老人党リアルグループ「護憲+」ブログ

現憲法の基本理念(国民主権、平和、人権)の視点で「世直し」を志す「護憲+」メンバーのメッセージ

きな臭さが充満しはじめた世界 (平和主義を再評価した日本の生きる道の模索)(1)

2021-04-26 20:34:14 | アメリカ
🔸バイデン政権の本質(軍産複合体の代弁者)

バイデン政権が誕生して4か月。予想通り、世界は確実に第三次大戦へ向けて歩み始めた。

トランプ政権は米国のエスタブリッシュメントに対する極右からの革命政権だった。トランプ支持者の間で広まっていた【陰謀論】の標的は、米国の真の支配者である軍産複合体を中核としたエスタブリッシュメントに向けられていた。

トランプ政権は、米国が世界の覇権国から降りるという政策を着実に実行し、世界の多極化に拍車をかけた政権だった。トランプが再選されていたら、米国は確実に覇権国家から降りていた。トランプが攻撃の標的にした米国エスタブリッシュメントは、世界の経済・軍事・金融・メディアなどあらゆるものを支配下に置き、世界を実質的に支配する巨大な権力を手に入れている。

米国内の格差は広がる一方。1%の富裕層が米国の富の30%近くを保有している。この事態は、もはや容認しがたい状況に陥っている。
※広がる格差、「上位1%」がアメリカの総資産3割を握る | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)

1%の支配層は、自らの支配を正当化するため世界中のメディアに影響力を行使している。日本のメディアも同様である。彼らがメディアを通じて世界中に流布するイデオロギーの中心が【民主主義】と【人権】。この価値観に反する国や支配者は、米国の敵であり、殲滅すべき対象になる。

安倍晋三が繰り返した『価値観外交』とは、米国外交の中心的価値観である。そしてその価値観は、米国の世界統治の基本的理念であり、世界一の巨大な軍事力に裏付けられている。

問題は、『民主主義』と『人権』という標語にあるのではない。その価値観を他国に押し付け、拒否する国を攻撃する材料に使う点にある。この時の米国は、彼らが語るような温和な民主主義国家ではない。恐ろし気な顔をしたタイラント(専制君主)そのものである。戦後、米国が『民主主義』と『人権』を旗印にしてどれだけ多くの他国の政権を倒したり、戦争を仕掛けたか、枚挙に暇がない。

特に米国の裏庭と称される中南米諸国への介入は、『民主主義』と『人権』の守護神を任じる米国が強権的で専制主義的性格をむき出しにしており、米国という国家のダブルスタンダードを余すところなく示している。

例えば、チリの軍事クーデター。米国の支援を受けたピノチェト陸軍司令官が1973年9月、選挙を通じて誕生したアジェンデ人民連合政府をクーデターで倒し、軍事独裁政権をつくった事件。90年の民政移管までの弾圧で約3200人が死亡もしくは行方不明になった。2011年までの調査によると、拷問や投獄などの被害者総数は4万人を超える。

※赤旗 https://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2013-01-05/2013010507_02_1.html
※「もう一つの9/11」 https://democracynow.jp/video/20100915-3

このクーデターで、アジェンデ大統領は自ら銃を取り、大統領官邸で戦死した。現在ミャンマーで行われている軍事クーデターと同じというより、はるかに酷い虐殺や拷問が行われた。

その他、2000年代、旧ソ連邦加盟国家で起きた非暴力の革命運動=カラー革命がある。ジョージア(グルジア)のバラ革命。ウクライナの「オレンジ革命」。その後起きた「アラブの春」(チュニジアのジャスミン革命)など花になぞらえた革命が多く、総称して【カラー革命】と呼ばれている。これらの革命の裏に米国CIAなどの影がある事など世界の常識である。投資家ジョージ・ソロスなども東欧のカラー革命にかかわっている。

香港の民主化運動も2000年代に行われた『カラー革命』と同じ手法が行われた、とする見方が絶えない。
さよなら香港 田中宇 http://tanakanews.com/190911hongkong.php
さよなら香港、その後 田中宇 http://tanakanews.com/190917hongkong.htm
※「カラー革命」敵視で共鳴  中国式ガバナンス  朝日新聞デジタル
https://www.asahi.com/articles/ASL5J4WC3L5JUHBI01L.html

香港の民主化活動家たちが米国CIAと親密な事は周知の事実だった。これを見た中国当局が、「カラー革命」の手法を警戒しないわけがない。香港の民主化活動家に対する強権的な弾圧は、その意味では当然の結末だった。

わたしは周庭という活動家に注目していたが、香港の民主活動が過激化するのを見ていて、中国当局の思うつぼだと心配していた。活動の過激化は、当局にとっては思うつぼ。案の定、香港の民主化運動は終息。周庭も逮捕、収監され、結果として、見事に抑え込まれた。

もし、この運動が成功したら、2000年代のカラー革命の再現だった。中国当局にとっては、それは悪夢以外の何物でもない。それだけは絶対阻止するという中国当局の意志は、多少の国際的批判など歯牙にもかけないほど堅かった。

わたしは、香港の運動を見ていて、中心活動家が米国の要人と会っている写真を公表するなどあまりにも米国寄りの姿勢を明らかにしており、国際関係の力学に無頓着な点を懸念していた。

もし香港が独立したら、必ず『台湾独立』が日程に上る。これだけは、絶対阻止するというのは革命以来の中国共産党の国家的大命題。その為には何が何でも香港独立は阻止しなければならなかった。

台湾海峡の緊張は、米国流世界統治の方法と中国流統治の方法のぶつかり合う最前線の緊張であり、この緊張を煽る事は、第三次大戦を覚悟しなければできない。

🔶バイデン政権の対中政策

バイデン政権は、中国に対して明確に「人権」を理由にした非難を開始した。特に、新疆ウイグル問題に関して、「人権」を名目にして厳しく非難。中国の政策を明確に否定した。EUも同調し、制裁を課している。当然ながら、中国は強く反発。

※新疆ウイグル問題
https://kotobank.jp/word/%E6%96%B0%E7%96%86%E3%82%A6%E3%82%A4%E3%82%B0%E3%83%AB%E5%95%8F%E9%A1%8C-1738007

※NHK ウイグルの人権問題で欧米が制裁 中国は反発 日本の対応は
2021年3月23日
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210323/k10012930421000.html

さらにバイデン政権は、一つの中国というこれまでの米国政府の外交原則を修正。台湾政府を認知し始めた。この米国政府の態度変更は、当然中国政府の激しい反発を招き、米中関係は厳しい状況になっている。
※米中全面対決、台湾有事はあり得るか:
https://www.nippon.com/ja/in-depth/d00702/

今回の菅総理の米国訪問。米国の対中政策の最前線に日本が立ってほしいという狙いが歴然としている。その為、共同声明で台湾に言及。中国政府の激しい反発を買っている。
※中国はどう報復するか。日本には「寸止め」方針との見方
https://www.businessinsider.jp/post-233359

バイデン政権の対中政策の変更は、日本にとってきわめて深刻な問題になる可能性が高い。何故なら日本の中国に対する貿易依存度は年々高くなっており、米国をはるかに超えている。中国との対立は日本の経済の根幹を揺るがす危険性がある。
※対中依存度が急増する日本に米中の踏み絵は踏めるか 貿易収支が語る、台湾有事と日本の安全保障の不都合な現実(1/3) | JBpress(Japan Business Press) (ismedia.jp)

🔶バイデン政権の対ロ政策

バイデン政権は、4月15日にロシアに対して追加制裁を決定した。理由は、ロシアによる選挙介入やサイバー攻撃。

その前の3月17日に、バイデン大統領はプーチン大統領に対して人殺しと認識していると発言。外交官引き上げなど、ロシアとの間で大きな確執を生んでいる。一国の大統領が他国の大統領を『人殺し』と罵るのは尋常ではない。ロシア当局が怒るのも無理はない。

さらにウクライナ問題に関しても、米国はウクライナでの戦争を望んでいるかのような動きをしている。
・・・4月8日CNNは、米国が黒海に二隻の軍艦を配置するつもりだとトルコに知らせたと、トルコ外務省の情報筋が金曜日に述べた。軍艦は5月5日まで黒海に留まる。・・・と伝えた。

黒海に軍艦を配備すると言う事は、ロシアと正面から対峙する事を意味する。つまり、ウクライナとロシアの間の戦争を米国は望んでいると言う事になる。ウクライナの現在の政権(ゼレンスキー内閣)の力では、米国の承認なしに戦争を始めることなど不可能。軍艦配備とは、米国の承認があったのではないか、と疑わせるに十分。ロシアは受けて立つことを明言している。

ここでもきわめて危険な兆候があらわれている。

🔶バイデン政権の中ロに対する基本姿勢(米国の地政学的戦略視点)

▼これまでの米国流「地政学」理論
ユーラシア大陸の外側・海洋側の勢力(米英日欧)⇒中ロイランなどのユーラシア大陸の内側国家(内陸国家)の勢力を封じ込め、弱体化させる=ユーラシア包囲網⇒米英支配の要諦
=米国流戦争理論

▽この理論に対置する中国の戦略⇒一路一帯政策
内陸国家が結束。海洋勢力の包囲網を打破する。⇒地政学的逆転が中ロの狙い。(現状はそうなりつつある)⇒覇権の多様化

この状況を打破するためには、米国は何が何でもEUの住民(約4億5千万人)を囲い込まねばならない。つまり、EUの住民を守るためには、どうしても米国の保護と武器が必要だと感じさせなければならない。その為には、ロシアの危険性を大々的に報じ、どうしてもウクライナとの戦争が必要だ、とEUの人々に感じさせなければならない。これが、ウクライナ危機を煽る米国の理論だろう。

誰がどう考えても戦争はウクライナの完敗に終わるだろう。米国はそれで良い。ウクライナの国民やウクライナ国家の運命など物の数ではない。ブリンケン国務長官やビクトル・ヌーランドなどのネオコン連中の発想は、この戦争を通じて、ロシアの脅威をEUの住民に腹の底から感じさせれば良いのだ。そうすれば、EUの住民たちは、米国の保護を求め、米国の覇権を望むことになる。それが出来れば大成功という話だ。

このネオコン流のやり口には米国の成功体験がある。旧ソ連邦が崩壊したのは、アフガン戦争のゲリラ戦で泥沼に陥り、経済的苦境に陥ったのが原因。当時アフガン・ゲリラを武器・弾薬・人で支えたのが米国。オサマ・ビンラデインは、サウジアラビアからこのゲリラ戦に参戦。文字通り、CIAのお友達だった。

とにかく、ソ連をアフガン戦争の泥沼に引きずり込んで消耗させるのが狙いだった。このグランド・デザインを描いたのが、当時、まだ力があまりなかったネオコン連中。ソ連邦崩壊を契機に米国政治の中でネオコン連中の力が高まったのである。
※ネオコン ⇒ネオコン(新保守主義)とは、アメリカの保守系の勢力の一部を構成する「国際政治へのアメリカの積極的介入」「アメリカの覇権を重視」「アメリカ的な思想を世界に広めること」などを信条とする勢力のこと。
詳細については以下を読んでください。
https://liberal-arts-guide.com/neoconservatism/

政治力学については、このように、様々な理屈が考えられるが、問題の根源は、米国の衰退にある。

冷静に現在の経済状況を眺めてみればすぐ理解できることだが、現在、絶対米国から買わなければならないものがあるのかと問えば、世界の誰もが一瞬首をひねるだろう。それくらい米国が世界に売りつける高付加価値の商品が年々乏しくなっている。

日本の安倍前首相などが米国に脅されて使えもしないポンコツ武器を言い値で買わされているのを見れば、いかに米国が売るものがないかが良く分かる。

覇権国家の脅しと力づくの商売は長続きしない。脅しで商売できる相手は限られる。今や世界の成長エンジンは、中国やアジア諸国に移っている。

ユーラシア大陸のアジア諸国の人口は約47億人。中国の成長により、この巨大マーケットから米国は排除されつつある。もしこれにEU各国が続けば、世界の6割近い50億以上の人口から米国商品が排除されることになる。

しかも、これらの住民は商品を買う事が出来る豊かな住民であり、アフリカの住民たちとは根本的に違う。それがユーラシア大陸と言う一塊になっている。ここから排除されると言う事は、米国にとっては悪夢に近い。米国がただの南北アメリカという一地域の『覇権国家』に転落する事を意味する。

通常の国家指導者なら、ユーラシア大陸の住民たちが欲しがる魅力ある商品を作る事が出来る産業の育成を図るだろう。

しかし、覇権国家としての果実を食べる事に慣れた米国の支配層はそう考えない。『経済』と『戦争』を一体化させて考える。競争相手を戦争に引きずり込み、相手国を徹底的に疲弊させ、経済を弱体化させ、自国の覇権を死守するように考える。

だからこそ「ウクライナの戦争」が必要だ、というのがネオコンの理論だろう。政権中枢にネオコンの影響力が強いバイデン政権の危険性はここにある。

ただし、正面からロシアと戦争すれば、米国もただでは済まない。ロシアは核兵器を大量に保有しているうえに、ロシアの大陸間弾道弾サルマトの性能は米国のそれを上回るというのが定説。

・・・ 最も脅威的なのは、大陸間弾道ミサイル「RS28サルマト」で、射程は11万キロ。通常の攻撃コースである北極経由はもちろん、南極経由でも欧米を攻撃できる射程を持ち、弾頭重量は100トン、核弾頭なら15個を搭載できるという。北極経由より圧倒的に長距離である南極経由の攻撃が可能になった。この意味するところは、弾道ミサイル防衛(MD)において「北から核ミサイルがくる」との想定に基づき北方方面に配備していたMDの迎撃ミサイルなどを、南側にも配備しなければ守りきれないということだ。

・・もうひとつは低空を飛ぶ巡航ミサイルだが、その動力は原子力。核動力巡航ミサイルとして「無限の射程距離」を獲得したという。これは北大西洋条約機構(NATO)や米国、日本の迎撃システムによる迎撃可能エリアを大きく迂回して目標に到達することが可能だと説明。レーダーに探知されにくい低空を飛ぶ。・・・ 
岡田俊彦 軍事ワールド
https://www.sankei.com/west/news/180313/wst1803130006-n1.html

米本国が核攻撃に晒されるなど、米指導者にとってはあってはならない。そんな危険は冒すことはできない。だからこそ、ウクライナとNATOの協力により、米国が後方支援する形での戦争が必要になる。これなら、ウクライナが戦場になり、拡大してもヨーロッパが戦場になるだけ。米国にとっては痛くもかゆくもない。

ウクライナ問題、ナワリヌイ問題をこの視点で考えると、米国の壮大な意図が見えてくる。

ロシアとの関係も一触即発だが、米国と肩を並べる中国との関係もきな臭さが充満している。自分の立場を脅かす国は、力づくでも追い落とすせ、というのが、覇権国家の力学である。

以前から、わたしは覇権国家が覇権を降りなければならない時が、世界にとって一番危険な時期であると指摘してきたが、バイデン政権の4年間がまさにその時期だと考えている。

「護憲+BBS」「メンバーの今日の、今週の、今月のひとこと」より
流水

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