ゆっくり読書

読んだ本の感想を中心に、日々、思ったことをつれづれに記します。

スリッパ

2012-10-30 23:11:27 | Weblog
今日は満月らしいのだが、上海は曇っていて月が見えない。
昼に食べた弁当のせいか、少し食あたり気味で、ぐったりしている。
満月でも浴びながらパワーを補給したかったのだが、まあしょうがない。

少し前までは、この時間の室温が25度くらいあったのに、今は21度。
パーカーを出した。そろそろ冬だ。

帰り道、ぽわぽわのついたスリッパを買おうと、
輸出品を横流ししているお店に入った。

お店のおやじに、「茶色のMサイズはある?」と聞いたら、
「いや~、この色はXLしかないよ。誰が履くの?」
「私だよ」
「ま~大きいと言っても、そんなに大きくないから大丈夫だよ」と、
袋から取り出して履かせてくれたのだが、
私は間抜けの小足なので、確実に脱げるビッグサイズ。
「いや~、やっぱり大きいよ」と言ったら、
「そうだろ~。お嬢さんは、こういう色を履くべきだ」と、
ショッキングピンクのスリッパを指差された。

確かにその色にはたくさんMがある。
でも、ショッキングピンクは履きたくない。

違う店に寄っても、ピンクや、かわいい(?)キャラクターの
アップリケがついているようなスリッパにはMがあるのに、
青や茶色の落ち着いたデザインのものは、大きいサイズしかない。

そうか。ここでは、性差がはっきりしてるんだ。

ということで、スリッパを探し始めて3ヶ月が経つのに、
いまだに気に入るものが見つからない。
先日は、無印良品に見に行ったけど、確かによかったんだけど、
約2000円もしたので、買わなかった。

200円くらいのもので、ないかなあ。

空想

2012-10-29 23:19:23 | Weblog
週末「外こもり」をテーマにした本を読んで、落ち込んだ。
日本に居場所がなくて、外国でダラダラうだうだ暮らしている日本人を紹介している。

ううう。まさに私のことだ。

「いやいや、ちゃんと働いているから偉いよ」と言ってくれる人もいるけれど、
日本から脱落してしまったことは確かなわけで、
それに、いまから思い返すと、
私は一度も日本の水準には乗ったことがないような気もしてきたりして、
ああ、私ってダメな人間なんだなあ、と思うわけだ。

いろんな生き方があっていい、というのは、自他ともに建前に過ぎないから。
私だって、他人の生き方をそんなに許容できるわけじゃなくて、
そもそも受け止められないから、逆に居場所がなくなったわけで、
ということは、不寛容だったのは社会じゃなくて自分ということになり、
やっぱり救いようがなく、自分に嫌気がさす。

でもまあ、そう簡単に性格はなおらないから、
現実逃避に違うテーマの本を読んでみよう、ということで、
久しぶりのフィクション。
『果しなき流れの果に』(小松左京著、角川春樹事務所刊)

この作品の後ろには、途方もなく理不尽な現実が横たわっているんだろうと思う。
文章とは、自分が経験し、考え、悩み、そして、その中から見つけたことしか、
結局は描けないのだと思わされる。
作家は、目の前の現実から、新たな現実を編む。
これは、私の世代の日本人では、もう描けないであろう作品。

大きな銀河の、途方もない時間の流れを、きっとずっと考えて来たんだろう。
自分の身体のすぐとなりにある現実とともに。
目で見たもののと、空想の境目がわからなくなるくらいに。

たとえ、ノンフィクションであっても、
作家個人の認識の世界からは逃れられない。
まったくの客観世界はない。
だから、すべての文章は、話半分でいいのだった。

ああ、いま揺れた。
地震がないはずの上海が、少し揺れた・・・ような気がした。

せっかくだから、もっと空想を楽しもう。

南翔散歩

2012-10-28 19:10:06 | Weblog
土曜日、上海の地下鉄11号線に乗って、南翔まで小籠包を食べに行って来た。
南翔がある嘉定区は、いまでこそ上海北西の郊外で、工業団地といったイメージだけど、
イギリスやフランスが上海に租界をつくる前は、あのあたりが上海の中心だった。

ということで、上海で有名な小籠包を食べるなら、本場南翔へ、となったわけだ。

一緒に行った友人おすすめの小籠包屋には、看板ネコがいる。
中国の一般的な飲食店では、お店の中をペットの犬猫が、堂々と歩いている。



確かに美味しい。写真は蟹粉入りのとワンタン。



腹ごなしに散歩していたら、南北朝時代に開かれたというお寺の跡地に着いた。
井戸を覗き込む中国の子ども。



もちろん誰も「お行儀が悪い」なんて注意はしない。

とりあえず、観光地として生まれ変わった南翔は、
それっぽい建物を、川沿いにたくさん建てている途中だ。



友人も私も大好きな臭豆腐。
注文してから揚げてくれたので、非常に香ばしかった。



ふと気がつくと、変態の男性がいた。
女性の写真を撮りまくっているおじさんで、
若い娘だけでなく、びっくりするような老女の写真も撮っていた。
あれは、どんなコレクションなんだろう。

さて、もう少し散歩すると、「尖閣諸島は中国の領土だ」カバンを見つけた。



笑えるけれど、やっぱり腹が立つ。

いまは落ち葉の季節。川面に流れる落ち葉を掃除している人たちがいた。
町中でも掃除の人たちは大忙しだ。



次に、古奇園(奇はけもののへん)という庭園に行った。
人が少なくて、先日の蘇州よりずっとよかった。



おじいさんの伴奏で歌うおばあさん。
こんな老後が私にも来たらいいなあ。

よく見たら造花っぽい蓮。



コクチョウもいた。



上海市の中心にもたくさん南翔小籠包のお店はあるけど、
やはり南翔で食べたのは、格別に美味しかったような気がする。

南翔の街を歩いていると、いろんなところに井戸があった。
いまは蓋がされて使われていないけれど、
この土地がかつて相当数の人口を抱えていたころの名残なんだろうと思った。
そしていずれ、新しい上海市が拡大して南翔を飲み込み、古井戸は本当に消えてしまうだろう。

中国を不思議だと思うのは、さんざん中国人をアヘン漬けにして、
首都北京を略奪した英仏連合軍のことは、まったく恨むことなく、
抗日戦争だけをクローズアップする点だ。

上海は、アジアなのに洋風建築がモダンなあか抜けた都市として、
きっとますます上海人を驕り高ぶらせながら、発展していくんだろうなあ。

祖国

2012-10-27 00:53:32 | Weblog
なにげに仕事が忙しい時のほうが、読書量も増える。
忙しいと脳が活性化され、情報処理能力も高まるのかな。
逆に仕事が忙しくない時は、いい旅行ができるような気がする。

ということで、くたくたになりながらも、
夜、寝る前に少しずつ読み進めた本。
『ぼくらの祖国』(青山繁晴著、扶桑社刊)

TVタックルで青山さんを知り、
原発事故の後、ネットにアップされている関西地方限定の番組を見て、
ああ、すごい人だなあと思っていたので読んでみる気になったのだが、
なんとまあ、突き抜けた人なのか。

こんな人がいて、堂々と発言できるところが日本のよいとこころであり、
それでも、既得権益がガッチリしすぎていて変われないところが、
また日本的でもある。

上海にいると、よく日本人が、
「自分はもう日本人じゃない。アジア人だ!」と言うのを聞く。
日本人がそう言うと、中国人がけっこう喜ぶ。
でも、私はそんな人のとなりで地道に「日本人でありたいと思います」と言っている。
飲んでて少し機嫌がよいか、相手とケンカしてもいいと思ってる時は、
「日本を愛する地球人です」と言う。

「アジア人だ」って言う人は、それで国際的になったつもりなのかなあ、と、
心の中で疑問を感じる。
国際的な割には範囲が狭いし、得意げに言われると、なんだかむずかゆい。
先日はもう少しで「あなたの中では大東亜共栄圏がいきてるんですか?」と
言いそうになった。
上海ではいろいろな意味で身の危険を感じるジョークだから、がまんしたけど。

とりあえず「アジア人です」という日本人の発言を聞いて無邪気に喜ぶ中国人は、
あまり物事を考えないタイプの人が多い。
たいていの中国人は、基本的に感情と直感で動いていると思う。
また、比較的親日派でも、靖国の参拝は気分が悪い、と言う。
つまり、日本人のアジア人発言を喜ぶ人が多い。

そんな人たちに、私が「日本人でありたい」と言っても、ほぼ確実に伝わらない。
「国籍が日本じゃん!」と突っ込む人はまだマシなほうで、
「こいつの中国語へたくそで、なに言ってんのかわかんねー」が、多くの反応だ。

日本人って、国旗に敬礼するわけでも、国歌を熱唱して団結するわけでもなく、
血液型で言うとA型が多そうな感じ、というくらいの漠然としたイメージしかなくて、
私はAB型だから、マイノリティなんです、日本で肩身狭いんです、みたいな印象。

もっとちゃんと、祖国を考えたい。
そうじゃないと、なんでいま日本に生まれて来たのか、わからない。

上海で読んでよかった本だ。
日本で読んだらまた違った影響を受けただろうけど、
私が出会うタイミングとしては、上海がバッチリだった。

まっすぐ帰宅

2012-10-26 21:26:39 | Weblog
金曜日の夜にまっすぐ家に帰ってくるなんて、久しぶりで、すごくいい。
今日で考える仕事が一段落し、来週は作業の一週間。
ほぼ目標どおりに進行したので、少し疲れたけれど、まずまずな気分だ。

今日の帰り際、私の仕事の後行程をやる中国人スタッフから、
「あなたは、なかなかやるね。仕事がスムーズで、わかりやすくて、いいよ」と誉められた。

その人は私の部下なので、一応私が査定する。
日本では、ペーペーが上司に対して、上のように話しかけることはないだろう。

でも中国は違う。
役職の違いはあれども、一対一の人間として、
私はあなたと仕事をしてやりやすい、または、やりにくい、とはっきり言うし、
上から目線で無理なことを言うと、
「少しはこっちの都合も考えろ」と、上司に向かって平気で文句を言う。

反抗してくる理由は「めんどくさいから」「お腹がすいたから」という
「おいおい!」と言いたくなるものであることがほとんどなんだけど、
「いやいやそうじゃなくて、あなたのこれからの作業を考えても、これがいいと思うんだよね。
 ほら、合理的でしょ。そのうえで、やるかやらないかは、決めていいよ」と、
ちゃんと理由を説明できれば、相手は少し考えて、
「今日残る」とか「明日早出する」と、しぶしぶながらもちゃんと言うことをきく。
でも、「なんだ、上司に向かって生意気な」などという態度で出ると、
もう絶対こっちの言うことをきかない。

私を誉めてくれた中国人は、もう5年以上、日本人の下にいる。
私とコンビを組んだのは、2ヶ月ほど前からだけど、
だんだんと、私に対する仕事の仕方が丁寧で親切になって来た。

誉めてもらったら、「まあまあな感じでしょ」と言うようにしてるんだけど、
今日は、それに続けて「いや~、よく考えてるよ」と誉めてもらった。
彼は今日、自発的に残業をすると言って来た。
これから残業というときに相手を誉める余裕があるなんて、
あいつもかなりわかってきてくれたな、と嬉しい。

ぐるぐる

2012-10-25 23:40:57 | Weblog
久しぶりに、まったく面白くない飲み会だった。
社長同士の飲みに付き合うなんて、
まあ、字面だけ見ても面白くなさそうな極地なわけだし、
まったく期待はしていなかったのだけど、過労気味な夜にはこたえた。

学歴と、同級生がどんだけ偉くなったかと、
あと私にはまったくわからない関西の進学校の話をされても、
「ああ、社長さん、いろいろと不安なことがあって、
 絶対安全な話題にして気を紛らわせてるんですね」と、
うすら寒い気持ちを顔に出さないよう努力するので精一杯。

こう自覚している時は、絶対顔に「つまんない」と出ている。
とりあえず、頻繁にトイレに立った。

男性同士の共通の話題なんだろうとは思う。
それに、起業した人は基本的に「おれを見ろ」だとは思うんだけど、
この「顔」が前面に出てくるあたり・・・、まったく大顔絵。
心の中で、いろんな浮世絵に当てはめてみたりした。

彼らのことは、別に嫌いじゃないし、基本的には好きなんだけど、
ああ、一緒にいられないタイプだなあ、と思う。

そして、気が乗らないと酒量も増えない。
昨晩飲み過ぎたから飲めなかっただけ、とも言えなくはないし、
ビールだけだったから飽きた、とも言えるが。

一次会で解放され、
約30分かけて歩いて帰ったら、気分は持ち直し、お酒も抜けた。

でも、なんなんだろうなあ。このイヤな気持ち。
ということで、Bill Evansを聞き始めた。
この何拍子かわからない「ぐるぐる」のなかで、少し遊んでみよう。

スペインのワイン

2012-10-25 01:27:49 | Weblog
やってしまった。

煮詰まってる人とお酒を飲むと、
煮詰まっている本人はやせていくのに、
一緒にいるこっちは太って行くという・・・、ジレンマ。

でも、日本の某所でなじみ深いスペインのお酒を見てしまっては、
飲まずにいられない。



明日から、また仕事とダイエットがんばる。

お疲れさま

2012-10-24 00:35:35 | Weblog
ダイエットに一番効果があるのは、やはり仕事が忙しいことだろうと思うのだけど、
この場合、痩せてもしっかりリバウンドしてくるので、
長期的に見るとあまり有効な方法ではないと思う。

上海では、お母さんもしくは奥さんが強く、
「早く帰ってこい」という圧力が想像以上なので、男性はあまり残業をしたがらない。
本来なら10歳以上も若い上海人の男性にお願いしたい体力勝負の仕事も、
すすすーっと逃げて帰っていく。あの逃げ際は見事だ。
そのおかげで、私は少し痩せた。

さて、ビルのお掃除をしてくれているおばさんと仲良くなった。
安徽省出身の人で、私のことを「小姑娘(お嬢さん)」と呼ぶ。
でも、実年齢はあまり変わらないんだろうと思う。

今日は、おばさんが帰宅準備をしているときに会った。
「お疲れさま~。すずしくなって、過ごしやすくなったね」と声をかけると、
「暑いの苦手なの?」と聞かれた。
「ううん。おばさんみたいな仕事をしていると、夏の暑さはつらいでしょう。
 少しは楽になった?」と聞いたら、
「あなたは、私みたいな仕事してる人間のことも、気づかってくれるのね」と、
すごく嬉しそうな顔をされた。

確かに、中国人の同僚は、お掃除のおばさんを思い切りバカにしてる。
でも、日本人のスタッフで、ちゃんといい意味で日本の会社で揉まれた人は、
おばさんにも、必ず「お疲れさま」と声をかけている。

社内で会った人は、誰であってもまず「お疲れさま」と声をかける。
これは、私が新入社員のころに教わったことだ。
職位が上がるにつれて、みんなやらなくなるけど。

私が「お疲れさま」だけじゃなくて、おばさんともう少し話したくなるのは、
お掃除のおばさんの笑顔が、本当に素直で、愛らしくて、
見ていると幸せな気分になるからだ。
別に相手を気づかっているのではなくて、私がおばさんの笑顔を見たいから。
仕事で煮詰まったときに、ちょっと一緒に笑いたいから。

名前も知らないから、いまは「アーイー(おばさん)」と呼んでいる。
いつか名前を聞いてみようと思うのだけど、なかなか聞けない。
というのも、いきなり名前を聞いたら、たぶん警戒するだろうし、
(苦情を言いつけられるんじゃないかと思うだろう)
もうちょっと人間関係を築いてからのほうがいいんだろうなあ。
おばさんが不安に思って仕事を変えちゃったら、さびしいし。

月から見える?

2012-10-22 23:48:20 | Weblog
iPhone4で写真を撮ったら、妙にトロピカルになった炒刀削面。
蘭州ラーメン、1皿=10元。



さて、入れなきゃ出て来ない、ということで、
文字が出て来ないことに、どうやら相当煮詰まっていたらしく、
昨晩はもう1冊読んでしまった。
『万里の長城は月から見えるのか?』(武田雅哉著、講談社)

確か小学生の頃、「万里の長城は月から見えるんだよ」と母から聞いた。
数年前、誰かから「実は見えないらしいよ」と聞いた。
まあ、私としてはどちらでもいいんだけど、
神舟5号で宇宙を飛んだ中国の宇宙飛行士が、
「残念ながら、自分には長城が見えなかった」と証言したことから、
中国の教科書問題にまで発展していたとは、知らなかった。

で、結局のところ、まだ宇宙から肉眼で万里の長城を見た人はいないようだ。
なんとか宇宙から「見えた!万里は長かった!」とでも言わせたい中国が、
万里の長城に延々と灯りをつけて、
夜側に回ったときに、その光だけでも宇宙から見させてやろうという
「壮大なる夢」が語られるあたり、中国だなあ、と思う。

中国の月に天文台を建てよう計画も、実は宇宙の向こう側が知りたいのではなく、
月から万里の長城を見るためだったりして、などと思う。
まあ、私としては見えても見えなくても、どちらでもいいんだけど。

今みたいに空で国境を越える時代ではなくて、
地面が繋がっているユーラシア大陸を横断していた頃、
ヨーロッパの人たちが万里の長城を見て、びっくりたまげた気持ちもわかるし、
都市伝説が生まれたのもわかる。
私も実際に万里の長城に行ったとき、感動したし。
特に司馬台の長城は、少し寂れた感じでよかった。

と、おかげさまで寝不足気味なところを、明け方から雷雨で起こされた。
その直前に見ていた夢には、むかし飼っていた犬が出て来た。
しかもラブラドールレトリバー2匹に転生していたので、いっぺんに抱くと重いという、
喜び倍増のような夢だった。

「りょう!」と呼ぶと、2匹で「わん」と応える。
重いからおろすと、勝手に違うほうに走って行くので回収がたいへん。
しょうがないので、こっそり会社に連れて行くことにしたら、
エレベーターで社長とバッタリ。
怒られるかと思ったら「かわいいやん」とのこと。
そして中国人の同僚たちが喜んで面倒を見てくれたところで、雷が鳴った。

おそらく、5.3割ぐらい吉夢だと思う。

太った兄貴

2012-10-22 01:27:44 | Weblog
引きこもるとストレスも感じず体力をつかわないので、結果、夜、眠くならない。
そして夜更けまで読書をし、翌朝眠く、仕事に身が入らず、悪循環になる。
わかっているけれど、どうしても生活習慣を改めることができない。

ということで、2冊目。
『父・金正日と私 金正男独占告白』(五味洋治著、文藝春秋刊)
上海にいる日本人の友人が「次に読みたい」と言っているから、早めに読んだ。
(夜更かしの言い訳)

新聞記者である著者と金正男氏のインタビューとメール書簡で構成されているので、
つまり、相手に誤解を与えないような文章で綴られた手紙文がそのまま翻訳されているので、
非常に読みやすかった。

以前、日本にいた頃に、テレビインタビューに応えている金正男氏の映像を見た。
マカオ在住で、なんだかすごく頭がいい人だと思った記憶がある。
この本を読んでみると、やっぱり賢そうだった。

・三代世襲に、金正日自身が否定的だったこと。
・東京ディズニーランドに行くために日本に偽造パスポートで入国しようとして捕まったから、
 後継者争いから落とされたわけではないこと。などなど、
冷静に考えたら、そりゃそうだよね。と言いたくなるようなことが書かれていた。

もちろん、ある程度は差し引いて読むべきものではある。当然のことながら。

最近、中国人の友人と親しくなるにつれて、教育って何だろうなあ、と思う。
上海に住んでいる人なんて、チベットで焼身自殺が起きていることをまったく知らないし、
本気でチベットを「解放した」と信じてる人も多い。
「共産党の言っていることを信じない」と言っていても、「チベットは解放した」と信じる。

日本に留学したことがある人でもそうだ。
北京オリンピックの聖火リレーのとき日本にいたという人も、
いろいろとすったもんだがあったことを記憶していない。

これは、距離の問題なのか、何なのか、
ただ単に外国に住んだ経験があるからと言って、
急に世界が広がり、視野が開けるわけではないのだと思う。

もし、いずれ北朝鮮がいよいよダメになったとき、
中国に金正男氏を担ぎ上げる構想があったとしても、
それは共産党の理念からして、本来はあり得ない姿な訳で、
中国も太子党の2世たちに対する批判があるなかでは、
そんな危ないことはしないだろうと思うけど、
歴史って、予想したようにはいかないんだよなあ、ということで、
そろそろ寝ようかと思っている。