昭和50年ごろまで、大手不動産会社は個人仲介を積極的には行わず、大規模開発や分譲を主たる業務とし、中小不動産会社は小規模宅地分譲・建売・仲介を、そして賃貸仲介や賃貸管理は地場の中小零細と、それぞれの棲み分けが比較的はっきりとしており、お互いの職域を荒らすことはあまり無かった。
しかし昭和53年10月、東急不動産地域サービスの社名で(現東急リバブル)、東急の仲介「青い空」として大手不動産会社が個人仲介に本格参入。
続いて住友不動産販売が昭和54年6月に仲介業務を開始。
更に2年遅れで三井不動産販売が昭和56年10月にリハウスシステムをスタートし、大手不動産会社の参入による仲介戦国時代が始まった。
時を同じくして不動産流通のシステムも昭和50年代に入り大きく変わろうとしていた。
新聞広告に注意深く目を通すか、不動産会社へ出向かなくては、なかなか情報入手が難しかった時代から、住宅情報誌を買うことによって情報を得られ、相場さえも把握することが出来るようになった。
昭和51年発刊の「住宅情報創刊」がそのきっかけである。
これによりユーザーは情報という武器を手に入れたことになり、不動産営業マンの口車にそう簡単には乗らなくなったという側面も見られた。
また多くの情報が掲載されることにより、自分の探している方面の地域情報に関しては不動産営業マンよりもユーザーの方が情報を多く持つという逆転現象も起こってきた。
そこで業界団体では流通機構なるものを立ち上げ、業者間でも情報を交換しようという動きが活発になってきた。(不動産業界の※3『BtoB』がスタート)
それまでは各団体ごとにばらばらだった流通機構も業界内で統一すべく、平成2年5月に建設省の指定を受け、東京・神奈川・埼玉・千葉で建設省指定流通機構「首都圏レインズ」がスタートした。
これにより、過去の人脈・縁故や電話問合せで探していた物件情報をレインズで調べられるというシステムが出来上がった。
そして平成9年4月には北海道・東北などを含み、約67,000社体制による「東日本レインズ」がスタートした。
その後、通信回線等の整備が進み、本格的なインターネット時代が訪れたことから平成11年8月にはインターネットを利用した「IP型レインズ」がスタートすることになる。
また、対エンドユーザー向けの物件検索サイトも出来始め、平成9年6月にはアドパークが会員募集を開始、インターネットでの物件検索方式がスタートした。
住宅情報も本誌に連動した「ISIZE」を平成11年にスタート。
一方で我々の所属する都宅協もホームウェブというエンドユーザ向け不動産情報サイトを平成10年春からスタートさせ、現在では名称を「ハトマークネット」に変えて埼玉宅建とともに活用している。
それぞれの都合や利権の違いによってエンドユーザー向けのウェブサイトがいくつも出来、「物件探しはインターネット」が定着してきた平成12年10月15日、日経新聞一面に衝撃的な記事が踊った。
ご記憶の方も多いと思うが「建設省は宅地建物取引業法を2001年に改正し、レインズ情報をインターネットで一般に公開、買い手から徴収している仲介手数料は免除する方向で調整する」というびっくりする内容であった。
この情報がどこから日経にリークしたかは別として、反響の大きさに驚いた建設省は、「建設省報告」として建設省建設経済局不動産業課不動産市場整備室(当時の名称)が日経に対し、「報道の内容が事実と異なる」として訂正記事の掲載を要求したが、いまだに訂正記事が掲載されていないということは、表現の仕方が悪かっただけで実際の内容はその通りだったということではないだろうか?
事実建設省内では実際に検討委員会が設置され、情報公開(レインズの)と共に弁護士報酬と同じく双方から手数料を徴収することを禁止するアメリカと似通った制度の導入を検討している事実を明らかにした。
ユーザーにとって見れば、全ての不動産会社の物件情報が一箇所のサイトで検索でき、しかも買い手側手数料が免除となれば願ったりかなったり、私も不動産業界の人間でなければ諸手を上げて賛成する内容である。
補足説明(レインズそのものを公開することは断念している)
理由その1:何年も前の物件がデータベースに残っている
既に決まっている物件が削除されていない
情報の内容に不透明な部分がある
理由その2:ユーザーが不正取引に巻き込まれる可能性がある
理由その3:法的整備がなされていない
この件に関しては検討委員会が既に設置されて前向きに検討が進められており、NPO法人「日本バイヤーズエージェント協議会」なるものが認証取得を終えていることから、遅かれ早かれ法改正が行われることは間違い無さそうである。
実際にバイヤーズエージェント制度が導入されると、売買の仲介手数料は今までの3%+6万円という基準ではなく、その仕事料に応じた報酬形態となりそうである。
またこの日経騒動と同じ時期(平成12年9月)、インターネット上では手数料不要の物件のみを掲載するサイト「リブネット」も登場した。
売主・貸主も物件を掲載でき、手数料は規定の50%相当額、買主・借主は基本的に手数料無料という内容である。
元付不動産会社には手数料分かれで良い物件を登録するよう勧誘し、一般の売主・貸主には手数料半額で取引可能と謳っている。
完全な『CtoC』※1ではないが、『BtoC』※2との中間的な存在である。
このような一連の流れや騒動を見ていると、不動産流通のしくみが大きく変わるのは間違いなく、特に先物業者もしくは客付業者と言われる買い手や借り手側で仕事をしてきた業者は大打撃を受けることになる。
これが現実の話となったとき、売主や元付となれる分譲会社や大手仲介会社にとってはプラス。
競争力に乏しく物件数の少ない中小の仲介業者にとってはマイナスに働くことになる。
つまり我々中小零細企業にとっては決して嬉しい状況では無くなると言うことである。
2~3年前に「銀行の不動産業参入を阻止」なるニュースが機関紙に掲載されていたが、これは今に始まった話ではなく、昔から出たり入ったりしている事からすると、銀行自体が不動産業に参入する時代も近々来ると思っていたほうが良いのかもしれない。
今現在でも「系列の不動産会社を仲介に入れないと抵当権抹消に応じない」ということでせっかく締結した専任を解除され、銀行系不動産会社に持っていかれたケースが弊社でも実際にあった。
売主もこれには逆らえず、「申し訳無い」とひたすら我々に頭を下げるのみである。
このように融資や抵当権抹消を武器に使われては我々中小の出番は本当になくなってしまうことになる。
それでは我々中小はどうやってこの時代を生き抜くのか、真剣に考えなければならない時代がやってきた。
解決策・打開策と考えたときに、幾つかの選択肢があると思われるが、
我々の業界がどこに属するかは難しい話だが、何でも揃っているが定価販売のデパートから客足が遠退いた事実を考えると、我々が何をすべきかが少しながら見えてくるような気がする。
ユーザーは自分の欲しい物が見つかれば、大手看板が無くてもその情報を持っているもしくはサービスを提供しているところと取引する。
そう信じて頑張りたいものである。
補足説明
しかし昭和53年10月、東急不動産地域サービスの社名で(現東急リバブル)、東急の仲介「青い空」として大手不動産会社が個人仲介に本格参入。
続いて住友不動産販売が昭和54年6月に仲介業務を開始。
更に2年遅れで三井不動産販売が昭和56年10月にリハウスシステムをスタートし、大手不動産会社の参入による仲介戦国時代が始まった。
時を同じくして不動産流通のシステムも昭和50年代に入り大きく変わろうとしていた。
新聞広告に注意深く目を通すか、不動産会社へ出向かなくては、なかなか情報入手が難しかった時代から、住宅情報誌を買うことによって情報を得られ、相場さえも把握することが出来るようになった。
昭和51年発刊の「住宅情報創刊」がそのきっかけである。
これによりユーザーは情報という武器を手に入れたことになり、不動産営業マンの口車にそう簡単には乗らなくなったという側面も見られた。
また多くの情報が掲載されることにより、自分の探している方面の地域情報に関しては不動産営業マンよりもユーザーの方が情報を多く持つという逆転現象も起こってきた。
そこで業界団体では流通機構なるものを立ち上げ、業者間でも情報を交換しようという動きが活発になってきた。(不動産業界の※3『BtoB』がスタート)
それまでは各団体ごとにばらばらだった流通機構も業界内で統一すべく、平成2年5月に建設省の指定を受け、東京・神奈川・埼玉・千葉で建設省指定流通機構「首都圏レインズ」がスタートした。
これにより、過去の人脈・縁故や電話問合せで探していた物件情報をレインズで調べられるというシステムが出来上がった。
そして平成9年4月には北海道・東北などを含み、約67,000社体制による「東日本レインズ」がスタートした。
その後、通信回線等の整備が進み、本格的なインターネット時代が訪れたことから平成11年8月にはインターネットを利用した「IP型レインズ」がスタートすることになる。
また、対エンドユーザー向けの物件検索サイトも出来始め、平成9年6月にはアドパークが会員募集を開始、インターネットでの物件検索方式がスタートした。
住宅情報も本誌に連動した「ISIZE」を平成11年にスタート。
一方で我々の所属する都宅協もホームウェブというエンドユーザ向け不動産情報サイトを平成10年春からスタートさせ、現在では名称を「ハトマークネット」に変えて埼玉宅建とともに活用している。
それぞれの都合や利権の違いによってエンドユーザー向けのウェブサイトがいくつも出来、「物件探しはインターネット」が定着してきた平成12年10月15日、日経新聞一面に衝撃的な記事が踊った。
ご記憶の方も多いと思うが「建設省は宅地建物取引業法を2001年に改正し、レインズ情報をインターネットで一般に公開、買い手から徴収している仲介手数料は免除する方向で調整する」というびっくりする内容であった。
この情報がどこから日経にリークしたかは別として、反響の大きさに驚いた建設省は、「建設省報告」として建設省建設経済局不動産業課不動産市場整備室(当時の名称)が日経に対し、「報道の内容が事実と異なる」として訂正記事の掲載を要求したが、いまだに訂正記事が掲載されていないということは、表現の仕方が悪かっただけで実際の内容はその通りだったということではないだろうか?
事実建設省内では実際に検討委員会が設置され、情報公開(レインズの)と共に弁護士報酬と同じく双方から手数料を徴収することを禁止するアメリカと似通った制度の導入を検討している事実を明らかにした。
ユーザーにとって見れば、全ての不動産会社の物件情報が一箇所のサイトで検索でき、しかも買い手側手数料が免除となれば願ったりかなったり、私も不動産業界の人間でなければ諸手を上げて賛成する内容である。
補足説明(レインズそのものを公開することは断念している)
理由その1:何年も前の物件がデータベースに残っている
既に決まっている物件が削除されていない
情報の内容に不透明な部分がある
理由その2:ユーザーが不正取引に巻き込まれる可能性がある
理由その3:法的整備がなされていない
この件に関しては検討委員会が既に設置されて前向きに検討が進められており、NPO法人「日本バイヤーズエージェント協議会」なるものが認証取得を終えていることから、遅かれ早かれ法改正が行われることは間違い無さそうである。
実際にバイヤーズエージェント制度が導入されると、売買の仲介手数料は今までの3%+6万円という基準ではなく、その仕事料に応じた報酬形態となりそうである。
またこの日経騒動と同じ時期(平成12年9月)、インターネット上では手数料不要の物件のみを掲載するサイト「リブネット」も登場した。
売主・貸主も物件を掲載でき、手数料は規定の50%相当額、買主・借主は基本的に手数料無料という内容である。
元付不動産会社には手数料分かれで良い物件を登録するよう勧誘し、一般の売主・貸主には手数料半額で取引可能と謳っている。
完全な『CtoC』※1ではないが、『BtoC』※2との中間的な存在である。
このような一連の流れや騒動を見ていると、不動産流通のしくみが大きく変わるのは間違いなく、特に先物業者もしくは客付業者と言われる買い手や借り手側で仕事をしてきた業者は大打撃を受けることになる。
これが現実の話となったとき、売主や元付となれる分譲会社や大手仲介会社にとってはプラス。
競争力に乏しく物件数の少ない中小の仲介業者にとってはマイナスに働くことになる。
つまり我々中小零細企業にとっては決して嬉しい状況では無くなると言うことである。
2~3年前に「銀行の不動産業参入を阻止」なるニュースが機関紙に掲載されていたが、これは今に始まった話ではなく、昔から出たり入ったりしている事からすると、銀行自体が不動産業に参入する時代も近々来ると思っていたほうが良いのかもしれない。
今現在でも「系列の不動産会社を仲介に入れないと抵当権抹消に応じない」ということでせっかく締結した専任を解除され、銀行系不動産会社に持っていかれたケースが弊社でも実際にあった。
売主もこれには逆らえず、「申し訳無い」とひたすら我々に頭を下げるのみである。
このように融資や抵当権抹消を武器に使われては我々中小の出番は本当になくなってしまうことになる。
それでは我々中小はどうやってこの時代を生き抜くのか、真剣に考えなければならない時代がやってきた。
解決策・打開策と考えたときに、幾つかの選択肢があると思われるが、
- 権益擁護で徹底的に守る:これは業界団体が真剣に取り組む問題で、我々一個人一社レベルで出来ることではない。
- 協業化で大手に対抗する:三井と住友の合併のように、大手企業同士が合併や統合による巨大化を進める中、我々も協業化などによりスケールメリットを手にするのもひとつの案かも知れないが、それぞれが一国一城の主の集まりである各社が利益を分かち合い協業するには非常に難しい問題も山積している。
- 各社が企業努力によるスキルアップを図る 商売の原点に立ち返ったとき、設立当初何をしたか?何をするべきか?そしてユーザーが何を求めているかを知る?ことがとても大事になってくる。 いつの時代もユーザーが求めるものを供給する会社は伸びる。 例えば飲食店の場合は、安くて旨ければ口コミで客が集まり、小売店の場合は他店よりも安ければ人が集まり、専門店の場合はそこへ行けば欲しい物・欲しいサービスが必ずあるから人が集まる。
我々の業界がどこに属するかは難しい話だが、何でも揃っているが定価販売のデパートから客足が遠退いた事実を考えると、我々が何をすべきかが少しながら見えてくるような気がする。
ユーザーは自分の欲しい物が見つかれば、大手看板が無くてもその情報を持っているもしくはサービスを提供しているところと取引する。
そう信じて頑張りたいものである。
補足説明
- 『CtoC』(コンシュマーtoコンシュマー)は、プロを介さない一般消費者同士の取引。
- 『BtoC』(ビジネスtoコンシュマー)は、不動産情報サイトのようにエンドユーザー向けに情報発信するサイトで、プロが直接消費者へ物を売る一般的な取引形態。
- 『BtoB』(ビジネスtoビジネス)は、レインズのような業者間のみの情報交換サイトで、一般のユーザーは対象外である。
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