私の勝手な見立てですが、今、「夜」がブームみたいです。「夜」だけに。「静かな」ブームと言えるのかどうか・・・
最近、タイトルを目にしただけでも、「失われた夜の歴史」(ロジャー・オーカーチ インターシフト刊)、「夜は暗くなくてはいけないかー暗さの文化論」(乾正雄 朝日選書)、「「闇学」入門」(中野純 集英社新書)など、いろいろある。
とにかく、夜を明るくするのが、文明であり、進歩である、という信念のもとに、突っ走ってきたのが、ここ100数十年の人類の歴史といえる。おかげで世の中、大いに便利で安全になったようだが、果たして、いいことばかりだろうか?ちょっと立ち止まって考えてみようというのが、これらの本の共通のコンセプトのようだ。
確かに、ヒトの場合で考えても、数百万年の間、夜明けとともに起きて、夜になれば寝る、というサイクルは、生理的にも、ひょっとしたら、DNAにまでしっかり組み込まれているはず。動物だって、種によっては、億年という単位で、昼夜という自然現象を、(昼行性、夜行性などの別はあるにしても)既得のものとして、生理的に受け入れて来たに違いない。
主に電力の力を借りて、無理矢理、人工的に明るくして来たことのマイナス面にも目を向けようというわけだ。
タイトルだけ眺めて、その気になってもしかたがないので、最近出た「本当の夜をさがして」(ポール・ボガード 白揚社)を読んでみた。
夜がどんどん明るくなって、「光害」にまでなってきた歴史と現状。そして、そのような現状に対して、不要な明かりを規制して、「本来の」夜を取り戻して、本来の星空を愉しもうと取り組む人々。夜勤など不規則な勤務を強いられ、体調を崩す人、不眠に悩む人。様々なエピソードが、今の世界の「夜」が抱えている問題を浮き彫りにします。
そんな中で、強く興味を引かれたのが、夜の人工的な光と癌(がん)との関係。直接自分たちにかかわるところが、やはり一番気になるわけで・・・
ここ20年ほど、とりわけ議論されて居るのが、ホルモンの影響が大きい乳癌と前立腺癌だという。それぞれ、女性、男性の代表的な癌です。
で、そのホルモンとは、「メラトニン」。
このホルモンは、暗い場所にいる時だけ生成されるホルモンで、癌細胞の成長を抑える働きがあることが分かっている。星明かりや月明かり、ろうそくや炎の光くらいでは影響を受けないが、電気の光は、脳を混乱させるに充分で、メラトニンの生成が中断されてしまう、よって、癌になる可能性が高くなる、というわけだ。
夜中に目が覚めて、トイレに行って、明かりのスイッチを入れただけで、脳はそれを、日光と認識してしまって、メラトニンの生成がストップする、というから、ちょっとこわい。現在のところ、癌との関係が、完全に実証された、というわけではないとのことだが、方向性としては、正しいというのがほぼ定説らしい。
いまさら昔の暮らしに戻れないにしても、夜は暗いのが当たり前、というところから、ライフスタイルを、ちょっとばかり変えてみるのも悪くないと思う。節電にもなるし・・・
いかがでしたか?次回をお楽しみに。