>>>日航機墜落事故で「解説書」公表-その3 「わかりやすく・読みやすくへの工夫」
国交省の運輸安全委員会は7月29日,1985(昭和60)年に520人が死亡した日航ジャンボ機墜落事故の事故調査報告書を遺族からの要望に応えて平易に説明し直した「解説書」を公開しました。遺族からの要望に応えたもので,いったん発表された報告書を遺族のために書き直したのは初めてのことです。
作家の柳田邦男さんは,「報告書を分かりやすくする取り組みのモデルになる。遺族たちが26年間も真実を求め続け,運輸省が真勢に向き合ったことに敬意を表したい」とのコメントを寄せています。
今回公表された遺族向けの「解説書」は,読みやすく分かりやすいマニュアルという観点から,優れた事例であり,マニュアルづくりの絶好のお手本となります。
⇒⇒「日本航空123便の御巣鷹山墜落事故に係る航空事故調査報告書」
http://www.mlit.go.jp/jtsb/kaisetsu/nikkou123-kaisetsu.pdf
◆「目次」
・用語の解説
1. 報告書における事故原因の説明
2. 最近の急減圧の事例
3. 急減圧に要する時間の説明
4. 風の強さについての説明
5. 温度の説明
6. 低酸素症とパイロットが酸素マスクを着けなかった理由
7. 客室高度警報音の説明
8. その他の要因が関与した可能性について
9. 捜索救難
10. 海底残骸の調査について
11. その他
別添1 時系列表
別添2 有効意識時間に関する資料
別添3 ICAO のマニュアル抜粋
◆分かりやすさ・読みやすさの工夫
解説書では,過去の航空機事故を例にとって,圧力隔壁の破損が事故原因と推定される根拠などをわかりやすく解説している。また,遺族から寄せられた個々の疑問についても,改めて個別に回答している。
分かりやすさ・読みやすさの工夫-1:図表を使っての説明
解説書では,隔壁破壊について図や表を多く使い,事故原因と推定される根拠などをわかりやすく解説している。
⇒⇒事例 「 風の強さについての説明」
空気の前に、水の場合で考えてみましょう。深さがどこも同じという川の場合、幅10m の場所では幅20m の場所の2 倍の速さで川の水は流れます。(流体力学の連続の法則)
分かりやすさ・読みやすさの工夫-2:事例を挙げて分かりやすく説明
プールの水を抜いても排水口から離れていれば水の流れは弱いことを例に挙げ,隔壁が壊れても巨大なジャンボ機の機体で急減圧による猛烈な風が吹くわけではないことなどを分かりやすく説明している。
⇒⇒事例1---- 最近の急減圧の事例
客室内の風や温度の説明の前に、最近の急減圧の事例(米国NTSB/ ID:DCA09FA065)を紹介します。同機には、非番の同社の機長2 名が客室に搭乗しており、18 列目付近の座席に座っていた彼らの証言は次のようなものでした。
私は、突然脱出用スライダーが膨らむときのような大きな破裂音を聞き、大きな風切り音がこれに続いた。私は、すぐに急減圧を知覚したが、耳の苦痛がほとんどないのに驚いた。後で他の乗務員に聞いても、それはとても小さい痛みだったと言った。
ハリウッド映画と違い、何も飛ばされず、誰も穴に吸い込まれることはなかった。座席に置かれた書類もそのままだった。客室がやや冷え、薄い霧を見たが5秒ほどで消滅した。
この証言から、実際に急減圧が発生した際の機内の状況は、乗務員を含めて一般的な理解とは大きく異なるのではないでしょうか。これをまとめてみると、次の表のようになります。・・・・・・・・(以下略)
分かりやすさ・読みやすさの工夫-3:個々の疑問については,個別に回答
遺族から寄せられた個々の疑問についても,改めて個別に回答している。
分かりやすさ・読みやすさの工夫-4:専門用語を解説
解説書冒頭ページに「用語の解説」編を設け専門用語を平易に説明・定義る稿を提示したうえで,本文を掲載している。
⇒⇒用語の解説例------------
APU(Auxiliary Power Unit):補助動力装置。主エンジンを駆動していないときに発電機等を駆動するための小型のエンジンで、機体の最後尾に装備してある。
CVR(Cockpit Voice Recorder):操縦室用音声記録装置。操縦室(コックピット)内の乗員の会話・管制との交信・計器盤の警報音等を録音するための装置のことで、航空事故等が発生した場合の事故原因を解明するために搭載されている。これには、4チャンネルあり、①機長、②副操縦士、③航空機関士、④操縦室内に設置されたマイクロフォンで収録した、操作音・警報音・会話・異常音等の音をそれぞれ録音できるようになっている。
わかりやすさ・読みやすさの工夫-4:です。ます調文体
今回の解説書は,全文が「です。ます調」で書かれています。
文書への信頼感や親近感を決める要素の1つに,文体があります。「である調」は,事実を正確,簡潔に歯切れ良く表現するのに適した文体です。ただし,読者に高圧的,威圧的で押しつけがましいといった不快な印象を与えかねません。
対して,「です,ます調」は,冗長で間延びした印象がある反面,読み手が親近感を持つ表現であることから,読み手の動機づけ,共感を得るのに適しています。
こうした文体の特性から,解説,説明部分は,語りかけるような「です・ます調」とします。そして,操作手順,指示事項は「である調」で簡潔に言い切るといった工夫が,読者の共感,理解を促します。
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1985年8月12日、日航123便ジャ ンボ機が32分間の迷走の果てに墜落し、急峻な山中に520名の生命が失われた。いったい何が、なぜ、と問う暇もなく、遺族をはじめとする人々は空前ので きごとに否応無く翻弄されていく…。国内最大の航空機事故を細密に追い、ジャンボに象徴される現代の巨大システムの本質にまで迫る、渾身のノンフィクショ ン。講談社ノンフィクション賞受賞。 | 1985年8月12日、日航123便は群馬県御巣鷹山中に墜落し、520名の犠牲 者を出した。発表された事故原因は圧力隔壁破壊。だが、その結論には多くの専門家が首をかしげた。何が隠されたのか。元日航機長の著者は、各種の資料を収 集し、事故原因を追究する。そして、ついに内部告発者があらわれ、隠されていた証言が事故の真相と隠蔽の構図を浮き彫りにした。迫真のノンフィクション。 | ||||||||||||
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あの夏の大惨事から20年…。なにが「真相解明」をはばんだのか?未 曽有の事故の原因は…現場確定が遅れた理由とは…疑惑を呼ぶ自衛隊の行動…なぜ米軍は救助を中止したのか…事故調査委員会が結論を急いだわけは…?特別付 録JL123ボイスレコーダー+CG映像DVD。ついにすべてが明らかになる。事故機コックピット内・緊迫のやりとり。 | 「お父さんは男です。お母さんは?」という問いに、「お母さんは大好きです」と答えた子ども―。こうした、みずみずしく柔軟な感性に触れることが、自由な発想を失い、日々辛さを感じながら生きている大人の心を刺激する。人生を見直したい人に向けた一冊。 | ||||||||||||
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