亜遊は期日の日に、やっと最後まで残っていた臣下を馬車に乗せ送り出した。
1人になった広間で「王族の仕事」をやり遂げたと清々しい気分がした。
そこに言った通り赤い馬に乗ったリョウが亜遊の下にやって来た。「さぁ、亜遊さま。貴方も行きましょう。貴方は7歳で正妃という名の奴隷になった。だから7歳からやり直しです。記憶は失いません。貴方の新しい国は“自由の国“にしました。そこには7歳より大きくなれない姫がいるのです。お友達になってあげてください。」
「あのぅ、兄の国は?」
「存続です。兄上は父上を政略て玉座から引き摺り下ろして王になり改革が始まっていましたので。」
「あのぅ、弥川の皇の尊をご存知ですか?」
「さぁ、聞いたこともない名前ですね」とリョウが答えると亜遊はやっぱり食べられちゃったんだと思った。その身は子供に戻っていた。
亜遊は、このセキオトコに一つお願いをした。「髪が肩までしか伸びないようにしてください。」
もう2度と髪を結って簪をささねばならない生活はしたくないと思っていたから。
広大な草原に亜遊を下ろすとリョウは去っていった。
亜遊は草に寝転んで空を見上げていた。優しい風が吹いていた。外に出たのは本当に本当に久しぶりだった。同じくらいの青い髪の女の子が1人で走ってきた。草の上に寝転がっている亜遊を見て、その子は驚いたが直ぐに「名前は?」と尋ねてきた。
「アユウ」
「どこから来たの?」
「分からない」
青い髪の女の子は自己紹介をしてきた。「私は桃花。7歳。ずっとずっと7歳。同じくらいのお友達が欲しかったの。お友達になってくれる?」
これが、亜遊と主、桃花姫の出会いだった。この時、亜遊と桃花は「見た目は子供、心は大人」という同じ境遇にいた。亜遊は王宮の女官見習いになり桃花の親友になる。亜遊の姿が大人になっても2人の友情は変わることなく、亜遊は桃花の側仕えとして寄り添い続ける。
その半月後、赤王宮の大広間に廃国の王と王族が集められていた。全員が縛られ鎮座させられて。その数は数百。
補佐官達は名簿を見ながら廃国の王族の名前を確認していた。王、それに一緒になって己の快楽を貪っていた妃や正妃、重臣である王族達。。。「弥川の皇の尊!」と呼ぶ声がした。ワタリは、そちらの方を向いた。兄王は「我は其方の兄じゃ!赤王に慈悲を進言しろ!」と大声で喚いた。
ワタリは無表情に言葉を返した。「私はセキ様の補佐官、ワタリでございます。」それだけ言うと仕事を続けた。
リョウと3皇子は確認が終了するとセキとロウがいる広間の上座に戻った。
セキは昔の浮浪者姿。尚且つ全身を火で覆い顔が見えないようにしていた。
「なぜ、我がこうしたか解るか?分からぬであろう。解っていたら其方達はここにいない。我は世界の始まりの王。第一世代の王。全てを見てきた。世界を創った我ら第一世代は、よう働いた。そして、余分な怠け者や浪費家や色に溺れるものまで生み出してしまった。我らは人間ではない。神と呼ばれる『在る者』なのだ。それさえも忘れるとは。其方らの父や祖父には話をつけてある。だから、我は罰を下す。なんのことはない。元の只の『気』に戻るだけだ。その後は、その本性に見合ったものになるだろう。
王の器でない者は王であってはならぬ!これは我の信念だ!」
セキは叫ぶと両手から炎の渦を起こした。一瞬のことだった。後にはセキとロウ、補佐官4人しかいなかった。
8に続く。。。