「何も起きないことが一番いい」のか

韓国で深夜に突如出された非常戒厳には驚いたが、平生から既得権益に有利な制度を意地でも変えようとせず、チートを使ってでも権力を手放そうとしない人たちとそれほど大差があるのだろうか、とも考えてしまった。

「長いこと軍事主義だったから」「あの国の人たちは気性が激しいから」と、韓国が今でも後進国であるとみなし、建前上は平和で何事にも騒がず穏やかな日本人はやはりすごいと言わんばかりの上から突き放したような態度も、もはや既視感しかない。

仮に日本で独裁体制や権力を持つ側によるクーデターを意図して戒厳令が発令された場合に、韓国の市民や国会議員のようにすぐに解除させるための行動ができるのだろうか。「黙ってみていれば事態は収束する」「嵐が去るのをじっと待つしかない」という考えのもと、特に何もしない人が多いのではないかと考えてしまう。
　
先週の護憲コラムにも書いてあったように、韓国での非常戒厳は約6時間で解除され、治安維持部隊による逮捕者や死傷者は出なかったようだ。こうした場合に、日本だったら杓子定規に市民による抗議行動を取り締まり、臨機応変な対応ができない懸念すらある。

自らのパワハラを告発した職員を力ずくで探し出し、自ら命を絶つところまで追いつめるような人物が、一度は失職したものの知事に再選してしまう現実がある。国政選挙でも、裏金問題があれほど大きく取り上げられたにもかかわらず、いわゆる裏金議員が当選している。

やはり、結局は何も変わらないことが一番いいと考えてしまうのだろうか。たしかに、必要以上に事を荒立てる必要はない。しかし、今ある問題を少しでも減らしていく必要があるはずだ。変えることで今よりも状況が悪化してしまうのが恐いのかもしれない。それでも、一人ひとりが不当な扱いを受け、自らの権利を奪われそうなときには止めるように何らかの意思表示をすべきである。

「護憲＋コラム」より
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