黒式部の怨念日記

怨念を恐るる者は読むことなかれ

相続の限定承認の後に相続放棄はできない

2024-11-19 10:53:23 | 法律

相続を特集した昨日のあさイチを見ててわが耳を疑った場面があった。ゲストの一人が「相続の限定承認(相続した借金のうち相続したプラスの財産を超える部分は払わなくてよくなる)をした後に相続放棄ができるのか?」と聞いたのに対し、「相続に詳しい弁護士」の先生が「そうなんです」と言ったのだ。私の知識ではできないはず。あらためて、録画を見る(「おーい、ごはんだよ」を残すためにあさイチは毎日録っている)。やはり「そうなんです」と言っている。なにしろ、そう仰った先生は「相続に詳しい」「弁護士」の先生である。二重の箔である。私の頭が変なのか?それとも制度が変わったのか?条文を見ると、やはり「相続の承認(と言ったら単純承認も限定承認も入る)は撤回できない」とある。限定承認の後の相続放棄は限定承認の撤回にあたるからできないことになる。さらに、念押しで、もう読むことはないだろうからと押入の奥に突っ込んでおいた民法の本を引っ張り出してチェック。結論は変わらず。ってことは弁護士先生が間違ったか?だが、間違いだったとしても、今日(昨日)は訂正しないだろうな、「相続に詳しい」「弁護士」の先生にその場では誰も異を唱えないよな、訂正するとしたら明日だ、と思って明日(今日)を待つことにした。

そして今日(昨日の明日)になった。訂正するとしたら、「おーい、ごはんだよ」が終わって鈴木アナにカメラが切り替わったときだ、と思ったらまさにそのとき、鈴木アナが「昨日の放送について訂正があります」と切り出した。訂正と言いながらいろんな考え方がある等々言い訳がましい場合が多々あるが、今回は「限定承認をした後に相続放棄はできません。確認が不十分でした」ときっぱり。それだけ重大な誤りであったわけだ。そりゃそうだ。○○スポーツの記事ではない。天下のNHKである。人は信じるだろう。しかも、その内容は国民にとって重大関心事である(だから特集したのだろう)。相当数の国民が誤った知識を植え付けられたのだから訂正は当然である。だが、昨日の放送を見た人全員が今日の訂正を見たわけではないだろう。だから、ホントはすぐさま訂正すべきであった。せめてこのブログを読んでいただければ私も社会に貢献できて幸せである(と思ったが、当ブログの信頼性は○○スポーツ以下だし、そもそも誰も読んでないだろうからダメである)。

NHKの誤りと言えば、12年前、FMがフィッシャー・ディースカウの追悼番組を放送したとき、ヨッフム指揮のマイスタージンガーのオケをプラハ国立歌劇場管弦楽団と紹介していて、え?フィッシャー・ディースカウが歌ったドン・ジョヴァンニならそうだけど、マイスタージンガーだったらベルリン・ドイツ・オペラじゃないの?と思ってNHKに問合せをしたら、「おっしゃる通り」というご丁寧なお返事がきた。だが放送で訂正したかどうかは知らない。まあ、今回の事と違って訂正しなくても社会的損失はほぼゼロであったろう。せいぜい、放送を聴いたマニアが他のマニアと飲んだ際、「プラハだ、NHKがそう言ってた」「違う、ベルリンだ」で喧嘩になって血を見るくらいのものである。

昨日の放送に戻るが、他にもひどい話があった。と言っても、そっちはNHKがやらかしたわけではない。どこかの区役所の職員が、相続放棄した人に、被相続人の未払いの住民税を払ってもらわなければ困る、と言ったというのだ。もちろん、相続放棄した人は、被相続人の一切の債務を履行する必要はない。住民税だって同じである。言われた人は、自分で調べて、払う必要がないと分かって、担当職員にその旨を言っても謝りもしないので区役所に文句のメールを送ったらそこで初めて謝罪メールが返ってきたという。「今後、職員教育を徹底する」ともあったそうである。当然である。まあ、その職員は単に無知だったのだろうが、かりに故意だったら(払わなくていいことを知っていながら騙して払わせようとしたのなら)詐欺罪(未遂)である。

だが、このご時世、文句を言うにも節度が必要である。区役所に行って大声でわめきたてたりしたら「カスハラ」のそしりを受けかねないし、場合によると公務執行妨害でお縄になる可能性だってある。


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