廊下のむし探検 第33弾
6月5日にマンションの廊下で見た虫の続きです。
これは脱皮直後のカゲロウです。「原色川虫図鑑成虫編」の図版と比べてみると、ヒメトビイロカゲロウ♀のようです。翅が白っぽいのですが、たぶん、脱皮直後だからで、これは成虫だと思われます。
こちらは♂の個体ですが、翅は濁っています。これは亜成虫でしょう。
これは両方ともアカマダラカゲロウの♀亜成虫だと思われます。
そして、これは♂亜成虫です。
問題はこれです。こんな翅を持つのはシロアリの有翅虫なのですが、いつも見ているヤマトシロアリと比べるとかなり大きく、また、頭部の色が違います。ネットで調べてみると、どうやらアメリカカンザイシロアリ Incisitermes minorという外来種のようです。この写真に写っている床の筋の幅が3mmなので、それから大きさを推測すると、前翅長は19.1mm、頭部の先端から翅の先端まで23.2mm、体長ははっきり分からないのですが、10.6mmくらい。かなり大きなシロアリです。カンザイというのは「乾材」の意味で、輸入の乾燥材について入ってきたと思われています。
[1] 森八郎、「アメリカの侵入者!アメリカカンザイシロアリ Incisitermes minor (Hagen )」, 家屋害虫 11/12, 26 (1982).(ここからダウンロードできます)
[2] 簗瀬佳之ほか、「AEモニタリングによるアメリカカンザイシロアリの食害検出」、環動昆 12, 53 (2001).(ここからpdfが直接ダウンロードできます)
アメリカカンザイシロアリについてはこの2つの論文以外にもたくさんの報文がありました。文献[1]によると、1975年に東京都江戸川区で見つかったのが初めてで、その後、1977年には神戸、和歌山で、さらに、1979年には葉山で見つかったそうです。ただ、この論文に載っている有翅虫は体長7~8mm、翅の先端まで入れて11mmなので、これよりは今回の方がよほど大きな個体です。文献[2]によると、アメリカカンザイシロアリは小さなコロニーに分散して生息し、イエシロアリが床下や水回りに生息するのとは異なり、被害が広範囲にあるので、食害個所の特定が難しいそうです。
(追記2019/06/08:最近の動向は次の論文に出ていました。
吉村剛、Y. Indrayani, 「日本におけるアメリカカンザイシロアリ被害の現状と対策」、家屋害虫 28, 37 (2006).(ここからダウンロードできます)
これによると、今や各地で被害が報告されているものの、散発的な被害ではなく、日本全土に広く薄く分布していると考えた方がよいそうです。私の住む大阪では1992年に記録がありました。アメリカカンザイシロアリは6月~9月に有翅虫が飛び立ち、ほかのシロアリに比して期間が長いことが特徴のようです。2月に観察されたこともあり、環境によっては1年中有翅虫が生産される可能性もあるそうです。通常のイエシロアリが主に床下の部材を食害するのに対し、アメリカカンザイシロアリは屋根部材を食害するという特徴があります。さらに、スブルース、ベイツガ、ヒノキなどを好むことがわかりました)
最後はニンギョウトビケラの仲間ですが、これは採集しないと種名は分からないので、今回はパスです。
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