早朝から、Jアラートが鳴った。朝から脅された県の人はいい迷惑だったに相違ない。羽鳥のモーニングショウで長嶋一茂が「通勤中だったらどうするんだ」と叫んでいたが、見え見えの危機を煽るやり口にかなりの人が怒りを隠せないでいた。
事実、ミサイルなどの軍事専門家は、日本を標的にしたミサイルと上空を飛ぶミサイルとでは、軌道も違うし、発射角度も違うと指摘。その数値をJアラートに組み込めば、今回のように馬鹿馬鹿しい騒ぎをすることはないと指摘していた。
そもそも、日本を標的にしたミサイルなら、撃ち落とすというのが、日本の基本戦略だったはず。それを可能にするのが、撃たれたミサイルの軌道計算。それができないというのなら、撃ち落とせない装置に大金を払ったのかという責任問題になる。
要するに、Jアラートの警報音は、国民を戦争の恐怖に陥れ、パニックを起こさせ、国民の冷静な判断力を奪い、政府の言いなりにする「魔法の音」なのだ。安倍内閣にとっては、「内政の危機」を「外交の危機」にすり替えて、支持率を回復する決め手なのだ。
このような視点を忘れたTVの大騒ぎは、日本のメディアの度し難い退廃を示している。
名無しの探偵さんが指摘されているように、安倍首相の危機を煽る言動は常軌を逸している。トランプの尻を叩いて、さらなる強硬な措置を促したいに違いない。日本や日本国民にとっての真の危機は、安倍首相個人の資質と判断力にあるといって過言ではない。そもそも安倍首相が現在の北朝鮮問題の歴史的経緯をきちんと認識しているかどうか極めて疑問である。
安倍首相がどうあれ、わたしたちが正確で冷静な北朝鮮危機の認識を行うためには、北朝鮮問題の歴史的経緯をある程度把握しておかねばならない。
〇朝鮮戦争休戦協定遵守の問題。
わたしたちは、現在の朝鮮半島が「休戦状態」であることは知っている。38度線(軍事境界線)をおおよその境界として、南北朝鮮に分かれている。ところが、多くの日本人は、なぜ未だに朝鮮戦争が「休戦状態」のままなのか、という真の理由は知らない。
作家山田順は、「そもそも朝鮮戦争が終わらないのは、アメリカが1953年の「休戦協定」を破っていることが根本原因である。 」と指摘する。https://news.yahoo.co.jp/byline/yamadajun/20170915-00075794/
彼がこのように指摘するのには、理由がある。
「朝鮮休戦協定第60項」に「朝鮮問題の平和的解決を確保するため、双方の軍司令官は、双方の関係国の政府に対して、休戦協定が署名され、効力を生じた後3ケ月以内に、これらの国の政府がそれぞれ任命する代表により一層高級な政治会談を開催してすべての外国軍隊の朝鮮からの撤退、朝鮮問題の平和的解決その他の諸問題を交渉により解決するよう勧告する」という文章がある。
ところが、米国は、この3ケ月以内の政治会談をサボタージュし続けたのである。理由は明白。すべての外国軍隊の撤退要項に、在韓米軍が抵触する。そのため、停戦協定調印後1ケ月もたたない8月8日「米韓相互防衛条約」に調印していたからである。
米韓両国の一国が侵略された場合には共同で対応し、米軍の南朝鮮駐留を認める、とする内容。この防衛条約は、米国の南朝鮮永久占領を現実化していた。この結果、未だに朝鮮半島は、「休戦状態」のまま放置され、現在の危機に象徴されるような緊張状況が続いたのである。
もし、休戦協定に書かれている会議が招集されたら、北朝鮮は必ずこの問題を持ち出し、米国の非を責め立てるだろう。米国がそれを甘んじて受け入れるなら、この会談は成功するだろうが、現在の米国を見ればそれは難しい。つまり、現在の北朝鮮危機の淵源は、米国の覇権主義的思考にある、ということである。
〇北朝鮮の核開発は、すべて北朝鮮の責任か。
1994年に北朝鮮の核開発を止める「枠組み合意」が米朝の間で結ばれた事を記憶している日本人は少ないだろう。評論家と称される連中も、現在のような北朝鮮の核開発が推進される要因になったこの合意について語らない。
Independent紙によればこの合意の内容は、以下のようになる。
・・・・
1994年の合意では、北朝鮮は米国との政治経済関係の完全正常化と引き換えに“核開発計画”を凍結、最終的に廃止することを同意した。
この事は以下の四つの条件を意味していた。
1. 原子力の喪失を補う→米国が率いるコンソーシアムが、2003年までに北朝鮮に二基の軽水炉を建設する。
2. 2003年まで、米国は、年間5000,000トンの重油を提供する
3. 米国は北朝鮮をテロ支援国家から外し、経済制裁を解除、1953年の休戦協定に記載されている政治関係の正常化を図る
4. 双方が“核兵器使用の脅威”に対する“正式な保証をすること”
・・・・
現在ほとんど語られることはないが、この協定はよくできている。北朝鮮側は「体制の保証」といくばくかの経済的利益を得、米国は、あらゆる核施設を監視でき、核開発を制御できる。基本的には、WINWINの関係のはずだった。
では、なぜ失敗したか。アメリカが協定を守らなかったからである。軽水炉は基礎段階以上には進まなかった。重油供給もまれになった。それに比べ、北朝鮮は、協定をよく遵守した。先のIndependent紙によれば、“米国も国際原子力機関”北朝鮮による“枠組み合意”のあらゆる点で根本的な違反はないということになる。単純に北朝鮮は約束を守り、米国は守らなかった、という話である。
以上の論は、下のブログを参照してまとめた。
“トランプが北朝鮮と戦争を始めない理由” http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2017/09/post-0c3e.html
◎現在問題になっている二点。①なぜ、未だに休戦状態なのか。②なぜ、北朝鮮は核開発をやめないのか、を子細に検討すると、双方とも、米国の責任が浮かび上がってきた。
これは、米国が絡む国際問題の常識だが、“悪の象徴”とされた国家、個人などが本当に“悪”だったのか、ということをまず疑わなければならない。イラクのフセイン、リビアのカダフィ、シリアのアサド等々。枚挙に暇がない。
一言でいえば、米国が敵と認定した国家、個人には、ありとあらゆるメディアを使い、「濡れ衣」を着せて排除する、というのがアメリカの常套手段。現在進行形の“濡れ衣作戦”の標的は、北朝鮮の金正恩であり、ロシアのプーチン大統領。忘れてならないのは、田中角栄と小沢一郎両名も、この「濡れ衣作戦」の標的にされた。わたしたちは、まずこの事を念頭に置いて、問題を考えなければならない。
現在、日本のメディアは、北朝鮮・金正恩「悪党説」で一致している。安倍政権の圧力一辺倒政策を支持し、まるで、戦争前夜の大騒ぎである。
しかし、かって、「話し合い」が成立した時もあったのである。これは、話し合いは決して不可能ではない、と言う事を証明している。問題は、説明したように、米国政府が真摯に協定を履行しなかった点にある。そして、その裏切りから、北朝鮮政府が徹底的に学んでいる点である。
北朝鮮は、力(核兵器保有)なしに話し合いを行っても、米国は平気で反故にする。リビアのカダフィもイラクのフセインも核兵器を持たない事を米国と約束し、約束を履行したのに殺された。北朝鮮との1994年の約束も守らなかった。だから、米国に約束を守らせるのは、力だけだ、と認識している。この不信感はちょっとやそっとでは解消しない。
以前から、何度も指摘しているが、米国という国は、「弱い者いじめ」が国策。北朝鮮の反撃能力がなければとっくの昔に攻撃されている。アフガンしかり、イラクしかり、リビアしかり。これらの国は、徹底的に破壊された。
しかし、反撃能力の高い相手には、常に苦戦している。(朝鮮戦争、ベトナム戦争が代表) 戦後一番多く戦争を行い、世界で一番人を殺したのも米国。そのため、世界中から恨みを買っている。北朝鮮の疑念も理由があるのである。
◎では、米国(トランプ大統領)は、北朝鮮を攻撃するか
まず、米国から攻撃する筝はない。理由は単純。
1. シリア・ロシア・北朝鮮の三正面作戦を遂行できない。
2. 北朝鮮と戦うには、かなりの数の地上軍が必要。それがない。
3. 北朝鮮の戦いの戦略的メリットなし。→韓国軍は米軍の支配下。経済・金融体制も欧米体制に組み込まれている。(中露を包囲し、戦うために必要な兵器システムを配備する重要拠点→日本も同様)
4. アジアの外交政策を担っている軍の将軍たちは、何をするかわからないトランプの性格的欠陥をうまく利用し、中ロを引き込み、北朝鮮との対立を自国の戦略的立場の強化に利用している。
●今回の北朝鮮危機を利用した本当の米国の狙い→日韓両国の「核武装化」ではないか?
評論家田中宇は、「北朝鮮と日本の核武装」の中でぎょっとするような記事を書いている。
・・・
9月4日には、大手紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)の社説欄に、日本人の多くをぎょっとさせる提案が掲載された。「トランプは日本の核武装を望んでいるか」と題し、日本が自前の核兵器を持つ可能性が増していると指摘している。筆者は、タカ派の定期コラムニストで国際政治学者のウォルター・ラッセル・ミードだ。この論文で、私が重要と思ったのは以下の点だ。
http://www.wsj.com/articles/does-trump-want-a-nuclear-japan-1504549899
Does Trump Want a Nuclear Japan?
「北の核ミサイル危機を機に、日本の支配層は、独自の核武装をしたいと考える傾向を強めている」「核武装すれば、対米自立した大国になれる。日本の保守派は、そうなりたいと考えている」「一般の日本人は従来、核武装に対して深く懐疑的だったが、北のミサイルの脅威の拡大を受け、考えを変える人が増えている」
「日本が核武装すると、韓国や台湾も核武装する。日本はこっそり台湾(や韓国)の核武装を支援する」
「日本の核武装に対する米政府内の意見は分裂している。日本の核武装を阻止した方が米国の覇権を維持できると考える人と、日本が核武装し、つられて韓国や台湾も核武装した方が、中国の台頭を抑止できるし、日韓から米軍が撤退できて防衛費を節約できるので好ましいと考える人がいる。トランプ自身は後者だ。覇権維持に対する米国民の支持も疑わしくなっている」
「北の核ミサイルの出現は、米国に、北との戦争か、アジア覇権の放棄か、どちらかを選ぶことを強制している」
・・・
https://tanakanews.com/170910japan.htm
この記事は、現在の世界情勢、日本の立ち位置などを理解するのに非常に役立つ。
米国の覇権力の後退が、「米国ファースト」というトランプ大統領を生み出した。トランプ大統領は、辞任した側近バノンの戦略通り、世界の警察を辞め、覇権を縮小し、文字通り「米国ファースト」の政策を行おうとしていた。当然ながら、世界の警察役を務めることで、莫大な利益を得ていた軍産複合体の利害と激しく対立。トランプ政権の混乱は、米国の覇権力の後退局面での国内の覇権争いの側面が大きい。
ロシアとの融和を目指したトランプ流外交も、軍産複合体の影響が強い議会やCIAなどの諜報機関が主張するロシアゲート疑惑で頓座。ロシアとの関係がきわめて憂慮される状況である。
米メディアの政権批判は、日本メディアよりはるかに健全だが、同時に軍産複合体の利益代弁者としての側面も見落としてはならない。特に、ロシア批判の異常さは、ネオコン連中のロシア戦略と軌を一にしており、きわめて危険性が高い。
このような状況下での北朝鮮危機なのだから、トランプの強硬発言もかなり割り引いて考えるのが至当。できうれば、韓国も日本も核武装し、対米自立を果たしてもらえば米国は手を引けると考えているだろう。米国覇権力の後退局面ならではの発想である。
※ここで注意しておかねばならないのは、「米国の核の傘にいる戦略」=「米国隷従政策」は、日本の官僚機構の方針でもある。過去、日本は、国内世論が反対の政策を米国の圧力を理由に、政策変更してきた。これは米国の「核の傘」で守ってもらっているのだから、米国の言う事を聞かなければならない、という理屈で、国内政治家たちを抑えてきた官僚たちの知恵である。
それに対して、「核武装」論は、日本自立論とリンク。同時に、政治家主導の政策である。つまり、「核武装論」VS「米国の核の傘論」は、「政治主導」VS「官僚主導」の構図である事を知っておかねばならない。
つまり、今回の北朝鮮危機は、世界の「戦後レジーム」の変換点で起きており、それは日本の戦後体制の変換点でもあるという認識が必要である。
◇護憲派やリベラル派は、これらの流れを読み込んで、きちんと対峙できる主張を再構築すべき。⇒例えば、今回の北朝鮮危機を考えたとき、「米軍基地」の存在自体が日本の存立危機をもたらしていると言う事。軍事力や核兵器が平和をもたらすのではなく、トランプ大統領や金正恩個人への不安が象徴するように、それを使う人間の理性が平和をもたらすのだという単純な事実を確認しなければならない。
◆日本の安倍政権の方針⇒きわめて危険
(1)北朝鮮危機は、絶好のチャンス→支持率回復・政権浮揚の大チャンス⇒危機を煽れるだけ煽る⇒国民をパニックに落とし込む⇒国民を思考停止状態にする⇒政府に頼るしかないという状況にする⇒森友・加計問題追及を忘れさせる⇒国家的危機を理由にメディア支配を強める(※すでに北朝鮮ミサイル発射時の放送は、戦時色いっぱい)
(2)北朝鮮危機対応を理由に防衛予算を拡大。⇒来年度防衛費は、8兆円を超えるだろう⇒米軍産複合体の高笑いが聞こえる。⇒その反面、医療・年金などの社会福祉予算の削減は、高齢者など弱者を直撃している。
(3)北朝鮮危機をできるだけ引き延ばす必要がある。⇒、おそらくトランプ大統領の尻を叩いて、できるだけ北朝鮮を刺激する強硬方針を打ち出させ、北朝鮮のさらなる反発を引き出そうとしている。⇒この道は、非常に危険な道=米国・北朝鮮双方の不測な事態を招く危険性がある。※特に、トランプ大統領の性格。
(4)安倍政権はそれでも良いと考えているふしがある。⇒※ 名無しの探偵さんが危惧されているように、安倍政権には、何をどうしたいという本当の意味での権力保持の理由がない。政権維持が至上命題。権力保持のためなら、戦争もいとわない、というのが安倍政権である。この危険な性格を国民がどう見抜くかが今後の日本の運命を決める。
「護憲+BBS」「メンバーの今日の、今週の、今月のひとこと」より
流水
事実、ミサイルなどの軍事専門家は、日本を標的にしたミサイルと上空を飛ぶミサイルとでは、軌道も違うし、発射角度も違うと指摘。その数値をJアラートに組み込めば、今回のように馬鹿馬鹿しい騒ぎをすることはないと指摘していた。
そもそも、日本を標的にしたミサイルなら、撃ち落とすというのが、日本の基本戦略だったはず。それを可能にするのが、撃たれたミサイルの軌道計算。それができないというのなら、撃ち落とせない装置に大金を払ったのかという責任問題になる。
要するに、Jアラートの警報音は、国民を戦争の恐怖に陥れ、パニックを起こさせ、国民の冷静な判断力を奪い、政府の言いなりにする「魔法の音」なのだ。安倍内閣にとっては、「内政の危機」を「外交の危機」にすり替えて、支持率を回復する決め手なのだ。
このような視点を忘れたTVの大騒ぎは、日本のメディアの度し難い退廃を示している。
名無しの探偵さんが指摘されているように、安倍首相の危機を煽る言動は常軌を逸している。トランプの尻を叩いて、さらなる強硬な措置を促したいに違いない。日本や日本国民にとっての真の危機は、安倍首相個人の資質と判断力にあるといって過言ではない。そもそも安倍首相が現在の北朝鮮問題の歴史的経緯をきちんと認識しているかどうか極めて疑問である。
安倍首相がどうあれ、わたしたちが正確で冷静な北朝鮮危機の認識を行うためには、北朝鮮問題の歴史的経緯をある程度把握しておかねばならない。
〇朝鮮戦争休戦協定遵守の問題。
わたしたちは、現在の朝鮮半島が「休戦状態」であることは知っている。38度線(軍事境界線)をおおよその境界として、南北朝鮮に分かれている。ところが、多くの日本人は、なぜ未だに朝鮮戦争が「休戦状態」のままなのか、という真の理由は知らない。
作家山田順は、「そもそも朝鮮戦争が終わらないのは、アメリカが1953年の「休戦協定」を破っていることが根本原因である。 」と指摘する。https://news.yahoo.co.jp/byline/yamadajun/20170915-00075794/
彼がこのように指摘するのには、理由がある。
「朝鮮休戦協定第60項」に「朝鮮問題の平和的解決を確保するため、双方の軍司令官は、双方の関係国の政府に対して、休戦協定が署名され、効力を生じた後3ケ月以内に、これらの国の政府がそれぞれ任命する代表により一層高級な政治会談を開催してすべての外国軍隊の朝鮮からの撤退、朝鮮問題の平和的解決その他の諸問題を交渉により解決するよう勧告する」という文章がある。
ところが、米国は、この3ケ月以内の政治会談をサボタージュし続けたのである。理由は明白。すべての外国軍隊の撤退要項に、在韓米軍が抵触する。そのため、停戦協定調印後1ケ月もたたない8月8日「米韓相互防衛条約」に調印していたからである。
米韓両国の一国が侵略された場合には共同で対応し、米軍の南朝鮮駐留を認める、とする内容。この防衛条約は、米国の南朝鮮永久占領を現実化していた。この結果、未だに朝鮮半島は、「休戦状態」のまま放置され、現在の危機に象徴されるような緊張状況が続いたのである。
もし、休戦協定に書かれている会議が招集されたら、北朝鮮は必ずこの問題を持ち出し、米国の非を責め立てるだろう。米国がそれを甘んじて受け入れるなら、この会談は成功するだろうが、現在の米国を見ればそれは難しい。つまり、現在の北朝鮮危機の淵源は、米国の覇権主義的思考にある、ということである。
〇北朝鮮の核開発は、すべて北朝鮮の責任か。
1994年に北朝鮮の核開発を止める「枠組み合意」が米朝の間で結ばれた事を記憶している日本人は少ないだろう。評論家と称される連中も、現在のような北朝鮮の核開発が推進される要因になったこの合意について語らない。
Independent紙によればこの合意の内容は、以下のようになる。
・・・・
1994年の合意では、北朝鮮は米国との政治経済関係の完全正常化と引き換えに“核開発計画”を凍結、最終的に廃止することを同意した。
この事は以下の四つの条件を意味していた。
1. 原子力の喪失を補う→米国が率いるコンソーシアムが、2003年までに北朝鮮に二基の軽水炉を建設する。
2. 2003年まで、米国は、年間5000,000トンの重油を提供する
3. 米国は北朝鮮をテロ支援国家から外し、経済制裁を解除、1953年の休戦協定に記載されている政治関係の正常化を図る
4. 双方が“核兵器使用の脅威”に対する“正式な保証をすること”
・・・・
現在ほとんど語られることはないが、この協定はよくできている。北朝鮮側は「体制の保証」といくばくかの経済的利益を得、米国は、あらゆる核施設を監視でき、核開発を制御できる。基本的には、WINWINの関係のはずだった。
では、なぜ失敗したか。アメリカが協定を守らなかったからである。軽水炉は基礎段階以上には進まなかった。重油供給もまれになった。それに比べ、北朝鮮は、協定をよく遵守した。先のIndependent紙によれば、“米国も国際原子力機関”北朝鮮による“枠組み合意”のあらゆる点で根本的な違反はないということになる。単純に北朝鮮は約束を守り、米国は守らなかった、という話である。
以上の論は、下のブログを参照してまとめた。
“トランプが北朝鮮と戦争を始めない理由” http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2017/09/post-0c3e.html
◎現在問題になっている二点。①なぜ、未だに休戦状態なのか。②なぜ、北朝鮮は核開発をやめないのか、を子細に検討すると、双方とも、米国の責任が浮かび上がってきた。
これは、米国が絡む国際問題の常識だが、“悪の象徴”とされた国家、個人などが本当に“悪”だったのか、ということをまず疑わなければならない。イラクのフセイン、リビアのカダフィ、シリアのアサド等々。枚挙に暇がない。
一言でいえば、米国が敵と認定した国家、個人には、ありとあらゆるメディアを使い、「濡れ衣」を着せて排除する、というのがアメリカの常套手段。現在進行形の“濡れ衣作戦”の標的は、北朝鮮の金正恩であり、ロシアのプーチン大統領。忘れてならないのは、田中角栄と小沢一郎両名も、この「濡れ衣作戦」の標的にされた。わたしたちは、まずこの事を念頭に置いて、問題を考えなければならない。
現在、日本のメディアは、北朝鮮・金正恩「悪党説」で一致している。安倍政権の圧力一辺倒政策を支持し、まるで、戦争前夜の大騒ぎである。
しかし、かって、「話し合い」が成立した時もあったのである。これは、話し合いは決して不可能ではない、と言う事を証明している。問題は、説明したように、米国政府が真摯に協定を履行しなかった点にある。そして、その裏切りから、北朝鮮政府が徹底的に学んでいる点である。
北朝鮮は、力(核兵器保有)なしに話し合いを行っても、米国は平気で反故にする。リビアのカダフィもイラクのフセインも核兵器を持たない事を米国と約束し、約束を履行したのに殺された。北朝鮮との1994年の約束も守らなかった。だから、米国に約束を守らせるのは、力だけだ、と認識している。この不信感はちょっとやそっとでは解消しない。
以前から、何度も指摘しているが、米国という国は、「弱い者いじめ」が国策。北朝鮮の反撃能力がなければとっくの昔に攻撃されている。アフガンしかり、イラクしかり、リビアしかり。これらの国は、徹底的に破壊された。
しかし、反撃能力の高い相手には、常に苦戦している。(朝鮮戦争、ベトナム戦争が代表) 戦後一番多く戦争を行い、世界で一番人を殺したのも米国。そのため、世界中から恨みを買っている。北朝鮮の疑念も理由があるのである。
◎では、米国(トランプ大統領)は、北朝鮮を攻撃するか
まず、米国から攻撃する筝はない。理由は単純。
1. シリア・ロシア・北朝鮮の三正面作戦を遂行できない。
2. 北朝鮮と戦うには、かなりの数の地上軍が必要。それがない。
3. 北朝鮮の戦いの戦略的メリットなし。→韓国軍は米軍の支配下。経済・金融体制も欧米体制に組み込まれている。(中露を包囲し、戦うために必要な兵器システムを配備する重要拠点→日本も同様)
4. アジアの外交政策を担っている軍の将軍たちは、何をするかわからないトランプの性格的欠陥をうまく利用し、中ロを引き込み、北朝鮮との対立を自国の戦略的立場の強化に利用している。
●今回の北朝鮮危機を利用した本当の米国の狙い→日韓両国の「核武装化」ではないか?
評論家田中宇は、「北朝鮮と日本の核武装」の中でぎょっとするような記事を書いている。
・・・
9月4日には、大手紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)の社説欄に、日本人の多くをぎょっとさせる提案が掲載された。「トランプは日本の核武装を望んでいるか」と題し、日本が自前の核兵器を持つ可能性が増していると指摘している。筆者は、タカ派の定期コラムニストで国際政治学者のウォルター・ラッセル・ミードだ。この論文で、私が重要と思ったのは以下の点だ。
http://www.wsj.com/articles/does-trump-want-a-nuclear-japan-1504549899
Does Trump Want a Nuclear Japan?
「北の核ミサイル危機を機に、日本の支配層は、独自の核武装をしたいと考える傾向を強めている」「核武装すれば、対米自立した大国になれる。日本の保守派は、そうなりたいと考えている」「一般の日本人は従来、核武装に対して深く懐疑的だったが、北のミサイルの脅威の拡大を受け、考えを変える人が増えている」
「日本が核武装すると、韓国や台湾も核武装する。日本はこっそり台湾(や韓国)の核武装を支援する」
「日本の核武装に対する米政府内の意見は分裂している。日本の核武装を阻止した方が米国の覇権を維持できると考える人と、日本が核武装し、つられて韓国や台湾も核武装した方が、中国の台頭を抑止できるし、日韓から米軍が撤退できて防衛費を節約できるので好ましいと考える人がいる。トランプ自身は後者だ。覇権維持に対する米国民の支持も疑わしくなっている」
「北の核ミサイルの出現は、米国に、北との戦争か、アジア覇権の放棄か、どちらかを選ぶことを強制している」
・・・
https://tanakanews.com/170910japan.htm
この記事は、現在の世界情勢、日本の立ち位置などを理解するのに非常に役立つ。
米国の覇権力の後退が、「米国ファースト」というトランプ大統領を生み出した。トランプ大統領は、辞任した側近バノンの戦略通り、世界の警察を辞め、覇権を縮小し、文字通り「米国ファースト」の政策を行おうとしていた。当然ながら、世界の警察役を務めることで、莫大な利益を得ていた軍産複合体の利害と激しく対立。トランプ政権の混乱は、米国の覇権力の後退局面での国内の覇権争いの側面が大きい。
ロシアとの融和を目指したトランプ流外交も、軍産複合体の影響が強い議会やCIAなどの諜報機関が主張するロシアゲート疑惑で頓座。ロシアとの関係がきわめて憂慮される状況である。
米メディアの政権批判は、日本メディアよりはるかに健全だが、同時に軍産複合体の利益代弁者としての側面も見落としてはならない。特に、ロシア批判の異常さは、ネオコン連中のロシア戦略と軌を一にしており、きわめて危険性が高い。
このような状況下での北朝鮮危機なのだから、トランプの強硬発言もかなり割り引いて考えるのが至当。できうれば、韓国も日本も核武装し、対米自立を果たしてもらえば米国は手を引けると考えているだろう。米国覇権力の後退局面ならではの発想である。
※ここで注意しておかねばならないのは、「米国の核の傘にいる戦略」=「米国隷従政策」は、日本の官僚機構の方針でもある。過去、日本は、国内世論が反対の政策を米国の圧力を理由に、政策変更してきた。これは米国の「核の傘」で守ってもらっているのだから、米国の言う事を聞かなければならない、という理屈で、国内政治家たちを抑えてきた官僚たちの知恵である。
それに対して、「核武装」論は、日本自立論とリンク。同時に、政治家主導の政策である。つまり、「核武装論」VS「米国の核の傘論」は、「政治主導」VS「官僚主導」の構図である事を知っておかねばならない。
つまり、今回の北朝鮮危機は、世界の「戦後レジーム」の変換点で起きており、それは日本の戦後体制の変換点でもあるという認識が必要である。
◇護憲派やリベラル派は、これらの流れを読み込んで、きちんと対峙できる主張を再構築すべき。⇒例えば、今回の北朝鮮危機を考えたとき、「米軍基地」の存在自体が日本の存立危機をもたらしていると言う事。軍事力や核兵器が平和をもたらすのではなく、トランプ大統領や金正恩個人への不安が象徴するように、それを使う人間の理性が平和をもたらすのだという単純な事実を確認しなければならない。
◆日本の安倍政権の方針⇒きわめて危険
(1)北朝鮮危機は、絶好のチャンス→支持率回復・政権浮揚の大チャンス⇒危機を煽れるだけ煽る⇒国民をパニックに落とし込む⇒国民を思考停止状態にする⇒政府に頼るしかないという状況にする⇒森友・加計問題追及を忘れさせる⇒国家的危機を理由にメディア支配を強める(※すでに北朝鮮ミサイル発射時の放送は、戦時色いっぱい)
(2)北朝鮮危機対応を理由に防衛予算を拡大。⇒来年度防衛費は、8兆円を超えるだろう⇒米軍産複合体の高笑いが聞こえる。⇒その反面、医療・年金などの社会福祉予算の削減は、高齢者など弱者を直撃している。
(3)北朝鮮危機をできるだけ引き延ばす必要がある。⇒、おそらくトランプ大統領の尻を叩いて、できるだけ北朝鮮を刺激する強硬方針を打ち出させ、北朝鮮のさらなる反発を引き出そうとしている。⇒この道は、非常に危険な道=米国・北朝鮮双方の不測な事態を招く危険性がある。※特に、トランプ大統領の性格。
(4)安倍政権はそれでも良いと考えているふしがある。⇒※ 名無しの探偵さんが危惧されているように、安倍政権には、何をどうしたいという本当の意味での権力保持の理由がない。政権維持が至上命題。権力保持のためなら、戦争もいとわない、というのが安倍政権である。この危険な性格を国民がどう見抜くかが今後の日本の運命を決める。
「護憲+BBS」「メンバーの今日の、今週の、今月のひとこと」より
流水
