『命懸けのパートナー』
本当は「優希」じゃない、と書くとネタバレになるか。
本エピソードは、作品ファンの間であまり好かれていない意見が少なくない。
私も例に漏れず、少々苦手。というか、印象が薄い。
世の反応においては、とにかく獠と依頼人が(香を差し置いて)本気で恋愛している点が、いわゆる大きな地雷原。
もっとも、連載初期には、こうした形で進むエピソードも存在している。
『佐藤由美子編』がその筆頭だろう。
が、『ソニア・フィールド編』や『神宮寺遙編』を通過した獠&香に、こうした展開は、やや不自然と言わざるを得ない。
もしも本エピソードを、もっとずっと昔に発表していたら、違う評価もあったかもしれない。
と、一般的な評価はこの辺にして、以下、私見。
本エピソードの問題点は大きく二つ。
一つは、“美女”たる優希が、事件を経ても一切成長しなかった事。
彼女は獠たちとの出会いを糧にするどころか、まるで邪魔な“憑き物”のように、文字通り全て「消去」してしまった。
これだと早晩、別のスジから結局暗殺されるだろう未来さえ見える。
そしてもう一つは、『麻生かすみ再登場編』辺りでも特殊能力めいていた「催眠術」が、とうとう何でもありに暴走している事だ。
本来の催眠術では、かける側かけられる側の双方に信頼関係が必須。
それが本エピソードでは、獠も香も初対面で暗示かけられまくり。
そこまでなら、まあフィクションだからと流してもいいが、なんと敵の術士は、優希を自殺させる事は出来ないと言っていながら、「水中で体を動かせなくなる」という荒技をこなしている。
明らかにコレ、(随意でない)反射の領域を操っている。
こんなんやれたらもう、相手の呼吸を止めて殺せる。
と言いますか、暗殺者なんかより、世界征服とか目指した方がいい。
この真実に、どうか術士が気づきませんように。
それでは。また次回。