どシリアスなマヌケの日常

毎日毎日、ストーリー漫画を描き、残りは妄想.,いや構想の日々の日記。

「亜遊の手紙」1

2023-03-12 20:03:00 | 日記
赤国の王セキの側近ワタリは、60余ある東の神界の国の中の小さな国の皇子だった。28番目の皇子で母親は元人間の召し上げ者。ワタリの父の気まぐれでワタリの母が1週間、王の伽のお相手をした結果に生まれた。

次の王になった長兄は、生まれが高貴な兄弟しか顧みることがなく、ワタリは女官の母親と母子家庭のように王宮の小部屋から出る自由もなく勉強だけしていた。

亜遊は隣国の第3皇女。わずか7歳で大人のワタリの長兄である王の正妃として嫁ぐ。
王は血筋にもこだわるが美女が大好き。地味な容姿で子供の亜遊には全く興味がなかった。おまけに第3皇女の亜遊の母は恐らく側女か何かだろうと思い込んでしまった。亜遊もまた「綺麗な着物を着て王の隣に座っているのがお仕事」の奴隷のような扱いを受けるようになる。一年、十年、数十年。。。

「ワタリ」は本当の名前ではない。王族は「クソ面倒臭い長い名前」だと言う合理主義者のセキに付けられた名前である。

セキの国、赤国は「赤界」と呼ばれる謎の国。60余の国々をまとめ秩序を保つ役割の国だった。
セキは理想の国づくりに拘り、赤国の国づくりは遅れていた。優秀でクソ真面目で働き者の直属の部下を探していた。
そして「直ぐに使える他国の末席の皇子達」で自分の周りを固めようと思い立ち、60余りある他国へ内通者を放つ。
そこで目をつけたのが、ワタリ、ハジリ、サクリの3人であった。

赤国から使者がやってきて、ワタリの兄王に「弟君を赤国で召し抱えたい。」という申し入れをする。
赤国の王は「赤い鬼」だという噂が流れていた。
兄王は「赤鬼が弥川を寄越せと言っておる。食わせてやろうぞ!」と酔っ払って妃たちと大笑いをしている。

「何がそんなに可笑しいのか」亜遊は隣に座って黙って考えていた。あの子は頭が良くて、王は心ある重臣から「弟君にお役目をお与えなさりませ。弟君はとても優秀でお役に立ちますぞ。」とまで言われている。
それでも王は「汚れた血の者は宮中には入れぬ!」と耳を貸さない。

きっと、あの子は鬼の国に行くだろう。食べられた方が今よりはいい。
亜遊は、同じ年の義弟が少し羨ましかった。
「お別れに励ましのお手紙を書こう。どうやったら渡せるだろう。」
亜遊は考えた末、生国からついて来た唯1人の女官に手紙を渡してもらうように頼む。

ワタリが母親と国を出る日、彼は1人の女官から石を投げつけられる。紙で包んだ石。背中に当たったその石をワタリは拾って、そのまま手持ち袋に入れて忘れてしまう。
女官から「うまく行った」と聞いた亜遊は、いつ読んでくれるかなぁ。鬼のお腹の中に入る前だといいのだけれど。。。と思う。


これは、赤国が国として出来上がっていく過程の話。
無駄と怠け者が大嫌いなセキの合理性を追求した本格的な国づくりの始まり。

赤国の秩序が整った瞬間から、60余の国々の中で「あるだけで無駄な国と、その王と王族」に対してのセキの大改革が始まります。
亜遊は綺麗な着物を着たお人形でいることを強いられ、長い時を過ごします。話してはならないと夫に命令されていたからです。でも、王の隣に座っていろいろな話を聞いています。王はと言えば、公式な場にまで6人いる妃を連れ歩き身体を触ってるような夫です。妃達も贅沢三昧。妃はみんな美人で亜遊を馬鹿にします。

人形の亜遊は頭の中で生国の思い出を手繰り座ったままであり続けます。
「あの子に書いた手紙は読んでもらえたのかな。もう、あの子は食べられちゃったかな。」と心配もしています。

亜遊7歳。着物と簪が重くてぶーたれている。