2015年5月8日。
この日は僕の誕生日だった。
今までよく生き続けてこられたなとは思ったが、それ以外に特に感慨もなけれは、誰かに祝って欲しいという思いもなかった。
実際のところ祝ってくれる人など居ない。
しかし、叶うならばサツキマスが祝辞の代わりに会いに来てくれたらどんなに嬉しいことかと妄想していた。
前夜からポイント付近にクルマを停めて眠っていた。
早朝は4時前に目覚めたものの、なかなか頭が覚醒せずにもう一度座席の背もたれを倒し横になった。
もう一度目覚めたのは午前5時。
既に長良川に立ち込んで竿を振っている釣り師が大勢いる。
朝一番で自分の目当ての釣り座に入ることが出来れば良いが、正直なところ何処に入るか決めあぐねていたし、運やら廻り合わせの要素も強かろうと、空いている釣り座で構わないと思っていたので、特段問題ではなかった。
一帯のポイントの下流部を丁寧に流した。
一度流した後ももう一度流したし、誰かが川から上がるとその釣り座でも流したが、長良川からは何の返事も来なかった。
昨日は何本かのサツキマスが上がったが、二日続けて良い日はないと、以前地元の名手が話していたことを思い、ポイントを移動することにした。
そこが関市なのか美濃市なのかよく分からないのだが、去年長良川沿いにクルマを走らせていたときに見つけたポイントだった。
最近になってその上流部も良いということを人づてに聞き試してみようと思った。
ところが流したい筋が遠く、腰上まで立ち込んで10.5mのエアマスターを振り回しても届かない。
立ち込んでいる位置は流れは殆どないものの、足を滑らせて転倒という危険もある。
流されて命を落とすような場所ではなかったが、万が一転倒したときに竿にダメージを与えてしまうようなことになると困る。
ある程度流して何も反応がないことか判ると、僕は次のポイントに向けて移動し始めた。
何処に入るかなかなか決められなかったが、まだ時期は早いとは思ったものの、昨シーズンにサツキマスを獲った相戸堰堤に行ってみようと思った。
今日はGWが開けたあとの平日で、まだ時期も早い。
多分空いているだろうと。
年に一度記念に入ってもいいポイントだなと考えた。
相戸堰堤到着は昼前。
右岸側で三人の釣り師が竿を振っている。
そのうちひとりは程なく納竿。
残る二人はどうやら連れ同士のようで、一人が釣りのコーチのような感じで互いに釣り座を移動しながら竿を振っていた。
その場を離れるような感じだったが、休憩を取り入れながらの釣りのようで、立ち去ることはなさそうだと判断し、僕は左岸側から川を渡り中州に入った。
中州から左岸側に向けて投餌したり、右岸側を流す際にも、流すコースが重ならないように配慮しながら釣りを続けたが、ここでも長良川からは何の返事も来なかった。
そうそううまくは行かないものだと諦めて川から上がりかけたとき、堰堤直下からの流れ出しの筋が目に留まった。
構造物によって溝のようになっている箇所があった。
もしかしたらと思い、一旦は畳んだ竿をもう一度振り出し流し始めた。
何度か流したあとの投餌で、ドリフト終了間際、もうあと少しで流し切るというところで「ググンッ」と強く穂先が引き込まれた。
すかさずアワセを入れ、その後直ちに追いアワセも入れた。
掛かった魚は首を振りながら流れを降り始める。
堰堤直下の流れに乗った手応えは重い。
僕は竿を絞る手を緩めず、低い姿勢を保ちなから岸辺の岩場をボサを避けながら降った。
しかしそこまでだった。
束の間僕の神経を研ぎ澄ましてくれたその魚は、既に絞った竿に引かれて岸よりの緩流帯で弱々しくヒラを売っていた。
釣り上げたのは29cmのアマゴ。
せめてアマゴなら尺は欲しかった、こんなところでもついていないのだなと、若干自身の誕生日を呪う気持ちを持ちなから相戸堰堤を後にした。
その後、少し下流のポイントで竿を出した。
一昨年は頻繁に入ったのだか、何故か昨シーズンは機会がなく一度も入らなかった。
久し振りに入ったが相変わらずいい流れだった。
僕は目印か見えなくなるまでしつこくそのポイントに居座って流していたが、ウグイが1匹釣れただけだった。
2015年5月8日 追憶のサツキマス2015 �・VOL:5
自身の誕生日も、サツキマスに会えないままにまた日付がかわる。
にほんブログ村
この日は僕の誕生日だった。
今までよく生き続けてこられたなとは思ったが、それ以外に特に感慨もなけれは、誰かに祝って欲しいという思いもなかった。
実際のところ祝ってくれる人など居ない。
しかし、叶うならばサツキマスが祝辞の代わりに会いに来てくれたらどんなに嬉しいことかと妄想していた。
前夜からポイント付近にクルマを停めて眠っていた。
早朝は4時前に目覚めたものの、なかなか頭が覚醒せずにもう一度座席の背もたれを倒し横になった。
もう一度目覚めたのは午前5時。
既に長良川に立ち込んで竿を振っている釣り師が大勢いる。
朝一番で自分の目当ての釣り座に入ることが出来れば良いが、正直なところ何処に入るか決めあぐねていたし、運やら廻り合わせの要素も強かろうと、空いている釣り座で構わないと思っていたので、特段問題ではなかった。
一帯のポイントの下流部を丁寧に流した。
一度流した後ももう一度流したし、誰かが川から上がるとその釣り座でも流したが、長良川からは何の返事も来なかった。
昨日は何本かのサツキマスが上がったが、二日続けて良い日はないと、以前地元の名手が話していたことを思い、ポイントを移動することにした。
そこが関市なのか美濃市なのかよく分からないのだが、去年長良川沿いにクルマを走らせていたときに見つけたポイントだった。
最近になってその上流部も良いということを人づてに聞き試してみようと思った。
ところが流したい筋が遠く、腰上まで立ち込んで10.5mのエアマスターを振り回しても届かない。
立ち込んでいる位置は流れは殆どないものの、足を滑らせて転倒という危険もある。
流されて命を落とすような場所ではなかったが、万が一転倒したときに竿にダメージを与えてしまうようなことになると困る。
ある程度流して何も反応がないことか判ると、僕は次のポイントに向けて移動し始めた。
何処に入るかなかなか決められなかったが、まだ時期は早いとは思ったものの、昨シーズンにサツキマスを獲った相戸堰堤に行ってみようと思った。
今日はGWが開けたあとの平日で、まだ時期も早い。
多分空いているだろうと。
年に一度記念に入ってもいいポイントだなと考えた。
相戸堰堤到着は昼前。
右岸側で三人の釣り師が竿を振っている。
そのうちひとりは程なく納竿。
残る二人はどうやら連れ同士のようで、一人が釣りのコーチのような感じで互いに釣り座を移動しながら竿を振っていた。
その場を離れるような感じだったが、休憩を取り入れながらの釣りのようで、立ち去ることはなさそうだと判断し、僕は左岸側から川を渡り中州に入った。
中州から左岸側に向けて投餌したり、右岸側を流す際にも、流すコースが重ならないように配慮しながら釣りを続けたが、ここでも長良川からは何の返事も来なかった。
そうそううまくは行かないものだと諦めて川から上がりかけたとき、堰堤直下からの流れ出しの筋が目に留まった。
構造物によって溝のようになっている箇所があった。
もしかしたらと思い、一旦は畳んだ竿をもう一度振り出し流し始めた。
何度か流したあとの投餌で、ドリフト終了間際、もうあと少しで流し切るというところで「ググンッ」と強く穂先が引き込まれた。
すかさずアワセを入れ、その後直ちに追いアワセも入れた。
掛かった魚は首を振りながら流れを降り始める。
堰堤直下の流れに乗った手応えは重い。
僕は竿を絞る手を緩めず、低い姿勢を保ちなから岸辺の岩場をボサを避けながら降った。
しかしそこまでだった。
束の間僕の神経を研ぎ澄ましてくれたその魚は、既に絞った竿に引かれて岸よりの緩流帯で弱々しくヒラを売っていた。
釣り上げたのは29cmのアマゴ。
せめてアマゴなら尺は欲しかった、こんなところでもついていないのだなと、若干自身の誕生日を呪う気持ちを持ちなから相戸堰堤を後にした。
その後、少し下流のポイントで竿を出した。
一昨年は頻繁に入ったのだか、何故か昨シーズンは機会がなく一度も入らなかった。
久し振りに入ったが相変わらずいい流れだった。
僕は目印か見えなくなるまでしつこくそのポイントに居座って流していたが、ウグイが1匹釣れただけだった。
2015年5月8日 追憶のサツキマス2015 �・VOL:5
自身の誕生日も、サツキマスに会えないままにまた日付がかわる。
にほんブログ村