多くのフィールドで禁漁となり、2017年の渓流釣りは終わった。
できれば最後に本流でもう一本いいやつと出会いたかったがそううまくは行かない。
ダムに注ぐ山上の小渓流で、鼻曲がり婚姻色の雄とは二度、優しい顔付きの雌とは一度出会い、僕は今季に自身で幕を引いた。
最後の益田川本流での釣りは言ってみればアンコール、カーテンコールのようなものだと思いながら竿を振った。
大物が獲れたらそれはそれできっと感動的な終幕となったろうが、最後の魚は掌サイズのアマゴだった。
山上の小渓流。
要するに渓である。
川面を覆う樹木とその枝葉。
まだ夏の名残りを見せる葉の色だが、中には少し色づき始めているものもある。
頬を掠めて吹き抜ける風は秋のそれ。
空は澄んで高く、そして渓の水は冷たい。
そんな中で桜色の婚姻色を纏った渓魚たちに出会えば、否応なく漁期の終焉を意識する。
もう、竿を畳むときが近いな。
そして、最終日がやってくる。
明日には、釣り師は皆、竿を置いているのだな。
2017年のシーズン途中で、細山長司さんが逝去した。
我ら延竿遣いの本流師だけでなく、釣法の垣根を越えて尊敬、畏敬、畏怖の念を集めていた、僕らのヒーロー、英雄、カリスマが逝去した。
その細山長司さんを偲び、そして細山さんが手掛けた名竿「刀」を称えて、今季の終幕に詠いたい。
錦繍に先立つ渓の桜見つ 我ら鱒士は刀を納む
来季を各々の腕と刀を磨いて待っていよう。
安竿を磨きつ春をまつ我は廃刀令下の士なれば
僕に短歌を手解いてくれた◯◯◯◯さんはこう詠んだ。
益田川渡りし季節過ぎゆくも いく歳いく度われ渡らむや
そして僕は、最後にアンコールのつもりで竿を振っていた夕暮れ迫る益田の川面にこう詠った。
また来季。
そして来季。
僕はいつまで益田川に相手をしてもらうことができるだろうか。
ブログタイトル
~How many rivers must I cross? I don't know~
幸せになりたくて川を渡る・・・