働き方改革関連法ノート

厚生労働省の労働政策審議会(労政審)労働条件分科会や労働基準関係法制研究会などの議論に関する雑記帳

テレワークでの健康管理・メンタルヘルス・ハラスメント防止

2020年12月26日 | テレワーク
「これからのテレワークでの働き方に関する検討会」報告書
厚生労働省は2020年12月25日、「これからのテレワークでの働き方に関する検討会」報告書を公表。

報告書では、これからのテレワークでの働き方について
・テレワークの対象者を選定する際の課題
・テレワークの実施に際しての労務管理上の課題(人事評価、費用負担、人材育成)
・テレワークの場合における労働時間管理の在り方
・テレワークの際の作業環境や健康状況の管理・把握、メンタルヘルス
の対応方針等についての有識者の意見をまとめたほか、テレワークを推進するにあたって必要な今後の対応についての有識者の提言が盛り込まれている。

また、厚生労働省は検討会報告書を踏まえ、今後、「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」(指針)の改定を行う予定。

テレワークの際の健康状況の管理・把握、メンタルヘルスについて
「これからのテレワークでの働き方に関する検討会 報告書 概要」には、テレワークの際の健康状況の管理・把握、メンタルヘルスについては次のように記載されている。

「・テレワーク中心の働き方をする場合、周囲に同僚や上司がおらず、対面の場合と比較してコミュニケーションが取りづらい場合があるため、業務上の不安や孤独を感じる等により、心身の健康に影響を与えるおそれがあり、その変化に気づきにくい。」(「これからのテレワークでの働き方に関する検討会」報告書概要より抜粋)

また、「これからのテレワークでの働き方に関する検討会」報告書(本文)には、テレワークの際の健康状況の管理・把握、メンタルヘルスについては次のように記載されている。

「・テレワークの実施には大きなメリットがある一方、在宅勤務の場合、日常生活を行う場で仕事を行うこととなるため、テレワークを行う労働者は心身にストレスを感じるのではないかとの指摘がある。

また、テレワーク中心の働き方をする場合、周囲に同僚や上司がおらず、対面の場合と比較してコミュニケーションが取りづらい場合があるため、業務上の不安や孤独を感じること等により、心身の健康に影響を与えるおそれがあり、また、その変化に気づきにくい。

メンタルヘルスの不調や、その重症化を防ぐために、オンライン上で双方向のコミュニケーションを取りやすくすることなどにより、職場の上司、同僚、産業医等に相談しやすい環境を作ることが重要である。

なお、川久保皆実弁護士は、著書(『これならわかるテレワークの導入実務と労務管理』)において「部署のメンバーで毎朝オンライン朝礼を行い、その場で1人ずつ自分の今日の体調や気になっていること等についてフランクに話してもらう」というテレワーク導入企業の事例を紹介している。

また、川久保弁護士は「テレワークであっても常時観察が可能なように、勤務時間中は常にウェブ会議ツールを接続して顔が見える状態にするというルールにしている」会社の事例も紹介している。

そして、川久保弁護士は「後者の方法については、自分のアップの顔が常に上司に見られているという状態に置かれることにより心理的ストレスを感じる労働者は少なくないでしょう」と指摘し、前者の「オンライン朝礼」のような方法で、「毎日短時間」でも「上司が部下の顔色、表情、仕草、声のトーンや服装などをモニター越しに確認できる機会を作ること」(川久保皆実著『すぐに使える規程例・書式例つき これならわかるテレワークの導入実務と労務管理』<日本実業出版社、2020年12月1日初版発行>より引用)を推奨。

テレワークの際の作業環境について
「これからのテレワークでの働き方に関する検討会 報告書 概要」には、テレワークの際の作業環境については次のように記載されている。

「・自宅での作業環境が確保されていることの確認について、チェックリストの活用など労働者自らが容易に確認可能な方法により、労使が協力して作業環境の確認、改善を図ることが重要である。

・安全衛生教育、健康診断や長時間労働者に対する面接指導等の健康管理、ストレスチェック等のメンタルヘルス対策については働く場所にかかわらず実施する必要があり、テレワークを行う労働者に対してこれらの措置を講ずるに当たり、事業者が留意すべき事項をチェックリストなどわかりやすい形で示す必要がある。

・自宅が狭隘であるなどテレワークを実施するために必要な作業環境整備が困難である場合や、生活と仕事の線引きが困難になることにより問題が生じる場合もあり、サテライトオフィス等の活用も有効である。」(「これからのテレワークでの働き方に関する検討会」報告書概要より抜粋)

また、「これからのテレワークでの働き方に関する検討会」報告書(本文)には、テレワークの際の作業環境については次のように記載されている。

「・テレワーク実態調査によると、企業はテレワーク時に作業環境については確認を行っていないという回答が多かった。特に、自宅での作業環境については、パソコンの配置や照明、温・湿度環境について事業主による管理が行き届かないことがある。

どのような状況であれば適切な作業環境が確保されているといえるのかについて、チェックリストの活用など労働者自らが容易に確認可能な方法により、労使が協力してテレワークを行う労働者の自宅の作業環境を確認し、改善を図ることが重要である。

また、雇入れ時などに行う安全衛生教育、健康診断や長時間労働者に対する面接指導等の健康管理、ストレスチェック等のメンタルヘルス対策については、働く場所にかかわらず実施する必要がある。このため、テレワークを行う労働者に対して、これらの措置を講ずるに当たり、事業主が留意すべき事項をチェックリストなどわかりやすい形で示す必要がある。

・この他、自宅が狭隘であるなどテレワークを実施するために必要な作業 環境の整備が困難である場合や、生活と仕事の線引きが困難になることにより問題が生じる場合もあり、そのような場合には、サテライトオフィス等を活用することが有効であると考えられる。 各企業においては、サテライトオフィス等を使用する場合の考え方について、企業としてルールを定めておくことが望ましい。」(「これからのテレワークでの働き方に関する検討会」報告書より抜粋)

テレワークの際のハラスメント(パワハラ・セクハラ等)について
「これからのテレワークでの働き方に関する検討会」報告書概要には、「テレワーク実施中にもパワーハラスメントやセクシュアルハラスメント等が起きることがあり、共通認識としてガイドラインに示すべきである」と記載されている

また「これからのテレワークでの働き方に関する検討会」報告書(本文)には、「テレワーク実施中にも、パワーハラスメントやセクシュアルハラスメント等が起きることがあり、そのことが共通認識としてまだ十分に浸透しているとはいえないので、テレワークガイドライン等においても示していく必要がある」と書かれている。

*テレワークの際のハラスメント(パワハラ・セクハラ等)についてはネットなどではテレワークハラスメント(テレハラ)とかリモートワークハラスメント(リモハラ)とも呼ばれている。

「これからのテレワークでの働き方に関する検討会」報告書(PDF)

「これからのテレワークでの働き方に関する検討会」報告書概要(PDF)

追記:厚生労働省「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」公表
厚生労働省は、現行のテレワークガイドライン(指針)「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」を「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」(指針)に改定し、本日(2021年3月25日)公表。

テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン(厚生労働省)


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