ゆっくり読書

読んだ本の感想を中心に、日々、思ったことをつれづれに記します。

熱があっても病院に行けない

2009-04-30 21:23:27 | Weblog
火曜日の夜、寒気がした。水曜日の朝から咳が出て、夕方は少し熱っぽかった。

流行の先取りで、新型インフルエンザか? と思ったけど、
最近外国には行っていないし、外国帰りの人とも接していないから、
単なる風邪だろうと思う。
しかも、今日は、バッチリ元気だった。

インフルエンザのようだったら、まず保健所に電話をしてください、と
テレビの報道では言っている。

どこで、普通の風邪とインフルエンザの違いがわかるんだ?
そして、もっと重大な問題。
私の地元の保健所って、どこだ? 電話番号は・・・、ネットで調べなければわからない。
ついでに一人暮らしだから、いよいよ高熱が出て、頭がグラグラしていたら、
そんなまどろっこしいことをする余裕はないだろう。
確実に、近所の町医者に行ってしまうと思う。

まだ比較的若い部類に入る私でさえ、そんなだから、
まずお年寄りは、救急車を呼ぶか、かかりつけの町医者に行ってしまうだろう。
これでは、骨折などで病院に行くことも恐怖になってしまう。

保健所なんて、イヌの狂犬病予防接種でお世話になるところ、くらいの認識しかなかったけど、
もっといろいろな活動をしているところだったんだなあ。

このまま五月晴れが続けば、気温があがるから、ひとまずの流行は防げると思っていいのだろうか。

いま同僚の一人は足の骨折療養中、もう一人は持病ヘルニアがヤバい状態。
彼女たちが安心して病院に行けますように。


話はかわって、Googleが本の全文をネットで公開するプロジェクト。
難しい話だねえ。
出版という概念が、変わる時代に来ているんだなあ。

著作権者の意向は汲むべきだと思う。
ちゃんとロイヤリティが払われる仕組みがあるべきだと思う。

でも、出版社の編集者の中には、自分こそ賢い、文化をリードしているのは自分だ、
という自負心が強すぎる人もいるし、そういった人たちの意識が、
少し転換する機会になるようであれば、それは歓迎したいと思う。
乱暴な意見だけど。

神曲〈1〉地獄篇

2009-04-29 17:08:58 | Weblog
ダンテ・アリギエーリ著、寿岳文章訳、集英社文庫ヘリテージシリーズ

少し前に読んだ『ヴァンパイヤー戦争』の登場人物ムラキが、作中で読んでいた『神曲』。
やはり読んでおくべきだろう、と思って、読み始めた。

イタリアはフィレンツェの詩人。
読み始めるまで知らなかった。なんとなくドイツの人かと思ってた。

イタリア人って、ワインを飲んでて、もっと陽気で、おおらかな人たちなのかと思ってた。
まあ、どこの国にも例外はいるか。

まだ、地獄編、煉獄編、天国編とある最初の地獄編を読んだだけだけど、
そんなに世の中をうらんでどうするの?! と言いたくなった。少し。
「かくあるべき」が強すぎて、その裏返しと言うか・・・。
きっと当時のフィレンツェは、いろいろと生きにくいところだったのだろうけど。

詩人だから、いろいろと人生や世の中のことを悩まないと、
いい詩はうまれないんだろうとも思うのだけど・・・、
あ~、ねちっこい。

訳文は文語っぽい表現もあるから、読みにくいと感じる人もいるだろうけど、
私は韻文の雰囲気が出ていて、とてもよかったと思う。
本としては、もちろん、とてもいい本。

ただ、ダンテは・・・、もし同級生にいたら、他愛もないイタズラをしかけて、
思わず、からかいたくなったような人だろう、と思う。悪いけど。

もっと東洋的というかインド的というか、
すべてに「ま、ごちゃまぜで、こんなんで、お日さまが出てるしいいんじゃん」みたいな、
人生を楽しむ雰囲気、ユーモアが欲しい。

モテなかった優等生はねえ・・・。という印象だろうか。
ダンテさんのことは知らないけど、まあ、物語としては面白いし先が気になるから、続きを読もう。

レベッカ

2009-04-27 21:40:18 | Weblog
私が「レベッカ」と聞いて一番最初に思い浮かべるのは、
ヒッチコック監督の映画「レベッカ」。

一番最初に観たのは、確か小学校5年生のとき、下高井戸シネマで。
観ている途中に、何ともこわくなって、母に「いつレベッカは出てくるの?」と聞いた記憶がある。

しかも、見終わった後に、主役の女優さんが、
「風と共に去りぬ」でメラニー役を演じた実のお姉さんと、
本当に仲が悪くて、いじわるをしあっていたと聞いて、二度怖くなった。

2人とも、あんなにやさしい顔をしているのに・・・。
女は怖い、と思わされた瞬間だった。

次に「レベッカ」で思い出すのは、バンド。

リアルタイムの頃は、母の無言の圧力もあって、
なかなかレベッカの歌を聴いたり、出演しているテレビ番組を観ることができなかった。
お金がなかったから自分でCDも買えなかったし、友だちから借りて、
母の目を盗んで、こっそりテープにダビングしたっけ。

YouTubeはすごい。いろいろ見られる。
そして見ていたら時間を忘れる。眠れなくなる。

久しぶりに聞いたら、中学時代のことをたくさん思い出した。
青春が語れる歳になったか。私も。

初恋

2009-04-26 00:01:02 | Weblog
セーレン・キルケゴール著、飯島宗享訳。

「影法師」「最大不幸者」「初恋」「転換経営法」の4作がおさめられている。
中でも、私が一番おもしろかったのは「最大不幸者」。

「最大不幸者」の墓がある。
「こんなだったらよかったのに、どうして違ったんだろう」と過去を引きずりながら生きている人は、
かくあり得た現在と未来も、同時に失っている。
死ぬこともできなくて、そんなふうに生きる。

書いてくれてありがとう、というような文章だった。

「転換経営法」に出てきた「天才は借金を返済しない」というフレーズには笑った。
確かに、その通りに世を去っていった人がいた。すごく身近に。

「恋」についての文章を読むときは、なぜか自分のことに置き換えられなくて、
周囲のいろんな人のことを思い出しながら読んだ。
そんなもんかな。

キルケゴールの文章は、論理的で緻密なんだけど、
なんとなく言葉のはしばしに、ちょっとしたユーモアが埋もれている。
こういった、さりげない距離感がいいと思う。
こんな距離感を、他人とも自分とも、自分の文章とも持てる人って、
とても魅力的だなあ、と改めて感じた。

バーベキュー

2009-04-25 15:02:04 | Weblog
お菓子のバーベキュー味は好きなんだけど、
そういえば実際にバーベキューをしたことがないと気がついた。

会社の付き合いバーベキューなら、2回ほど参加したことがあるけど、
裏方をしていたので、ほとんど楽しめなかった。というか、苦痛だった。

今日、友人とバーベキューの話題になって、友人が、
「実は、フランクフルトがおいしい」
「青空の下で飲むお酒は格別だ」
「日本人は、夏になるとバーベキューを始めるけど、天気さえよければオールシーズンでいいんじゃないか」
などと言っていたのだけど、なにせ経験がないもんだから、
共感どころか、まったく相づちすら打てなかった。

そういえば、昼間からお酒を飲むことはあるけど、屋外で飲んだことはないかも。

実際、バーベキューのデビュー戦は、ほとんどが家族とだろうけど、
私の場合、それはあり得なかったし、
次は学生時代の友人とだろうけど、それも確実に逃した。

一回でいいから、プライベートでのバーベキューというのをやってみたいけど、
ある程度の人数がいないと面白くないだろうし、
結局は行かないような気がする。私の性格上。

じゃあ、せめて外でお酒を飲んでやろう。
これなら一人でもできるぞ。あまり楽しくないかもしれないけど。
というか、公園で昼間から一人でプシュッとビールの缶を開けていたら、
変なお仲間が増えそうだ。ちょっと怖いけど、面白いかも。
ワインのほうが、絵的によいかな。
ああ、きっと外国から帰って来たばかりなのね、みたいな感じで。

ひとつ、どうしても疑問に思うことがあるんだけど、
バーベキューと焼き肉は、違うものなのか・・・。

そして何となく「鍋奉行」がいるように「バーベキュー奉行」もいるようだ。
あの人は火のおこし方が上手だとか、なんとか。
男の出番!ということなのか・・・。

私には、はなはだ未知の世界のバーベキュー。
どんな味がするのだろうか。

今朝の通勤電車

2009-04-23 21:46:13 | Weblog
タイトルで「けさの」と打ったら、「袈裟の」と変換された。
私がいつも使っている文字って・・・。

まあ、それはいい。

今朝、満員の通勤電車で、ある夫婦の会話が聞こえて来た。
後ろにいたから顔が見えず、年齢はよくわからなかったけど、おそらく50代。

まず聞こえて来たのは、女性の声。
女性「それなら、夏のボーナスの後でしょ」
男性「ボーナスというよりも、次の人事異動だよ。そのとき、早期退職を申し出る」

どうやら、昨晩か朝食のときに始まったプライベートな会話が、電車の中でも続いているらしい。

男性は、いかに有利に会社を辞めるかを考えている。
もしかしたら退職金の金額が関係しているのかもしれない。
女性は、そんな姑息なことを考えずに、すっぱり辞めたら?と言っている。
2人はどうやら同じ大きな会社に勤めているようだ。

男性は、仕事がイヤでイヤでたまらないらしい。
最後に、「ずっとイヤな仕事を我慢してきたんだからさあ・・・」みたいなことを言っていた。
女性は、それについては何も言葉を返さなかった。

私も、もっと歳をとって我が身を振り返ったとき、そんな気持ちになるのだろうか。

イヤな仕事から去ることだけが目的であったら、実際に退職して去ったとき、
目の前には、いったいどんな風景が広がるのだろう。
少し休んだら、何かやりたいことが見てくるのだろうか。
それとも目標すら見つからず、そして惰性で行うこともなく、ただ老けるのだろうか。

仕事がイヤならば、さっさと辞めてもらって、
働きたくても就職ができなくて困っている若者に、その席がまわるといいとも思う。

それにしても、通勤電車って、たくさん人がいるわりに、
自分以外の人は「人間」ではないような気がして、まったく顔のない「群衆」になるのだなあ。
それは、「世間」でも「人さま」でもなく、ただの「群衆」。

あの場で、あそこまで話すなんて。
もう少しで預金残高と年金の額まで言い出しそうだったよ。
おもしろいなあ。

自省録

2009-04-22 22:01:49 | Weblog
マルクス・アウレーリウス著、神谷美恵子訳、岩波文庫。

ローマの皇帝の手記だが、タイトルや著者を知らず、ただこの文章だけを読んだとき、
古代インドの哲学者、ウパニシャッドの一節、初期仏教の賢人の言葉だと言われたら、
そう信じるかもしれない。

執着心について、時について、死について、隣人について、自意識について、理性について・・・、
そして「神」という存在など広範にわたる思索には、
ギリシアの叡智が、ぎっしりと詰まっている。

なるほど。
シモーヌ・ヴェーユが愛読した書なわけだ。

この手記は、他人に読ませるための文章というよりは、自分のために書かれたものだ。
静かな朝、辺境の地で迎えた心細い夜、
宴会をふと抜け出してむなしくなった宮殿のテラス、
木漏れ日の散歩道、滾々と湧き出る泉のほとりで、ふと自分の心を見つめたときに、
心の底からやってきた言葉の数々。
それを書き留めておいたという感じなので、同じようなことを何度も述べていたり、
一部つながりづらい文があったりと、心があふれている。

自らに厳しく、そして執着しないこと。
これは、本当になすのが難しい。
一時、それをなし得たように思うことがあっても、そう思っているうちは本物ではなく、
じきに執着心が心の中心に戻って来ていて、自分で自分を苦しめることになる。
その移り変わりじたいが、人の心。

少し勇気をもらったというか、道は遠く険しいんだなあ、と改めて思う。

ラフマニノフ 交響曲第2番

2009-04-21 15:02:12 | Weblog
CD。ラフマニノフ 全交響曲集より
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、指揮: マゼール、作曲: ラフマニノフ

仕事をしながらiPodで聞いている。
このところ苦手な内容の仕事が続き、どうしても気がめいるので、
助けてもらっている。

ピアノ協奏曲第5番のもとになったオリジナルの交響曲は、やはりとても美しい。
第1番は、気負いというか、若いというか、
とんがっているのもいいけどさ、と言いたくなるところもあるのだけど、
第2番は、音の華やかさもやさしさも、そして内面に落ち込んでいく弱さも、
全部が盛り込まれているようで、とてもいい。
足元を見つめつつ、自分を開放していくような安心感がある。

聞いているうちに、
苦手な仕事であっても、ひとつひとつ自分のペースで仕上げていけばいいか、という気になる。
カッコつけてもしょうがないし、そんなに賢くないことは自分が一番知っているのだから、
見栄をはっても、自分も周りもつらくなるだけだ。

そして、仕事は、好きな仕事が得意とは限らないし、
苦手なことであっても、必要とされる仕事はたくさんあるし、
誰も代わってくれないことは、よくあることだ。

でも、みなから毎日求められる仕事の内容のうちある重要なことを行うと、
その後、指が痛くなってしまって、
夜、家に帰ってから電子ピアノを弾くことができなくなった。

こんな生活が、かれこれ半年。

いくら求められているからと言って、そして私がピアノを弾くことは、
世の中にとって、なんの価値もないとは言え、
「私はピアノを弾くのが好きだ」ということには変わりがないわけで・・・、
それを我慢してまでする仕事って、いったいどんな意味があるんだろう、
と思ってみたりする。

Yの悲劇 その2

2009-04-20 21:43:08 | Weblog
フジテレビ開局50周年記念DVD。
原作、エラリー・クィーン。

この週末に、一気に通して見た。
いまから30年も前だったら、意欲的な作品だったんじゃないかと思う。

精神病への台詞など、いろいろと「?」なところもあるけど、
当時は、病気に対する認識もそんなもんだったんだろうし、しょうがない。

ストーリー展開のテンポもよかったし、
最初に探偵役の石坂さんが登場したとき、『EQ』を持っていたりと、
いまの私だからこそ、グッと来るツボもあった。

少し古くさいところも当然あるけど、
全般的に、いま見ても十分楽しめるドラマだった。
というか、作りが丁寧だった。

シャム猫もアーチェリーも、このドラマで知って、あこがれたんだったなあ。
あと、暖炉のある家!

そして、見ていて思い出したこと。
長男のお嫁さんが母に似ていると思って、それを母に言ったら、すごくイヤがられた。
ちなみに次女は、叔母に似ていると思って、それも言った。
ファミリードラマは、自分の家の判じ絵として見るものだけど、
母に言ったのは間違っていた・・・。
あの、変身願望のようなところに共通項を見つけたんだけど、傷ついただろうなあ。

後の祭り。

リヴァイアサン

2009-04-17 21:16:35 | Weblog
ポール・オースター著、柴田元幸訳。

これまで読んで来たポール・オースターの作品の中で、一番気に入った。

読後、調べてみたところ、
リヴァイアサンは、旧約聖書に出てくる海の怪物であるほか、
キリスト教の七つの大罪のうち、嫉妬に対応している悪魔。

なぜ、書名を『リヴァイアサン』にしたのだろう。

話は少し飛ぶけれども、
仏教関連の本を読むと、いつも私がいちばん乗り越えたいものは
「嫉妬」という感情だなあ、と思う。

あまりにも大きな劣等感と、根深い自己嫌悪。
そして、ふとしたときに襲ってくる自己顕示欲。
仏教で言う「執着」は、理解するのが少し難しいけれども、
「嫉妬」という言葉であれば、「うん」と、うなづける。

そう。私がいつも相対してるのは、様々なお面をつけて
巧妙に私を操ろうとする嫉妬の感情。

いや、この本の場合は違うか。
海の怪物のほう。時代や社会や、自分がつくりだした幻影に翻弄される人生。
まるで大海原の小舟のような存在。

ある作家が、才能豊かで魅力的なもう一人の作家に会った。
そして始まるストーリー。

人の内面を描きつつも、これまでよりも少し広い視野で繰り広げられるストーリーだと思った。
自分の内側に落ち込んでいくというよりも、他者との関わりにおいて、自分を問い直す作業。
とても面白かった。