度だけでなく、日本の社会保障の中できちんとケアマネジメントをできるケアマネジャーを作るべき。
ケアマネジャーが介護・医療・保健・障害領域を横断的に担当できるよう、ケアマネを国家資格化するべき。
現在の任用資格を国家資格とし、ケアマネジャーを大学で養成する「大学養成コース」を取り入れるべき。
ケアマネジメントの評価指標の確立が必要であり、54万人のケアマネ合格者に有効期限を設けるべき。

そして、国家資格取得に向けてのイメージまで提示しています。

ケアマネの質を担保していくために、現在の「医療・介護・福祉の国家資格者&5年以上の現場経験者」というハードルではなく、国家試験というハードルを設ける。
1)新ケアマネジャー、2)移行期の新ケアマネジャー、3)現任ケアマネジャー、の3つに国家試験を受けさせ、ふるいにかけて標準化を図る。

1)新ケアマネジャーは…
4年間(約1800時間)の大学養成課程の卒業者のみに受験資格を絞る。
その後、国家試験を経て、資格取得後1年間の実習(インターン)を課す。
その上で、初めて保険適用の仕事ができるようにする。

2)移行期間のケアマネジャーは…
受験資格を法定資格者に限定する。
受講試験も現行の60問から200問に見直した試験を実施する。
その後、130時間の研修に加え、認知症や医療に関する研修などを課す。
1年間のインターンを実施した後、保険適用の仕事ができるようにする。

3)現任のケアマネジャーは…
国家試験を課し、受験資格として「一定期間・程度の実務経験等」を要件とする。
3年の実務経験とスーパーバイザーとして30件の実績を持つことを例とする。
受験要件の細部については、検討会で議論して結論を得る。

木村さんは、その他にも会員へのアンケート調査を踏まえ、独立事業所の定義や、地域事業所との連携義務付け、施設ケアマネの人員基準見直し等の課題を提起しています。

この検討会は、文字通り「今後のケアマネをどうするか?」を討議する場です。
厚生労働省の検討会ですから、この場での結論は、今後の制度見直しに反映されます。

「質にピンキリあるケアマネの、キリの部分をどうするか?」が課題になっています。
木村会長さんの提起も、なんとかケアマネの質を担保したいという思いからでしょう。

でも、検討会の場での、他の委員からの反応は冷ややかでした。
「どうして国家資格化しなければいけないのか、その根拠がわからない」
「これ以上、国家資格を増やして、どうするの?」という発言もありました。

「ケアマネの能力を評価する方法を確立するべき」
「能力の評価、成果の評価がポイントになる」
「ケアマネジメント能力、連携能力、自立生活支援能力が必要」
「マネジメントかコーディネートか、責任と権限が不明確」
検討会で既に出ている他委員の意見と、かなり異なる相での提起であったことは確かです。

「ケアマネの質の担保」を図るために「国家資格化」するというのは、確かに唐突です。
資格は、職種を制度に位置づけるためにありますが、ケアマネは既に制度化されています。
最低限の知識を有していること位しか、国家試験を行っても担保できません。
「国家資格」というものに、過剰な幻想を煽ることは避けたいものです。
精神保健福祉士の国家資格化運動に一応かかわって来た立場から、そう思います。

そもそもケアマネジメントは、精神障害者の脱施設化を推し進める中で開発されました。
多様なニーズを有する方へ、多様な資源を投下して、在宅生活を支援する手法です。
本来はソーシャルワークの一手法として位置づけられています。
日本では、すっかり高齢者の介護プランを立てる人というイメージになってしまいましたが。

もし、今後「ケアマネ国家資格化」運動が展開されるとしたら…。
ソーシャルワーカーの福祉専門職団体が「反対」にまわる可能性はあるでしょうね。
ソーシャルワークの一手法であるケアマネジメントが、独立国家資格になるとなったら…。
「軒先を貸して母屋を取られた」ような感覚になるのではないでしょうか?
(そういった古い元祖・本家意識で反対というのも、困ったものですが)

目くじらを立てて反対するほどのことはないと、現状では僕は思っています。
しばらくは、ウォッチング(様子見)で良いのでしょうけど。
どれだけ周知されているのか、いささか気になるので、ちょこっと記事にしてみました。

皆さんもどうぞご一緒に、今後の動きをモニターしておいてください。


★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ 

■「介護支援専門員の資質向上と今後のあり方に関する検討会」構成員メンバー

池端幸彦  日本慢性期医療協会常任理事
加藤昌之  さわやか福祉財団政策提言プロジェクトリーダー
木村隆次  日本介護支援専門員協会会長・日本薬剤師会常務理事
小山秀夫  兵庫県立大学教授
齊藤訓子  日本看護協会常任理事
佐藤 保  日本歯科医師会常務理事
高杉敬久  日本医師会常任理事
田中 滋  慶応義塾大学大学院教授:座長
筒井孝子  国立保健医療科学院統括研究官
東内京一  埼玉県和光市長寿あんしん課長
中村春基  日本作業療法士協会会長
野中 猛  日本福祉大学教授
橋下泰子  大正大学名誉教授
畠山仁美  日本介護福祉士会常任理事
藤井賢一郎 日本社会事業大学専門職大学院准教授
堀田聡子  労働政策研究・研修機構研究員
桝田和平  全国老人福祉施設協議会介護保険事業経営委員会委員長
水村美穂子 東京都青梅市地域包括支援センターすえひろセンター長
山際 淳  民間介護事業推進委員会代表委員
山田和彦  全国老人保健施設協会会長
山村 睦  日本社会福祉士会会長


■現行「ケアマネ」資格の概要

介護支援専門員として登録・任用されるには都道府県の実施する「介護支援専門員実務研修」を受講する必要があります。
研修を受講するためには「介護支援専門員実務研修受講試験」に合格することが必要です。
受験資格を得るには、三つのルートがあります。

1)下記の法定資格などで5年以上の実務経験がある者。
社会福祉士
精神保健福祉士
介護福祉士
医師
歯科医師
薬剤師
保健師
助産師
看護師
准看護師
理学療法士
作業療法士
視能訓練士
義肢装具士
歯科衛生士
言語聴覚士
あん摩マッサージ指圧師
はり師
きゅう師
柔道整復師
栄養士(管理栄養士を含む。)

2)相談援助業務に従事する者で社会福祉主事任用資格、訪問介護員養成研修2級課程に相当する研修を修了した者

3)上記の資格または研修修了の資格がない場合は、所定の福祉施設での介護等に従事した期間が10年以上の者



※画像は、東京ドームシティの観覧車。
 もちろん、本文の内容には一切関係ありません。

地域移行支援サービス費の新設

2012年02月08日 13時01分13秒 | 精神保健福祉情報

2012年1月31日、「地域移行支援サービス費」が明らかになりました。
障害福祉サービス等報酬改定検討チームの、第9回検討会で示されたものです。

精神障害者地域移行・地域定着支援事業は、来年度から個別給付化されます。
具体的な、その報酬単価がどうなるか、注目されていました。

今回の新設報酬の特徴は、出来高払いでなく包括払いを採用したことですね。
1回の働きかけや訪問を個別に評価するのではなく、あくまでも「月額まるめ方式」。

毎月定額で支払われる報酬単価については、次のように記されています。
「現行の補助事業において自治体が設定している補助単価の例を参考に設定する」

つまり、これまでの事業で、自治体が事業所にいくら支払っていたかを参考にすると。
委託事業費を、業務の所要時間で割った人件費という考え方ですね。

新設される「地域移行支援サービス費(仮称)」の報酬単位に沿って、
今後、新年度からこの事業に取り組んだ場合の収入を計算してみると…、

★支援開始月は、3900単位?(月額39000円~)
サービス利用支援:1600単位+地域移行支援サービス費:2300単位

★2カ月目以降は、3600単位(月額36000円~)
継続サービス利用支援:1300単位+地域移行支援サービス費:2300単位
 
…ということになるのでしょうか?
あくまでもサービス利用計画作成と、同一事業所で行う場合ですが。

★退院月は、これに退院・退所月加算2700単位(月額27000円~)が上乗せ
★集中支援を要した月は、集中支援加算500単位(月額5000円~)が上乗せ

…と言うことになりますね。
ただし「集中的な訪問支援」や「月6回以上の支援」の中身は、未だ不明です。

★体験利用を行った日は、障害福祉サービス事業の体験利用加算300単位(3000円~)
★体験宿泊を行った日は、体験宿泊加算300単位(3000円~)か700単位(7000円~)

…が、日額で加算されると。
ただし、体験宿泊は開始から3ヶ月以内で、15日までと上限があります。

★地域定着支援サービス費[体制確保分]  300単位(月額3000円~)
★地域定着支援サービス費[緊急時支援分] 700単位(日額7000円~)

地域定着支援については、在宅生活のモニターが中心で月額包括払いを設定した上で、
緊急時出動した場合に、1日単位で出来高払いと言うことですね。

問題は、これらの単価が「適切」といえるかどうかの評価になりますが。
現場の事業所の方による実感と、経営の視点での計算を、ぜひお聞きしてみたいです。

明日,東京で開催される「被保護者退院促進事業研修会」でも、議論になるでしょうね。
明後日、僕たちが主催する「地域移行支援実践セミナー」でも、少し取り上げたく思います。

(「実践セミナー」については、既に120名を超えるお申し込みを頂いていますが、
当日参加申し込みも受け付ける予定ですので、どうぞご参加ください)

なお、1単位の単価設定については、事業や地域によって、大きく異なります。
記事に記した「1単位=10円」は、現行の丙地(上乗せ0%)の単価とご理解下さい。

地域区分も、現行5区分(特別区~丙地)から7区分(1級地~6級地、その他)に、
各区分単価も2015年度までの激変緩和経過措置により、毎年度変わっていきます。

また、「報酬改定の概要(案)」は、以下に貼り付けてあるので、ご覧下さい。
あくまでも、抜粋・要約版ですので、詳細は厚生労働省のホームページでご確認下さい。


☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★


障害福祉サービス等報酬改定検討チーム
「平成24年度障害福祉サービス等報酬改定の概要(案)」
(抜粋・一部改変要約)

2.相談支援

(1)計画相談支援・障害児相談支援

(評価体系)
○ 基本報酬については、介護保険制度の居宅介護支援費との均衡を考慮して設定されている現行のサービス利用計画作成費の基本報酬を踏まえて設定する。
その際、現行の特定事業所加算の算定要件は市町村の委託要件等を除き指定要件に組み入れられることを踏まえ、特定事業所加算分を基本報酬に組み入れて、報酬単価を引き上げる。

○ 新規利用開始時や支給決定の変更時の計画作成については、介護保険制度の初回加算を参考として、基本報酬を上乗せする。

●計画相談支援の報酬体系【新設】
サービス利用支援   1600単位/月
継続サービス利用支援 1300単位/月
特別地域加算     +15/100
利用者負担上限額加算 150単位/月

(その他)
○介護保険制度のケアプランが作成されている利用者に障害福祉のサービス等利用計画の作成を求める場合であって同一の者が作成を担当する場合には、利用者のアセスメントやモニタリング等の業務が一体的に行われるため、報酬上、所用の調整を行う。

●計画相談支援と介護保険の居宅介護支援等との調整【新設】
サービス利用支援
[居宅介護支援費(要介護1・2)が併算定される場合]900単位/月
[居宅介護支援費(要介護3~5)が併算定される場合]600単位/月
[介護予防支援費が併算定される場合]        1488単位/月
継続サービス利用支援
[居宅介護支援費(要介護1・2)が併算定される場合]600単位/月
[居宅介護支援費(要介護3~5)が併算定される場合]300単位/月
[介護予防支援費が併算定される場合]        1188単位/月
 
(2) 地域移行支援

(基本的考え方)
○ 地域移行支援は訪問相談や同行支援、関係機関との調整等を一体的に実施するものであることから、報酬は包括的にサービスを評価する体系とし、計画相談支援等と同様に、毎月定額の報酬を算定する仕組みとする。
その上で、特に支援が必要となる場合等については、実績に応じて報酬を算定する仕組みとする。

(毎月の包括的なサービスの評価)
○ 毎月定額で算定する報酬については、利用者への訪問による支援(訪問相談や同行支援)を週1回程度行うことを基本として、現行の補助事業において自治体が設定している補助単価の例を参考に設定する。
算定要件については、対象者の状況により関係機関とのケア会議や連絡調整等、利用者への訪問による支援以外の業務負担が多くなる場合も想定されることから、利用者への訪問による支援を少なくとも月2回以上行うこととする。

●地域移行支援サービス費【新設】2300単位/月

(特に支援が必要となる場合等の評価)
○ 特に業務量が集中する退院・退所月においては、さらに一定単位を加算することとし、当該加算単位については、現行の補助事業で自治体が設定している補助単価の例を参考に設定する。
また、退院・退所月以外についても、利用者への訪問による支援を集中的に実施した場合については、一定単位を加算する。

●退院・退所月加算【新設】2700単位/月
   
●集中支援加算【新設】 500単位/月
 退院・退所月以外に月6日以上支援を行った場合に算定。

○ 相談支援事業者の委託等による障害福祉サービスの体験利用や一人暮らしに向けた体験宿泊についても、報酬上評価する。
具体的には、一定の上限の下、支援日数に応じて算定する仕組みとし、報酬単位については、体験利用の場合は日中活動系サービスの報酬を、体験宿泊の場合は共同生活援助(グループホーム)・共同生活介護(ケアホーム)の体験宿泊の報酬を、それぞれ参考に設定する。

●障害福祉サービス事業の体験利用加算【新設】300単位/日
 障害福祉サービス事業の体験利用を行った場合に、
 開始日から3ヶ月以内かつ15日以内に限り算定。

* 利用者が入所する障害者支援施設等の従事者が、体験利用日の日中に介護等の支援を行った場合や体験利用に係る相談支援事業者との連絡調整等の支援を行った場合には、当該障害者支援施設等の報酬として、日中部分に係る報酬の所定単位数に代えて、障害福祉サービス事業の体験利用時支援加算(仮称)を算定できることとする。

●体験宿泊加算(1)【新設】 300単位/日
 一人暮らしに向けた体験宿泊を行った場合、
 開始日から3ヶ月以内かつ15日以内に限り算定。

●体験宿泊加算(2)【新設】 700単位/日
 夜間支援者を配置して一人暮らしに向けた体験宿泊を行った場合
 開始日から3ヶ月以内かつ15日以内に限り算定。
 * 体験宿泊日については、利用者が入所する障害者支援施設等の報酬として、入院・外泊時加算(1)が算定できる。

(その他)
○ 中山間地域等に居住する者については、移動コストを勘案し、計画相談支援等と同様に、特別地域加算を創設する。

●特別地域加算【新設】+15/100

(3)地域定着支援サービス費

(基本的考え方)
○ 地域定着支援については、常時の連絡体制を確保するための報酬を毎月定額で算定するとともに、緊急時の支援を行った場合に支援日数に応じて実績払いにより評価する仕組みとする。

(常時の連絡体制の確保の評価)
○ 常時の連絡体制の確保の報酬については、現行の補助事業で自治体が設定している補助単価の例を参考に設定する。

●地域定着支援サービス費(仮称)【新設】
[体制確保分] 300単位/月

(緊急時支援の評価)
○ 緊急時の支援については、居宅への訪問や緊急時に相談支援事業所の宿直室等で滞在型の支援を行った場合に、支援日数に応じて報酬を算定することとし、報酬単位については、現行の補助事業で自治体が設定している補助単価の例や居宅介護の報酬を参考に設定する。

●地域定着支援サービス費(仮称)【新設】
[緊急時支援分] 700単位/日
* 1泊2日の支援を行った場合には2日分算定できる

(その他)
○ 中山間地域等に居住する者については、移動コストを勘案し、計画相談支援等と同様に、特別地域加算を創設する。

●特別地域加算【新設】+15/100


【出典】
障害福祉サービス等報酬改定検討チーム
第9回障害福祉サービス等報酬改定検討会資料(2012/01/31)
「平成24年度障害福祉サービス等報酬改定の概要(案)」
「平成24年度障害福祉サービス等の報酬改定について(案)」
厚生労働省ホームページより
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000021jyi.html


精神科クリティカルパス論

2011年08月08日 18時16分33秒 | 精神保健福祉情報

精神科以外の医療領域では「クリティカルパス」が当たり前に使われています。
脳卒中、がん、糖尿病、心筋梗塞の4疾病は、医療計画にそって地域連携クリティカルパスツールを使って医療連携が推進されてきています。

医療コスト抑制のために導入されたクリティカルパスは、今日では診療報酬にも盛り込まれています。
一医療機関内の治療・看護・リハビリテーションの進行管理ツールに止まらず、圏域内の医療・介護・福祉資源を相互に活用する連携のツールとして拡がりつつあります。
疾病によっては、地域での医療の提供と療養・介護生活を支援する連携体制を構築する上で、欠かせないツールになってきています。

同様の動きが、精神疾患の分野でも浸透しつつあります。
うつ病やアルコール依存症の治療場面では、早くからパス化が進んでいます。
統合失調症をはじめとする急性期治療、長期在院患者の退院・地域移行支援等についても、院内の治療・リハビリシステムの中核にパスを据えている病院が増えてきています。

「入院医療中心から地域生活中心へ」という精神保健福祉施策の転換表明も相まって、精神保健医療福祉改革の一環として、精神科領域に地域連携クリティカルパスを早期に導入するべきという主張もあります。



精神科へのパス導入をポジティブに捉えるか、ネガティブに捉えるか、評価は二分されます。
まだ、多くの精神科臨床スタッフは、パスを導入することには批判的ないし懐疑的です。

・医療費抑制という命題を推し進めるための経営手法に飲み込まれる感じ(功利化)
・業務がパターン分類される感じ(類型化)
・患者の個別性が無視される感じ(非個別化)
・治療のオーダーメイド性が侵される感じ(画一化)
・パス中心で記録事務が増える感じ(煩雑化)
・うまくいかない患者が排除される感じ(脱落化)
・効率性が追求されてギスギスした感じ(合理化)
・医師等多職種との連携が組めるわけではない(孤立化)
…などの声が聞かれます。

精神科臨床現場の治療構造を変えるのは確かでしょうが、とにかく、とっつきにくい、イヤな感じ…という印象は拭い去れないようです。
一方で、既にパスを取り入れている病院のスタッフは、等しく、その効果を推奨しています。

・漫然としたルーティン業務を排し、目標が明確な業務の組み立てに変わる(目標化)
・チームでの課題・情報が伝達され共有される(共有化)
・定期的カンファレンスでの討議素材になる(言語化)
・患者・家族への提示により課題や目標の視覚化が可能となり理解を得やすい(可視化)
・類型化できない課題の抽出により、個別支援が豊かになる(個別化)
・他機関との比較が可能となり、臨床実践の自己検証が可能になる(比較化)
…などの声が寄せられています。

パス導入が、院内や地域の機能分化・システム化を牽引するのは確かでしょう。
医療を受ける患者の利益に役立っているかどうかが、評価の基準になるのでしょう。
院外の他機関との連携を促していく地域連携パスには、豊かな可能性とともに、幾多の課題がありそうです。



2010年12月、社団法人日本精神科病院協会は、大きく舵を切りました。
地域医療計画の「4疾患」に精神疾患を加えて「5疾患」とすることを要望しました。
一般医療と精神科医療との連携強化と地域連携を打ち出したのです。

2013年地域医療計画次期見直しに向けて、精神科の扱いが焦点になっています。
精神疾患が、地域医療計画の中に盛り込まれると、大きな変化が生じます。

精神科病院は、医療施設としての診療機能を対外的に明らかにしなければなりません。
さらに、地域医療計画における数値目標を示さなければならなくなります。
一医療機関として、地域連携クリティカルパスを作成しなければなりません。
そして、そのための作成指針を作成しなければならなくなります。

精神科病院の透明化が進み、公開された診療実績により淘汰が進むかも知れません。
今後遠くない時期に、診療報酬に精神科の地域連携パスが導入されることが想定されます。
この時期に、関係者間で多角的な議論を巻き起こせればと考え、本を出しました。

医学書扱いなので、なかなか一般の書店では手にして見ることができませんが。
また、定期刊行雑誌なので、残部が限られていますが。
これから間違いなく、重要な論点になってくるテーマなので、ご一読下さい。


★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆

『精神医療』第4次62号
特集:精神科クリティカルパス論
責任編集:古屋龍太+岩尾俊一郎

◆巻頭言
○精神科クリティカルパスをめぐる論点
古屋龍太 (日本社会事業大学大学院、准教授:編集委員)

◆鼎談
○クリティカルパス導入で精神科は変わるか?
武藤正樹 (国際医療福祉大学、教授)
福田裕典 (厚生労働省社会援護局精神・障害保健課長)
古屋龍太 (日本社会事業大学大学院、准教授:編集委員):司会

◆特集
○精神科クリティカルパス総論
伊藤弘人 (国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所、社会精神保健部長)
○精神科地域連携クリティカルパス開発に向けて
下村裕見子(東京女子医科大学病院、クリニカルパス推進室)
○精神科地域連携パスは可能か
佐藤茂樹 (千葉・成田赤十字病院、精神科部長)
○土佐病院におけるクリニカルパス~過去・現在・未来
須藤康彦 (高知・土佐病院、院長)
○精神科地域連携クリティカルパス論
大石 智 (神奈川・北里大学東病院、医師)、伊藤弘人、下村裕見子、宮岡等
○精神科の知恵と技の伝承ツールとしてのクリティカルパス
佐藤雅美 (精神医学研究所付属東京武蔵野病院、看護)
○医療観察法におけるクリティカルパス
平林直次 (国立精神・神経医療研究センター病院、リハビリテーション部長)
○精神科デイケアにおいてのクリティカルパスの活用について
村上都子 (島根・安来第一病院、精神科デイケアセンタードリーム)
○精神療養病棟における退院支援クリティカルパス
増田圭一、大西知子、浅尾民子、島みゆき (香川・西紋病院、看護部長)
○光風病院で使われているクリニカルパスの現状
岩尾俊一郎(兵庫県立光風病院)、森田亮一

◆連載
○視点(25):
医療観察法「国会報告」について
中島直(多摩あおば病院)
○「引き抜きにくい釘(30)」:
てやんでぇ(Ten Young Days)
塚本千秋(岡山県精神科医療センター)
○「雲に梯子(6)」:
テダば かめ舞いちけ
久場政博(秋田・加藤病院)

◆書評:
○『幻聴の世界~ヒアリング・ヴォイシズ』日本臨床心理学会編
西尾雅明(東北福祉大学)
○『精神科臨床の星影~安克昌、樽味伸、中井久夫、神田橋條治、宮沢賢治をめぐる時間』杉林稔
大塚公一郎(自治医科大学看護学部)
○『自殺の看護』田中美恵子
岡田実(弘前学院大学看護学部)

◆投稿原稿:
○日本の精神医療の変わらなさは何ゆえでしょう~『精神医療の1968年』の「座談会」を読んで
赤松晶子(東京足立病院)

○浜田晋さんを追悼する
広田伊蘇夫(編集委員)

○東日本大震災についての緊急アピール
浅野弘毅、岡崎伸郎(編集委員)

◆編集後記
岩尾俊一郎(編集委員)

【批評社刊、2011年4月10日発行、本体1700円+税】

東日本大震災:SWによる被災地支援

2011年04月13日 11時52分31秒 | 精神保健福祉情報


3月11日午後2時46分、未曾有の震災の発生から一ヶ月が経ちました。
この一ヶ月に、このブログの更新は4回しかできませんでした。
今日も、4月に入って、まだ2回目です。

この間、マスメディアやネット上の情報量に圧倒され、僕は何もできませんでした。
今回の震災対応については、何も役割を果たせず、情報を後追いするだけでした。
率直に言って、僕自身の気持ちが萎えて、余裕がまるで無かったことが主たる原因です。

その間も、多くの方々が、ここを訪れて頂いています。
震災直後は、毎日1千名を超える方が、アクセスして下さってました。
誰しもが、情報に飢え、何かできないかと考えていたのだと思います。

その後、多くの団体や個人が、被災地との情報ネットワークを築いて下さいました。
関係学会や協会は、それぞれの会員や構成員と連絡を取り、動きを創っていきました。
それらは、ようやく軌道に乗り、具体的な人的派遣体制が確立されつつあります。

震災直後や初期の、トリアージを含む救命救急医療活動は、視野に入らなくなっています。
それでも、現在でも乏しい医療資源の中で、各医療機関の懸命の努力が続けられています。
せっかく生き残った被災者の方が、高齢者を中心に、毎日避難先で亡くなっています。

そして、震災から一ヶ月が経ち、支援は新しい局面を迎えつつあります。
現地の避難所で過ごす方も、県外に脱出した方も、生活をしていかねばなりません。
家族や住まいを失いながらも、生き残った方は、新しい生活を築いていかねばなりません。

保健・医療の支援は未だ大きいでしょうが、今後は福祉にシフトしてくると思います。
福祉施設への人的支援だけでなく、被災した方々全員を対象とした福祉的支援。
ソーシャルワーカーとして何ができるのか、問われているのだと思います。

専門職大学院の僕のゼミ院生が、ボランティア先の被災地からメールをくれています。
現段階では、医療スタッフと同行しての避難所訪問が有効ではないかと、言っています。
今後支援ニーズが推移する段階で、SW単独、SWグループの介入が有効になるのではと。

高齢者の中でも、認知症の方のニーズ把握が、なかなか難しいようです。
現地のケアマネさんも孤軍奮闘しているけれども、連携が取りづらくなっているとのこと。
地元資源に疎いボランティアSWも、現地スタッフとの協働を築きつつあるそうです。

日本PSW協会の災害対策支援本部も、今週からボランティア派遣を開始しました。
宮城県内では仙台市内に活動拠点を定め、登録者が順次派遣できる体制ができたとのこと。
福島県では主に南相馬市での、支援活動計画の最終調整を行っているとのことでした。

本学でも遅ればせながら、教員2名を被災地(岩手県・宮城県)に派遣しました。
状況確認の上、現地の関係者とともに今後の支援体制を検討してきてくれました。
学生自身が立ち上げた災害ボランティア組織が、これからフル稼働してくれそうです。

被災地の精神保健福祉関係機関の様子については、下記のサイトをご参照下さい。
コンボ(地域精神保健福祉機構)と国立精神保健研究所社会復帰研究部、
ACT全国ネットワーク、全国精神障害者地域生活支援協議会の共同運営サイトです。

街の「復興」には、これから長い時間がかかるでしょう。
でも、被災地の方々は、それぞれのリカバリーを、既に開始しています。
リカバリー(を支援する)とは、どういうことなのか、問われているのは僕たちの側です。


☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆


●拡散希望です!!●

【被災地の状況がわかる人は更新をしてください!】

東日本大震災につきまして、さまざまな情報が配信されておりますが、精神保健福祉関係の情報サイトがあり、運営団体は最新情報を書き込んで更新してほしいと呼びかけています。

このサイトは、
NPO法人 地域精神保健福祉機構(コンボ)
国立精神保健研究所社会復帰研究部
ACT全国ネットワーク
全国精神障害者地域生活支援協議会(あみ)
の4者が運営する2つのサイトです。

(1)被災地の精神科病院の情報および、
(2)地域精神保健活動の状況が、簡潔に把握できるものです。

このサイトの特徴は、状況を把握した人が、その情報を書き込んでつくりあげていくというものですので、新しい情報を提供することが可能ですが、すでに情報が古くなっている書き込みも目立ってきています。

上記の運営団体は、現地の情報を知っている人がいれば、ぜひ新しい情報を書き込んでほしい、と訴えています。

★現地の状況を知っている人は、どんどんこのサイトに書き込んで、新しい情報がわかるようにご協力いただきますよう、お願いいたします!

【サイトへのアクセス方法】http://comhbo.net

まずは、コンボのサイト(http://comhbo.net)にアクセスし、
【被災地の精神科病院状況リスト】
【被災地における地域精神保健福祉活動の情報】
に更にそれぞれアクセスしてください。

【サイトの運営団体】
〈被災地の精神科病院状況リスト〉
運営:ACT全国ネットワーク、国立精神保健研究所社会復帰研究部、NPOコンボ

〈被災地における地域精神保健福祉活動の情報〉
運営:NPOコンボ、全国精神障害者地域生活支援協議会(あみ)



※画像は、差し替えさせて頂きました。

東日本大震災:被災地支援PSWを募集

2011年03月29日 12時41分23秒 | 精神保健福祉情報

東北関東大震災発生以降、ブログ更新がほぼストップしてしまっています。
個人ブログの「PSW研究室」ゆえに、発信しなきゃいけないことがあるのですが。
気持ちだけが空回りし、何もできないまま、日々が経過してしまっています。

未曾有の大震災の被害状況を伝えるマスコミの映像と記事に、圧倒されています。
各地の被災支援状況を伝える1日100通超のメール等に、情報処理が追いつきません。
被災地にいる人々の思いに触れると、揺らぐ感情を抑えらず、ひとり目頭が熱くなります。

加えて、自分自身が抱えている課題や宿題が山積みで、フリーズ状態になっています。
平均睡眠時間3.5時間はずっと継続し、眠れぬまま、朝を迎えることもあります。
慢性的な下痢が続き、74キロあった体重は、20年ぶりに60キロ台に落ちました。

それでも、授業のない3月もずっと毎日、週6日大学に出て仕事はしてるのですが。
ハッキリ言って、この間の僕自身の心身状況は最悪で、疲労困憊の極地にあります。
そんな状態を察してか「大丈夫?」というメールやメッセージをもらって、恐縮至極です。

出口の見えないトンネルの中にいたような気持ちですが、少し元気になってきました。
この間、研究室におしゃべりに来てくれたり、個人的に話しをした皆さんに感謝です。
こんな時だからこそ、仲間と語り合うこと、人と話すことって、本当に大事なことです。

そんな調子で、PSWとしての自分は、何もできずに、ただジタバタしていたのですが。
そろそろ悩んでばかりもいられず、あれこれ活動を再開しようと思います。
いろんな人に、僕自身が支えられて生き、仕事ができていることを、今、実感しています。

被災地支援の状況については、既にネットや団体を通じて、伝わっていると思います。
たくさん、ここに載せなきゃいけない事実や情報があるのですが、整理しきれません。
今後、少しずつ、個人ブログの自分にできる範囲のことを伝えて行きたいと思っています。

取り急ぎ、日本精神保健福祉士協会からのお知らせを転載します。
協会内に設けられた、東北地方太平洋沖地震災害対策本部からのお知らせです。
下記のように、被災地支援に入っていただける登録者の募集を開始しました。 

木太直人さん、廣江仁さん、佐藤三四郎さん、酒井正平さんが既に仙台に入っています。
各県支部と連絡をとりながら、被災状況確認と支援コーディネートを開始しています。
各病院、各地域、各施設からの具体的な支援要請も、順次寄せられています。

自らも被災者である現地のPSWたちは、不眠不休で、人を支える仕事を継続しています。
人が傷つき、助けを求めているとき、救えるのは、やはり人しかいません。
どうか、全国のPSWの仲間たちの、ご支援とご協力をお願いいたします。


※画像は、差し替えました。


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東北地方太平洋沖地震の被災地支援に係る登録者の募集(第1次)について

この度の東北地方太平洋沖地震は、あまりにも被害が甚大であり、被害状況を伝える報道等を見聞きするたびに強く心を痛めているところです。

本協会では、3月12日(土)、災害支援ガイドラインに基づき「東北地方太平洋沖地震災害対策本部」(以下「災害対策本部」という。)を設置し、この間、被災地及び近隣の県支部ならびに県精神保健福祉士(協)会の協力を得ながら、被災地の構成員の安否確認や精神科医療や精神保健福祉制度を利用されている方々の被災状況の確認、情報の収集と構成員への提供、被災地支援活動等のための構成員間の募金活動等に取り組んでいるところです。

被害規模から再建には長い期間を要すことが明らかでありますが、被災地の精神保健福祉医療関係者は不眠不休での勤務が続いており、休息が必要なことに加えて、ご自身の生活再建も必要である方も少なくなく、すでに支援者不足と支援要請の声が断片的にあがっています。

そのため、災害対策本部では、被災地の行政機関や県支部、県精神保健福祉士(協)会等との連携を図りながら、本協会構成員が被災地の支援活動に参加していくことを調整する検討を始めており、今後、被災地の行政機関や県支部、県精神保健福祉士(協)会等から精神保健福祉士による支援活動の要請があった際に即応できるよう、被災地支援が可能な構成員名簿を作成したいと考えております。

つきましては、岩手県、宮城県、福島県を中心とした被災地支援活動に参加いただける登録者を募集(第1次)いたしますので、下記の点にご留意いただき、是非ともご登録をご検討くださいますよう、何卒よろしくお願い申しあげます。

なお、ご不明な点等ございましたら、災害対策本部事務局までお問い合わせください。

2011年3月28日

社団法人日本精神保健福祉士協会
東北地方太平洋沖地震災害対策本部
本部長 竹中 秀彦

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東北地方太平洋沖地震の被災地支援に係る登録者の募集(第1次)について

1.登録条件について

ご登録に際しての条件は次の通りです。

・ 本協会に入会している精神保健福祉士であること。
・ 4月4日(月)以降で最低1週間(現地往復移動期間を含む)は被災地において支援活動に参加できること。
・ 被災地までの往復交通費や被災地での移動費、滞在費等の諸経費は自己負担できること(または勤務先の出張扱いが可能であること)。
・ 登録者自身の家族等に心配な状況(要介護にある家族、出産時期等)がないこと。

2.登録票について

【登録締切日】4月30日(土)必着

上記1の条件をご了解いただける構成員は、別紙の登録票(Microsoft Office Word:40KB)に必要事項をご記入のうえ、災害対策本部事務局までFAXをお送りいただくか、またはEメール(office@japsw.or.jp)にてタイトルを【登録希望】として次の事項をお送りください(※1)。 

1)氏名(ふりがな)
2)性別
3)年齢
4)勤務先/都道府県
5)滞在可能日数
6)開始可能日
7)終了希望日
8)連絡先電話番号(携帯電話・勤務先・自宅)
9)連絡先Eメールアドレス(※2)(携帯電話・勤務先・自宅)
10)希望県

(※1)登録票に記載された情報は、被災地支援活動の調整に係る事務において使用するものとし、この利用目的の範囲を超えて取り扱うことはありません。
(※2)記載可能な範囲で結構です。

3.その他ご留意いただきたい事項

1)被災地の要請や状況に応じて調整を行うため、ご登録いただいても支援活動に参加できない場合がありますことご承知おきください。

2)被災地支援活動への参加が決定した構成員には本協会においてボランティア保険をお掛けします。

3)現在実施している募金等より、後日、諸経費の一部を助成することを検討しています。ただし、現段階では未定でありますことをご了解ください。そのため、被災地支援活動への参加が決定した場合、被災地支援活動に係る諸経費に係る証憑書類(領収書等)は各自で保管しておいてください。

【問い合わせ】
社団法人日本精神保健福祉士協会 東北地方太平洋沖地震災害対策本部 事務局
〒160-0015 東京都新宿区大京町23-3 四谷オーキッドビル7階
TEL.03-5366-3152 FAX.03-5366-2993 E-mail:office@japsw.or.jp

精神科救急医療情報センターでの電話相談

2011年01月27日 18時52分05秒 | 精神保健福祉情報

 

「精神科救急情報センター」に連絡したこと、ありますか?
精神科救急に関する相談を受け付けてくれるところです。
精神科の専門スタッフが、アドバイスを提供する電話相談窓口です。

精神科救急に関する、あらゆる相談を受け付けるとされています。
緊急性を判断して、精神科救急担当病院への受診を指示するセンターです。
相談に対して、当座どうすべきかの助言を提供するのが、本来の役割です。

センターには、PSWや看護師などの専門スタッフが配置されています。
いくつかの条件を満たせば、精神科救急情報センターとして国に認可されます。
国から運営補助金が支給されますが、認可は全体の半数程度の都道府県です。

もともとは15年前の国の「精神科救急医療システム事業」にさかのぼります。
(1995年10月27日健医発第1321号通知)
1998年までの間に、全県で精神科救急システムを整備することを謳いました。
この中に「精神科救急情報センター」も入ってましたが、全然整備は進みませんでした。

2002年「精神科救急情報センターの24時間精神医療相談事業」が定められました。
本人・家族からの緊急相談に対応し、重篤化の軽減と医療との連携を図るとされています。
また、相談窓口は本人・家族等が十分に活用できるよう周知に努めるとされました。
しかし、なお各県での整備は進みませんでした。

2008年には「精神科救急医療体制整備事業」が新たに定められました。
身体合併症を含め緊急を要す患者の搬送先となる医療機関の調整に努めるとされました。
また、365日24時間体制で休日夜間も確実に対応できる相談体制を作るとしています。

2010年の厚生労働省発表で、精神科救急情報センターは、47都道府県のうち、
常時あるのが20、時間制限付きが14、設置してないのが13となっています。
24時間精神医療相談を常時行っているのは18、行っていないのは27の県です。

緊急時に医療を必要としている人に、医療が提供されないのはなぜでしょう?
SOSを出しても、どこにも救いがない状況はいつまで続くのでしょう?
自治体格差は益々拡がり「この県に住みたる不幸を重ぬるというべし」という状況です。

精神科救急入院料が2002年から診療報酬化されましたが、未だに全国で74病院です。
ひとつには、救急当直体制を組めない医師不足が背景にあります。
精神保健指定医が、どんどん街中にクリニックを開業して、病院を出ているからです。
病院に見切りをつけた精神科医の、脱施設化、地域移行だけが先行しています。

一方で、この制度には、精神保健福祉法34条の「移送制度」が盛り込まれています。
2000年度より施行された移送制度については、これまでも激しい議論があります。
精神病院に運んで欲しい家族と、運ばれたくない当事者とでは、やはり立場が異なります。
法制定時、藤枝友の会が掲げた大きな横断幕は、今も僕の脳裏に焼き付いています。
「移送制度、そこに、愛はあるのか?!」というフレーズです。

緊急を要する患者さんも、多くの場合「ハードな救急」以前の対応の問題が大きいです。
「ソフトな救急」をめぐる相談と医療が、きちんと為されていれば問題は回避できます。
自治体の姿勢により、県の移送制度利用はたくさんあったり、皆無であったりします。
移送制度がなくても良いようにするのが、本来の施策の方向と言えるでしょう。

むしろ、自病院の患者も夜間は診ないという病院こそ、おかしいのではないでしょうか?
外来のみのクリニック受診者数の増加が、精神科救急の数を押し上げているようです。
夜間休日含め、全時間帯で対応する常時型外来対応施設の拡充こそ望まれていたのですが。
残念ながら、拡がりのないまま、2010年に削減されてしまいました。

精神科救急は、現在の障がい者制度改革推進会議でも、大きな議論の的になっています。
地域での相談支援や、外来医療のあり方にもかかわってくる問題です。
精神科救急体制の今後については、まだまだ五里霧中という印象があります。
基本は「誰もが安心してかかることのできる精神科医療」ということにつきるのですが…。

さて、なぜ、このテーマの記事になったかというと…、
塚本哲司さんから、求人情報を教えて頂いたからです。
埼玉県の精神科救急情報センターでの、電話相談のお仕事です。
変則勤務なのが辛いところですが、かえって都合の良い方もいるかも知れません。
精神科救急の最前線で、精一杯働いてみようという意欲のある方、お問い合わせ下さい。
そして、現場の実態を踏まえて、精神科救急の問題をぜひ提起して欲しいと思います。

※画像差し替えました。やたら容量が大きいので。記事本文とはまったく関係ありません。


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埼玉県立精神保健福祉センター(埼玉県精神科救急情報センター担当)非常勤職員募集

採用選考日程
受付締切 平成23年2月14日(月曜日)必着
選考試験日 平成23年2月17日(木曜日)
採用予定人数 3名

職務内容等
職務:精神科救急情報センターの業務
主な職務内容 (業務に当たっては、円滑に遂行できるよう研修を実施します。)
1.精神障害者、家族及び一般県民からの精神科救急医療電話相談への対応    
2.警察官からの通報の受付及び通報処理に当たっての支援、調整    
3.消防からの救急要請への対応 等

受験資格
精神保健福祉士法に定める精神保健福祉士の資格を有する方または、大学院博士前期課程(修士課程)において心理学を専攻し、修了した方。又は、平成23年3月末日において、精神保健福祉士資格取得見込み、もしくは心理学を専攻し、大学院博士前期課程(修士課程)修了見込みの方。
なお、地方公務員法第16条に規定する欠格条項に該当する方は受験できません。

試験内容等(履歴書による書類選考のうえ)
試験の内容:面接試験
期日:平成23年2月17日(木曜日)
場所:埼玉県立精神保健福祉センター
合格発表:合否にかかわりなく受験者全員に連絡します。

受験手続
(1)  申込み手続  
 市販の履歴書に必要事項を記入して提出してください。
 なお、精神保健福祉士の資格を有する方は、登録証の写しを添付して下さい。
(2)  受付締切   
平成23年2月14日(月曜日)までに郵送(必着のこと)又は持参(17時00分まで)。
(3)  提出先   
〒362-0806 埼玉県北足立郡伊奈町小室818-2
 埼玉県立精神保健福祉センター  総務・職員担当 浜島
 048(723)1111(代表)   内線1131
*必ず封筒に「精神科救急非常勤採用希望」と記入して下さい。
(4)  提出後  
書類選考の結果及び面接試験日の集合時間等については、2月15日(火曜日)に連絡します。連絡先は確実に連絡が付くように携帯電話等の番号も出来る限り併記してください。
連絡が無い場合は、必ず2月16日(水曜日)までにお問い合わせください。問い合わせがない場合は辞退したものとみなすことがあります。

任用期間
平成23年4月1日~平成24年3月31日 
ただし、翌年度以降改めて任用することもあります。

報酬
(1)  報酬は、月額208,500円を予定しています。
(2)  上記のほか、通勤手当が支給条件に応じて支給されます。
(3)  採用までに報酬改定等があった場合は、それによります。

勤務条件及び福利厚生
(1) 勤務日及び 勤務時間
   平日、土、日、祝日の昼夜間帯を含む勤務のうち、 週当たり平均29時間勤務
(うち夜勤は月4回程度あります)
<勤務の例>(休憩あり)
•平日夜勤16時15分~8時45分
•休日日勤8時30分~16時45分 
•休日遅出13時30分~21時45分
(2)休暇   
勤務年数により10日~20日の年次有給休暇があります。
その他、夏季休暇、忌引休暇、病気休暇等があります。
(3)身分  
 地方公務員法第3条第3項第3号に規定する非常勤の地方公務員となります。
(4)  社会保険
健康保険、厚生年金保険、雇用保険が適用になります。

【参考】埼玉県精神保健福祉総合センターのホームページより転載

精神科救急情報センターとは
夜間・休日において、精神疾患を有する方や、そのご家族などからの緊急的な精神医療相談を電話にて受け付けています。相談内容から、適切な助言を行い、必要に応じて医療機関の紹介を行います。
対象者は、埼玉県在住で精神科救急医療を必要とされている精神疾患を有する方や、そのご家族などです。

ご利用にあたって
•医療機関の状況により、ご要望にお応えできないことがあります。
•かかりつけの医療機関がある方は、まずそちらにご相談ください。
•緊急性の高い相談に対応することを業務としておりますので、時間をかけた継続的な相談はご遠慮ください。
•精神科救急医療以外の精神保健福祉に関する相談については、平日に各市町村・各保健所・県立精神保健福祉センター(さいたま市在住の方は、各区保健センター・さいたま市保健所・さいたま市こころの健康センター)へご相談ください。

精神科救急電話
電話番号 048-723-8699(ハローキューキュー)
受付時間
平日(月~金)17時00分~翌日8時30分
休日(土・日・祝)8時30分~翌日8時30分
※平日(月~金)の日中の時間帯(8時30分~17時00分)の精神科救急医療に関する相談については、各保健所にご相談ください。

【参考】精神科救急医療システム整備事業実施要綱

1.目的
 精神科救急医療システム整備事業は、都道府県又は指定都市(以下「都道府県等」という。)が地域の実情に応じて病院群輪番制等による精神科救急医療施設を整備し、緊急な医療を必要とする精神障害者等のための精神科救急医療体制を確保することを目的とする。

2.事業の実施主体
 この事業の実施主体は、都道府県等とする。ただし、事業の内容に応じて、その一部を都道府県等が適当と認める団体に委託できるものとする。

3.事業の内容
 この事業は、一般の救急医療体制の中で実施することを原則とするが、精神科医療施設の分布状況等を勘案し、地域の実情に応じて実施できることとし、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律等の一部を改正する法律(平成11年法律第65号)により創設された移送制度を盛り込むなど、概ね以下の内容を有するシステムを24時間体制により構築するものとする。
 なお、指定都市を有する道府県においては、当該市と有機的連携をもって本事業の実施に努めるものとする。

(1)精神科救急医療システム連絡調整委員会
 精神科救急医療システムの円滑な運営を図るための精神科救急医療システム連絡調整委員会を設けること。この委員会は、都道府県、指定都市、医師会、精神病院協会、消防機関等の関係者によって行われるものである。
 なお、この委員会は、従来の救急医療対策における関係機関による連絡会議等との 間で、移送制度を含め(十分な連携及び調整を図ること。

(2)精神科救急情報センター
 精神障害者又は保護者等からの相談窓口や精神保健福祉法に基づく移送を適正かつ円滑に実施するための精神保健指定医、応急入院指定病院等との連絡調整機能等を、「精神科救急情報センター」として公立病院、精神保健福祉センター、保健所など精神科救急医療システムの中核となる機関に整備するものとし、当該機能を的確に実施するため、精神保健福祉士等の精神保健福祉施策に精通した者を置くものとする。
 なお、当該機能の整備に当たっては、既に整備されている相談窓口等の活用を妨げるものではない。

(3)精神科救急医療施設
 精神科救急医療施設は、本事業が実施可能な精神病院の中から、地域の実情に応じて都道府県知事又は指定都市市長が指定し、病院群輪番制等により実施することとする。
 精神科救急医療施設として指定された精神病院は、緊急受診者への対応ができる体制(精神保健指定医のオンコール等による。)を整えるものとし、入院を必要とする場合には入院させることができるよう空床を確保することとする。
 なお、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和25年法律第123号)以下「法」という。)第33条の4の規定により都道府県知事又は指定都市市長が指定した応急入院指定病院については、本事業の趣旨に鑑み原則として精神科救急医療施設として指定を行い、本事業に積極的に参画することとする。

(4)搬送体制
 法第34条に関する搬送体制の整備を図るとともに、消防機関又は精神科救急医療施設等の協力を得ながら、患者を速やかに搬送することが可能な体制を整備するものとする。

(5)支援病院の確保
 精神科救急医療システムの円滑な運営を図るため、救急医療を終了した者については転院させることができるよう、必要に応じ支援病院を確保すること。

4.経費の負担
 都道府県等がこの実施要綱に基づき実施する事業に要する経費については、厚生大臣が別に定める「精神保健費等国庫負担(補助)交付要綱」に基づいて、予算の範囲内で国庫補助を行うものとする。


PSWの養成課程見直し

2010年08月27日 19時27分17秒 | 精神保健福祉情報

精神保健福祉士法の改正に向けた動きが、着実に進んでいます。
改正法案の内容は、既に公表されている通りです。
先の国会で障害者自立支援法改正案とともに、廃案になってしまいましたが。
養成課程における教育内容等の見直しが焦点となっています。

趣旨としては、
1.従来の、医療機関等での治療チームの一員として退院促進等をおこなう役割に加え、2.就労支援等を含めて、地域における生活の維持・継続、質の向上を図り、
3.精神保健福祉の多様な課題に対応する、行政や司法、教育、労働分野への拡大、
4.対象疾患も統合失調症を主とするものから、気分障害、発達障害、認知症へと拡大し、
精神保健福祉士の役割が、時代の変化とともに見直しが必要になっている、と。

新カリキュラムの詳細は、以前このブログでも取り上げていますが、
時間数、科目数ともに大幅に増えていて、学校や学生の負担は増加しています。
パソコンを使用した相談援助技術を学べる態勢も、学校側は考えねばなりません。

大きく課題になってくるのは、「実習」の質の向上を求められている点です。
1.実習指導者の比率は学生の5倍以上
2.実習指導者は資格取得後経験年数+講習受講を要する(経過措置あり)
3.担当教員が毎週巡回指導を原則とする
4.医療機関(病院・クリニック)での実習を90時間以上必須
5.受験資格の実務経験と実習施設の範囲見直し
等々、学校側だけでなく現場側も今後どうするか多々考えなければなりません。

新カリキュラムの開始は、2012年4月1日です。
この間、新しいカリキュラムへのパブリックコメントが公募されていました。
各学校、教員、現場から、多数の意見が厚生労働省に寄せられています。
負担増への現実的対応の困難を訴える意見や危惧が、多く寄せられていると聞きます。

PSWの活動領域は、近年本当に大きく拡大しており、対応が必要です。
社会福祉士のカリキュラム変更もあり、科目の再編も、今どうしても必要です。
実習をはじめとした「質の向上」も、前向きに検討される必要があるでしょう。
他の国家資格専門職のカリキュラムに比較すると、まだ時間数も少なくゆるいですし。
理念としては、よりクォリティの高い養成教育レベルを求めるべきだと思います。

でも、一方で、現実的対応を求められる学校側や実習受け入れ側は、やはり大変です。
限られたスタッフ数で、あれもこれもやってる現状で、現実的な負担増は見過ごせません。
各学校は、既に対応の準備に入っていますが、通信教育は壊滅的な打撃を受けます。
フルタイムで現に働いている人にとっては、実習時間の確保が難しくなりますし。

ハードルが上がる分、学生の応募は少なくなり、募集停止に至る学校も出てくるでしょう。
ただでさえ、3Kイメージから、若者の福祉離れが顕著になっており学生が集まりません。
精神保健福祉士の待遇が、今後格段に上がり、若者に魅力的な職種になれば別ですが…。

これまでが供給過剰で、現場は既に充足しているという評価もあるでしょう。
むしろ、養成教育機関の自然淘汰が進んで然るべきという意見もあるでしょう。
でも、学校に学生が集まらないということは、現場への人材供給がやせ細るということです。
量の減少が、質の低下に転化しては、カリキュラム改正の趣旨が崩れます。

改正の理念を大事にしながら、現実的な落としどころを、どう探っていくのか?
まだまだ、いろんな綱引きが行われるのかも知れませんね。
パブリックコメントを受けての、今後の対応が注目されます。

参考までに、日本精神保健福祉士協会が提出した意見を、載せておきます。
養成教育側とはまた異なる、職能団体側の意見として、お読み下さい。


※画像は、東京都庁第2庁舎。記事本文とは関係ありません。


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                              2010年8月10日
厚生労働省 社会・援護局 障害保健福祉部
精神・障害保健課 御中
                         社団法人日本精神保健福祉士協会
                              会 長 竹 中 秀 彦

          精神保健福祉士法関連法令の改正について

標記の件について、下記のとおり本協会としての意見を述べますのでお取り計らいのほどよろしくお願い申しあげます。

                  記

1.精神保健福祉士法関連法令・通知の改正について(案)のⅢ.改正概要における「養成施設の教育課程の充実等について」の「演習・実習の拡充等について」および「その他」の「実習施設の範囲の拡大」について

「精神保健福祉士短期養成施設等及び精神保健福祉士一般養成施設等指定規則第五条第一号カの規定に基づき厚生労働大臣が別に定める施設(平成10年厚生省告示第10号)」の改正にあたっては、職域の拡大や求められる支援の多様化により精神保健福祉士の役割が拡がっている現状に鑑み、現行の施設に準ずる施設又は事業として、精神保健福祉士養成課程における実習指導者の資格要件を満たす者が従事しており、かつ精神障害者が支援の対象に含まれる以下の施設または事業も加えてください。

1)心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律に規定する社会復帰調整官を配置している保護観察所
2)児童福祉法に規定する児童相談所、母子自立支援施設及び児童家庭支援センター
3)生活保護法に規定する救護施設、更生施設
4)都道府県及び市町村の事業運営要綱等に基づき運営される障害者小規模作業所
5)市町村における障害福祉担当課
6)社会福祉法に規定する福祉に関する事務所及び市町村の区域を単位とする社会福祉協議会
7)障害者の雇用の促進等に関する法律に規定する広域障害者職業センター、地域障害者職業センター及び障害者就業・生活支援センター
8)職業安定法に規定する公共職業安定所
9)売春防止法に規定する婦人相談所及び婦人保護施設
10)介護保険法(平成九年法律第百二十三号)に規定する介護老人保健施設及び地域包括支援センター並びに居宅サービス事業のうち通所介護、通所リハビリテーション、短期入所生活介護、短期入所療養介護又は特定施設入居者生活介護を行う事業、地域密着型サービス事業のうち認知症対応型通所介護、小規模多機能型居宅介護、認知症対応型共同生活介護、地域密着型特定施設入居者生活介護又は地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護を行う事業、居宅介護支援事業、介護予防サービス事業のうち介護予防通所介護、介護予防通所リハビリテーション、介護予防短期入所生活介護又は介護予防短期入所療養介護を行う事業、地域密着型介護予防サービス事業のうち介護予防認知症対応型通所介護、介護予防小規模多機能型居宅介護又は介護予防認知症対応型共同生活介護を行う事業並びに介護予防支援事業
11)老人福祉法に規定する老人デイサービスセンター、老人短期入所施設、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、老人福祉センター、老人介護支援センター及び有料老人ホーム並びに老人デイサービス事業
12)更生保護事業法に規定する更生保護施設
13)発達障害者支援法に規定する発達障害者支援センター
14)文部科学省が主管する学校・家庭・地域の連携協力事業として位置づけられているスクールソーシャルワーカー活用事業を行う教育委員会等
15)企業等に対していわゆるEAP(従業員支援プログラム、Employees AssistanceProgram)を行う事業所等
16)刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律に規定する刑事施設及び構造改革特別区域法施行令の規定により委託を受けて運営される社会復帰促進センター

2.改正概要の「その他」の「実務経験施設」の範囲の拡大について

教育内容等の見直しについて(案)には、「実務経験施設の範囲について実習施設の範囲との整合性を図りつつ見直しをする、もしくは検討する」とあります。
今回の新カリキュラム案において医療機関における90時間以上の実習の必須化を図ることに鑑み、医療機関以外の実務経験者においては、90時間以上の医療機関の実習を必須としてください。
また、実務経験施設の範囲拡大に伴い、実務と認定できる業務内容の明示を求めます。

3.その他

(1) 実習については、時間数の拡充と医療機関と医療機関以外の両方の実習が必須とされることに鑑み、実習受け入れ機関の円滑な確保が重要となることから、本制度改正に関する周知と合わせ、特に行政機関等における実習受入れの協力要請に係る通知等が行き届くようにお願いいたします。

(2) 「精神保健福祉士養成課程における教育内容等の見直しについて」(別添)(以下「別添資料」という)には、「今後の精神保健福祉士の役割」として、「医療機関等におけるチームの一員として、治療中の精神障害者に対する相談援助を行う役割」が示されていることに関連して、教育内容の見直しによる資質向上を前提として、精神保健福祉士が医療機関等においてチームの一員として配置される環境や条件に関する改善を図っていただきたく要望いたします。

(3) 別添資料には、「今後の精神保健福祉士に必要とされる知識及び技術」として、「今後の精神保健福祉士の養成課程においては、精神障害者の人権を尊重し、利用者の立場に立って、これらの役割を適切に果たすことができるような知識及び技術が身に付けられるようにすることが求められており、‥‥」とあります。
実践力の高い精神保健福祉士の養成に必要とされる知識及び技術の習得は、ソーシャルワーク実践における価値や理念の習得を前提としていることを明示してください。

                                     以上


福祉士国試受験料、値下げ?!

2010年07月06日 15時27分30秒 | 精神保健福祉情報
6月29日、厚生労働省がプレス・リリースした内容、皆さんに伝わっていますか?
社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士を、これから受験する人には、朗報ですよ~。

「社会福祉振興・試験センターの保有する積立金の縮減等について」という報道発表です。
(本文は下に貼り付けてありますので、読んでみて下さい)

要するに、国家試験の試験・登録機関である試験センターには、なぜかお金がたくさんある。
不正ではないが、公益法人として不適切な蓄財ととられる節があるので、改めさせた。
溜め込んでいたお金を、受験生や福祉従事者に還元させることにした。
厚労省からの天下り役員についても、今後メスを入れることにした、と。

早い話、国試の受験料が、大幅に安くなると…。
どうです?
良い話しでしょう?
(^o^)/

国家試験受験料の改訂額は、こんな感じ…。

社会福祉士    現行  9.600円 →→  5.580円  (2015年度まで5年間)
介護福祉士    現行 12.500円 →→ 10.650円  (2013年度まで3年間)
精神保健福祉士 現行 11.500円 →→  9.750円  (2013年度まで3年間)

ただし、積立金の取り崩し終了後は単年度収支となり、再び引き上げられるそうです。
この時期だけの約20%~40%の大幅プライスダウン!
(なんか、ファッションビルのバーゲンのような… ^_^;)

将来見込みの推計額は、こんな感じ…。

社会福祉士    10.340円 (2016年度~)
介護福祉士    13.420円 (2014年度~)
精神保健福祉士 13.140円 (2014年度~)

ま、将来のことはさておいて「今回受ける人ラッキーだね!」と言いたいところですが…。
この実施、2011(平成23)年度からですって…。
精神保健福祉士だと、第14回国試から…。
今年度の人…ダメじゃん…。

2010年度については、受験地の拡大がされるそうで…。
これまでの7試験地に、島根県松江市、北海道釧路市を加えて、受験生の便宜を図ると。
…でも、…は…?
…それだけ…?( *__* )

それだけです…。
残念ながら…。
さっさと今年度から、安くすればいいのに、というのが一般的な国民感情ですが。
お役所仕事は、そうもいかないようで…。
もう、『受験の手引き』が印刷に入っているし…、とかの事情でしょうか?

かくして、来年度(2011年度)受験の人には朗報です。
今年度(2010年度)受験の人は、ご愁傷様でした~。
(^_^;)

詳しくは、厚労省のホームページをご覧下さい。
受験手数料の推移については、PDFファイルをクリックして見て下さい。
→http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000007e58.html


☆ ★ 以下、報道発表の本文 ★ ☆


「(財)社会福祉振興・試験センターの保有する積立金の縮減等について」

平成22年6月29日
厚生労働省社会・援護局福祉基盤課

本日、長妻厚生労働大臣の指示により、財団法人社会福祉振興・試験センター(以下「試験センター」という。)に対し、以下のとおり指示・要請を行いましたので、お知らせします。

○試験センターの保有する3種類の積立金(平成21年度末に39.5億円)について、以下のとおり縮減すること。(別紙参照)

試験事業安定積立金(28.0億円)
受験手数料の引下げ等により、原則として平成23年度からの3年間で全額を解消する。

登録事業安定積立資産(6.4億円)
登録者現況調査等に必要な経費は残し、登録手数料を引き下げ、資産規模を半減(3.2億円)する。

公益事業拡充資金等資産(5.1億円)
平成22年度からの3年間で、全額を福祉介護従事者の資質向上事業に還元する。

○厚生労働省出身の役員ポストについては、年内に公募により後任者を決定するとともに、常勤役員数の削減、役員報酬の引き下げ、家賃のより低廉な事務所への移転等についても検討すること。

(参考) 試験センターは、「社会福祉士及び介護福祉士法」及び 「精神保健福祉士法」による指定試験機関・指定登録機関としての指定を受け、社会福祉士、介護福祉士及び精神保健福祉士の国家試験の実施等の業務を行っている。



※画像は、昨年度(第12回)精神保健福祉士国家試験『受験の手引き』です。
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