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第472回 エッセイで「しりとり」

2022-05-13 | エッセイ
 読んだ本からのネタを中心にやりくりして、(エッセイのつもりで)続けているこのブログ。
 やっぱりプロは違うな~、とため息が出たのは、「青豆とうふ」(和田誠/安西水丸 中公文庫)という「しりとりエッセイ集」を読んだ時です。一方のエッセイの最後の話題を、もう一方が、しりとりし、書き継いでいきます。イラストだけでなく、エッセイでも健筆をふるわれたお二人ですので、「しりとり」というシバリをものともせず、楽しい話題がうまくつながって、十分に堪能しました。

 その「しりとり」に、芦坊(ろぼう)こと私も勝手に相乗り(割り込み?)しました。で、その前に、本のタイトルの由来です。
 安西が、村上春樹と食事をしながら、今回のエッセイ集のタイトルを考えてくれと頼みました。「そんなことは、とても、とても」といいながら、ふと「青豆とうふ」という言葉が村上の口から出たのです。それは彼がその時食べていたもので、そのユルさが安西の気に入って「それいただき」で決まりました。「青豆とうふを食べてくれていてよかったと思います。納豆つくねきんぴら添えだったらどうなっていたでしょう。」(同書から)との前書きに、思わず頬が緩みました。さて、しりとり例のご紹介です。

★ここから安西水丸★
 和田(WADA)という名は、アイウエオ順だと最後、アルファベット順でも終わりの方です。それであまりいい思いをしたことがないという和田の体験談を受けて、安西も、本名が「ワタナベ」なので同じ思いを共有したと書き出し、自身のペンネームへ話題を展開します。
 平凡社という出版社に入社し、そこにいた嵐山光三郎(本名は、「祐乗坊英昭」というゴツイもの)からペンネームを名乗るようすすめられます。祖母の実家が「安西」であり、小さい頃、自宅のモノに「水」を丸で囲った印を付けていたのを思いだし「水丸」にしたといいます。こんなイラストを載せています(同)。嵐山から「そよ風吹之進」と「椿咲之助」という名前を提示されて、断るのに苦労したと明かしているのがちょっと笑えました。


 
★ここから「芦坊」の相乗り★
 ブログタイトルで使っている「芦坊」はもともとは私の俳号です。いきつけの店の句会用に自分で考えました。お店でよく冗談半分で「オレって、芦屋の坊っちゃんだから・・・」と言っていたのにちなんでいます。「ろぼう」と3文字なのも言いやすかったようで、お店ではすっかり定着しました。ググっても、今のところ、私のブログがトップにヒットします。結構ユニークな名前だったんだと、気に入っています。

★ここから和田誠★
 ペンネームの話題を受けて、和田は、得意の洋画のジャンルで、スクリーン・ネーム(俳優名)の蘊蓄(うんちく)を傾けます。また、若い音楽関係者で「和田誠」という同姓同名の人物がいて、本も出したりしていたので、ちょっとした混乱があったことなども書いています。
 そして、奥様で料理研究家の平野レミさんの「レミ」(本名です)に関わる「粋な計らい」に話が及びます。
 夫婦でニューヨークに滞在中「レミ」という名のイタリアンレストランに入りました。ウェイトレスに店名の意味を訊ねると「ゴンドラ漕ぎ」との答えが返ってきて、メニューにもその絵が描いてあります。ウェイトレスに記念に欲しいと申し出たのですが、答えはノー。売って欲しいと頼むのですが、これもノー。「実は、妻の名前がレミなんだ」と言うと、彼女からこんな返事が返ってきました、
「メニューはあげられません。売ることもできません。でも、あなたが持って行くのを見ないでいることはできます」(同)う~ん、確かに「粋な計らい」ですね。

★ここから安西水丸★
 しりとりで、海外旅行にまつわるこんな体験を描いています。観光ビザで入国し、ニューヨークで仕事していた時のことです。3週間経って、国外退去の通達が来たので、移民局に出向いて、滞在延長の手続きが必要になりました。簡単には認めてもらえませんから、病気を理由にするつもりでした。順番が来て、書類を出し、緊張しながら理由を切り出そうとすると・・・
 「「メッツのファンかい」葉巻を灰皿に置いた係員が言った」(同)といいます。安西がウィンドブレーカーの襟にニューヨーク・メッツ(メジャーリーグ)のピンバッジを着けていたのに係員が気がついたのです。「「俺もメッツのファンなんだ」係員は握手を求めてきた。パンパンとスタンプが延期申請の書類に押された。なんと半年も延期してくれたのだった。」(同)
「粋な計らい」というか、「古き良きアメリカ」を彷彿とさせるエピソードですね。

 厚かましく相乗りしながら、しりとりエッセイの一部をご紹介してきました。いかがでしたか?それでは次回をお楽しみに。
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