眺める空に描くもの

高齢者女子のおひとりさま暮らしノート

『悪魔はあくまで悪魔である』都筑道夫先生の思い出

2024-11-26 18:55:22 | わたし記
今日の空。
昨日の夜から雨が降り始め、桜島は雲に隠れ、輝く朝日の天空ショーは
見せてもらうことができませんでした。

午前10時台は強風と強雨で荒れ模様。久しぶりに雨が大量です。



「小説家になりたい」と願った小学2年生の私ですが、中学生くらいになると、
現実を知り、作家になって食べていけるのはひと握りで、自分にはそこまでの
才能はないと思うようになっていました。

ただ、やはり、書くことはずっと好き。
趣味の範囲で小説が書けたら、それでいいと思いつつ、小学5年生のころから、
創作を書いたりしていましたので、大学の創作の講義の課題で提出した
物語にA評価をいただいたり、同人誌に書く中で、「もっと勉強はして
おきたい」と思うようになって、勉強する場所を捜索。

以前にも書きましたが、今から46年も昔の話。そんなに情報が多くない時代
なので、勉強をする場所を見つけられたのはすでに大学4年生。もっと、
早くにそういった場所を見つけられていれば、人生も変わったかもしれない
とは思うものの、田舎から上京して来た学生としては、東京だからこそ、
学べる場所があるのは貴重だと思い、また、その年ごろにはアルバイトも
十分にやっていたことから、専門学校に入学しました。

もちろん、大学に通いながらなので、夜間部の講座ですが、小説家を
目指している人たちが多くいて、いろんな方と知り合ったのも刺激を
受けました。何より魅力的だと思ったのが、現役で活躍するミステリー
作家の指導を受けられるという点。

手取り足取りではありませんが、どのように小説を作り上げて行くのかという
お話を聴くだけで本当におもしろかった。
結果、いわゆるエンターテイメント小説に魅力を感じるようになりました。
それまでは、大学でも国文科で純文学を学んでいて、卒論テーマも、この
方向性で考えたこともなかったのですが、今にして思えば、ミステリーの
研究をすればよかったななどと。
現役作家に講義を受けられるのですから、特別なものになっただろうなあと。
うーん。惜しいっ(笑)

印象的だったのが、都築道夫先生です。
早川書房の『エラリー・クイーンズ・ミステリ・マガジン』の初代編集長と
なり、ハヤカワ・ミステリの作品のセレクションも担当された方。
多種のペンネームを使い分けて、多くの作品を1冊の雑誌の中に書いていた
といったこともなさっていたとか。

その経験ゆえか、とにかく、多作の作家で、私も先生の著作は80冊以上
持っていたし、テレビの2時間ドラマの原作としても、とても多くの作品が
起用されるほど、多作ながらも、それぞれの作品が魅力的でした。

ミステリ作品は、1作目にものすごく印象的な作品を世に出した作家でも、
2作目、3作目となると、なんだか二番煎じで全くおもしろくなくなって
しまうことがよくありましたが、それに比べると、都筑先生の作品の
展開の豊かさは驚くほど。

今なら問題になりそうですが、当時の都筑先生はチェーンスモーカーで、
講義中もひっきりなしに煙草を吸い続け、おそらく締切で睡眠も多く
取れていらっしゃらないのか、少しぼうっとした感じで、無理をなさって
時間を作られているように見受けられましたが、「こうした学校に
教えに来ることでも新しい作品づくりに役立つ」といったことを語られて
いました。作品のための時間だったようですね。

また、ミステリについて「謎と論理のエンタテイメント」として、犯人が
構築するトリックより、ロジックの方が重要であるとされていたようです。
つまり、魅力的な謎があって、その謎が生まれた必然性があれば、トリック
などはなくても成り立つということだったのではないかと。
だからこその多作が成り立ったのではないかというのが素人なりの感想です。
とにかくシリーズものも多いし、ベストを選択するのは困難ですが、
やはり、印象的なのはショートショート作品。

講義のときのテキストに使われたのが「悪魔はあくまで悪魔である」。
同名の作品が収録されたショート作品集なのですが、これが、本当に
おもしろい。短い作品の中に不思議さと人々の心の暗黒にからまる
「謎」が展開されて、最後のオチがすとんと落ちて行く。
「笑ゥせぇるすまん」的な作品と言ったらいいのかもしれません。
あの短さの中に詰め込めることに驚いた作品でした。

もっと作品をご紹介したいので、読み返したいなとは思ったのですが、
実は手元にはなく。
家には父の蔵書がかなりの数あって、母も相当数の本を持っていて、
私も…となると、本の置き場はもう満杯で、田舎の家に本を持って
行ってしまい、田舎の家が本屋さんになるほど。

今は田舎の家には行けないし、おそらく兄が田舎の家を処分するために、
おそろしい数の本も処分してくれたようなので、残ってはいないかも。
今は手に入らない本もあったと思うので、惜しいけれど。
人生は思うようにはならないもの。
雨はやみました。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿