どシリアスなマヌケの日常

毎日毎日、ストーリー漫画を描き、残りは妄想.,いや構想の日々の日記。

「亜遊の手紙」5

2023-03-20 15:29:00 | 日記
セキは神界の大地図を指差しながら言った。
「見よ。今、60余の国がある。無駄だ。民草の暮らしも考えず贅沢と色に溺れている王が半数ぐらいいる。そんな国は不必要だ。
国を潰すぞ。民草は国替え。王族は責任を取って『気』に戻ってもらう。ワタリ、ハジリ、サクリ。お前達の仕事は我が潰す国を決めるのに必要な資料をまとめる事だ。リョウは10年前から各国の民の暮らしを調べている。内通者を使って。内通者は最下層の人間であった召し上げもの達だ。
今、ロウが我の親書を持って各国の王から直にその感想を聞いて回っている。その時の態度を見ているのだ。親書には“参考にしたいので其国の民草の暮らしを使者に話してやってほしい“と書いた。その前に、煽てる文章を長々と付けて。
バカが多いから、自慢をしてくる奴が多いだろう。何も知らないくせに。
ロウが帰ってきたら1年で片をつけるつもりだ。」

セキはワタリには傘下の国々の王宮の造り。ハジリには多国間の姻戚関係も含めた国の繋がり。サクリには赤国に送られてきた他国からの財政支援の嘆願書の数百年分を精査するように命じた。「間違えは許されぬ」とセキは3皇子に念を押した。

この時点で既にセキは、自分と同じ「始まりの神々」(第一世代)達とは話をつけてあった。皆、引退し、今現役で残っているのはセキとロウぐらいだ。昔は仲間で協力しあって理念を持って世界を作った第一世代は「それが、子や孫の代で失敗したのならセキのしたいようにして構わない。」と答えてきた。

完全に大人の女性になったエリは、夫が「何か大きなこと」を始めるつもりだと気がついていた。
そして、それは恐らく「赤国の使命」であり、セキが「赤鬼」にならねばならない東の神界の完成であることも。

ロウが帰還した。その頃までにワタリ達の仕事も完了していた。それからは王とロウ、補佐官4人で持ち寄った資料をもとに「消えてもらう国」の選定に入った。3皇子の生国は廃国に決定した。
問題になったのは「高天原」だ。ロウが見るところ、女王は男のような物言いで威風堂々としている。財政支援など一度も求めてきたことはなく、王宮は質素で女王も巫女装束に小さな簪を二つ髪に挿してあるだけだった。
「我が国の草原と野花より美しいものはないと思うておるのじゃ。」と「そこで民草がしたいように在り続ける。宮仕になるもよし、街で商売するもよし、愛がある間は結婚するも良し。赤界と違って離婚再婚も自由じゃ。」とニコニコしていたという。「内通者からも女王は、いつも巫女装束、休みなく働き、忙しい合間を縫って年に4回お忍びで民の暮らしを見て回っているそうです。」とリョウも言った。セキは何度も内政の報告書を求めても「高天原」から無視されていた。う〜んと考え込んで「高天原は直接人間界と繋がっておる。存続だな。」と決めた。

国の選定が終わると半分は廃国になることになった。
ワタリが「王族は『気』に戻してしまうのですか?」と口を挟んだ。
セキは冷たい目をして「腐り切った気だからな。」と吐き捨てた。
ワタリは、「これをご覧ください」と言ってくしゃくしゃの紙をセキに差し出した。


それを読んだセキは「手紙か?」とワタリに尋ねた。
「生国を出た時に女官に石を投げつけられました。その石は紙に包まれていて、そのまま荷物の中に入れました。紙が手紙だと気づいたのは暫くした後です。」
「亜遊とは?」とセキがワタリに尋ねると「兄王の正妃です。セキ様。王族でも私たちのような奴隷は沢山いるのです。どうか、罪なき者はお許しください。」ワタリは泣いていた。ハジリもサクリも涙をこぼしていた。
セキは、リョウの方を向くと「手下達を王宮内部に入り込ませろ。何を調べるかはわかっておるな?」と言った。

6に続く。。。