「静かにしてください!」
そんなことを言うぶりっ子が大嫌いだったのに、
ここ上海では思わず言ってしまう。
今日は、ミッシャ・マイスキーのチェロ・コンサートを聴きに行った。
開演まで、あと10分なのに、入り口が入場者をさばききれてなくて、入れない。
相変わらずの要領の悪さ。
でも、みんなおとなしく並んでいるし、横入りをする人もいないので、
今日のお客さんは、比較的「文明的」らしい。
建物の中は、そこそこ雰囲気がある。
ソロのコンサートにふさわしい、こぢんまりとしたいいホールだ。
が、やはり聴衆は中国人。
上海語でべらべら話し始める。
「勢いがあるね」「あ、ページをめくった」
そんなこと、いちいち演奏中に言う必要があるのか?
も~、だから上海語が嫌いになるんだよ!!!
ちなみに、おもにマナーが悪いと思われる人は、上海人の成金たちだ。
なぜかみな、きたならしい上海語を話している。
そう。最近は、会社の雰囲気が悪いおかげで、
上海語のヒアリング能力が上がってしまい、大意がつかめるようになってしまった・・・。
嬉しくない。上海人が嫌いになるだけだ。
ホール側の監視がゆるいことにつけこんで、ばしばし写真も撮っている。
しかもシャッターチャンスは、静かで動きが小さい時。
一番耳をすましているときに、ピピッ(ピントを合わせる音)、カシャン(シャッター音)が、
暗くて上手く撮れないからか、連続して聞こえてくる。
曲が静かなところにさしかかると、話し始める。
とりあえず左側のオヤジの腕を叩いて「シーッ」と合図し、
曲の合間に後ろの上海人の老夫婦に「静かにして」と注意した。
ちなみに、前は寝ており、右側は日本人の友人だった。
ほんとに、すごくいい演奏なのに、気が散るんだよ。
大好きなブラームスのチェロ・ソナタを演奏してくれたので、
昔飼っていた犬が、この曲を大好きで、つつこうが、餌を用意しようが、
この曲が流れているときは、一番音響がいいところにうずくまって、
動こうとしなかったことを思い出した。
そんな美しい思い出が、「見えるかい?」という上海語とともに、かき消される。
隣のオヤジが、オペラグラスを持ってきていて、
それを、箱からがさごそ取り出して、奥さんに渡して、つまみの調整の仕方なんかを教えてやがる。
そこへ正座しろ! まったく。
本当に、他人に対する尊敬の心がない人たちだ。
中国人は、「恥」がないというよりも、「尊敬心」に欠ける人たちなんだと思う。
他人を尊敬して尊重しないから、自分もまた尊敬して尊重してもらえない。
その負の連鎖に陥っているんだと思う。
上海という街は豊かになったのに、どこか貧しい。
そこをバカにされてるって知ってるから、クラシックコンサートにも来る。
でも、それを自慢したいから写真も撮るし、友だちとも話す。
そしてまた、良識ある人からバカにされる。
あと、何十年かかるんだろうか。
昼間、見かけた猫。
つい先日まで一緒に働いていた中国人の同僚が、
私と出掛けると、必ず猫に遭うと言っていたのを思い出した。
また、いつか、彼女と一緒に仕事がしたいな。
ほんとに、会社の幹部連中が、上海人の中でもバカばっかり集めたような連中でなければ、
もっと違ったのになあ。
雨が降った後、上海も少し青空が見える。