PSW研究室

専門職大学院の教員をしてる精神保健福祉士のブログ

リカバリー全国フォーラム2009、いよいよ開幕

2009年08月19日 02時45分44秒 | イベント告知
昨日・今日と行われている「C・ラップ先生来日記念学術フォーラム・研修会」。
日本精神保健福祉士養成校協会と早稲田大学の共催で行われた企画。
定員300名を超えて、大盛会のようですね。
受付も混雑して、開会が30分遅れたほどだとか。
田中英樹さんによる翻訳や、白澤政和さんの本も出たばかりだし。
ストレングスモデルのケアマネジメントは、もはやPSWのトレンドの最前線なんでしょうか。
僕もちょっと、覗きに行ってみたかったな…。

実際に参加したPSWから、夕方、メールをもらいました。
彼女に言わせれば、シンポジストの岩上洋一さんの発言が、とても良かったと。
僕もご一緒したことがあるけど、とても飄々とした語り口ですよね。
全然上から目線でなく、でも、とても大事なPSWの視点を、しっかり伝えてくれる。
とても明るくて、笑顔で話してくれるんだけど、結構すごい仕事、ブルドーザーのようにしている。
かつて精神医療の後進県といわれた埼玉県で、今、ガンガン、退院・地域移行支援を展開している。
こういう、地に足の付いた実践をしっかりやってるPSWに会うと、うれしくなりますね。
仕事はアグレッシブでも、けっしてそれを感じさせない、おだやかな人柄と語り口。
調整を生業とするPSWにとって、敵を作らず味方を増やしていくキャラって大事ですよね。
きっと、岩上さんそのものが、他者のストレングスを大事にする人なんでしょうね。


あ、本人の許可も得ないまま、勝手に書いてしまった…。
許されよ、岩上さん。
閑話休題。


さてさて、自分が運営に関わっている企画の方に、専念しなきゃいけません。
8月21~22日、日本社会事業大学で開催の「リカバリー全国フォーラム2009」。
C・A・ラップさん、リンダ・カールソンさんをお迎えしての二日間。
ちょっとした学会規模の集会なので、結構準備も大変です。

講演2本、シンポジウム、トークライブ、分科会18本、ランチョンセミナー4本、懇親会…と盛りだくさんのプログラムだし。
駅から会場まで遠いので、直通バスをチャーターしたり、駅前に誘導案内係を配置したり。
分科会が二日間で18もあるので、パソコン・マイク・プロジェクターも足りなかったり。
メイン会場が、マックスで700席ないので、ぎっちり立ち見も出る状況になるだろうし。
はたまた、全会場に同時にエアコン供給すると、電力不足も深刻で停電の危険性まであるし。
既に事前参加登録者は、600名を超えているし、当日参加者がどこまで増えるか、読めないし。
開催が近づくにつれて、こりゃ大変なものを引き受けてしまったと…。

ボランティアやアルバイト学生らの運営スタッフ、60余名で全体を運営していきます。
事前準備不足は明らかで、もう準備はバタバタ、ドタドタ、ゴテゴテ。
なにせ、実行委員会が実質的にスタートしたのが、つい1ヶ月前ですから。
打合せ不足を、個々のキャラとキャパで臨機応変に乗り切っていくしかありません。
大きなトラブルが生じなければ、ヨシとするしかないかも知れません。

でも、せっかく「リカバリー」という旗印に、全国から集まってくれる訳ですから…。
なんとかして、いい場にしたい。
来て良かったと思われる場にしたい。
次につながっていくような場にしたい。

これだけの企画委員・実行委員が、真剣に取り組んできたのだし。
趣旨に賛同して、70人以上の分科会報告者も集まってくれる訳ですし。
日本社会事業大学、東京学芸大学、東京医療保健大学、山梨県立大学等から、たくさんの応援ボランティアが集まってくれるし。
主催団体のコンボ(地域精神保健福祉機構)の皆さんも、フル回転で頑張ってくれてるし…。

「リカバリー全国フォーラム2009
  ~日本の精神保健福祉サービスを”当事者中心”に変革するために~」

…なんとか、精一杯頑張りたいと思います。


…と言うわけで、このブログ、しばらく記事の更新は出来ません。
この週末は、たぶん精力を使い果たして、死んでいるでしょう。
あしからず…<(_ _)>


龍龍


夏休みの宿題

2009年08月17日 02時59分10秒 | 日々の雑記


夏休みが、終わってしまいました。
木~日曜日、4日間の夏休み。
大学教員としての、短い夏休み。

結局、夏休みのイベントは親族と会っただけ。
好きな映画も1本観ただけ。
『縞模様のパジャマの少年』。
あとは、掃除して、買い物して、料理して、家事の日々。
そして、また、これから仕事、仕事、仕事です。

夏休みには、宿題が付きもの。
子どもの頃から、苦手でした。
計画的にこなすことができない。
いつも、毎年、計画倒れ。
追い詰められないと、やらない。
そして、毎年、8月31日に苦しんで、子ども心に後悔…。

今でも、これは一緒です。
教員になったからといって、変わるもんでもない。
やはり、追い詰められないと、やらない。

しかし、子どもの頃とは、ちょっと事情が違います。
休みの期間が、やたら短い。
なのに、宿題の量が、やたら多い。
4日間で、とてもこなせる量ではない。

宿題を、一つひとつ、ここに記す気にはなれません。
考えるだけで、うんざりしてきます。
本当は、追い詰められても、やりたくないものばかり。
でも、やらなければなりません。
全部、宿題ですから。

平日の昼間は、なかなかできません。
今は、実習巡回指導もありますし。
やるとすれば、プライベートな夜しかありません。
睡眠時間を削っての、夜鍋仕事。
大学の教員になって、睡眠時間はどんどん短くなりました。

明日から、また仕事です。
朝8時半には、病院に出勤しなければ。
もうすぐ、午前3時…。
もう、さすがに寝ないと、明日が辛い。

おやすみなさい。

龍龍


第52回日本病院・地域精神医学会総会プログラム

2009年08月12日 00時51分21秒 | イベント告知


やっと、プログラムが届きました。
9月に、和歌山で開催される「第52回日本病院・地域精神医学会総会」。
プログラムの構成に、かなり苦労の跡が伺えます。
結構、気合い入っていますね~。

この学会の特徴は、精神保健福祉の現場の学会であること。
現場を知らない大学人や研究者は、ほとんどいない。
病院や地域で、様々な実践活動に取り組む人々で構成され、運営されている学会であること。
そういった意味では、とてもリアルな学会といえます。

また、「医学会」でありながら、参加者のほとんどは、非医師が多いこと。
看護はもちろんのこと、最近発表でも多く、会員が増えているのはPSWとOT。
役員(理事・評議員)には、最近は、選挙で選ばれたユーザーもいる。
すべての人が対等に議論することが、当たり前になっている学会です。

そして、学会の理念として「行動する学会」を目指していること。
年一回の総会は、他の学会と同様、報告発表会という要素が強いけども。
その時々のビビッドな課題を取り上げ、委員会で深め、問題提起をしていく。
現場の矛盾・課題を、施策・制度上の問題として、厚生労働省等に働きかけていく。
学会創立以来の「精神医療改革」の熱い志を、今も受け継いでいる学会といえます。

それだけに、最左翼に位置するラディカルな学会という、評価が今でもあります。
厚生労働省や日本精神科病院協会にとっては、目の上のたんこぶ的な存在でしょう。
でも、この学会がかねてより主張してきたことは、どんどん当たり前の事になっています。
むしろ、旧弊なこの国の精神医療を、切り開いてきた学会と言えると思います。
立場によって、評価は大きく分かれるでしょうけど…。

今回総会が行われる和歌山県は、お世辞にも精神医療が進んでいるとは言えません。
むしろ、病院精神医療の活動については、はっきりと後進県と言えます。
でも、地域精神保健福祉活動では、粘り強い様々な活動が取り組まれています。
「ほっとけやん!」というメインテーマには、現地の人々の色々な想いが込められていると思います。
どんなディスカッションが展開されるのか、今から楽しみです。

龍龍

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第52回日本病院・地域精神医学会総会
2009年9月18日(金)~19日(土)
和歌山市市民会館(南海和歌山市駅より徒歩5分)
メインテーマ:ほっとけやん!!~このままでいいのか、私たちの地域とくらしと精神医療~
総会事務局:社会福祉法人 一麦会 麦の郷 紀の川・岩出生活支援センター内


■ シンポジウム
①「自立支援法下の精神障害者福祉」~こんな悪法ほっとけやん、今、私たちはこうしています~
  座長:金杉和夫(東京・金杉クリニック、医師)
     加藤直人(和歌山・一麦会、理事)
  シンポジスト:長岡健太郎(弁護士)
          山本耕平(立命館大学、教授)
          東 俊裕(熊本学園大学社会福祉学部、教授・弁護士)
          野沢和弘(毎日新聞論説委員)
          大谷真之(自立生活応援センターチャレンジ、当事者)
②「和歌山の地域をつくり出す」~こんな状況ほっとけやん、だから私たちこうしてきた~
  座長:川崎  元(和歌山・やおき福祉会、理事長・医師)
  シンポジスト:江上直子(和歌山・麦の郷 和歌山生活支援センター)
          中西 優 (和歌山・わかやま高齢者協同組合理事長)
          山崎文三(和歌山・和歌山県精神障害者団体連合会、当事者)
          松岡信一郎(和歌山・和歌山市保健所精神保健相談員、PSW)
          岩本匡史(和歌山・あすなろ共同作業所、OT)
③「心神喪失者等医療観察法を検証する」~指定入院医療機関を中心に~
  座長:樋掛忠彦(長野・県立駒ヶ根病院、医師)
     大賀達雄(埼玉・鴻巣病院、心理)
  シンポジスト:山岡信明(広島・小泉病院、医師)
          石丸正吾(岩手・独立行政法人国立病院花巻病院、医師)
          池原毅和(東京・東京アドヴォカシー法律事務所、弁護士)
  指定討論:関口明彦(東京・全国「精神病」者集団運営委員、当事者)

■ 特別学術講演
「統合失調症への早期介入の試み」
  座長:馬島将行(和歌山・和歌山県立こころの医療センター院長)
   講師:篠崎和弘(和歌山・和歌山県立医科大学神経精神科教授)

■ ランチタイムセッション
①「ほっとけやん 和歌山県の精神保健福祉」
  座長:上野半兵衛(和歌山・国保野上厚生総合病院、副院長)
   演者:伊藤静美(和歌山・社会福祉法人一麦会(麦の郷)、理事)
②「和歌山県における精神医療の歴史」
   座長:朝井 忠 (和歌山・前和歌山県立精神保健福祉センター長)
   演者:北端裕司(和歌山・和歌山県立精神保健福祉センター長)

■ 公開市民講座
「若者 と いま」~若者の悩み、仕事、ひきこもりの中で~
  座長:生駒芳久(和歌山・県立こころの医療センター)
   シンポジスト:宮本 聡(紀南療育センター、医師)
          山本耕平(立命館大学、教授)
           氏家志穂(あざと共に生きる会 FuーClover代表、当事者)
             (他に1名予定あり)

■セミナー
① 精神科専門薬剤師精神医学セミナー(1)
   コーディネーター:中谷真樹理事/吉尾隆委員
   精神科薬物療法の基礎:稲垣  中 (東京・慶應義塾大学、医師)
   多剤大量療法からの脱出:天正 雅美(大阪・ほくとクリニック病院、薬剤師)
   看護職の立場からみた薬物療法:菊池謙一郎委員(岩手・岩手県立大学、看護)
   当事者の立場から見た薬物療法:山口弘美委員(長崎・全国精神障害者ネットワーク協議会、当事者)
②精神科専門薬剤師精神医学セミナー(2)
   講師:中谷真樹(山梨・住吉病院、医師)
      吉尾 隆(千葉・東邦大学、薬剤師)
③ 診療報酬委員会企画診療報酬セミナー
   PSWの立場から:日本精神保健福祉士協会 診療報酬担当者
   OTの立場から:日本作業療法士協会 診療報酬担当者
   看護の立場から:日本精神科看護技術協会 診療報酬担当者

■ 一般演題分科会
①「急性期医療」
  座長:崔 秀賢(京都・岩倉病院、医師)
      香山明美(宮城・県立精神医療センター、OT)
②「地域生活支援Ⅰ」
  座長:山下俊幸(京都・京都市こころの健康増進センター、医師)
      大塚淳子(東京・日本精神保健福祉士協会、PSW)
③「さまざまな取り組み」
  座長:新垣 元(沖縄・新垣病院、医師)
      比留間ちづ子(東京・若年性認知症社会参加支援センター「ジョイント」、OT)
④「心理教育」
  座長:大賀達雄(埼玉・鴻巣病院、心理)
      長安正純(岡山・川崎医療福祉大学、OT)
⑤「地域移行Ⅰ」
  座長:今出 徹(和歌山・国保日高総合病院、医師)
      大沢 隆(山形・上山病院、看護)
⑥「調査/研究」
  座長:白石弘巳(埼玉・東洋大学、医師)
      仁木 満(和歌山・県立こころの医療センター、看護)
⑦「薬物療法」
  座長:井谷隆典(和歌山・岩崎病院、医師)
      柴田文江(東京・クボタクリニック、看護)
⑧「地域移行Ⅱ」
  座長:伊藤哲寛(北海道・北見赤十字病院、医師)
      竜田直嗣(和歌山・田辺保健所、PSW)
⑨「病棟における実践」
  座長:今岡雅史(島根・松江市立病院、医師)
      井上英治(大阪・さわ病院、OT)
⑩「デイケア」
  座長:樋田精一(北海道・つるい養生邑病院、医師)
      濱上幸司(長野・村井病院、OT)
⑪「地域生活支援Ⅱ」
  座長:岩尾俊一郎(兵庫・県立光風病院、医師)
      山本昌代(和歌山・岩出保健所、保健師)
⑫「障害者自立支援法関連」
  座長:木村朋子(東京・にしの木クリニック、PSW)
      蕨野隆久(和歌山・社会福祉法人筍憩会、PSW)
⑬「地域移行Ⅲ」
  座長:小野紀夫(和歌山・紀南こころの医療センター、医師)
      古屋龍太(東京・日本社会事業大学大学院、PSW)
⑭「訪問」
  座長:中谷好宏(和歌山・県立こころの医療センター、医師)
      金山千夜子(島根・海星病院、看護)

■ 交流コーナー
①「長期在院患者の地域移行を目指す退院コーディネート(7)」
      古屋龍太(東京・日本社会事業大学大学院、PSW)
②「精神障がい者ご本人が働くために自ら読むデキストの紹介」
      中原さとみ(東京・IPS-Tokyo/桜ケ丘記念病院、PSW)
③「自ら考え行動する取組から~アンプリアールでみつけた私の勇気~」
      木村まゆみ(和歌山・一麦会けいじん舎アンプリアール、当事者)
④「我が国の精神科医療における隔離/身体拘束に関する論点整理」
      長谷川利夫(新潟・新潟医療福祉大学、OT)
⑤「医療観察法対象者の自殺について」
      桐原尚之(全国「精神病」者集団、運営委員)
⑥「退院促進で困った!パート2~知的障害/発達障害の人への地域支援~」
      鈴木恵美(東京・都立多摩総合精神保健福祉センター、保健師)
⑦「WRAPで元気になろう!~元気になるための工夫やリカバリーについて考える~」
      坂本明子(福岡・NPO法人WRAP研究会/久留米大学精神神経科学教室、PSW)
⑧「精神科デイケアの現状~メンバーの睡眠の質の検討~」
      清水英治(千葉・秋元病院、OT)

■ 夜間交流集会
①「精神医療/福祉の現状を問う Part7」
      原田 徹(京都・ウエノ診療所、心理)
②「各職種からみた精神科デイケアの魅力を語ろう Part2」
      森泉智男(大阪・浅香山病院、心理)




※画像は、紀勢本線・紀伊田辺駅にて

ある夏の日曜日

2009年08月10日 01時52分45秒 | 日々の雑記

今日は日曜日でしたが、朝から一日、大学に出ていました。

朝一番、9時から講義でした。
通信教育科のスクーリングの授業です。
老若男女、様々な経歴の社会人学生たち、400名を前に話します。

テーマは「精神障害者の脱施設化」。
90分、約100枚のパワポスライドを使って、なるべくわかりやすく伝えようと心がけました。
精神保健福祉関係の仕事をしてきた人は、ほとんどいません。
それでも、皆さん、真剣に耳を傾けてくれました。

それから、今日はオープンキャンパス。
受験を考える高校生たちが、順に訪れます。
まだ幼い顔の高校生たちが、将来のこの国の福祉を担っていくのでしょう。

教職員による相談コーナーや、模擬授業があります。
学部生たちによる学内ツアーや、様々なオリエンテーションも楽しそうでした。
学生たち手作りの資料や掲示物も楽しく、教員である僕にも参考になりました。
あ、一応僕も、入学相談を少し受けました。

しかし、親御さん同伴が多いことに、ちょっと驚きました。
それだけ、親子仲良し、教育熱心な方が増えているということなのか。
はたまた、親離れ、子離れ、お互いにできていないということなのか。

そのあと、自分の研究室にこもって、仕事していました。
ふだん、まとまった時間がとれない平日には、できない仕事をしようと…。
でも、結局、溜まっていたメールへの返信と資料に目を通すだけで、終わり。
宿題になっている、あれこれの仕事には、手つかずです。
やれやれ…(汗)。

もうすぐ、短い夏休みがやってきます。
13日~15日のお盆休みは、大学も閉校になります。
日曜日も含めると、4日間だけの夏休み。
貴重な、貴重な、夏休み…。

でも、夏休みは、宿題も山積み…。
何から手を付けて良いのか、わからない状態です。
夏休みは、東京の親族へのおつきあいもあり。
実家の京都に帰ることも、ままならず。
なんか、あっという間に過ぎそうです。

ちなみに、夕方から、大雨洪水雷警報が出て、大学周辺は土砂降り。
でも、車で15分離れたら、路面は乾いていました。

夜、東京周辺では震度4の地震が…。
でも、スーパーで買い物していて、全然気がつきませんでした。
それって、どうよ?…と自分でも思いますが。
年齢を加えるに従って、鈍感力が身についてきたようです(笑)。

病院PSWの一日の仕事

2009年08月08日 03時10分23秒 | PSWのお仕事
精神科病院での精神保健福祉士(PSW)の仕事について、記しておこうと思います。

相談面接等を行うソーシャルワーカーというと、色々イメージを持たれます。
福祉を学ぶ学生でも、いわゆる心理面接カウンセリングと区別がついていないことがあります。
1日に何人かのクライエントの相談にのる仕事、というようなイメージを持っている学生が多いようです。

もちろん、面接を行うことは、PSWの主要な業務の方法には違いありません。
クライエント本人の解決能力が高い人は、面接だけで済むこともあります。
でも、面接は、ワーカーが様々な調整を行う業務の一角に過ぎません。
1回の面接の背景には、他職種・他機関との様々な調整プロセスがあります。

以下は、何年か前の某月某日、僕自身の、病院での一日の業務日報です。
一時期、PSWの増員を病院側に求めるための資料として、日報を細かく付けていました。
業務統計の数字だけでは、どうしても現場の姿が伝わりにくいので。
少しは、病院の中でのひとりのPSWの動きが、イメージしていただけるでしょうか?



•Aさん (外来、統合失調症)     患者面接:就労についての相談
•Bさん (入院、統合失調症)     電話:グループホームに利用打診
•Cさん (入院、アルコール依存症) 患者面接後、福祉事務所に電話:生活保護の申請
•Dさん (入院、アルコール依存症) 弁護士に郵便:自己破産申立て手続き
•Eさん (入院、アルコール依存症) 主治医と協議後、福祉事務所に電話:退院後入居予定のアパート契約
•Fさん (入院、統合失調症)     患者・家族・主治医と合同面接:退院日の決定
•Gさん (入院、統合失調症)     主治医と協議:退院の可能性の検討
•Hさん (入院、統合失調症)     主治医と協議:転院方針をめぐり検討
•Iさん (外来、統合失調症)     主治医と協議:授産施設利用の希望
•Jさん (入院、アルコール依存症) 患者面接:両親死去後の遺産相続問題  
•Kさん (入院、アルコール依存症) 患者・福祉事務所ケースワーカー面接:経済問題の整理
•Lさん (外来、統合失調症)    委任状作成:後見人問題
•Mさん (入院、統合失調症)    主治医と協議:退院日の検討
•Nさん (外来、てんかん)     消費者相談センターと電話協議:ペイオフの活用
•Oさん (未受診、統合失調症)   電話:自助グループの運営相談
•Pさん (デイケア、統合失調症)  患者面接:授産施設の利用検討
•Qさん (未受診、アルコール依存症)電話:他精神科病院より転院受入依頼の相談
•Rさん (入院、統合失調症)    主治医と協議後、患者面接、福祉事務所ケースワーカーと電話:医療費問題
•Sさん (入院、統合失調症)    主治医と協議:援護寮利用の可能性検討
•Tさん (入院、統合失調症)    患者面接:退院後の生活について
•Uさん (入院、アルコール性認知症)他精神科病院PSWより電話、主治医・担当看護と協議:転院方針
•Vさん (入院、人格障害)     患者面接:退院要求への対応
•Wさん (入院、統合失調症)    患者面接:退院後のグループホーム利用
•Xさん (外来、統合失調症)    家族面接:家族会の会計運営
•Yさん (外来、統合失調症)    電話相談:患者会参加の悩み
•Zさん (未受診、うつ病)      電話:一般科病院MSWより転院の依頼
•aさん  (入院、統合失調症)    電話相談:家族より障害年金請求について
•bさん  (未受診、統合失調症)   電話相談:他病院外来通院中、当院へ入院希望
•cさん  (関係者)          電話:他病院PSWより緊急時対応の方法について相談
•dさん  (関係者)          電話:大学教授より実習生受入依頼



この日、僕はAさんからdさんまで、1日で29人のケースに関わったことになります。
電話の応対も多く、1日だいたい20~40件、平均30件くらいでしょうか。
毎日が、時間との戦いです。
常に限られた時間の中で、てきぱきと仕事をこなさないと、どんどん滞ってきてしまいます。

ちなみに、この日は他にデイケアのグループワーク担当が2件(午前と午後)ありました。
この日の、メンバーの出席者数は41名です。
入院病棟の申し送りやカンファレンスなども、毎日あります。
そこで情報交換した患者さんの事などは、上の日報・数字には入っていません。
この日の勤務時間は、8:30~20:00。
昼食は食べられませんでした。

なお、病院により、PSWの業務や忙しさは、随分異なります。
上記が、けっして一般的な姿というわけではありません。
あくまでも、ある日の、ある病院の、あるPSWの、一日の仕事の例とお考え下さい。

大学と病院の二足草鞋

2009年08月06日 01時53分29秒 | 日々の雑記
明日は、午前中は大学勤務で、午後は病院勤務です。

大学で仕事をするようになっても、未だズルズルと前職の病院勤務を引きずってます。
周囲に乞われるままに、受けてしまったのは、あくまでも僕自身ですが。
他の仕事もあり、職場がいくつもあるのは、やはりしんどいです。

病院に残らざるを得なかったのは、いくつか理由があります
ひとつの病院に、四半世紀以上勤めていた訳ですから、受け持ち患者さんも多かったこと。
デイケアとアルコール薬物病棟のグループワーク等、すぐには抜けられなかったこと。
担当していた新病院建築プロジェクトや病棟再編計画が、具体化する移行期であったこと。
上司の相談室長も定年退職を迎えており、相談室内が大分がたがたしていたこと。
僕の退職に合わせ、3人のPSWが新採用され、新しい相談室を創る時期であったこと。
残されたPSWたちが、あれこれ不安を表明し、スーパーバイズを求められていたこと。
えとせとら…。

ありがたいことに、後輩のPSWたちが、僕のための席を相談室内に作ってくれました。
ひとつだけ、壁際に設けられた共有パソコン用のデスクが、僕の指定席です。
出勤すると、いつも回覧資料がどっさり、山積みになっています。

勤務の基本は、あくまでも週1日、月曜日だけの非常勤ソーシャルワーカーです。
朝8時半に出勤し、5時15分まで勤務、時給1200円(安っ!)。
資料に目を通し、メールに返信し、グループ活動を行い、記録を書き、書類を整理し、患者さんと煙草を吸い、
相談室のランチョンミーティングに出て、病棟でスタッフと打合せ、患者さんと会い、家族と連絡し、関係機関に電話し…。
やっていることは、病院PSW時代と、さして変わりません。

でも、当たり前の話しですが、何も大したことはできません。
特に、個々の患者さんのケースワークの実務は、非常勤PSWではまわし切れません。
下手をすれば、続きは来週に…と言うことになり、クライエントに不利益を生じます。
問い合わせがあっても、返答は後日になり、対応は後手後手になってしまいます。

教員2年目になって、その週1日の病院勤務も維持できなくなってきています。
半日だけ病院で仕事して、大学に行ったり、別の曜日に振りかえたり…。
学内であれこれ役割を負うようになったことや、担当授業が増えたためです。
あちこちに迷惑をかける前に、やはり潔く身を引くべきでしょう。

病院勤務も、精一杯やって、今年度限りとなりそうです。
臨床現場を離れ、患者さんたちと会えなくなるのは、淋しい限りですが…。
未だ長期在院していて、行方が定まっていない患者さんのことが、気がかりですが…。
後輩PSWらに、きちんとしたスーパーバイズの機会も設けられないことも、心残りですが…。
大学の教員としての仕事に、専念できる環境をつくっていかなければ…。

大学と病院の二足のわらじも、あと8ヶ月です。

医療保護入院の位置

2009年08月04日 09時34分51秒 | 精神保健福祉情報
7月30日、「今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会」の第21回会合が開かれました。
現行の精神保健福祉法について、意見交換が行われました。
精神障害者本人が入院を拒否しても、保護者が同意すれば入院させることができる「医療保護入院」について、改善や撤廃を求める声が委員から続出しました。

保護者の同意に基づく「同意入院」が、「医療保護入院」に改められたのは、報徳会宇都宮病院事件を契機として制定された、精神保健法(1987年)でです。
この時に、初めて精神障害者本人の同意にもとづく「任意入院」制度が設けられました。
それまで、精神障害者の入院制度は、すべてが本人の意思によらない強制入院でした。
わが国の精神保健法規は、それまで大前提として、精神障害者が自分自身の意志で精神病院に入退院をするなどということは、考えられていなかった訳です。

この入院形態の変更が、精神病院の医療環境に及ぼした影響は、極めて大きいものでした。
それまで、精神科医療関係者のおおかたのイメージとしては、患者本人の意思にもとづいて入退院の決定がなされたら、現場に大混乱が生じると考えられていました。
でも、精神保健法が施行されてからの実際の統計をみると、全然違います。
法改正直後の1988年には医療保護入院が63.0%、任意入院が28.5%でした。
その9年後の1997年には医療保護入院が29.0%、任意入院が67.3%でした。
両者が約3分の1、3分の2と逆転しています。
本人の意志に基づいて入院する形態が、当たり前の第一選択肢になった訳です。

でも、実は医療保護入院は、一時期全体の4分の1くらいまで減りましたが、2000年を境に増加に転じています。
現在では、むしろ全体の4割近くが医療保護入院になってしまいました。
医療保護入院者の内訳を見ると、65歳以上の占める割合が増えてきています。
認知症高齢者の精神科病院入院が、どんどん増加しているという事実もあります。
明確に入院の拒否はしていない(できない)患者が、手続き上面倒でない任意入院とされていたという問題も、一方でありますが…。
非自発的な入院が、なおもどんどん増え続けるとしたら、どこかいびつな精神医療が再び台頭してきそうな不安が生じます。

年々増加を続けてきた入院患者数は、1991年の34万9190人をピークに減少に転じました。
自傷他害のおそれがあるとして措置入院とされた患者の割合(措置率)は、1970年の30.2%から次第に減少し、法改正前の1985年には9.0%、1997年には1.4%と激減しています。
もちろん、自傷他害のおそれのある患者が、急激に減ったということでは、決してありません。
本来は本人の意思で入院継続できる患者が、強制入院形態である措置入院・医療保護入院でずっと処遇されていたということです。
また、措置率や人口当たりの措置入院患者数は、都道府県によって著しく異なります。
自傷他害のおそれのある患者の発生率が、県によって大きく差があるなんてことはありません。
判断する基準がバラバラで、制度が恣意的に運用されているということです。
厚生労働省も、今回の検討会で、判断基準の一層の明確化や事例集の提示などを行うべき、と提示しています。

医療保護入院制度については、本人が入院を拒否しているのに保護者が入院に同意した場合、本人と家族の間に葛藤が生じることや、家族の負担感が強いなどの問題点が、これまでにも繰り返し指摘されてきました。
検討会でも、田尾有樹子さんが「各国の入院形態と比較して、強制入院の同意者が家族である欧米先進諸国はないと思う。医療保護入院は即刻改善し、強制入院の同意は行政で行う仕組みにするべき」と述べています。
伊澤雄一さんは、「保護者がいなければ何もできない人という社会の目が、偏見と差別をあおっている。保護者制度は撤廃すべき」と述べました。
さらに、中島豊爾さんは「保護者」について、患者の権利擁護に限って規定するか、自治体の第三者機関が患者の権利を擁護する仕組みをつくることを提案しています。
また、精神保健福祉法での認知症に係る対応の是非、適否を検討することが必要ではないのか、との指摘も出されています。

現在ある精神保健福祉法は、強制入院手続き法としての精神衛生法を一部改正する形で、今日に至っています。
保護者制度は、精神障害者を保護監督する義務を家族に負わせるという、精神病者監護法(1900年)以来の流れを踏襲しているだけではありません。
公権力によらない強制入院を、家族の同意により正当化するシステムとして機能しています。
医療保護入院の存立要件として、保護者制度はあり、両者は切り離せません。
国際的に見ても、これは随分ゆがんだシステムです。
医療保護入院制度をどう変えるのかによって、この国の精神科医療の将来の姿が決まってくるのでしょう。

第52回日本病院・地域精神医学会

2009年08月02日 03時06分51秒 | イベント告知
この秋(というか晩夏?)、学会で報告をする予定です。
9月18日~19日に、和歌山で開かれる「第52回日本病院・地域精神医学会総会」で。
6月に演題応募して、どうやら採用はされたらしいのですが…。

未だにプログラム等、案内が全然届かない…。
どうしたのかな…?
もう、開催まであと1ヶ月半なのに。
大丈夫かな…?
事前参加申込みとか、宿泊先とかもあるし。
さすがに、ちょっと、不安になってくる…。

学会のホームページ( http://www.byochi.org/ )を見ても、6月の演題募集で更新止まってるし。
シンポジウムとか講演とか、おおまかな予定プログラムは公開されているけれど。
現場で実践する専門職にとっては、そういった内容は、あくまでも総論的なもの。
一般演題の分科会こそ、リアルな現場の実情や方法を知り、交流する場。
どんな演題が集まっているのかが、やはり気になります。

学会をひとつ、企画・準備・運営するって、大変な作業です。
プログラムも、主催者側の考えひとつで、運営できるものではないし。
開催地の関係者の協力体制を創り上げていくだけでも、かなりの労力を要するし。
一つの会場での企画を運営するだけならともかく、何会場も同時並行になるし。
不特定多数に、早期に情報発信をしていかなきゃならないし。
何よりも、どんなに準備しても、当日まで蓋を開けてみないと、参加者数もハッキリしないし。

現地の総会運営委員会の皆さん、今頃、四苦八苦してるんでしょうね。
きっと、中心で頑張ってる人達は、不眠不休で取り組んでいるんだろうな。
学会運営、総会運営、僕も何回もやってきたから、その苦労がわかります。
もう少し、様子を見ましょうか…。

う~ん…、頑張れ!和歌山!
楽しみにしているからね~!
和歌山学会、ほっとけやん!
(^_^)v



※画像は、3月に和歌山に行った時、天王寺駅で撮った「スーパーくろしお」。
 9月には、またこの特急に乗ることになるかな?


☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

第52回 日本病院・地域精神医学会 総会プログラム

★1日目(9月18日(金))★

■開会式

■シンポジウム①
自立支援法下の精神障害者福祉~こんな悪法ほっとけやん、今、私たちはこうしています~
座長 金杉和夫(東京 金杉クリニック 医師)
   加藤直人(和歌山 一麦会 理事)

■ランチタイムセッション①
ほっとけやん!和歌山の精神保健福祉
座長 上野半兵衛(和歌山 野上厚生病院 医師)
演者 伊藤静美(和歌山 一麦会理事)

■シンポジウム②
和歌山の地域をつくり出す~こんな状況ほっとけやん、だから私たちこうしてきた~
座長 川 元(和歌山 やおき福祉会 理事長 医師)
シンポジスト江上直子(和歌山 一麦会 麦の郷 和歌山生活支援センター)
      中西優(和歌山 わかやま高齢者協同組合)
      山崎ぶんぞう(わせいれん 当事者)
      松岡さん(和歌山市保健所精神保健相談員)
      岩崎さん(あすなろ共同作業所 作業療法士)

■精神科専門薬剤師精神医学セミナー①
コーディネーター 中谷真樹/吉尾隆
精神科薬物療法の基礎 稲垣中(慶応義塾大)
多剤大量療法からの脱出
看護職の立場からみた薬物療法 菊地謙一郎(岩手県立大)
当事者の立場から見た薬物療法 山口弘美(NPO法人全国精神障害者団体連合会)

■夕食懇親会

★プログラム 2日目(9月19日(土))★

■精神科専門薬剤師精神医学セミナー②
講師:中谷真樹/吉尾隆

■心身喪失者等医療観察法関連
(未定)

■特別学術講演
統合失調症への早期介入の試み(仮称)
座長:馬島将行(和歌山県立こころの医療センター院長)
講師:篠崎和弘(和歌山県立医科大学神経精神科教授)

■ランチタイムセッション
「和歌山県における精神医療の歴史」(仮称)
座長:朝井忠(前和歌山県立精神保健福祉センター長)
演者:北端裕司(和歌山県立精神保健福祉センター長)

■市民公開講座
「若者といま」~若者の悩み、仕事、ひきこもりの中で~
座長:生駒芳久(和歌山 こころの医療センター医師)

■映画「ふるさとをください」上映