釣った魚を記録に残したいという思いは誰しもが抱く自然な感情だと思う。
僕も記憶に留めたい魚と尺以上の個体は写真撮影する。
ただ、この写真について、以前から思っていたことがある。
ひと言でいうと、死んだ魚の写真は見たくない・・・ということなのだが。
曲解されかねないので詳しく書いていくと、同じ死んだ魚の写真でも、まな板の上に乗せられている写真については特に何も感じない。
ああ、この人は食べることが目的で釣りをしているのだなと思うくらいだ。
ところがこれが10匹も20匹も、それがその日に釣った全ての魚ですよと釣果自慢よろしく、ステンレスのトレイみたいなものに並べられている写真を見ると気分が悪くなる。
時には「これリリースサイズやろう?」と思えるような小さな個体もある。
はらわたが取り除かれた状態だったりしたら最悪である。
「このひとはそれを全部食べるんか?」と疑念が生じる。
もしかしたら近所に配るのかもしれない。
でも、配られた方がちゃんと食べるかどうかは写真では分からない。
毎年漁協が稚魚放流しているのだから種が絶えることはないだろう。
しかし、食べるつもりもないのに命まで奪ってしまうことはないんじゃないかと想像が飛躍する。
今でも釣った魚は全て持ち帰るということが普通の感覚である年配の餌釣り師の方が多くいらっしゃる。
そんなことをするからキャッチ・アンド・リリースを標榜するルアーアングラーに餌釣り師がバカにされるのだ。
写真の方に話が戻るが、先ほどまな板の上に載せられた写真には特に何も思わないと書いた。
これが、釣り場で撮影された魚、目が虚ろになった魚だったりするといたたまれなくなる。
ついさっきまで元気に川で泳いでいたのにね・・・と悲しい気分になる。
食べるつもりなのかも知れないが、出来れば生きているうちに撮影したものを見たかったと思う。
では生きている魚の写真なら何でもよいのかというとそうではない。
所謂「バス持ち」なんてのは言語道断。
あんた鮭科魚類を釣るのは10年早いから、暫く座学で勉強してから現場に出てきなさいと言いたくなる。
まだある。
鰓の後ろ辺りを親指でギュッと押さえてつまんでいるような持ち方。
ようするに魚がヌルッと滑って逃げないように力を入れて押さえ付けているんでしょ?
食べるためにこれからしめるならまだしも(それでも魚には相当な苦痛だろうが)、リリースするつもりならそんな持ち方は絶対にしないでほしい。
そういう持ち方で撮影されたものの中には、たまに目が虚ろになっているのも見かける。
しめた後なのか押さえつけられて苦しんでいるのか、そんな残酷な画像を「閲覧注意」とも何も書かずにネット上にアップしている釣り師の神経を疑う。
そして往々にして、そんな持ち方をされる魚のサイズは小さい。
漁協の定めたリリースサイズの基準を満たしているのかどうか疑わしいものも多い。
恐らくこういう釣り師には大物は掛からないと思う。
何故なら、魚の気持ちを分かろうとしないからだ。
中部地区の渓流釣り場を紹介しているわりと有名な某サイト内でも上記のような魚の持ち方をしている画像が散見される。
自分が初心者の頃はそのサイトを参考にすることも多かったが、今ではこう思う。
「この人は、釣りが上手なのだろうが、魚に対する愛情とか、昨今のマナーや心得を勉強しているとは思えない。昔ながらの渓流釣りから変わっていないのだな。」
現在ではそのサイトを参考にすることは皆無だ。
かく言う僕も、かつては食べるつもりで釣りをしていたので、釣り場でしめた魚を撮影したこともある。
今となっては後悔の極みである。
救いは、現在でもそのような撮影を続けていないことだ。
基本的にリリースするので、魚を水中から出す時間を極力短く抑える。
可能なら魚体の半身や後ろ半分くらいは水に浸けたまま撮影する。
その時は左の掌でそっと支えるようにする。
以前は素手で触れていたが、手のひらの温かみが伝わりにくくなるだろうと考え、今は手袋を装着している。
幸か不幸か、片手で支えられないくらいの大物になると石を支えに使うこともあるが、その時も河原にある乾いた石ではなく、水中或いは水飛沫が掛かって常に濡れているような石を支えに使う。
最初は使用を躊躇したストリンガーだったが、意外なことに暫く休ませておくと弱った魚も元気に泳いで流れに帰っていくことが分かり、最近では船を使うことは殆どなくなった。
我々釣り師は、そこに魚が居るから釣りをすることが出来るのだ。
魚が居なくなっては釣りは出来ない。
だから、魚には感謝しなくてはならないし、愛情を持って接するべきだと思う。
釣った魚を食べるということもそれは楽しみ方のひとつであるので否定はしない。
僕も時には食べる。
でも、他に食べるものはあるわけだし、習慣のように釣った魚を全てしめたり、食べ切れる分以上の魚を持ち帰るということは、やはり無駄な殺生と言わざるを得ない。
釣り師が皆、釣った魚を無闇に殺めることのないようにと思う。
コメントありがとうございます。
これがもし有名人のブログなら炎上しかねないなあと思いながら書いたので、コメントを拝見するときはドキドキしました(笑)
食べるために釣る、ええ、ええ、存じておりますよ。
魚以外にも色々と食されていらっしゃいますし。
ですから食べる分以外は持ち帰ることもないだろうし、食べる分を釣ってしまえばそれ以上釣りはされないのかもと思っておりましたが、食べないと判っていて釣ることもされないとは・・・ほぼ漁師ですね(笑)
そんなお方から見たら僕なんか「食べないのに何故釣るのだ?」と言われますね。
ブログには長々と書きましたが、端的に言うとこういうことです。
「食べるあてもないのに釣れたからと言って全て持ち帰るのはいかがなものか。」
「リリースするつもりならば魚をいたわりながら扱ってみてはどうか。」
対象となる釣魚だけでなく、川やそれを取り囲む自然環境のことまで考えていらっしゃる方にはもはや言うまでもないことですがね。
その後本業が不調の時に、山菜やキノコや渓魚を料理屋や居酒屋に買ってもらったりしていたので、自分のスタイルが出来たと思います。スレ針を使い浅い掛かりで抜いて、玉網に入った時には針が外れているというのは、要らない魚に手を触れずに即川に戻せるからです。(師匠は水から出さずに外したりしていました)
人それぞれ釣りへの関わり方が違いますが、筋の通った釣りをされる方には敬意を表したい。そういう意味で鮭一さんが書かれる文章が好きです。
ぼくもちゃんとした文章を書きたいのですが、時間が足らないのを言い訳にして、なかなか書けません。本当は文章を練る気力がなくなってきたようです。
筋の通った釣りをするなんて僕には勿体ないです。
単に意固地なだけかと(笑)
「スレ針を使い浅い掛かりで抜いて、玉網に入った時には針が外れている」・・・
まるで郡上の職漁ですね。
実際それを生活の糧としていらっしゃったのだから職漁か。
僕の場合、どんなに偉そうなこと言っても結局のところ趣味ですからね。
職人の釣技には畏怖の念さえ抱きます。
でも、釣りへの接し方がどんな風であれ、良い釣りをしたいですね。
初めまして。 はなひろと申します。
上村川が流れる町で生まれ育った40代の男性です。
*現在は、岐阜市に住んでいます。
今回の記事、大変共感しました。
何度も頷きながら拝読させて頂きました。
ありがとうございました。
最近はネット上で他の釣り人の釣果を簡単に閲覧することが出来ます。
しかし、気分が悪くなる写真が多いのも事実です。
私も若かりし頃は、渓魚を雑に扱うことがありました。
しかし、多くの釣り人との交流で自分自身の誤った行為を反省しました。
自然も魚も、労わりの心が絶対に必要です。
私は釣行時に写真撮影も楽しんでいます。
移り変わり行く季節を感じながら、渓魚を狙うことだけでも楽しい時間です。
自然も渓魚も生き生きとした姿を撮影したいですよね。
鮭一さんのブログ更新を楽しみにしています。
*あと、別記事の上村川のブラウンですが、彼らは繁殖しています。
深刻な状態です。
近々、上流の管理釣り場と漁協に対策を講じてもらうように働きかけをする予定です。
初めまして。コメントを頂きましてありがとうございます。
共感して頂ける方がいらっしゃってホッとしました。
渓流釣りを始めた頃は、魚が釣れたときはとても嬉しかったし、またアマゴについては「なんてうまい魚なんだろう」と思っていたので、食べたくてしかたなく、逃げられたらまずいと思い、釣り上げたら先ずはシメていたので、今になって見返すと悔やまれる写真がたくさんあります。
次第に釣った魚を食べるということをしなくなり、それからやっと労りながら扱うようになりました。
過去の自分の所作には反省しかありません。
上村川のブラウンですが…繁殖しているとは思いませんでした。驚きました。
管理釣り場から落ちてくるということは、あの達原に入る前の大堰堤をダイビングしても魚は生きているのですね。
46cmのブラウンは小田子辺りの橋(すみません。橋の名を知りません)の下で、もう一匹の尺上のは前述の大堰堤の下で釣りました。
同じ2007年に、件の大堰堤の下でブラウンの稚魚も釣っています。
当時は魚種が分からず、取り敢えず写真に収め、後になって見返した時に、「ああ、これはブラウンの稚魚だな」と分かりました。
リリースはアカンかったですね…
その年は釣り友も上村川で何匹かブラウンを釣っています。
当時から繁殖しているとなるとかなり深刻ですね。
頻繁にブラウンが釣れるような状態になっているのでしょうか。
最近は上村川への釣行が少ないのでその辺りのことがよくわかりません。
アマゴの稚魚の姿を見ないのはもしかしてブラウンに食われているからですかね?
いずれにしろブラウンには申し訳ないですが、退治しなければ長野の梓川みたくなっちまいますね。
漁協の方とお知り合いなのでしょうか。
もしブラウン退治などを行うということになった場合、人手が足りなければご協力させて頂きたいです。