飛騨渓の紅葉前の秋桜は散る橙の薄墨桜
季節が進み山の木々が紅葉する前に、橙色が散りばめられた淡墨桜を見ているような気持ちになる。
飛騨の小渓流で、そんなアマゴに出会いました。
先週41cmのダム遡上のアマゴを獲った同じポイントに僕は降り立った。
葉が少し色づき始めた木々も窺える。
渓を吹き抜ける風は冷ややかで、「秋めいて」どころか「丸っきり秋」だった。
勿論見上げれば少し弱々しい陽の光と高い空。
冬場は雪に閉ざされる山上の鄙びた小渓流は、あまりに寂しくて、竿を出す気も萎えてしまいそうだった。
僕はあまり気乗りしないまま先ずは立ち位置の右手の流れを探る。
反応はない。
左手の流れを探ると、ひと流し目で餌を咥えて持っていくアタリがあった。
そのアタリから最初はイワナかと思ったが、鈎に掛かると直後から首を振ったシャープな引きはアマゴだと確信した。
「鼻曲がり婚姻色の雄」
多くの釣り師がこのような個体を狙っているがなかなか掛からないし、釣れない。
それが、二週続けて僕の竿に掛かり、獲ることができた。
雑誌の表紙に掲載されてもおかしくないほどの立派な雄のアマゴ。
できすぎなような気がして少し怖かった。
もしかして先週と同じ個体かと思ったが、体長は少し大きく顔も黒い。
そして何よりも朱点が多かった。
去年獲ったランドロック・サクラマス、即ちダム遡上のヤマメには勿論朱点はない。
やっぱり僕はアマゴ域に住む釣り師だな。
アマゴの体表に散る橙色を見ると安心する。
強く、大きくなる遺伝子を繋いで欲しいと願いながら僕は彼を流れに返した。
魚種:ダム遡上のアマゴ(ランドロック・サツキマス)
体長:44cm
竿:シマノ スーパーゲームベイシス MH75-80
水中糸:フロロ0.8号
ハリス:フロロ0.6号
鈎:オーナー スーパー山女魚8号
餌:ミミズ