私の感じたこと

リロケーションを専業とするラビットホームズの岩崎和夫といいます。
私が日々感じたことなどを素直に本音で書き留めます。

敷引きは有効?無効?

2005年07月21日 | 仕事に関すること
今朝のニュースに気になる記事がありましたのでご紹介させていただきます。
以下共同通信のニュースソースをそのまま掲載させていただきます。

関西地方などでマンション明け渡しの際、損傷の有無にかかわらず敷金(保証金)の一部を差し引く「敷引き」特約は無効として、神戸市中央区の男性(29)が東京都港区の不動産業者に約25万円の返還を求めた控訴審判決で、神戸地裁は20日までに、返還請求を棄却した神戸簡裁判決を取り消し、業者に全額返還を命じた。
 村岡泰行裁判長は「賃借人の利益を一方的に害し、消費者契約法により無効」と判断した。
 大阪の弁護士らでつくる「敷金問題研究会」によると、控訴審で敷引きが無効と認められたのは初めて。同研究会の増田尚弁護士は「敷引きに法的根拠はなく、制度そのものに疑問を投げ掛ける判決。関西の慣例というだけではもう通用しない。制度を見直す時期だ」と話している。

という内容ですが、原告の言い分と契約内容やどうして全額返還の判決が下りたのか詳細な内容が判らないので何とも言えません。
神戸地裁なので、物件が関西圏の物であれば、関東と違い敷引きは当たり前。
しかも1ヶ月ではなく、2~3ヶ月?
確かに借りる側にとっては痛い出費となる敷引き。
借り手側にとっては朗報といえる判決ですが、貸す側にとっては「ちょっと待ってくれよ!」と言いたくなる判決のようです。

「控訴審で敷引きが無効と判断されたのは初めてのこと」らしいので、今後の動向にかなりの影響を与えそうです。
実は当社でも解約時に1ヶ月分の「敷引き」は5年ほど前から実施しており、その前には特約に入れていた「退去時のハウスクリーニング費用入居者負担」を無しにしています。
これには自然発生的な理由もあり、解約時の敷引き1ヶ月分は貸主にとっても借主にとっても歩み寄りの結果の産物だと私は思っています。

何故かと言いますと、解約時のハウスクリーニング費用は入居者負担」としておくと、あくまでもたまにですが、常識の範囲外のことが起こり、「クリーニング費用を負担するんだから掃除はしなくても良い」と主張し、汚し放題で退去する方がいるのです。
そんな事が何回かあり、また世間の流れもあり、ハウスクリーニング費用は入居者では無く、「貸主が費用負担するべきもの」ということから特約条項に入れるのを止めたのです。

その代わり発生してきたのが「解約時敷金償却1ヶ月分」
性格としては礼金の後取りのようなものですが、この1ヶ月分償却がクッション材となり、この5年間はさしたるトラブルも無く、貸し手側・借り手側お互い良い関係で来ています。

この間に唯一揉めたのは、入居者の故意過失による損傷があった場合でした。
このケースは敷金3ヶ月・解約時敷金償却1ヶ月分という内容です。
順調に行けば「1ヶ月分は償却、2ヶ月分は返却」でした。

償却の1ヶ月分はあくまでも償却として除外し、返却予定の敷金2ヶ月分をすべて原状回復に充当し、不足分を追加請求したケースでした。
先方(外資系大手企業)の顧問弁護士さん曰く、「償却金は原状回復に充当すべき性格の金銭であるので、原状回復費用の入居者負担分には償却分も当然含めるべき」ということでした。

当社の扱いは90%がリロケーション物件(所有者が転勤から帰任後自ら居住)ですので、貸主は自分の家を粗末に扱われたということで烈火のごとく怒り「原状回復は当然借主が全額負担すべき」と主張します。

ここから先は悲しいかな法律の基、判例などから判断せざるを得ず、最近では「消費者保護法」もあり金銭を支払う側(借主)勝訴の判決が増えています。
経済原理の法則で、住宅が少なく普及促進をしなければならない次期は「貸主優遇」。
今のように住宅の普及促進が充実した環境では、消費者保護(借主優遇)となってくるのです。

我々管理会社はなるべく公平な立場で事を判断し、双方納得の行く解決方法を見出すのが仕事ですが、こと法律が絡む事ですのでなるべく早急に法整備をしていただきたいと願うばかりです。

賃貸の現場で実際に慣行として行なわれている、礼金・更新料・敷引き。
これらの物は裁判となったときに、すべて「根拠が無い」として否認されている物ばかりです。
東京都でも2004年4月の報道発表(東京ルール)で以下のように発表しています。

民間賃貸住宅に関する「東京ルール」の推進について
戦後の住宅難等を背景に地域的に始まったとされる礼金・更新料については、それらの授受のない契約を普及させ、円滑な住み替えを促進します。
という報道発表を既にしています。

結果現場で働く立場として痛切に感じるのは、貸す側も借りる側も法律違反をしてまでも争う意思は無く、法律の決め事がきちんとしていれば大多数の方はそれに従う訳です。
法律の基に契約書を作成し、双方合意の原則に則って契約しても、「契約書に記載した内容は無効」では現場の混乱は増すばかりです。
揉め事が起きるのは、現場任せで法整備をしない行政側に最大の責任があるのでは?
と思いたくなります。

さじ加減は現場に委ねても、大きな方向性だけはしっかり示して欲しいと思う次第です。
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