みなさま、あけましておめでとうございます。
龍龍のブログ『PSW研究室』を本年もよろしくお願い致します。
記事更新が間遠になっていますが、懲りずにお付き合いください。
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1ヶ月前(12月1日)に「ソーシャルワーク国際定義の改訂作業」を記事にしました。
「人と環境の接点に介入する」ソーシャルワークの定義が無くなるという話しです。
当たり前に思っていた定義が変わるというのは、どうも落ち着きが悪いものです。
その段階では、年明けを目処に国内の意見集約をしたい旨、お伝えしました。
社専協のソーシャルワーク国内4団体は、統一して各会員にお知らせを流しています。
年末までにご意見を頂き、年明けに各団体で検討し、その後意見集約する予定でした。
ところが…、その後、あっという間に事態が変わりました。
日本国としての意見を、3月までにはまとめて提出しようと考えていたのですが、
2013年1月15日までに意見を表明せよという、下のようなお手紙が届きました。
事情がわからない僕のような輩からすると「話しが違う!」と言いたくなるところですが。
いろいろな地域から、さまざまな文案も出そろってきていることだし、
もう10年以上も議論してきたのだから、新年早々に決めてしまおうということでしょう。
でも、あまりに急な通告で、さぁ、大変です。
今から、国内の団体共催でフォーラムを開いて、議論して…などと考えていたのですが。
もう、待ったなしで、日本国のソーシャルワーカーとして意見表明しなきゃいけません。
ただ、下の定義文案を見て頂ければわかるように、グルーバルな定義と合わせて
リージョナルな(地域の)定義、ナショナルな(国ごとの)定義が認められています。
欧米志向でない、アジア型福祉、日本型福祉を発信していけば良いのでしょう。
今からでは、とても1月15日には間に合わないかも知れませんが、
ご意見をお寄せ頂ければ、社専協国際委員会を通じて、投げかけていきます。
感想でもなんでも結構ですので、率直なご意見をお寄せください。
なお、例によって、今回も翻訳は片岡信之さんの手によるものです。
いつも、いつも、英語のできない国際委員長をサポートして頂いています。
僕自身は、絶対にミスキャストだと思いますので、どなたか来期、よろしくお願いします。
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みなさん
この手紙およびソーシャルワーク専門職の世界的定義の文案は、定義プロセスに取り組んできた数多くの人たちを代表して、みなさんにお届けするものです。
この手紙は、IASSWの定義プロセスのリーダーのJan Agten 、およびIFSWの定義プロセスの共同リーダーのRory Truellの2人が共同で執筆しました。
以下の世界的定義の文案は、IFSWとIASSWが別個でありながらも相互調整しつつ行った広範な協議の結果できあがったものです。
両団体ともリージョナルなワークショップを実施し、また多くの国・組織・個人がこのプロセスに加わって意見を提出しました。
出された意見を両団体の指名された代表がとりまとめ、ここに共同の暫定的な定義案を示すことができることをうれしく思います。
この文案を作るにあたって、私たちは、時に相反する以下の事柄を尊重するように心がけました。
・意見聴取過程において出された様々な視角を包含すること
・定義を長くしないこと
・言葉や意味が容易に翻訳できるようにすること
・言葉遣いを各国の政府や政策作成省庁にとって適切なものにすること
・ソーシャルワーカー以外の人々が理解しやすいものにすること
・この専門職の深さと複雑さを伝えられるものであること
上記の基準をすべて満たし、またすべての人の期待に沿うことは不可能です。
それでも、これは、10年以上前に現行の定義が策定された後のこの専門職の発展を表す、首尾一貫したソーシャルワークの定義になっていると信じています。
特に、この定義は、ソーシャルワークの分野で上がっている多くの新しい声を認知し、リージョナルな解釈と共存するように作られています。
また、この定義案は、ワーカーの役割と人(々)の目標とのリンク、すなわち、ウェルビーイングを達成するために人々がソーシャルワークのサービスを利用して環境に影響を及ぼしていくことを明確にしています。
この定義は、この専門職がソーシャルワークの理論や広範な社会科学に加えて、各地の土着の知識に基づくことも強調しています。
最後に、この定義は、人権と集団的責任の両方を重視することによって、私たちの専門職が進化していることも表しています。
次のステップは、IASSWとIFSW双方の理事会が、この文案あるいはその修正案を支持することです。
私たちは、その過程は2013年3月までに終了すると期待しています。
2013年1月15日までにフィードバックをいただければ、それを要約して理事会に提示します。
もし双方の理事会が同一の定義に合意すれば、2013年4月に最終的な文案が両団体の会員組織に提示され、郵便投票によって採決されることになります。
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ソーシャルワーク専門職の世界的定義
(リージョナルおよびナショナルな定義は、それぞれのリージョナル・ナショナルな文脈を考慮に入れて、より個別的なものとなりうる。)
「ソーシャルワークは社会開発と社会的結束を促進する。
ソーシャルワークの核となるのは、持続可能なウェルビーイングを達成するためにその社会的環境に影響を及ぼそうとする人々をサポートすることである。
この専門職は、ソーシャルワークの理論、社会科学、および各地の土着の知識によって支えられている。
実践の基礎をなすのは、人権、集団的責任、および社会正義の原則である。」
原注
「ソーシャルワーク専門職の…」
このタイトルは、この定義がソーシャルワーク専門職に適用されるものであって、非専門職的なソーシャルワーク役割を担う人々には必ずしも適用されないことを示している。
「社会的結束を促進…」
ここでは、‘promote’でなく‘facilitate’という言葉を採用した。
後者の方がより行動的で、意図というより実際の変化を示すからである。
「影響を及ぼそうとする…」
ここでは、人々は自らの未来をコントロールできるということを意味する ‘influence’ を使った。
「人々をサポートすることである。」
この文は、ソーシャルワークの文脈における「解放」という伝統的な概念を表現している。
「各地の土着の知識によって…」
「土着の知識」を含めたのは、文化的知識の重要性を示すとともに、西洋の理論的モデル一辺倒からの脱却を強調するためである。
「実践の基礎をなすのは…」
実践という言葉を入れたのは、ソーシャルワークは実践に基づく専門職であることを強調するためである。
「人権、集団的責任、…」
人権に加えて「集団的責任」を入れたのは、権利やウェルビーイングは、市民/人々が自らの行動や他者に対して責任をとる限りにおいてのみ、十分に認知されるものだからである。
ソーシャルワーク専門職は人権の法的枠組のために主張するものであることも暗示している。
※画像は、群馬の四万温泉の遊技場で見かけた招き猫。