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萩原朔太郎の詩を思い出した

2007-08-20 23:48:08 | 朗読あれこれ
またまた昔のテレビ番組からの引用話で恐縮です。
これって連鎖反応でしょうか?(笑)

NHKの朝の連続テレビ小説で『すずらん』というのが
ありました。朝ドラの得意分野、主人公が子どものころから
何かと不自由で、それでも健気に生きてゆくのです。
確か北海道の小さな駅に捨てられた女の子が逞しく生きてゆく姿を
太平洋戦争中も背景に入れて描いていた記憶があります。
主人公を演じていた遠野凪子という女優さん、
とても楚々とした美人さんで好演でした。

それはさておき、主人公には子どものころ親友がいて、
(彼女はとても頭のよい苦学生だったとの記憶があります)
その親友が「私はこの詩がとても好きなの」と云って
主人公にきかせたのが萩原朔太郎の『竹』だったと
忽然と思い出しました。



 竹
         萩原朔太郎

光る地面に竹が生え、
青竹が生え、
地下には竹の根が生え、
根がしだいにほそらみ、
根の先より繊毛が生え、
かすかにけぶる繊毛が生え、
かすかにふるへ。

かたき地面に竹が生え、
地上にするどく竹が生え、
まつしぐらに竹が生え、
凍れる節節りんりんと、
青空のもとに竹が生え、
竹、竹、竹が生え。



自分を竹に投影するかのように誦じた彼女が
とても印象的でした。
ドラマの流れから不覚にも私は泣きました。

実は『竹』という同名の詩が直前にもうひとつあります。



 竹

ますぐなるもの地面に生え、
するどき青きもの地面に生え、
凍れる冬をつらぬきて、
そのみどり葉光る朝の空路に、
なみだたれ、
なみだをたれ、
いまはや懺悔をはれる肩の上より、
けぶれる竹の根はひろごり、
するどき青きもの地面に生え。



最初の『竹』に至る前の、まだ顔をあげる前の心象を
吐露したような・・・そんな風に私は感じました。

『竹』が入っている詩集『月に吠える』の“序”で、
朔太郎が次のように書いているのと繋がっていかないでしょうか。

~~~~~

私は詩を思うと、烈しい人間のなやみとそのよろこびとをかんずる。
詩は神秘でも象徴でも鬼でもない。詩はただ、病める魂の所有者と
孤独者との寂しいなぐさめである。
詩を思うとき、私は人情のいじらしさに自然と涙ぐましくなる。

~~~~~




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