12月16日の参議院予算委員会で、立憲民主党の有田芳生議員が、コロナの水際対策に関連して、20代の米海兵隊員が成田空港検疫で陽性とされながら民間機で沖縄入りしていた問題について、政府に事実確認を求めたところ、「米側との関係」を理由に、北米局長が拒否。
続いて、有田議員は、玉城沖縄県知事の「辺野古『不承認』」に言及し、岸田首相、林外相、岸防衛相に、辺野古の海を見たことがあるか、見てどう感じたかを尋ねたが、3人は「美しかった」「豊かだった」といいつつ、普天間基地の全面返還の必要性を強調し、日米地位協定は不可侵であり、岸田内閣も沖縄に押し付けられた日米関係の歪みを解消する気がないことが浮き彫りになった。
岸田政権に対する「幻滅」はさておき、有田議員が辺野古の問題に触れた際紹介した、上間陽子さん著の「海をあげる」の一説が強く印象に残った。
***
「今日は、海に土や砂を入れる日だから、みんなとっても怒っているし、ケーサツも怖いかもしれない」と言うと、娘はあっさり、「じゃあ、保育園に行く」と言う。
暗闇のなかで、娘は私に「海に土をいれたら、魚は死む?ヤドカリは死む?」と尋ねてくる。
「そう、みんな死ぬよ。だから今日はケーサツも怖いかもしれない」
***
紹介の間、パネルを持っていた女性議員が涙をぬぐっていたが、私もその言葉が胸に刺さり、是非この本を読まなくては、との思いに駆られて、さっそく取り寄せた。
著書「海をあげる」は、琉球大学教授である上間陽子さんが、筑摩書房のコメントを借りれば、『沖縄での生活を、淡々と書いた作品です。過去に傷ついた日々を友人に支えてもらったこと、歌舞伎町で働く沖縄出身のホストの生活史を聞いたこと、海に日々たくさんの土砂が入れられていくこと。具体的なできごとの描写を通じて、人間の営みの本質が描かれてい』て、2021年の本屋大賞・ノンフィクション本大賞を受賞している。
内容は、上記のとおりだが、最後の章「海をあげる」の、結びの言葉がずしりと重い。
***
2018年末にはじまった土砂投入は、19年末までの一年の工程表の1パーセントを終えたらしい。普天間基地を閉鎖するという名目でなされる、じりじりと沈む大地に杭を打つ辺野古基地の完成には、これから100年かかるというわけだ。(略)
私は静かな部屋でこれを読んでいるあなたにあげる。私は電車でこれを読んでいるあなたにあげる。私は川のほとりでこれを読んでいるあなたにあげる。
この海をひとりで抱えることはもうできない。だからあなたに、海をあげる。
***
思えば、2015年から2019年頃まで、私たちは「護憲+」月例会や他の集会で、沖縄基地反対運動に参加している方や、本にも登場する元山仁士郎さんの話を聞いたり、沖縄に呼応した「辺野古埋立てを止めよう・国会包囲」に参加するなど、沖縄の問題を自分事として考え、関与する機会を作ってきたが、ここ2年、コロナ禍に翻弄されるうちに、沖縄基地問題も遠くにかすんでしまっていた。
しかし、今回有田議員の国会質疑によって、この本に出合い、沖縄の苦悩にもう一度向き合わなくてはという気持ちが沸き起こってきた。
有田議員の真摯な質疑に感謝すると共に、皆さんにも是非この本を読んで、沖縄の「海」を自分の胸に受け取ってもらえたら、と願っている。
「護憲+BBS」「明日へのビタミン!ちょっといい映画・本・音楽・美術」より
笹井明子
続いて、有田議員は、玉城沖縄県知事の「辺野古『不承認』」に言及し、岸田首相、林外相、岸防衛相に、辺野古の海を見たことがあるか、見てどう感じたかを尋ねたが、3人は「美しかった」「豊かだった」といいつつ、普天間基地の全面返還の必要性を強調し、日米地位協定は不可侵であり、岸田内閣も沖縄に押し付けられた日米関係の歪みを解消する気がないことが浮き彫りになった。
岸田政権に対する「幻滅」はさておき、有田議員が辺野古の問題に触れた際紹介した、上間陽子さん著の「海をあげる」の一説が強く印象に残った。
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「今日は、海に土や砂を入れる日だから、みんなとっても怒っているし、ケーサツも怖いかもしれない」と言うと、娘はあっさり、「じゃあ、保育園に行く」と言う。
暗闇のなかで、娘は私に「海に土をいれたら、魚は死む?ヤドカリは死む?」と尋ねてくる。
「そう、みんな死ぬよ。だから今日はケーサツも怖いかもしれない」
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紹介の間、パネルを持っていた女性議員が涙をぬぐっていたが、私もその言葉が胸に刺さり、是非この本を読まなくては、との思いに駆られて、さっそく取り寄せた。
著書「海をあげる」は、琉球大学教授である上間陽子さんが、筑摩書房のコメントを借りれば、『沖縄での生活を、淡々と書いた作品です。過去に傷ついた日々を友人に支えてもらったこと、歌舞伎町で働く沖縄出身のホストの生活史を聞いたこと、海に日々たくさんの土砂が入れられていくこと。具体的なできごとの描写を通じて、人間の営みの本質が描かれてい』て、2021年の本屋大賞・ノンフィクション本大賞を受賞している。
内容は、上記のとおりだが、最後の章「海をあげる」の、結びの言葉がずしりと重い。
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2018年末にはじまった土砂投入は、19年末までの一年の工程表の1パーセントを終えたらしい。普天間基地を閉鎖するという名目でなされる、じりじりと沈む大地に杭を打つ辺野古基地の完成には、これから100年かかるというわけだ。(略)
私は静かな部屋でこれを読んでいるあなたにあげる。私は電車でこれを読んでいるあなたにあげる。私は川のほとりでこれを読んでいるあなたにあげる。
この海をひとりで抱えることはもうできない。だからあなたに、海をあげる。
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思えば、2015年から2019年頃まで、私たちは「護憲+」月例会や他の集会で、沖縄基地反対運動に参加している方や、本にも登場する元山仁士郎さんの話を聞いたり、沖縄に呼応した「辺野古埋立てを止めよう・国会包囲」に参加するなど、沖縄の問題を自分事として考え、関与する機会を作ってきたが、ここ2年、コロナ禍に翻弄されるうちに、沖縄基地問題も遠くにかすんでしまっていた。
しかし、今回有田議員の国会質疑によって、この本に出合い、沖縄の苦悩にもう一度向き合わなくてはという気持ちが沸き起こってきた。
有田議員の真摯な質疑に感謝すると共に、皆さんにも是非この本を読んで、沖縄の「海」を自分の胸に受け取ってもらえたら、と願っている。
「護憲+BBS」「明日へのビタミン!ちょっといい映画・本・音楽・美術」より
笹井明子
